彼女(メカニック)は空を舞う   作:地雷伍長

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第01話

「うーん……どうしたものかなぁ……」

 

 私は悩んでいた。

 悩んでいる内容は新式瞬間加速器(クイックブースター)のについてだった。

 現状使われているのは瞬時加速(イグニッション・ブースト)の技術を応用したものだったのだがあれでは溜めがあって連続で使用するのに不向きだったのだ。何も大出力のものを延々と出せる奴が欲しいわけではない。瞬間的に連続でパパッと出せればそれでいいのだ……だが、既存のブースター理論ではダメなのだろうか……

 ダメだ、どうにも思いつかん……こんな時はアーマード・コアをやろう……それが良い。

 そんな訳で私はゲーム機(S◯NYが作ったPS28……通称『ニヤ』)の電源を入れてテレビを付けた。映ったのは『初の男性IS適合者発見!!』というニュースだった。

 私はアーマード・コアをやるのを一旦止めて、このニュースを見ることにした。

 聞けばこの男性『織斑 一夏』は男でありながらISを動かすことが出来てしまったというのだ……ふむ……ブリュンヒルデ(世界最強)『織斑 千冬』の弟君かこれは不幸なのか幸運なのか微妙なところだな……。

 ニュースを見ていると彼は今後どうなるのかという話になった。ニュース内では『おそらくIS学園に入学することになるだろう』とのお話……そりゃそうか、そんな大事なものを実験体にする訳はないし、だからといってどこかに放って置く訳にも行かない……となれば必然的に治外法権である超国家的なIS教育機関『IS学園』に入学させるしかない……女子高に男一人を放り入れるとは政府も悪魔だな、可哀想に織斑弟……

 

「おお!そうだ!」

 

 ビビっと来たぞ!新式瞬間加速器の構造!なんで早く気づかないんだ私の馬鹿!

 あるじゃないか!瞬間的に爆発的にものを押し出して、すっ飛ばすモノが!!銃だ、炸薬だ、火薬だ!炸薬、火薬の爆発的エネルギーをコの字の一方のみ開放されている開口部に向かって放出させれば爆発的な瞬間推力は得られるじゃないか!

 耐久度的な問題?そんなもの作ってるうちにどうとでもなる!早く試さなければ……アイデアは鮮度が命なんだ、無理なのでは思い始める前にまずは実験だ!

 

・―・―・―・―・―・―・―・

 

 そう言えば自分もIS学園に入学することになったんだよ。

 え?何があったのかって?知らないよ……ただお父さんがね『IS学園でISについて学んで来い』ってさ。ああ、そう言えば『織斑一夏とも話してくると良い』とかって言ってたっけ……まぁ、いっか……それよりまずは彼女の機体を仕上げなきゃ。

 

「コア適正は問題ないみたいだね……フランスのラファールを元に全距離対応型に仕上げるのか……」

「あの…………」

「ああ、気にしないで。これは私の仕事……いや、趣味でね……未完成の物は完成させたくなるのさ」

 

 展開されている打鉄に似た新しい彼女のISを弄りながら私は言っていく。

 

「私としても、あれは仕方が無いとしか言い様がない。なんと言ったって1人だけの逸材だ、それが倉持に任されたとなれば彼のが優先されるのは当然だ」

「ならなんで?」

「あの機体は弄りがいがない。ブレオン機なんて速度特化が良いところで他のところなんて精々ブースターのエネルギー消費を抑える程度の調整だけさ。だったら私はISを組んでたほうが百倍マシだ」

 

 現に私は機体を半年に1回は組み直している。細かい調整なんてちょこっと動かして降りて調整すれば1日で終わる。実に詰まらない。

 

「じゃあ、私の機体は?」

「面白いね……ワクワクするよ。6機8門のミサイルポッド……それらを制御するマルチロックオンシステム……超振動薙刀に連射式荷電粒子砲……その他にも付け足したいものはたっくさんある……」

 

 特に、ミサイルポッドの増設に火力特化荷電粒子砲、超微細超振動日本刀型ブレード、弓型曲射エネルギー砲、炸薬式瞬間加速器(クイックボマー)……考えれば考える程載せたいものはいくらでも!

