彼女(メカニック)は空を舞う   作:地雷伍長

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第11話

 私は第9アリーナの第1ピットで奴らの準備が終わるのを待っていた。

 説明は奴らがここに来た時にすぐに終わらせて震斬のセットアップもしてきた。その後は奴らがどれに乗るかなどのチーム編成だったから私は奴らのいる第2ピットから第1ピットに戻ってきた。

 戻ってくるとそこには織斑一夏やイギリス候補生、束博士の妹などそこそこの人数が集まっていた。どうやらやり過ぎないかの確認のためだそうでやりすぎていると判断した時には織斑一夏とイギリス候補生、その他借りることの出来た訓練機で止めに入るそうだ。

 

「倉持、重ねて言うが……」

「やり過ぎるなだろう?いい加減うざい、やりすぎればお前が止めに来るんだろ?何度も言うな」

 

 ここでオープンチャネルで奴らの声が聞こえてくる。

 

『もう後悔する準備は出来た?オジョウサマ』

『こっちはもういいから早くしてくれない?暇なんだけど』

『生徒会庶務になったからって調子こくなよ』

『これで負けたら私達のパシリな?何でも貢ぐんだ』

『勿論、お前の専用機もな』

 

 ギャハハハハハと下卑た笑い声を聞きながら私は答えた。

 

「良いよ、こっちは対価を要求はしないでやろう……強者だしな」

『てめぇ、マジでちょうし――』

 

 私は途中でオープンチャネルを切った。これ以上あの下衆共の声を聞く必要はない……いっその事トラウマ植え付けてこの学校やめさせるのが良いかもな。

 ショットガンの弾確認、スラッグ弾、散弾、フレシェット弾、榴散弾、行動阻害弾、シュレッター弾、ミニグレネード、訓練用ダミー弾よし。

 ライフルよし、ブレードよし、シールドよし……行けるな。

 私は両腕に日本製IS用ショットガン『藍鉄』を装備して打鉄の脚部をピットのカタパルトに接続してアリーナ内へと出た……と思えば即座に弾が放たれるが右3メートルも離れた場所を通り過ぎた……

 

「……へたくそ」

 

 藍鉄には片側10+1発のショットガンの弾が装填できるようになっており、今両手の藍鉄はフル装填、つまり22発装填済みだ。弾種はすべて榴散弾、12の子弾が収まっているショットシェルで子弾一つ一つが着弾の衝撃で炸裂するようになっているが瞬発信管から多種多様な信管への切り替えも可能な便利な弾だ。

 私はそれをまだ動いていない奴らに向けて両手交互に引き金を引こうとした時、

 

『おい!まだ試合開始とは――』

「先に撃ってきたのはテメェらだ、私としては撃たれた時点で試合開始だ」

 

 奴らからのオープンチャネルの声に短く答えると、私はあとの制止の声も聞かずに引き金を連続で引いた。

 連続で撃たれたシェルから放たれた子弾は弾の雨となって奴らに降り注いだ……が奴らにダメージは与えない。近接信管でダメージを与えない距離に設定し爆発の恐怖だけを奴らに与える。

 私は地上に降りると弾倉を交換し弾を再装填し、構えた。

 

「いつまでそうしているわけ?私の怒りは収まってないんだが」

 

 奴らはヨロヨロとこちらを向き武器を構えた。

 前衛は打鉄の震斬装備が2機に中衛ラファール・リヴァイヴ攻撃型換装装備『シルフィード』、後衛が威力高めのロングライフル装備のメイルシュトローム。リーダー格のやつはメイルシュトロームのやつで後方で踏ん反り返ってる……

 

「卑怯者め!」

「あ?先に手出したのはそっちだろ」

「あ、あれは水埜の……」

 

 奴らの間で謎の言い争いが始まったが……そんなことをやらせるつもりはない。

 私はスラスター全開にして一気に奴らのところまで接近し、13の子弾が入ったショットシェルを撃つ。今度は通常の散弾のため何機かに当たりシールドエネルギーを減らす。

 

「は、話してる時に……!」

「隙を見せたのはそっちだ、馬鹿」

 

 一気に敵の真ん中にまで入るとショットガンを拡張領域に収納し両手にダガーを展開し遠くのメイルシュトロームを除く回りにいる打鉄とラファール・リヴァイヴのスラスターと装甲内部にある脚部エネルギーバイパスを破壊する。

 

「「「「なっ!?」」」」

 

 私はスラスターと脚を潰され動けなくなった4機を蹴り、転ばせ行動不能にするとメイルシュトロームの方を向いた。ダガーを収納し再び両手にショットガンを展開する。ショットガンに装填している弾は右手が行動阻害弾、左手がスラッグ弾。

