或る男が堕ちるまでの裏話
世界には
さて、そんな俺には恋人がいる。今はダンジョンアタック中だから会えないし連絡も取れないがそろそろ結婚も視野に入れていいだろう、というくらいの仲である。冒険者はそのアングラな部分と帰ってこれない可能性のせいで余り外部の恋人を作る人は少ない。*2確か【先達】も外部の恋人だったかな?でもやっぱ本業の奴らはそもそも出逢いがないからなぁ・・・俺は運が良かった。あまりLUCKを信じることはない*3が乱数と考えれば充分に納得出来る。
今俺が来ているダンジョンは神域級ダンジョン。南極の山脈に確認されている通称
今居るのはダンジョン最奥。俺が勝手に呼んでる名前だと【龍穴】。ここから龍が通り湧くから勝手に呼んでる。かつて【バハムート】や【アポカリプス】を名乗るドラゴンをこの穴から出て来たのを確認している。アイツらは一度は倒したしそれによって魔術も真理に到達できたが・・・
「さぁ、何が来る?」
現れたのは黒い靄。不定形のソレは徐々に形を俺へと変化させていく
「───これが、今代の吾への挑戦者か」
「おいおい、ドラゴンが人の形ば取るたぁ何の冗談だぁ?」*6
「───なる、ほど。理解した。ならば吾が与えるは呪縛だけとしよう。なるほど、【恒星】と【災禍】が認めたのも納得出来る。いや、単一というより群だな」
「何言っちょる?知らん事が話すんじゃあねぇよ」
「───哀れ。さぁ、帰宅するといい。吾は少しばかり早く目覚めてしまったようだ。幾ら
「───おい。それって・・・つまり・・・いや、いやいや、ソレは、ソレだけは有り得ないだろう?だってダンジョンは20・・・だぞ?」
「貴様は気付いているだろう?貴様が呼んでいるドラゴンはダンジョンに湧くだけでその魂はダンジョンとは無関係だと」
「──────」
放心した。信じられなかったからだ。エインス・・・8か。恒星と災禍は知ってる。俺が倒した相手だ。確か・・・
まず聞こえたのは悲鳴である。声の主はすぐに分かった。彼の恋人【星海 小夜】である。その直後、彼は扉を蹴破り部屋に入る。その時目撃したのは見知らぬ男が星海小夜を強姦している現場である。部屋は荒らされており、幾つかの物品が消えている為強盗でもあるのだと理解する。ここまで0.1秒。直後には強盗は頭と胴体が分たれていた。感情が理性を上回った。殺さねばならぬと思った。別に人殺しに忌避感がある訳ではない。そんなのダンジョン内では良くある事だから。*8コレまでと変わらなく殺した。次に彼は星海小夜の様子を見た。彼女は泣きながら「ごめんね、ごめんね・・・」と繰り返し覚束無い足取りで窓へと向かい飛び降りた。あまりに突然の出来事に放心*9してしまった。その結果星海小夜は即死した。窓から飛び降りての自殺だがこれは強盗による殺人であると言っても構わないだろう。
次に聞こえたのは偶々近くにいた人達の悲鳴である。当然である。一般人にとって人死には悲鳴をあげて当然だからだ。これは彼も理解している。その事には何の感情も湧かない。しかし、それに隠れたように別の声が聞こえる
「ひゃっはっはっ!死んだ、死にやがった!まさか死ぬとはなぁ!久しぶりのイイ女だと思ったのによぉ!」
この時、彼の中から理性が消えた。次の瞬間には声の主を殺していた。*10その顔を彼は知っていた。悪評が絶えないクランのリーダー格の男だった。確か最大派閥のトップだったか?クランリーダーとは折り合いが付かないから関係性が最悪だと小木曽───国と彼を繋ぐ役割の警官である───が教えてくれたことがあった。
彼にとって最悪なのは殺した瞬間を見られた事だ。当然の事だが、彼ら一般人にとって人殺しは悪である。ならば当然のように彼を非難するだろう。*11普段なら笑って受け流せただろう。しかし今は最愛の恋人を喪い、ましてやそれが高々一人の人間による快楽の為だったと知ってしまったこの瞬間だけは普段通りの対応など求めるだけ酷だろう。*12当然だが、全員殺した。死体は星海小夜の物と強姦魔及び計画犯の三人を除いて全て消し去った。天気は雨。顔を伝うその液体が一体どっちなのか・・・それは誰にも分からない事である。
「はっはっはっ・・・なんで!なんでだよ!?なんで!俺を・・・!それなら・・・!」
最愛の恋人は死んだ。復讐は済ませた。しかしこれじゃあ終われない。まだだ。人類へ復讐しなければ。ダンジョンなんかあるからこんな治安が悪くなったんだ。その元凶がドラゴンならドラゴンとして俺が人類を滅ぼす。
警察はすぐにきた。星海小夜の火葬を任せ、その武力による権力で今回の一件を握り潰した。彼女の遺族へは翌日に謝罪をした。自分がそばにいなかったから。ダンジョンに向かってしまったのが原因だと。遺族からは一つだけ聞かれた
「これからあなたはどうするつもりなのか」
と。それに対して俺はこう答えた
「復讐して・・・その全てを巻き込んで、罪を清算させて、殺して、俺も死にます。俺の生きる理由は小夜にあった。ならば小夜が死んだ今、俺が生きる理由は
2021年12月26日、人類史史上最凶の人物による史上最大規模の無理心中が始まる。
なお【アイツ】ことソイツですが、今回の件を唆した張本人です。彼はエインスの覚醒にピースが足りて無い事を自覚していました。しかし自身がそのラストピースになる事は避けていました。何故なら彼はノインを目指していたからです。なので目を付けたのが今回の被害者かつEP.2のラスボスたる修弥です。彼は冒険者にしては珍しく恋人が居ました。そして恋人が精神的な支柱になってる事を見抜いたアイツは燻っていた計画犯(名称未設定)を唆しました。結果修弥はエインスとして覚醒した為アイツは自室で大爆笑です。しかしアイツは別の目的があります。それについては語る時が来るといいですね