彼女(メカニック)は空を舞う   作:地雷伍長

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第08話

「ここか」

 

 私は入学前に送られてきた鍵を手に1つのドアの前に立っていた。部屋の番号は0999……一体何を狙ったのだろうか?ナインボー?

 ドアを開ければ(鍵は掛かっていなかった)そこには衣類の散らかった部屋と下着にYシャツしか着ていない簪に似た外はねの水色の髪と紅い目の女性だった。

 

「……ふむ……」

「……………………」

 

 とにかく今は無視でいいや。

 私は持ってきた荷物やHPCDやIS設計用PCなどを取り出し設置していき、適当に衣服箪笥に衣服を放り込んで終了。あとは適当に着替えて終わり、どんな服装かって?ジャージだジャージ。父さんが「部屋着はこれが良いだろう」とか何とか言って薄くて透けるようなものとか渡してきた気がしたが……よく覚えてないな。キャリーケースに入っていた気がする……おそらく着ないだろうが。

 

「……おしゃれもなにもないわね」

「今更だけどアンタ誰?」

 

 下着Yシャツのやつに言われたくはないのだが……

 

「失礼ね、そういう時は自分から名乗るものでしょ?」

「……倉持霞」

「更識楯無よ、IS学園の生徒会長をやっているわ」

「至極どうでもいいな」

 

 生徒会長ね……そういえばここの生徒会長ってどうやって選ばれるんだ?普通に選挙だろうか?

 

「そう言えば知ってる?IS学園の生徒会長は最強の証だって」

「本当にどうでもいいな」

「あら、試験で織斑先生に本気を出させた生徒って貴女じゃないの?」

「だからって力に興味はない」

 

 私が興味あるのはISの空を飛ぶという機能だ。世界に阻まれた束博士の夢だが、まだまだ自由な私はやれるだけやろう、そんな興味しか持ち合わせていない。生徒最強の称号なぞ要らん。

 

「そうなの?」

「第一なんでそんな面倒な役職を受け持たにゃならんのだ」

 

 私はそう言ってIS設計用のPCを立ち上げる。

 今からやるのは電磁式アクチュエータと炸薬式瞬間加速器(クイックボマー)の強度的問題を解消するための新設計だ。

 

「そう言えば倉持って言ったわよね」

「だからどうした?」

「もしかして貴女って倉持のご令嬢?」

「当たり前のことを聞いて面白いか?」

 

 立ち上がったPCと月光を接続し現在の状況を把握する。

 両腕が完全にレッドアラート、各部炸薬式瞬間加速器(クイックボマー)動作不良……エネルギー的な問題は解決したが耐久度的な問題は解決されていなかったか……よくもまぁ、これで正式版としたな私は。

 

「え、じゃぁもしかして簪ちゃんの打鉄弐式を組み上げたのは……」

「私だが……それがどうした?」

「他開発スタッフが居ないっていうのは……」

「白式に持って行かれた」

 

 炸薬式瞬間加速器(クイックボマー)はフレームで囲めばなんとかなるか……アクチュエータは指が問題だな……細かいし露出してるし。夜刀の効果も確認できたしあれは刀型でなくてもいいな……腕の形そのものを変えて強度を持たせるか……

 

「え……じゃあ貴女と簪ちゃんだけでほぼゼロから1機組み上げたの?」

「そうだが?外装は完成してて、あとは内装のみだったからな」

 

 いったいこいつは何が聞きたいんだ?IS1機程度自分で作ってなんぼなんじゃないのか?

 

「……今設計してるそれはなに?」

「私の専用機の月光の改修予定の設計だが?」

 

 見てわかるだろうが……

 夜刀の機能を詰め込んだ大きめの腕でも良いな……指はクローにして武器を呼び出さずとも使えるようにすればいざというときにも対処できるしな……

 というか、もうそろそろ遠距離武装が欲しいところだな……さすがにいつまでも脚摩乳と手摩乳だけじゃ牽制にもならない。となると新しく設計し直しかぁ……FCSの調整に腕部のセンサーリンク、ロックオンシステムの構築、ユーザインタフェース(UI)の構築……やること多いな……

 

「それ、1人でやるの?」

「そもそも月光は私一人で組んだんだ、誰かの力を借りるつもりはない」

 

 まずは機体の設計から行わなきゃならんな……腕部、炸薬式瞬間加速器(クイックボマー)フレーム……ああ、設計とかダルい!設計なんて作りながらやればいいんだ!

 私はおおまかな設計をまとめてデータを保存して立ち上がりハンガーに掛けていた白衣を着て部屋を出ようとするが……

 

「ちょっと待って!」

 

 更識楯無に止められた。一体何のようだ?私は忙しいんだが……

 

「なんだ?私は忙しいんだ」

「ISの改修風景見せて?」

 

 面倒だなぁ……見返りがほしいところだ。

 

「見返りは何かあるのか?」

「見せるだけなのに見返りが必要?」

「どこの国家にも公表していないデータをなぜお前に見せなければならないのか?それがもし他国に渡り私が使っていたものが使えなくなったらお前は責任取れるのか?私の作ったものを我が物顔で『自分たちが開発しました』などと言われる私の気分になれ。それが同じ会社の発表ならまだ許せる、だが見ず知らずの他人にそれをやられたら私はその企業を全力で潰すぞ」