 行動阻害弾はトリモチとネットを併用した敵の行動を阻害させるだけの攻撃性能のない弾だ。

 

「さて水埜……だったか?」

「くっ!」

 

 破れかぶれにロングライフルで撃ってくるが私は難なくそれを避ける。長い銃身がどこを狙っているのか簡単に分かるしナガモノは扱いにくい……私が避けなくとも殆ど当たらないようだった。

 

「さぁて……私の努力の結晶を消した償いをして貰おう」

 

 私は左手のショットガンを水埜に向けて撃った。衝撃力の高いスラッグ弾のため一瞬動きが止まった瞬間に私は一気に接近し近づいた勢いを殺さず蹴り飛ばした。水埜が3メートルほど後退するが私は距離を開けずに接近し続けた。

 

「ガッ!?」

「ほれほれほれほれ、朝の勢いはどうした?私にISの操縦技術で勝てるんじゃなかったのか?」

「このっ!」

 

 水埜はロングライフルを右手で保持すると空いた左手で殴りかかってきたが、そんなものが当たるはずもなく私はそれを避けて更に蹴飛ばした。4メートル後退、壁まであと2メートルといったところまで来る。

 水埜はようやくロングライフルを捨ててブレードを展開した。今更すぎる……水埜はデタラメにそれを振るうがそんなものは掠りもする筈もなく左手のショットガンを手放しメイルシュトロームの手首を掴み無効化するとPICでその場で浮き上がり勢い付けることなく水埜にドロップキックを喰らわせた。

 ドロップキックを当てる直前に手を離したため水埜は更に後退し壁に叩き付けられた。

 

「うぐっ!」

 

 私は壁に叩き付けられた水埜に右手の行動阻害弾を装填したショットガンを水埜のメイルシュトロームの四肢に放ち、行動を出来ないようにした。

 

「ははっ、どうだ?手も足も出ないこのザマは?あー……朝なんて言ったんだっけなぁ?ほら、お前の口から言ってみろよ」

 

 水埜は喋らない。

 

「何だ?寝てるのか……」

 

 私は右手のショットガンの弾倉を入れ替えて新しい弾丸を装填する。装填したのは榴散弾、水埜を照準し1度引き金を引く。放たれたシェルから子弾が放たれエネルギーシールドに防がれると炸裂し操縦者に衝撃を与えた。

 

「ッ!?」

「よぉ、お目覚めか?クズ野郎」

 

 すごい形相で睨んでいるが……小学校の頃から虐められていた私にとっては普通の視線だ。不快に感じることもないしなにか特に思うこともない。

 

「クズはお前だ」

「ほう、どこが?」

「人を見下しているような、私達をなんとも思っていないようなその態度がだよ」

「そりゃ結構、見下しては居ないがお前たちのことはなんとも思わん……これで満足か?」

「はっ!満足だね。おい、やれ」

 

 私は背後から何か迫るのをハイパーセンサーで見て飛んだ。飛んだ足元を見れば爆炎で見えていないのか未だに私の居た場所……つまり水埜の場所に射撃が行われていた。

 

「(こりゃ滑稽だ)」

 

 ものの使い方も分からない奴らが武器を使うと仲間を撃つみたいだな……実に滑稽、呆れてものも言えない。

 そう眺めて20秒程経った。ようやく射撃をとめて爆炎が晴れると気を失い失禁している水埜が見えた。

 

「み、水埜!?」

「あ、あいつは!?」

「どこに行った!」

 

 私はハイパーセンサーを使わずに目で見つけようとしている奴らの後ろに降り立つと全員連続で1回づつ蹴飛ばした。

 

「よぅ、味方の事も考えず撃ちまくった馬鹿共」

「こ、このっ!」

 

 ラファール・リヴァイヴの奴がマシンガンでこちらを撃とうとするが引き金を引くのをやめて銃を下ろした。気づくのが遅え……いまさら仲間が居ることに気がついたのか……

 

「どうだ?仲間を撃った感覚は……あいつはこの後お前らにどんな態度で接するんだろうな?」

 

 私は左手に展開した訓練用ダミー弾を装填したショットガンを一番近くに居たラファール・リヴァイヴを纏ったやつの視界から銃口を覗きこむようにショットガンを向けた。

 

「ひっ!」

「なぁ、あいつはこれ以上の恐怖を味わったんだ、恐ろしいだろ?」

 

 私は引き金を引いた。発射されたダミー弾は絶対防御に阻まれるが衝撃と目の前で銃を撃たれる恐怖で失神しついでに失禁していた。

 私はもう一人のラファール・リヴァイヴを纏っている奴に1人目と同じようにショットガンを向けた。

 

「ほら、仲間なんだから恐怖は共有しなきゃな?」

「ヒィッ!?」

「そう思わないか?」

 

 引き金を引いた。失神、失禁……緩いなおい。それとも当たり前の事なのだろうか……?

