彼女(メカニック)は空を舞う   作:地雷伍長

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第03話

 私が色々と試している最中、ドォン!という音とともに施設全体に衝撃が襲った。

 技術主任であるためそこまでここのことに精通しているわけではないが、ISを開発している場所ゆえ一種の軍事施設に近いので何が起こっているのか、被害状況などは今まで様々なものを計算していた端末で確認できる。

 どうやら何かあったのは試験用アリーナ……残念ながらカメラ類は衝撃によって全滅しているようで状況の確認ができない……メンドクサ……

 着ている服を引っ張って確認……うん、ISスーツは着てる。問題ない。

 私は立ち上がり白衣を着たままアリーナへ向かう。技術主任ではあるが一応、倉持の御令嬢で時期倉持社長なのだ。逃げることなど無いし、何かあったのならISで対処すればいい。

 アリーナに到着し、そこに入れば内装は派手にやられていてコードからは電気が走り、粉塵による煙が立ち込めていた。

 

「なんだこりゃ?」

 

 見た感じ襲撃だが……あの衝撃と音以降特に動きはない……もしかしたら襲撃以外の目的だろうか……まぁ、アリーナに入ってみれば分かるか。

 私はそう思いアリーナに入る。

 

「おいおいおいおいおいおいおい…………冗談だろ?」

 

 酷くアリーナは壊されていた……なに、ソレは問題ではない。では何が問題か……それはアリーナの中心に立っている人物が問題だ。

 

「やぁ!君かなぁ?あのPICを応用した推進機構を開発したのは?」

 

 ピンク色の髪の頭にメカニックなウサ耳、服装は胸元が大きく開いて谷間がよく見える青のドレスに白いエプロンの女性……とてもとても有名なIS開発者ご本人……篠ノ之束だった。

 

「PICを応用した推進機構……あれはまだ公表してないんですが」

「そんなのISを作った私には関係ないよん!ISのコアネットワークから各コアの事細かな状況状態などなどなどなど……そんなの全て束さんにお見通しなのさ!」

「案外どーでも良いですね。それで?なんだってこんなところに?」

「だから言ったじゃないか!PICを応用した推進機構を開発したのは誰かって」

「そりゃ、私ですけど……」

 

 そう言えば完成に至った新式推力機構を私の空月に搭載したんだよな……前に搭載したのは試作型でエネルギー消費が多かったから若干使いにくかったんだ。

 

「嘘じゃないよね?」

「何についての嘘かは知りませんが、そんなに気になるんならISにでも聞いたらどうですか?」

「じゃあ、IS展開して?」

 

 私は空月を展開する。どこもかしこも斜めの装甲で、全てが斜めで形成されているようなIS……全て私が設計し開発し載せた技術が搭載されている。

 例えばエネルギーバイパス……ISの量子変換技術を用いた量子遷移型(量子ジャンプ式)とすることで伝送による損失をほぼ0、伝送時間もほぼ0秒にするというものだ。

 次に駆動系……これは私の提唱した電磁式アクチュエーターによって作られている。どんなものかと言えば……リニアモーターカーの技術とISによって齎されたナノサイズ技術の応用だ。これにより物理的な抵抗はほぼゼロで後は10^(-24)、ヨクト秒単位で調整することでアクチュエーターの役割を果たすことに成功した。

 最後に推進系……これはPICを応用したISCを使用した慣性推進システム……英訳してさらに略してITS。説明は前にしたしから省略!

 束博士は展開した空月に手を触れて目を閉じた。そしてパチッと目を開くととてもキラキラした目でこちらを見た。

 

「かんっどうしたよ!」

「一体何に!?」

 

 いきなり感動したと言われても困る。つい突っ込んじゃったじゃないか……

 

「いやぁ~……居るんだね……自分の考えを超える天才が……」

「え?何?どういうことですか!?どういう意味ですか!?」

 

 束博士が言っていることをまともに理解できず柄にもなくオロオロとする私……だって束博士目から涙流してるんだもん……悲しさからくる涙ではなく嬉しさからくる涙なのは何となく分かる。だがいったい何が嬉しいんだ!?

 

「うん、束さんも分かるよ……君も自分で作ったものに対する重要さと凄さが分からないんだよね」

 

 何やら重い話をし始めそうな予感……私重い話苦手なんだけど……そしてこの場に誰一人として来ないのはなぜだ!?

 

「そう、私が作ったISもそうだったのさ……ISを完成させた私は自分がそんなに凄い物を作ったとは思わなかった……空を飛びたい……その一心で思い浮かぶアイデアを実現させては乗せて実現させては搭載させた……でも、発表したら何さ!空を飛ぶために作ったのに兵器に使うだって!?そんなの認められないよ!