「そ、そこまでのこと?」

 

 そこまでのこと……だと?個人の凄さが分かっていないな、コイツは……

 

「お前は一個人の研究の凄さが分かっていない。それで?何か見返りはあるのか?あれば見てもいいだろう……他国に、他企業にその情報を売らないと宣誓出来るのであれば見ればいい」

 

 私は1枚の紙を取り出して内容を書いていく。

 内容は以下の通り。

・自分の見たものは他企業、他国家(ここで言う他企業とは倉持以外の企業、他国家は日本以外のことを示す)への情報の漏洩はしない。

・した場合にはこの世からどのように立ち去ろうとも構わない。簡単にいえば死ね。

・倉持霞の利となることを提供する。コレは財的なものでなくとも構わない、例として整備室を霞の研究室として使えるなど。

 この3つだけだ。

 

「見たいのであればこの条件を飲み込み、サインしろ。自分の立場もしっかりと書けよ」

「わ、わかったわ」

 

 更識楯無は宣誓書にサインをしていく。

 コイツ、ロシア代表で対暗部組織の筆頭かよ……どんだけすごい立場なんだ……

 

「確かに受け取った」

 

 私が部屋から出ると更識楯無も着いて来る。

 

「それで、お前は私に何を提供するんだ?」

「生徒会庶務の役職を提供するわ」

「それ、私の利になるのか?」

 

 むしろ面倒事が増えている気がするのだが……

 

「もちろんなるわ。生徒会長権限で色々できるし」

「例えば?」

「整備室のうちの1つを貴女のラボにしたり、授業への出席を免除したりね」

「それは良いな」

「なら、取引成立で良いかしら?もちろん庶務として動いてもらうけれど」

「対価に労働は付き物だからな」

 

 そして到着したのは第9整備室。すぐ隣に用具倉庫があるから何かと便利な整備室だ。

 

「私のラボにするならここが良い」

「でも2機ぐらいしか整備できないわよ?大きな部屋のほうが良いんじゃない?」

「2機も整備できれば十分だ」

 

 私は月光を展開して大規模改修を始めた。

 なにやら更識楯無が途中から唖然としていたが……まぁ、どうでもいいことだな。何に唖然としていたのかは本人に聞かなければ分からないし聞く気もなかったし。

 

・―・―・―・―・―・―・―・

 

 次の日の朝、私は織斑千冬の後を歩いていた。何故ならば、学校が始まってからの1週間私は一切登校していなかったからだ。席は用意してあるそうだが紹介も無しにとはいかないとのことで教壇で自己紹介をしろとのことだ。面倒なことこの上ないな。

 それに、担任がコイツで同じクラスには織斑一夏と候補生風情が居るそうだ……ああ、篠ノ之束の妹もだったか。これも面倒なことこの上ない。

 はっきり言って、織斑千冬に見つからなければクラスに行くつもりなど毛頭なかった。面倒事が増えるだけだし、第一私の研究の時間が減る……まぁ、マルチタスクで構想だけ授業中に練っているとしよう。

 

「着いたぞ」

「ほんとにやらなきゃダメか」

「ダメだな」

 

 私は深い深い溜息を吐いて言った。

 

「面倒くさい」

「これもお前のやるべきことだ」

「こんなモノになんの意味がある?」

 

 私は出来るだけ被覆面積を薄くした改造制服の上から着ている白衣のポケットに手を突っ込みながら織斑千冬に問うた。

 

「IS操縦者を育てるためだ」

「ISとは何だ?」

「マルチフォームスーツだ」

 

 ………………減点95点。戦闘のためのものだとか答えたら問答無用で更に減点していたところだ。

 

「5点」

「何の採点だ?」

「アンタのISに関する理解について」

 

 私は教室のドアを開けて教室に入る。クラスに入った瞬間にざわめき始めたが……別に良いか。私は黒板前の教壇に上がり自己紹介をする。

 

「倉持 霞だ。用事があって1週間ほど居なかったが……別に仲良くしてくれなくても良い。お前らに興味はないから」

 

 ざわめきが深まって何を話しているのか聞こえてくる

 

「なに?アイツ」

「織斑くんとオルコットさんに勝ったから調子乗ってるんじゃないの?」

「キモー」

 

 ウザい、見事にウザい。カチンどころかガチンと来るほどにイラッとする。

 まぁ、初戦はISのいの字も理解しない馬鹿共だからどうでも良いのだが……こんな場所に居なければならないという時点で最悪だな。もはや私にとって害悪でしか無い……授業全部バックレてやろうか。

 

「もう少しマトモな自己紹介をしろ」

 

 ッチ!お前は姑か?私は誰かに知られるために自己紹介をしているわけではない、やれと言われているからやっているのだ……

 面白い光景を見て今回は終わりにするか。

 

「あー……苗字で分かる通り倉持技研の御令嬢だが、近寄ってきても専用機は渡さないからそのつもりで。あと、私は経験のない処女だ」

 

 私の発言で教室が凍りついた。

 ざわめいていた奴らは顔を真っ赤に染めて俯き、候補生風情は淑女とはどうのこうのとダラダラダラダラと述べている。織斑一夏は顔を真赤にしながら顔をひきつらせていた……案外器用だな。束博士の妹は頭から煙を出していた……オーバーヒートか。