 次に打鉄・震斬を纏ったやつ。こいつはまだ戦うつもりがあるようでガトリングガンを構えていた。

 

「このっ!」

 

 ガトリングから弾が大量に吐き出されるが右手のスラッグ弾の装填されたショットガンでガトリングガンを撃ち抜き使えなくした。

 

「私の作ったものを満足に使えずに私に勝とうなんて甘かったろ?」

 

 私は面倒くさくなってスラッグ弾が装填されたショットガンで前の二人と同じように引き金を引いた。今度は前の2人以上の恐怖だったのか白目を剥いて失禁し気絶した。

 最後の1人……こいつは動かない……狸寝入りか。私は連続でそいつに向けてショットガンを撃った。

 

「ヒィィィィッ!?」

「よう、狸寝入りは気持ちよかったか?」

「え、ええ……まぁ……」

「仲間が怖い思いをしてる中のんきに寝ていたのか……」

 

ジャキリ

 

 最後の1人の真ん前にほぼゼロ距離で銃口を向ける。

 

「まぁ、意味ないと思うがこれに懲りたらもう私の研究物をいじくったりするんじゃねえ……いいな?」

「は、はい」

「じゃあ、死ね」

「えっ?」

 

 私は撃った。迷うことなく戸惑うことなく、躊躇することなく引き金を引き撃った。勿論絶対防御に防がれたがこいつも失禁し失神。恥じらいってものはないのかね……こいつら。

 さて……あとどれくらい私のことを嫌ってる奴は居るのかな?一体何グループほどだろうか……まぁ、別に虐められることに何も感じることも思うこともないからどうでも良いか。

 

・―・―・―・―・―・―・―・

 

 これ以上は不味い!

 

 気が付けば言葉よりも先に体が動いていた。隣にいたセシリアや他の誰よりも早く俺は、観客席から身を乗り出し白式を展開。倉持が止めを刺そうとするところに割って入るために最大出力で白式を飛ばす。

 

間に合え!

 

 誰の目から見ても模擬戦の結果は倉持の圧勝であることは明らかである。問題はその先で、倉持は完全に戦意を失っている相手に対して容赦のない一撃を与えようとしている。幾ら相手が自分を苛めていたとはいえ、些か度が過ぎる。

 

 後一歩でのところで、倉持は最後の一発の引き金を引き、相手はその場に仰向けに倒れ込んでしまった。俺の思い虚しく、無情な結末を迎えアリーナに静寂が訪れた。俺は今にも倉持に掴み掛かりそうな勢いで目の前に降り立った。

 

「何のようだ?と聞いたところで目的はわかっている。一足遅かったな」

 

 そんな白々しい倉持の態度に更に怒りが込み上げてきた。相手は苛めをしていたとはいえ、物事には限度というものがある。そんなことの解らない倉持ではないはず。なのに平然としている倉持が俺は気に食わなかった。

 

「お前!自分が何をしたのかわかっているのか!」

「私の邪魔をしたクズ共を叩きのめしただけだが?」

「相手が自分を苛めていた酷い奴だからひどい目に合わせてもいいのかよ!」

 

 倉持のしたことは倉持を苛めていた五人組と何ら変わらない行為だ。いや、ある意味ではそれよりも質が悪いかもしれない。確信犯なのがそれをより一層際立てさせる。

 

「ほぉ?お前はこんなクズ共の肩を持つのか?私はただ降りかかる火の粉を振り払っただけなのだが?」

「やり過ぎなんだよ!お前のやったことは只の『暴力』だ!苛めをしていたこの五人と一緒だ!」

「それが力の本質だ。綺麗事を並べて事実から目を背けているだけだろお前は」

 

 力の本質は確かにそうかもしれない。だが、だからと言ってその本質を真に受けて恰も自分は間違ってないと正当化するのが正しいのか?俺の言っていることは確かに綺麗事だ。だが、綺麗事だからなんだというんだ?

