……私は現在、IS学園の第3アリーナという場所に居ます……何故か?IS学園入学のための試験だそうです。いくらIS企業推薦枠といえど実技だけはやって貰うとの事……
「にしても困りましたねぇ……」
何に困っているのか?ソレは私の展開しているISにあります。
今展開しているISは私の新概念実証機の『空月』です。この子実は兵装載せてないんですよね……あ、いや載せてないわけじゃないんだ……使おうにも使えないんでした……新しく設計した武装『炸薬瞬間加速式大太刀』は簪との模擬戦にて威力過多だというのが実証されて事実上使用不可能なんです。しかもあれを振るうのには炸薬瞬間加速があるのを前提に設計してるので炸薬加速無いとなると……両腕でも振るえるかどうか……まぁ、そもそも大太刀を片手保持って発想がオカシイんですが炸薬加速あればなんとかなるだろうと思ったんです……。
「待たせたな」
どうやら模擬戦の相手が来たようです……って織斑千冬かよ……使っているISは打鉄と言えど世界最強が相手とかフザケてるだろ……学長私をIS学園に入れるつもりが無いと見えるな……
「模擬戦であるにも関わらず武装を展開してないが良いのか?」
「生憎武装が威力過多で調整してない状態でね……絶対防御切り裂いても良いってんなら使おうかな?」
「ほう?世界最強にタメ口とは……」
世界最強?知ったことかいな……まぁ、剣の腕はかなりだしやるときゃやんなきゃね。
「知った事か。で?良いのか?ダメなのか?」
「それでIS学園に入学できなかった等と言われては困るのでな……使え……だが、本気で来いよ」
「へーい」
私は右手に空月唯一の武装、炸薬瞬間加速式大太刀『備前』を展開する。千冬の右手には打鉄通常装備のブレード……
「太刀に対して大太刀とは……」
「生憎これしか無いんだ」
「そうか……では始めよう」
織斑千冬は瞬時加速で一気に距離を詰めて攻撃してきたが……甘いね、スイーツタルトより甘いよ。
私は肩部に搭載された炸薬式瞬間加速器(クイックボマー)を連続で吹かして千冬の横を通り後ろに回り込む……千冬には炸薬式瞬間加速器の爆炎を浴びて少しダメージを負ったようだ。ま、損害軽微にも満たないほどのダメージだけどね。
「ほう……私の後ろを取るか」
「世界最強ってこんなものか?」
私は嘲るようにそう言った。
瞬間、横に一閃……私は脚部にも搭載している炸薬式瞬間加速器(クイックボマー)とITSで通常のスラスターよりも速い速度で横一閃の攻撃を避けるように飛んだ。
その横一閃の後、織斑千冬の纏う空気が変わった……目が据わり、構えも一番最初とはかなり違う……なんだい、まだ本気じゃなかったんかい……随分と手を抜くなぁ世界最強。一応距離を取る……ヤな予感がした。
「ほう……?そこまで言うのなら見せてやろう……世界最強の実力をな」
そして気付けば千冬は目の前、左下からの逆袈裟か……備前はリーチ長いからここまで近くに来られるとキッツいんだよな……しかも最大威力を発揮できるのが3.6メートル……ま、ここは……躱すのに集中しますかね……
私は後ろに下がったが千冬のブレードの切っ先が胸を掠る……なんとか直撃は防いだ……だがさすがにこれはマズイ……シールドエネルギーそこそこ持って行きやがった……バケモノか?