 でも、世界は私の思ったようには進まなかった……宇宙開発のためにISを研究するところはどんどん減って今じゃ殆どのところは空を飛ぶことも宇宙開発もしようとはしてない……宇宙を成層圏で終わらせることは出来なかったのさ」

 

 束博士のとても悲痛な声を聞いた気がする……彼女の夢は途中で壊れてしまったのだ。その夢まであと一歩といったところで落とされたのだろう……そしてそんな時に私が現れた。空を飛ぶための推進機構を開発しISに搭載させた私が……

 

「そうだったんですか」

「理解してもらえた?」

「とてもとても悲痛な心の声を聞かせて貰いました」

「そう……良かったぁ……親友でさえも理解せず世界最強なんてものになってしまったけど……私はこれでこれからもやっていける気がするよ!」

 

 世界最強……織斑千冬か……親友といえるのか?それは……まぁ、それはともかくとして……

 

「頑張って下さいね」

 

 私はそう言ってふと空を見上げた……雲ひとつ無い晴天の空……そして降ってくる黒いナニカ……ハイパーセンサーで照合……中国第3世代『甲龍(シェンロン)』、フランス第2世代『ラファール・リヴァイヴ』、イギリス第3世代『ティアーズ』、イタリア第3世代『テンペスタⅢ』、アメリカ第3世代『ファング・クエイク』……まだまだ居るな……目的は束博士確保か……?どこもこぞって最新鋭機を投入しやがって……

 私は拡張領域から調整を加えていない炸薬瞬間加速式大太刀を右手に備前、左手に十二天将を展開する。これからテストしながら調整を加えるつもりだったが、だからと言って適当な場所に置いておく訳にはいかず、結果私の空月に仕舞っていたものだ。まさか役に立つとは思いもよらなかった。

 束博士はどこかに縛られる存在ではない……彼女は自由な存在であるべきなのだ……

 

「逃げて下さい」

「私には君の行動を見るべき義務があるんだよ……同じ天才として」

「……そうですか」

 

 私は束博士に声を大にして言いたい……『私は天才などではない』と……でもなぜか言えなかった……理由は分からない、でも言ってはいけない気がした。

 

「そこをどけ、倉持パイロット」

「篠ノ之束は国際指名手配されている」

「我々は彼女を捕らえなければならない」

「どかなければ実力行使も躊躇わないぞ」

 

 ……イラッときた……

 

「そこをどけ、一研究員。篠ノ之束は保護しなければならない人類の資産だ。そのために貴様のような下っ端が立ちはだかるべきではない。最後通告だそこをどけ」

「知った事か」

 

 私の口からドスの利いた声が出る。

 随分と舐められたものだな……お前らは揃いも揃って日本人の恐ろしさが分かっていない。それに奴らは恐らく高々研究所が作った実験機程度にしか空月を認識してない……日本の恐ろしさを教えてやろう。

 

「武器を構えろ」

 

 最後通告だと言ったにも関わらず武器を構えない奴らに私はそう言って3秒待った。そして3秒たった瞬間、機体の推進システムで突発加速……速度は反比例するように一瞬で加速、そして通りぬけざまにフランスのラファールを左の十二天将の最大加速で斬り裂く。その後、推進システムで急停止、奴らの方を向いた。

 

「さてと……最後通告だ。ラファールの奴みたくなりたくなかったら速攻でここから去れ。篠ノ之束は何かに囚われ行動を強制される必要性はない。直ちに去る意思が見れないのであれば直ちに実力行使に入る!」

 

 ラファールのパイロットは左腕半ばから切られていた……血はなんとか止まっているようだが操縦者自身は気を失って倒れていた……操縦者安全機能のおかげだろう。

 全員は最後通告だと言ったにも関わらず一切去る意思を見せず、武器すら構えた。

 

「諒解した。通告はした、実力行使に入る」

 

 備前と十二天将を構えて束博士を捕らえに来た奴らへと吶喊する。様々な銃器などで攻撃してくるがシールドエネルギーと機体本体の須臾式繊維装甲の前に全て弾かれる。

 機体の装甲に使っている須臾式繊維装甲は分子を10^(-15)のフェムト加工して織り込んだ硬式繊維を幾重にも重ねた剛性と柔性を持ち合わせた新しい装甲だ。コストは果てしなく高く技術も大量に必要になるがそれに見合った防御力と軽量さはとても魅力的だ。

 

「なんだ?銃弾が弾かれてるぞ!」

 