 

「そう……なんだ……」

「だから心配しなくてもだいじょーぶ!さ、作ろう更識さんの相棒を!」

「簪でいい……」

「そう?じゃ、やるよ簪!」

 

 私は工具という工具を指の間に挟んで彼女、更識簪の専用機『打鉄・弐式』の装甲を外していき内装をむき出しにさせる。

 

「やっぱり何も出来てないなぁ……」

 

 内装どころかエネルギーの経路も出来てない……これは楽しみだ!

 

「あの……」

「簪はマルチロックオンシステムをお願い。本体諸々は私がやる」

「……分かりました」

 

 さぁさぁ!本領発揮だね!本体構築は私の一番の得意分野だし!

 

・―・―・―・―・―・―・―・

 

 それから約2ヶ月間……私と簪は寝る間も惜しんで打鉄・弐式の構築を行った。そのお陰で打鉄・弐式は9割方完成した。残った1割はあくまでも調整分なのでIS学園で簪が調整すれば問題無い……まず完成したと言って問題ない。それに、追加分の武器……9機10門増設ミサイルポッド『漣(さざなみ)』、火力特化荷電粒子砲『天照(あまてらす)』超微細超振動日本刀型ブレード『素戔嗚(すさのお)』、弓型曲射エネルギー砲『月詠(つくよみ)』、肩部装備炸薬式瞬間加速器、そして私の最新新式装備……炸薬式瞬間加速器を応用した自動加速機能付きの刀身が3.6メートルもある大太刀『十二天将』まで搭載した倉持きっての火力を誇る機体だ。

 

「色々追加したのに機動性が上がってる?」

「スラスターを弄らせて貰ったよ。機動性が売りの打鉄・弐式を殺しちゃ本末転倒だしね」

 

 具体的に何をしたのかといえば、既存の方法ではない完全に新規の構造を使用した。その機構を利用したスラスターは私の専用機に使われているものなのだが……案外いい感じに仕上がったので採用することとなった。倉持の次世代量産機にもその推進機能は使われることが決定している。

 では何をしたのか……それは『Inertia Storage Converter』……慣性蓄積変換器、略して『ISC』。PICの機能を応用して機体の制御に使用された慣性を蓄積し、方向を変換することでISの推力に転換する誰も考えなかったモノ。しかも、機体が高速で動けば動くほど操縦者を守るために蓄積される慣性は多くなるため実質、初速さえあればPIC制御エネルギーのみで高速機動が可能になるのだ。

 

「すごい……推力が増えてるのにエネルギー消費が少ない……しかも、最高速度が分からないって……」

「そりゃそうさ!既存の推力方式じゃないもの」

「既存の方式じゃない?」

「今説明するね~」

 

 私はどんなものを積んだのかを簪に説明した。

 

「それって……」

「空を飛ぶためにあるだけの、推力方式さ。既存の推力方式とは全く別の、完全新機軸の推力システム……名付けて『慣性推力システム』……英訳して略してITS!」

 

 英訳『Inertia Thrust System』その頭文字が機能名だ。

 瞬時加速(イグニッションブースト)を使った後はその速度なんか超えたまま飛ぶことが出来る画期的な新式推力方式……これなら、空を目指すことも、自在に自在の速度で飛ぶのだって夢じゃない……飛ぶことの一点に集中すれば光速で飛ぶことだって可能なのかもしれない……そんな夢の様な幾多もの可能性を持った推力はここに完成したんだ。イグニッションブーストは無用の長物と化すのだ。

 さて……IS学園に入学したら私のIS……空月を空を飛ぶためのものにしよう……もしかしたら……もしかしたら宇宙(そら)まで行けるかもしれない……ISを開発した篠ノ之 束の夢の様に……

 

「さて……完成したことだし……一回ヤろうか」

「え……なにをやるの?」

「慣らしと性能実証。全てを見せてよね」

 

・―・―・―・―・―・―・―・

 

 やって来たは倉持が作ったものを試すのに使うアリーナ。お父さんは『別に島ごと買い取っても良かったのだがな』とか言ってたけど……うん、確かに島ごと買い取っても良かったかもね。

 

「さて……準備はいい?」

 