 一番笑えたのは織斑千冬だな。少し頬を染めながらも怒り心頭の様子だ。

 

「織斑千冬、アンタまだ経験なかったのか?」

 

 そういった瞬間、ペン状の何かが飛んできたが私は苦も無く避ける。ペン状の何かは避けた先の窓を貫通した……もしかして……

 

「姦通と貫通を掛けたのか?」

 

 ちなみに『姦通』の意味だが『社会的、道徳的に容認されない不貞行為、性交渉のこと』だそうだ。まぁ、どうでも良いのだが……面白い光景を見れたことだし私は教壇から降りると誰も座っていない窓際の一番後ろの籍に座った。

 あ、そう言えば…………

 

「織斑千冬ってブラコンとかって聞いたけど……他の男にヤッてもらって無いのって弟に捧げるためか?」

 

 それこそ姦通ものだな!自分でもここまで一瞬で思いつくとは思わなかったぞ!!

 そして今度は出席簿が飛んできた、勿論避けたが。

 

・―・―・―・―・―・―・―・

 

「倉持 霞だ。用事があって1週間ほど居なかったが……別に仲良くしてくれなくても良い。お前らに興味はないから」

 

 オルコットさんと、倉持の技術者との対決から一日明けた今日。SHRでこのクラスに転入生がやって来るということで、その転入生を待っていたわけだがやって来たのは、昨日二試合目に対戦したあの倉持技研の技術者だった。

 案の定、倉持技研の技術者……倉持 霞は開口一番から周囲に毒づき、あからさまにクラスメートを拒絶する。

 

「なに?アイツ」

「織斑くんとオルコットさんに勝ったから調子乗ってるんじゃないの?」

「キモー」

 

 俺とオルコットさんに勝った実力者とは言え、倉持の態度は人を不愉快にするものであり、周りのクラスメートもその態度に対して、当然の態度をとる。俺も正直に言うと、倉持の態度は気にいらなければ仲良くするつもりのない相手と、仲良くするつもりはない。

 

「もう少しマトモな自己紹介をしろ」

 

 何かデジャヴのようなものを感じたが、気のせいだろう。倉持の態度は千冬姉も気に入らなかったようで、倉持に注意をする。その注意が倉持も気に入らなかったようで、舌打ちをし千冬姉を鋭い目で睨み付ける。

 ……そんな恐ろしいことをやってのけるとは、倉持の怖いもの知らずに度肝を抜く。

 

「あー……苗字で分かる通り倉持技研の御令嬢だが、近寄ってきても専用機は渡さないからそのつもりで。あと、私は経験のない処女だ」

 

 怖いもの知らずどころの話じゃ無かった……倉持はトンでもない爆弾を投下しやがった!転入初日に……しかも初の顔合わせでカミングアウトするような内容じゃねぇ!ぶっちゃけにも限度があるだろ!?女子の言う台詞じゃねぇよ!

 まだ、15歳とは言え俺も全く知識が無いわけではない。倉持の発言の意図は不明だが、言葉の意味を知っている俺の顔は赤らみ、ひきつっていることだろう。それは俺だけでなく、周りの皆も同様であった。特に様子が顕著なのはオルコットさんと箒だった。

 オルコットさんは淑女としてダラダラと何か喚いており、箒のほうは顔をこれ以上なく真っ赤に染め上げ、頭から煙を出している……脳の許容範囲を越えたのだろう。

 更に驚くべきことに、あの千冬姉も動揺の色を隠せていなかったのだ。冷静沈着な千冬姉が、倉持の発言に照れていたのだ!あり得ない……あの千冬姉が……千冬姉にも初なところがあったのか……知らなかった。

 

「織斑千冬、アンタまだ経験なかったのか?」

 

 そんな俺達の様子を見て、ほくそ笑みを浮かべる倉持は又もやトンでもない威力の爆弾を投げ付けやがった!よりによって千冬姉にその矛先を向けるなんて自殺行為だぞ!?

 とはいいつつも、クラスメート全員で千冬姉に顔を向けた。……皆内心気になっていたみたいだ。俺はと言うと、たった一人の身内とは言え全ての事情を知っているわけでもなく、気になったりもするのだが何とも言えない複雑な感情から、千冬姉を直視できない。

 すると、パリンと小さい音だが何かが割れる音がした。気になって音の方向を見てみると、窓ガラスに小さな穴が出来ておりその場所が、倉持のすぐ後ろの窓ガラスであったため、千冬姉が耐えきれずに何かしたのだろう。……てか、窓ガラスって穴があくモノだったか?

 

「姦通と貫通を掛けたのか?」

 

 倉持……頼むからもう爆弾発言は止してくれ……女子がそんなことを言うのは見るに耐えない。ましてや、今はまだ午前中で登校したばかりだ。

 

「織斑千冬ってブラコンとかって聞いたけど……他の男にヤッてもらって無いのって弟に捧げるためか?」

 

 恐らく人生の中で、これ程の威力の爆弾発言を俺は聞いたことがないだろう。核爆弾規模のダメージを誇るモノを止めと言わんばかりに投下しやがった……それも本人達がいる前で堂々とだ。……それより、何で千冬姉は固まっているだけで反応しないんだ?えっ?何でだ?こう言う時って俺はどんな顔をしたら良いんだ?