 さて……降って湧いたこの耐久テスト……存分に活用させてもらう。

 調整を加えていないと言った炸薬瞬間加速式大太刀はあくまで威力面の調整は加えていないだけで後は炸薬加速器の数と炸薬量の調整だけで済むものにまでしていたのだ。

 後はどこからの速度で絶対防御が斬れてどこまでの速度で絶対防御が斬れないのかを試すだけだったのだが……迂闊に全力で振るえない分その閾値の割り出しには時間がかかると見込んでいたがこのタイミングなら全力でも構わないだろう。

 まずは先の再度の確認のための全力のラファール斬り……それは何の手応えもなく絶対防御を切断した。

 次、炸薬量3/4でティアーズに向けて再度全力、結果は多少の手応えはあったものの絶対防御を切断。

 次、炸薬瞬間加速器を5つから4つに変更し炸薬最大でテンペスタⅢ……ってこいつ鍔迫り合いかよ……くっそ……面倒くさいな……まぁ、良い。鍔迫り合い中に加速器点火、加速で相手の剣を払い左の十二天将で本体を斬り裂く……絶対防御は切断。

 次、加速器そのままに炸薬量半分で甲龍……こいつもパワー型か!まったく、こっちはテクニック側でスピード型よりもパワー無いってのに……しゃあなし、手元から順に点火し先まで炸薬させている間に手元のを再装填、そして点火……敵を払って、右の備前で斬り裂く……手応えかなり大きく絶対防御はなんとか切り裂いた。

 次……………………

 

・―・―・―・―・―・―・―・

 

 ようやく奴らが撤退し残っているのは奴らとの戦闘で残った戦闘の痕……それは弾痕であったり切り裂いた痕であったりだ……片付かが面倒だな……アリーナも大破どころか全損したし……機能回復にどんだけ時間が掛かることやら……暫くはアリーナで実験は出来ないな……これなら島1つ買ったほうが早いか……実験用の自然を再現したメガフロートを構築するのも良いかもな。

 金は……私の開発した新技術幾つか公開すればどうにかなるだろう……父さんが了承するか少し不安だけど……

 まぁ、この戦闘で炸薬瞬間加速式大太刀のデータは揃ったし後はリミッターを取り付けるだけだね……いやぁ……強襲さま様だね。

 てか、気付けば束博士居ないし……あの人どこ行ったんだ……私の行動を同じ天才として見ておく必要がある、か……まるで世に言われる天才が天才じゃないみたいな言い方だな。

 

「♪私は思想家だ、自分さえも破壊できる

 私は殺戮者だ、レイヴン

 空駆る者に触れ、その意思を感じる

 私を支配してくれ、共に戦おう

 

 私は思想家だ、自分さえも破壊できる

 私は殺戮者だ、レイヴン

 空駆る者に触れ、その意思を感じる

 私を支配してくれ、共に戦おう

 

 机上の空論は愛と共に永遠となり

 深く思索する貴方を愛しく思う

 この場所を包む静寂を抜け出し

 無傷の子どもたちがプログラムに帰する

 

 机上の空論は愛と共に永遠となり

 深く思索する貴方を愛しく思う

 この場所を包む静寂を抜け出し

 無傷の子どもたちがプログラムに帰する♪」

 

 この歌は……ACfAの『thinker』か……なんとも悲しい曲を歌うな……束博士は……

 束博士はアリーナの残骸の積み上がった頂上でそれを歌っていた……なんだろう……とても様になっている……

 

「終わった?」

「ええ、貴方を追うものは消えましたよ……無理に引き止めてすいません」

「別に良いよ」

 

 博士はケタケタと笑う。

 

「君にはこれが必要かもね」

 

 博士は突然に何かをこちらに投げた。

 私はそれを危うく受け止めた。それは球体で鈍い輝きを放っていた……これは……

 

「私の技術の結晶、ISコアさ」

「なんで私に?」

「IS学園に行くんでしょ?なら君の空月じゃ足りないでしょ?」

 

 この人はよく分かっている……空月は競技用ではない、ただの概念実証機だ。それが意味するのは一重に性能の低さだ……全てが実験段階のものであるから性能は低い……その完成版がいくら性能が高くとも実験段階のの物は低い……それではIS学園では通用しないと言っているのだ。

 

「有り難く受け取っておきます」

「うん!そうするといいよ!」

 

 束博士は残骸の頂上から飛び降りると私にこう言ってから居なくなった。

 

「君は……絶望しないでね……この世界に……」

 

・―・―・―・―・―・―・―・

 

 さて……なんやかんやあって、手の中にある鈍い光を放つ球体……

 

「ISコア……」

 

 私はコアを見ながら呟いた。

 

「気まま過ぎるでしょう……」

 

 私はISコアを手に持ちながらそう呟いた。

 

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