 私は簪に声を掛ける。お互いにもう既にISは展開している……簪は完成したばかりの打鉄弐式、私は少し前に自分で組み上げたIS『空月』を……簪の打鉄弐式のスペックは自分が手掛けているから分かっているし、自分の空月も自分でほぼ0から組み上げたのだからよっく分かっている。

 恐らく私は簪に勝てないだろう。自分の機体は所詮機動性だけが第3世代で兵装や防御に関しては第2世代。大して簪は研究された次世代の技術を存分に利用した全てにおいて第3世代……どちらが勝つかなど目に見えている。

 準備は良いか……などと勝てるかのように上から目線だが、戦闘用に作られていない……競技用に作られていないこの機体では簪の競技用の機体に勝てるわけはない。武装にFCS等は全て後付……IS学園に行くのなら競技用にすべきなんだろうな……まぁ、いまさら何か言ったって始まらないし……私は武器を展開した。

 展開したのは簪の打鉄弐式に積んだ炸薬式瞬間加速機能付大太刀『十二天将』の別ヴァージョンその名は『備前』……私は自分が形状をデザインした銃を撃つよりも自分が斬るためのデザインをした刀剣類を振るうほうが好きだ。

 

「……十二天将?」

「これは備前さ。かつて備前と言われた刀鍛冶で有名な国……まぁ、名前だけだけどね」

 

 刀の作り方はひと通り通して作った自信作。大量に作れるものではないからまだ簪の十二天将と私の備前のみだけど……切れ味は十分で加速機能も申し分ないほどだ……下手をすればエネルギー不要で絶対防御を発動しかねない……居合と途中の炸薬加速でその速度は音速を軽く超えるだろうし。

 私はそれを両手で持って切っ先を下に構える。本来であれば重い大太刀を下に構えるのは愚策も愚策だが……この備前はそれを覆す機能がある。

 簪も武器を展開する……取り出したのは十二天将……良いよ、相手になってあげよう。

 お互いに構え、そして何の合図もなく同時に動き出した。

 

「ヤアァァァァァァァ!」

「……………………ッ!」

 

 簪は叫びながら、私は無言で、簪は私から見て左上段から振り下ろし、私は右下段から振り上げた。簪は振るう途中で5基搭載している炸薬式瞬間加速器全てを1度に使用したが、私は手元から順番に使用した。するとどうなるか……簪は上段からの斬り上げで重力加速も使っていたが簪の十二天将は簪の手元から弾かれアリーナの壁に突き刺さった。対して私の備前は簪の顎下で止まっている……これは……危なかった……まさか、絶対防御すら斬り裂くとは……

 私は備前を地面に突き刺し簪に確認した。

 

「簪、怪我は?」

「だ、大丈夫……」

 

 見ればISスーツの胸元に縦線が入っていた……

 

「胸元のそれは?」

「怪我はないみたい……紙一重……」

「良かったぁ……」

 

 私はへたり込んで地面に刺した突き刺した備前を見る。

 もしかしたら私は名刀を作ってしまったのかもしれない……使い方によっては絶対防御すら斬り裂く万斬の刀……ジャンル『炸薬瞬間加速式大太刀』ISの、新たな世界……私は最近様々なものを作りすぎている気がする。勿論危ないと感じれば倉持の御蔵入倉庫にぶち込んでいるが……この炸薬瞬間加速式大太刀は調整しなければならない……

 

「簪」

「ど、どうしたの?」

「私、入学するの遅くなるから……あと、簪の十二天将を『物理変換(アンインストール)』しておいて……理由は分かるよね」

「うん……」

 

 まさか何の手応えも無しに絶対防御が斬れるとは……不意に簪の顔を見る。顔には不安や安堵といったいくつかの表情が含まれていた……そしてふと喉元を流れる赤い筋。

 

「簪、怪我はない?」

「?さっきも言った通りどこも痛くないよ?」

「じゃあ、ここ流れてるのは?」

 

 私は自分の喉元を指しながら簪に言った。

 簪は喉に手をやり指を見た。そこに付いているのは血、血液……

 

「あれ?痛くないのに……」

「……まずは手当をしよう……うん、そうしよう」

 

 そうして私は思い知った。物事限度があるもんだよね……と……

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