 

「そ、それでは倉持さんは窓側の列の一番後ろの席になります」

 

 山田先生……貴女は救世主だ。この重い空気の中で、SHRを続行してくれて……千冬姉のフリーズは当分治らないな。……この後始末どうしてくれるんだ倉持。

 散々爆弾を投下した張本人は、何食わぬ顔でさっさと席に着いてしまった。顔がこのやり取りに飽きたと物語っていた。

 

「じ、自己紹介も終わったことなので、昨日の対戦の結果のクラス代表を発表します」

 

 顔を真っ赤にしながらも、必死にSHRを継続する山田先生と比べ俺達はそんな気でいられなかった。倉持の態度と爆弾発言により、クラスメート全員が混乱していた。オルコットさんでさえ、黙り混んでしまったのだ。

元凶は既に寝ているし……

 

「クラス代表は織斑君に決定しました」

 

 ………………はぁっ?声には出さずに心の中で叫ぶ。二敗もしておいて何で俺がクラス代表に選ばれているんだ?オルコットさんはどうしたんだ?理由を本人に聞こうにもそんな状態ではなかったので、山田先生に理由を聞くことにした。

 

「どうして、俺がクラス代表なんですか?」

「えっとですね、理由はわからないですがオルコットさんが辞退したからです」

 

 辞退?あのオルコットさんが?どういった風の吹き回しなんだ?。……しかし、本当の理由は本人しか分からないため、もう少し時間を置いてから聞こう。

 

「それでは、これでSHRを終わります。一時限目からはISの実習なので皆さんグラウンドに集合してください」

 

 ……やっと終わった。ここまで長く感じるSHRはこれが初であって、これで最期にしてもらいたい。……こんな気分でISの実習かよ……気が乗らねぇ……倉持起きねぇし。

 

・―・―・―・―・―・―・―・

 

 理不尽だ……実習の時間になっても寝ていた倉持を起こしたら、グーパンチが飛んできた。不機嫌そうに目を覚まし、不機嫌そうに一人グラウンドに行ってしまったのだ……そして今も、一人クラスの輪から外れグラウンドの隅っこで突っ立っている。

 朝の自己紹介でも初対面時でも、他人を見下し仲良くするつもりの無い態度を取っていたが、こうもあからさまだと逆に可哀想になってきた。仕方なく声を掛けることにした。

 

「倉持……何で一人でいるんだ?朝の態度を謝ってクラスの輪の中に入れよ。今からそんな生活していたら折角の学園生活がつまらないだろ?」

「…………朝の態度を謝るつもりもなければ、学園を楽しみに転入してきたわけでもない。私としてはお前たちなのどどうでもいい存在だ」

 

 口を開けば毒を吐く。倉持の容姿と合わさっての毒舌は一部の男子からの受けは良さそうだが、ノーマルな俺にしてみれば、癇に障る。

 

「私に構っている暇があったら、実習の時間を一秒でも多く使ってISの操縦の練習でもしたらどうだ?」

 

 ダメだ。これは梃子でも動かすことが出来ないな。諦めた俺は分かったよと一言いい、皆が集まっているところに戻っていった。

 

「織斑君、倉持さんなんてほっときなよ」

「皆に構って欲しいから、あんな態度とっているだけだよ」

 

 いや、あの態度はそんな幼稚な考えからの態度ではないな。本気で俺達と関わりをもつ気がないようだ。だけど、ほっとくこともできない。何とかしてせめて、クラスに溶け込めるようにはなってもらいたい。でないと、クラスの空気が悪いままだからな。

 

「よし、今からISの操縦実習を始める。先ず見本として、専用機持ちのオルコットと織斑。ISを展開して飛んでみろ」

 

 どうやら千冬姉はフリーズから回復したようだ。回復と言うよりは、アレを忘却させたという方が正しいかもな。アレは俺としても黒歴史として忘れ去りたい。

 ぼやぼやしていたら、オルコットさんは一瞬でISを展開させ、さっさと飛び上がっていってしまった。俺も続こうとするのだが、白式が展開されない。

 

「何をしている織斑。熟練者は展開に1秒と掛からないぞ」

 

 千冬姉から叱責が飛んでくるが、どんな風に展開したら良いか分からない。そんな俺を遠くから倉持が見つめ、確証は無いが鼻で笑っているように見えた。

 

「来い、白式」

 

 またバカにされたと頭にきたため、声を強めにして白式の名前を口に出して呼んでみた。すると、呼び出しに応じたのか白式が装着された。

 

「よし、飛べ織斑、オルコット」

 

 イメージを働かせ、白式を勢いよく飛翔させるがオルコットさんのいる位置に届くことはなかった。いざ、真上に向かって全力で飛ぶとなるとかなり難しくなってくるな。

 

「何をしている織斑。スペック上では白式の方が出力は上だぞ」

 

 そんなことを言われても、まだ白式を思うように扱えないんだよ。普通に飛んだりすることは出来るようになったけど、技術面を求められても要求には答えられない。

 

「落ち着いてください一夏さん。コツは自分のイメージを掴むことです。自分に馴染むようなイメージを働かせればコツは掴めます」

 

 自分のイメージを掴むねぇ……両手を広げて鳥のように飛ぶ感じかな?それ以外イメージが湧いてこない。そもそもどうやって飛んでいるんだISって?それよりも一夏さん?!何か呼び方変わってないか?