「右の得物が泣くな……それでは……」
「ハッ!そりゃどうかな?」
距離を取りながら備前を構える……さて……加速開始。
私はITSと瞬時加速、炸薬式瞬間加速器(クイックボマー)を使用してトップスピードのその先へ向かう……その速度実に秒速4キロ……実にマッハ11.6……本来、この速度は機動性特化のISでもPICによる操縦者保護機能でもどうにもならないが、この空月は違う。PICを応用発展したISCにその蓄積慣性を加速に使うITS……これにより操縦者保護機能性能は跳ね上がりこの速度でも問題ない程となった。
「なんだ!?その速度は!?」
「空月の全力ってところだ」
千冬は私の姿を捉えようとするが捉えようにも捉えられないらしく見当違いな場所を見ながら話していた……
「こんな感じに撹乱した後直線軌道にシフトして絶対防御を斬り裂く刀で突っ込みますが……死ぬ用意は出来てますか?」
「何だと?」
「言ったよな?絶対防御を斬り裂くと……その性能はこの速度でないと出ないものなんかじゃない、打鉄同士による戦闘速度でも絶対防御を斬り裂く……じゃあ、今の速度が加わったらどうなる?」
「舐めているのか?」
「ま、良いでしょう……ISだって力ですからね……判断誤りゃ……」
私は速度そのまま千冬に向けての直線軌道にシフトして備前の炸薬加速開始……千冬の右3.6メートル離れて斬り裂くモーション……そして停止……
「――死ぬよ?」
……ん?オカシイな……二の腕に浅い切り傷を付けたと思ったんだが……付いてないな……避けたのか……多少認識を変える必要があるな。
「殺すんじゃなかったのか?」
「それでもしアンタが避けらんなかったら私は世界最強の殺人者だな?国家がいくつ潰せるのやら」
「狂っているな」
「私に言わせてもらえば、狂っているのは人類全てだ」
備前を横に払う。それだけの動作なのにアリーナの地面には切り傷が付く。
「さてと……これってまだやらないといけないんですか?」
もう止めたいんだけど……
「どちらかのシールドエネルギーが0にならなければ終わらんな」
「あ~……メンドクサ」
私は炸薬加速で千冬に斬りかかるが……
「………………ッ!」
千冬はソレを両腕で保持したブレードで受け止める。
「お?マジで何も喋らないってことはほんとに本気かな?」
「………………」
「それとも、しゃべる暇もないほど切迫した状況なのかなぁ?」
「ッ!」
更に加速機構で強く押されたのを強引に払う形で千冬はなんとか攻撃を凌ぐが……この備前、通常の刀とは思わないでほしいな……
私は刃を返して加速機構を下に向けると後ろ向きで切り上げを放った。
「ングゥッ……!」
「弱いぞ世界最強……ぬるま湯に浸かり過ぎたんじゃないのか?こんなひよっこに負けるとは……それとも、世界最強になれたのはアンタの専用機である暮桜とその武器である雪片のおかげだったとでも言い訳するか?」
「ッ!」
鋭い突き……だがその1撃には『心』がない……その攻撃は重くもなんともない。備前でなんの苦も無く弾き回し蹴りを放つ。
「クッ!」
それすらもギリギリで避けた千冬……はぁ、さっさと目を覚ましやがれ!世界最強の獣が!
「ッラァ!」
「ゴッフ……」
私は千冬の腹を蹴り飛ばし壁にぶつける。しかも炸薬式瞬間加速器(クイックボマー)とITSを使用した最速の蹴り……体にダメージは無くとも衝撃は加わるはずだ……そして気を失ったかのようにぐったりとアリーナの壁にへたり込んだ。
「……さっさと起きろ、世界最強……何時までぬるま湯に浸かっているつもりだ?男であるお前の弟の織斑一夏がISを動かした……テメェがこんな腑抜けじゃあ織斑一夏が人の思惑に振り回されるぞ」
その瞬間、千冬の装備している右腕のマニピュレータが動き、放してしまったブレードを掴み、一瞬でこちらの懐にまで飛び込む。
「ようやく復活か?ブリュンヒルデ」
「…………」
無言か……
「ウグッ……!」
先の千冬よりも速い横一閃が完全に決まる。そのお陰で9割あったシールドエネルギーが一気に1割まで減らされる。
バックスラスタで後退し、一度距離を取る。
「いんやぁ……やっぱし世界最強はこうでないとねぇ……」
もはや、まとってる雰囲気が違う……だって揺らめく陽炎が見えるもん……
「さて小娘。随分と甚振ってくれたな」
「さっさと起きないアンタが悪い」
「ほう、そうか」
備前を持ち上げすごい速度で斬り掛かってきた千冬のブレードを受け止める。
ブレードと備前がギャリギャリと嫌な音がする……しかもこっちが押されてるなぁ競技用じゃないし仕方が無いね、パワーについては……じょじょに下がってきてるし踏ん張っても押されていく……
「どうした?さっきの威勢の良さはどこへ行ったんだ?」
「あぁ~……メンドクサ……」
刃を横にむけて炸薬加速。パワーのない機体で強引にパワーを出してブレードを払って距離を取ろうとするが……
「……距離が取れない……」
ブレードの間合いから離れらんない……?再び斬撃、私は備前で鍔迫り合いにならないように払い、直後に刃を返して炸薬加速……余裕で避けられた……
「……メンドクサぁ……」
やる気が失せるな……適当に負けるか。ここまで引き出したんだし入学は確定でしょ?
「………………ッ!」
……ってマズ!考えてて周り見てなかった……直撃コース……避けられない!
ザシュッ!
これで模擬戦は終了した。
その後正式な入学決定が言い渡され、私は家に帰った。