 

「目を背けるつもりはねぇよ。それでも俺はお前のやったことは間違いだと思っている!物事を何でも事実だけを受け入れていけばいいのか?違うだろ!何のために人間は考えることができるんだよ。事実から新しいことを得るために考える力があるんじゃないのか!何でもかんでも受け入れるだけだとそれで終わりだろ!」

 

 俺も全てを否定するわけではない。俺は自分が正しいと思ったことを素直に表現し、伝えるだけだ。勿論間違っていることはきちんと間違っていると自分の考えは持つ。考えも無しの否定はただの出任せでしかないからな。

 

「ならお前は何をもって私のことを間違っていると判断した?その根拠は?」

 

 倉持は真剣に俺の顔を見据え、俺からの解答を待つ。このときの倉持は人をおちょくるようなふざけた態度ではなく、正真正銘の真剣そのものだ。目に肝が据わっている。それだけ見れば人の真剣が伝わってくる。

 

「さっきもいった通り人間には考える力がある。それは暴力とは別の力だ。倉持を苛めていた五人は決して許されることではない。だが、この五人も同じ人間だ。人間誰しも過ちは犯す。その経験から人は後悔し、学習し、変わっていくことができる。人は必ず変わることができる。例え今がどうしようもない人だとしても、わかり合える機会が巡ってくる。なのにお前はその芽を摘むようなことをしたんだ。だから俺はお前の行動が間違っていると判断したんだ」

 

 人は可能性に満ちている。変幻自在に人の可能性は無限大である。希望的観測であるが、希望なくして人は生きてはいけない。誰しも生きていく上で希望は持っている。倉持とこの五人だって、今の両者の立場は問題であるが、それで終わりではなくその先がある。どれだけ時間が掛かっても許し合える日がきっとくるはずだ。

 

 その可能性を倉持は自ら断ち切るようなことをしたのだ。その行動が自らの首を絞めているというのに。俺は倉持は好きではない。だが、苦しむような姿は見たくはない。だから倉持にそのことを理解してもらいたいだけだ。

 

・―・―・―・―・―・―・―・

 

 報復が終わった直後に織斑一夏がこちらに来て色々と言ってきたが……私の思ったことを言わせて貰うと『認識が楽観的すぎる』というところだ。まぁ、そんなこと私には関係ないのだが。

 恐らくではあるが私に対する虐めはこれから更にエスカレートしていくことだろう。幸い……というかそもそも自分の研究物以外にまともな興味を抱いていないため虐めなどどこ吹く風とでもいうように私は居るのだろうが……私に友好的な奴らが大変だろう。

 私が苦とも思っていないのに世話をされても鬱陶しい……虐めが続き友好的な奴らが動くようであればしっかりと言ったほうが良いかも知れんな……

 

「はぁ………………」

 

 私はエネルギーシールドによってその先へは行けないアリーナから見える空を眺めた。

 雲がポツンポツンと浮かぶ青い空はとても美しかったが太陽の光は私には眩しすぎる……太陽を見なければISの皮膜装甲で何とも無いのだが……早くハイパーセンサーと皮膜装甲を常時使用できる空月を作らねば……

 

「どうしたんだ?溜め息吐いて」

「別に、なんでもない」

 

 私は織斑一夏の心配を他所にアリーナのピットに戻り使用申請したISの整備を始めた。必要最低限しか壊していないため一部ユニットごとの交換で済むからさほど時間は掛からないはずだ。

 

「手伝う?」

 

 そう後ろから声を掛けてきたのは簪がいた。その後ろには袖の部分がダボダボの制服を着たのほほんとしたやつ……たしか布仏 本音がいた。生徒会書記、仕事をしない生徒会役員。生徒会のムードメーカー的な位置づけで整備科を目指しているらしい。

 

「わたしも手伝うよ~」

「……簪、本音の整備技術は?」

「普通よりかなり高い……かな?」

「二人共頼む」

 

 簪と布仏本音は頷いて

 

「分かった」

「了解したのだ~くらもー」

 

 簪はしっかりと、布仏の方は間延びした声で謎の名前(?)を挙げながら。

 

「布仏本音」

「本音でいいよ~?なに~?」

「『くらもー』とはなんだ」

「ほえ?」

 

 本音は首を横にコテンと傾げた。

 

「くらもーはくらもーだよ?」

「……詳しく」

「倉持だから~くらもー」

 

 要は私のあだ名だったようだ。私と認識できればいいか。

 

「くらみーが良かった?」

「……それで頼むくらもーだと語呂悪い」

「了解したのだ!くらみー」

 

 こうして友人(?)が1人増えたような気がした。

 ……あれ友達ってどうやって作るんだっけ……久しく人との関わりが無かったからな……そもそも人間関係の必要のないレベルだったからな……

 

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