 

「決闘を行った者同士で、普通とは違う関係になったのを機に呼び方を変えてみたのですけど、お気に召さなかったですか?」

「オルコットさんからそう呼ばれて、なんか違和感があっただけだよ」

「一夏さん。一夏さんもわたくしを呼ぶときは、セシリアで宜しいですわよ」

「分かったよセシリア」

 

 互いに名前で呼び合う……友人関係になった証しでもあるな。これが学生生活の一つの楽しみでもあるから倉持にもこの楽しさが分かればいいんだけどな。

 

「ところで、セシリアはどんな感じで飛んでいるんだ?」

 

 只の興味本意と、代表候補生の方法を参考にすれば上手くなりそうな気がする。

 

「うーん、そうですわね……先ずISの浮遊の根本ともなるPICの基礎理論を理解してから「ごめん、やっぱり無しで」

 

 ……前言撤回。エリート過ぎて全く参考になりそうにない。なんだよ、PICの基礎理論を理解するって……凡人は凡人らしく地道に反復練習を積み重ねていくしかないようだ。

 

「よし、二人とも次は降下からの停止をやってみろ。地面から10cmを目標に行え」

 

 地面から10cm?!うちの担任様は無理難題を仰るようだ。10cmって細かすぎて目視じゃ測れねぇよ!?失敗したら地面と正面衝突するじゃないか!

 

「ではお先に失礼しますわ」

「嘘ぉ!?」

 

 セシリアは何の躊躇いもなく急降下していった。あのスピードで地面から10cm以内に止まることが出来るのかよ。固唾を飲みながらセシリアの動作を注視する。

 

「よし、ぴったり10cmだな」

 

 いとも簡単に成功させやがった……えぇい!俺のクラスメートは化け物か!?普通出来ねぇだろ!イメージがどうとかの次元の話じゃなくなってる……

 

「よし、次は織斑の番だ」

 

 無理無理無理。100%失敗すると宣言できる。これで俺も成功できたら奇跡だ。

 

「何をしている早くしろ」

 

 えぇい!なるようになってしまえ!こうなったらとことんやってやるさ!先ずはセシリアのように急降下をして…………

 ここで俺は自分の過ち……失敗に気付く。……そう言えば俺止まり方知らなかった……

 だか、時すでに遅し。白式はどんどん加速していき、地面との距離がみるみると縮まっていく……それより何で加速しているんだ?

 

「やべぇ!ぶつかる!」

 

 加速も止められなければ、急降下も止めることは出来ない。俺は両手を顔の前で組み、激突に備えた。案の定白式は地面と正面衝突し、グラウンドに大きなクレーターを作ることとなった。クレーターを作った俺は頭を下に、足を上にひっくり返った状態となっていた。

 ISじゃなければ、のどかな学園内が血に染まっていたところだ……スプラッタとか笑えない。

 

「情けないな一夏」

「まだまだ訓練が必要ですわね」

 

 クレーターの上から、同級生二人に哀れみの目で見られ色々と恥ずかしい思いをしてしまった。

 

「馬鹿者が……織斑今日中にグラウンド元に戻しておけよ」

 

 お約束の担任様からの罰を頂きました。……これだけのクレーターを一日で元通りにしろとか、鬼過ぎる。人手が何人か欲しいところだ。そこで、俺は頼みの綱である二人に期待の眼差しで見つめる。

 

「自業自得だ」

「頑張って下さいね」

 

 俺の期待とは裏腹に同級生は冷たかった。しぶしぶ俺は昼休みと放課後を使い、グラウンドを一人寂しく元に戻すのであった。

 

……絶対に倉持にバカにされそうだ。

 

・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

「織斑君クラス代表就任おめでとう!」

 

 沢山のクラッカーの音とクラスメートの拍手に包まれる食堂。グラウンドの埋め立て終了後に、俺の代表就任祝いのパーティーをすることになったらしい。俺としては体がヘトヘトだったのだが、折角のクラスメートとの、祭り行事に主役が参加しないわけにもいかずないわけで、悲鳴を上げる体に鞭を打って参加した。

 

「なんか、盛大だな」

 

 会場は学園の食堂を借りたらしく、食堂の殆どのテーブルがお菓子とジュースで埋め尽くされていた。なんか、他クラスの生徒もいるみたいで就任祝いと言うよりは普通の打ち上げみたいになっている。

 

「あら、こういったことはお嫌いなのですか?」

「疲労が……」

 

 セシリアはジュースの入ったグラスを片手に、隣の席へと腰をかけた。セシリアは貴族だからこういったことには慣れっこのようだな。貴族達の社交界と違うのは、皆ワイワイガヤガヤとやりたい放題なところだな。

 

「倉持さんはいらしてないのですか?」

「そう言えば姿を見ないな……」

 

 誘われていない……わけではないと思うのだが、辺りを見渡しても倉持らしき人物は見当たらない。皆と友好を深めるチャンスだというのに勿体ないな……

 

「いらしてないのでしたら仕方ありませんわね」

 

 何故かガッカリしたような表情をして、溜め息をつくセシリア。何かあったのか?

 

「倉持が気になるのか?」

 

 デリカシーがないと思われるかもしれないが、気になったことは直ぐに聞いてしまう質なのでな。まぁ、俺としても色々と倉持は気になったりもしている。あいつ初っぱなからああいった態度をとるから、絶対にクラスに馴染めそうにないな。苛められたりはしないと思うが……多分。

 

「一夏さんは倉持さんのことをどう思っていられますか?」

「どうって……何か不思議で人の機嫌を損ねるのが上手い奴かな?」

 

 第一印象からくる倉持の人物像である。間違ってはいないはすだ。

 

「わたくしは、初めて手も足も出ないまま蹂躙されてしましたわ。その時彼女の目はつまらない物を見るような目でしたわ」

 

 うわぁ、そんな目で見ていたのか。観客席からでは分からないなそれは。そんな目をすらばそりゃあ、セシリアから良い印象は持たれないよな。

 

「屈辱的でしたわ。しかし、それもこれもわたくしの実力不足のせいでもあります。慢心からの驕りがわたくしをあのような目に合わせたのですわ」

 

 あれ?何か思っていたのと違う感じがする……悪い印象ではなく寧ろ、セシリアは倉持を評価しているのか?

 

「それをあの方はわたくしに気付かせてくれました。出来れば今日この機会にお礼と、倉持さんを目標とすることを伝えようかと思っていたのですが……」

 

 凄いポジティブだな。その前向き根性羨ましいよ。俺なんかが倉持からそんな目で見られたら心が折れて、自信喪失どころじゃ済まないかも……てか、倉持にそんなこと伝えても軽くあしらわれるか、無視されそうだな。

 ……うわぁ、凄いイメージが涌いてくる。気持ちを伝えた瞬間に「あっそ」って言う倉持の憎たらしい姿が……

 

「多分伝えても明日には忘れているだろうな」

「そうでしょうか?」

 

 うん。そうに決まっている。

 

「はぁーい、お二人さん仲睦まじいところ悪いけど、ちょっと取材に付き合って貰えない?」

 

 なんか、眼鏡を掛けカメラを構えた人が近付いてきた。取材?女の人の腕を見ると新聞部と書かれた腕章を巻いていた。何だ、部活の活動か。別に問題はないな。

 

「大丈夫ですよ」

「わたくしも構いませんわ」

「ありがとうね。私は新聞部の黛薫子。早速だけど織斑君には代表就任に際しての意気込みを話して貰えるかな?」

 

 意気込みか……うーん、難しいことは言えないけど就任したのだから最後まで全力でやりきるしかないよな。中途半端にするのは、セシリアやクラスの皆にも悪いからな。

 

「自分のできる限りの力をもって、与えられたことを全力でこなすことですね。」

「成る程ねぇ。じゃあ次はセシリアさんの番だね。セシリアさんは織斑君と戦ってみてどう思ったのかな?」

「一夏さんは、とてもISを動かして間もないとは思えないセンスの持ち主ですわ。訓練を重ねれば、国家代表にもなれる器と可能性を秘めていますわ」

「おっとぉ!代表候補生からのお墨付きを頂きましたよ」

 

 セシリア……それは過大評価しすぎだろ……てかこの取材って絶対に新聞部の作成する校内新聞に掲載されるんだろ?そしたら全校に俺の評価がいきわってしまうんじゃねぇか!そんなことになったらこれ以上にプレッシャーがのし掛かってくる!

 

「中々良いネタを貰ったよ!有り難うね二人とも」

 

 無事に卒業できるのか俺は……

 

「じゃあ、最後に二人で手を取り合っている写真を一枚撮らせて貰ってもいいかな?」

 

 写真か……手を取り合うってことはセシリアと握手するってことだよな。なんか恥ずかしいな。手汗をかかないように気を付けないと。

 

「それでしたら、クラスの皆さん全員で写真を撮りませんか?」

 

 な、なんだってぇ!女子とツーショットでさえ、厳しい現実なのにクラス全員だと?俺一人に周り全員女子だと……?大丈夫か俺?緊張して倒れないか?

 

「賛成!」

 

 満場一致で賛成が可決されやがった……覚悟を決めるか。

 

「みんなー準備はいいかな?」

 

「「「「オッケーです!」」」」

 

 落ち着け俺……平常心を崩すな。笑顔だ笑顔。意識をせずにカメラだけを見ろ。そうすれば乗り切れるはずだ。

 

「じゃあ、撮るよ……ハイ、チーズ」

 

 この就任祝いで撮られた写真は、俺の一生のメモリアルとして俺の心のなかにも刻まれるだろう。なにせクラスの皆で撮った記念写真だからな……ただ一人のクラスメートを除いた写真だけどな……

 

「うーん……倉持霞ちゃんの取材もしたかったんだけど……居ないならしょうがないかな」

 

 写真を撮ったあと少しだけいた黛先輩はそう言って居なくなった。まぁ、記事になりそうな実力のあるやつを取材するのは新聞記者として当然か。

 

・―・―・―・―・―・―・―・

 

 時はすこし遡り放課後。私は生徒会庶務になった特典である第9整備室で朝一番のISの実習の授業の途中からすっぽかして月光の改修・調整を行っていた。

 受ける必要のない授業など受けても無駄だし、月光の改修と調整もまだまだ終わっていなかったしで授業に出ている暇はないのだ……

 

「よし、ようやくハード面の改修は終了。まだ銃火器の搭載は出来ていないが……まぁ、それは後付でどうにかなるしな」

 

 私は顔に付いている機械油を作業台の上に置いておいたタオルで拭う。タオルはもうすでに何度も汗と機械油を拭いていて汚れてはいるが、拭かないよりはマシだ。それにメカニックが汚いとか思っていたらISなどの整備など出来やしない。多少の汚れは気にしないのが整備兵として普通だ。

 そこにプシューと整備室のドアが開く音が聞こえた。あれ、ここは私の研究室になったんじゃなかったか……ああ、まだ張り紙も何もしてなかったな。入ってきてもしょうがないか。

 私はそう思いながら入ってきたやつを見る。内跳ねの水色の髪を持つ少女……簪だ。

 

「おお、簪じゃないか」

「え……霞?なんでここに居るの?」

「なんでって私もここの生徒だからだけどそれがどうした?」

「あ、そうだっけ……」

 

 忘れるなよ……ああ、そうそう……そう言えば……

 

「簪、打鉄弐式のコンソール出して~炸薬瞬間加速式大太刀を量子変換(インストール)するから」

「調整は終わったの?」

「ああ!終わったとも!それに鞘も作ったんだ!とんでもなく長い大太刀を一瞬で抜けるように機能を付加した『電磁加速式抜刀鞘』!これであなたも抜刀術が格段に上手くなる!!」

「相変わらず変態的なものを作ってるね……」

 

 簪ぃ!それは褒め言葉だね!褒め言葉なんだよね!?そう受け取るよ!

 

「さて……さっさとインストールしますか」

「あれ、ハイテンションモードは?」

「めんどくさくなったんでやめた」

 

 私は飽きるのが早いんだ。もちろん、ハマったことに関しては別だが……まぁ、それはそれ、これはこれだな。今話すことじゃない。

 あとなんかクラスでのキャラとここでのキャラが違うような……まぁ、どうでもいいやつらだしそうなるのも頷けるかな……某ノットイコールみたいな感じ?違うか。

 

「はい、打鉄弐式のコンソール」

「あいよ」

 

 私は空月に収納している十二天将を物質化(アンインストール)して打鉄弐式のコンソールから十二天将を量子変換する。物質化は速いが量子変換は長いんだよな……まぁ、この内に制御システムを組み上げるかな。

 必要の無くなった夜刀は空月に量子変換して月光にはないからそれの制御に当てていた部分を両腕の試式空孔理論放出機構『黒狐(こくこ)』の制御に当てる。指と一体になっている攻撃用の爪の部分にディラックの海を形成する装置を取り付けたので夜刀と同じ攻撃が武器を呼び出すこと無く出来るし、掌部分にディラックの海放射機能も搭載しているため防御にも放射して攻撃を無に還ることも出来る……が、まだマニュアルでの制御が難しくディラックの海の密度すらもコンマ単位では制御できない。だからそれを制御するための制御システムを組み上げる必要がある。

 

「そう言えば簪は何のために整備室に?」

「弐式の調整。春雷の連写性能向上と威力の低下をしたいと思って」

「荷電粒子砲の立つ瀬がないね……威力高いのに……」

「デリケートな武器だからこまめに見ていかないと」

 

 そうだよねぇ……電子を加速と集束を繰り返して撃ち出すのを一瞬でやるんだからデリケートなことこの上ないよねぇ……幾らクロック回路を使用してたってデリケートなことに変わりはないし……最悪衝撃受けて一瞬でおジャンだからな。怖い怖い……

 

「それよりそのIS何?」

 

 簪が私の後ろにある月光を指さしながら聞く。あ、簪には見せたことなかったっけ……

 

「空月……じゃないよね」

「これは月光だよ。空月の試作機構を改良したものを載せてるんだ。エネルギー効率は48%向上、攻撃力は……まぁ戦闘を考慮していない空月を比較には出来ないか……まぁ、空月のアップグレード版と考えてよ」

「でも、今空月のコンソール出したよね?」

「うっ……やっぱり気付くよね」

「そもそも馴染ませる期間がない」

 

 痛いところを突かれた……ISの整備を出来る分だけ困るというかなんというかね……うん、困る。

 

「スルーは「しないよ」ですよねぇ……」

 

 即答というか、言ってる途中で区切られた。助けてよ束もーん……

 

「さぁ、吐いて。吐かないと……」

「……吐かないと?」

「くすぐるよ?」

 

 て、手をワキワキさせながらのその笑みは怖すぎるよぉ!!ち、近づいてくるなぁ!!

 

「こ、降参!」

 

 私は速攻で両手を頭の上に上げながらそう叫んだ。くすぐりだけはほんとに勘弁!ほんとにダメなんだよぅ……

 

「じゃあ、話して」

「あい……」

 

 降参したのにまだ手をワキワキさせてる簪……いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁ!はーなーすーかーらー!!話すからお助けォォォォォォ!!

 

「慈悲はない」

「え……あっ!ちょっ!……ふ、ふひっ!フヒャヒャヒャヒャヒャァァァッ!!??」

「話す?」

「は……はなす!話すからぁ!く、くすぐり……ヒャァァァァァッ!!」

「分かった」

 

 ようやく開放してくれた簪。

 

「はぁ……はぁ……はぁ………………」

「早く」

「ちょ、ちょっと落ち着かせて……」

「ダメ」

 

 手ぇワキワキやぁァァァめェェェぇてぇェェェ!!

 

「た、束博士に貰いました!以上!」

「……………………」

「ヒィィィィィィィッ!!やっ、やめっ!ほんとにっ!」

 

 遊んでなんか居ないから!巫山戯てなんか居ないから!!

 

「……ホント?」

「ほ、ほんとだってっ!ヒャァァァァァァっ!!」

「分かった」

「はぁ……はぁ……はぁ………………死ぬかと思った」

 

 いや、もう、ほんとに、お巫山戯無しで……くすぐりはダメなのに……

 

・―・―・―・―・―・―・―・

 

 その後私と簪は適当なところで制御システムの組み上げと春雷の調整を切り上げ(制御システムはテキトー、春雷が適当)、夕食時だったため食堂にて夕食を一緒に摂っていた。

 簪はかき揚げうどん、私はきつねうどんだ。IS学園の油揚げは甘さがベストでとても美味しい。かき揚げはサクサクで素材の旨味が出ている……自分的には両方共一気に載せたかったのだが簪に「それは外道」と言われて渋々油揚げオンリーにした……今度簪が居ない時に実践しようと思う。あ、なんかかしわ天とかあったっけ……あれも美味しそうだったなぁ……

 

「霞って案外大食い?」

「さぁね。どうしてそう思った?」

「食べてる最中なのにメニュー見てたから」

「いや、美味しそうだなーと思っただけだからな?」

「でも結構食べるよね」

 

 そうかな?そこまで食べてる気はしないんだが……傍から見ればそう見えるかもしれないな。

 

「体重とか気にしないの?」

「体重?食べても太らない体質でさ。気にしたこと無いな」

 

 事実を言ったらなんかジト目でこっち見ながら唸られた……なんか怖い……

 

「大食いは乙女の天敵……」

「そこまでなのか……女子って怖いなぁ……」

 

 多分、どのみち気にしないだろうがな。

 そう言えば垣根の向こうが騒がしい。何かパーティーでも……ああ、織斑一夏のクラス代表就任パーティーをやっているんだったか……一応やるからとは言われたが参加する気が全くなかったので参加していない。そもそも、騒がしいのは嫌いなんだ……親が倉持のトップだからパーティーとかに行くんだが……他のIS企業の馬鹿共が私が中学生だから何か情報を漏らすとでも思ってよってきて周りがうるさくて仕方なかった……あれからまともにパーティーには参加していない。まぁ、参加していない理由としてドレス着るのが面倒だというのもあるが……まぁ、参加する気のないパーティーなぞ放っておくに限る。

 

「1組のみんな騒いでるけど参加しないの?」

「私があんな騒がしいところに突っ込むと思うか?」

「むしろ避けそう」

「よく解ってるじゃないか。さすが親友」

「私って……親友なのかな?」

「こんだけ親しいんだ。親友で良いだろ」

 

 友人と親友の分け方はよく分からないがな……まぁ、そう思ったらそれでいいだろう。

 

「あ、こんなところに居た!」

 

 突然そう言ったのは眼鏡掛けて手にカメラを持った女性。左腕には新聞部と書いてある腕章。リボンの色は黄色だから2年だろう。

 

「やぁ!私は新聞部部長の黛薫子。倉持霞ちゃんだよね?」

「新聞部が何用ですか?」

 

 新聞部部長が頭を掻きながら近づいてくる。

 

「いやー、織斑先生にタメ口を利くという噂のイギリス代表候補生と織斑一夏くんを倒したからアイツは誰だ!?的なことになってね?そのうち特集でも出すために取材を~と思いまして」

 

 ……要するに『取材させてくれ』ってことだな……まぁ、良いか。イヤダイヤダって言っていつまでも追いかけてもらっちゃ困るし……

 

「取材させてくれって事だろ?」

「話が早くて助かります」

 

 にしてもこの部長さん、下級生になんで敬語なんだ?

 

「1つ取材に移る前に聞いていいか?」

「何でしょう?」

「下級生に上級生が敬語ってどうなんだ?」

「それは記者精神ってところですよ。じゃ、取材に移ります……まず最初の質問、コレは一応の確認ね。名前は倉持霞で良いよね」

 

 それ以外にあったら困る。

 

「ああ、そうだ」

「じゃあ、次。倉持のご令嬢って本当?」

「事実だ。もうすでに技術主任を務めてる」

「へぇ、すごいですね。じゃあ、次……なんで織斑先生にタメ口で?」

 

 そんなの1つだろう。

 

「んー……なんか凄みを感じなかったから。畏怖すら抱かなかった」

「ほう、それはすごい……次、イギリス代表候補生を封殺したって本当?」

「事実だ」

 

 その後もそこそこの長さの取材を受けた。私の特集は記事を整理して纏めて纏めて出すそうだ……ISのことについて聞かれなかったのは……多分何かを察したのだろうな。あれだ、記者精神……多分踏み込んでいい所と悪いところを熟知してるんだ。

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