空に憧れた。だから翼が生えた。 作:匿名
初投稿らしいです……。
□【
今日も今日とて、レベル上げ!
初ログインからリアルで1週間が経過した。
こちらの世界では3週間にあたるだろう。
毎日、それこそ生理現象と筋トレ以外はずっとコッチで活動している。睡眠すらもコッチで取れば問題ないことが分かったので、一日21時間近くはしている計算になる。
おかげで世間一般の立派なゲーム廃人になってしまった。
楽しいのだから仕方ない。
再ログインを済ませた後、僕はデスペナ中に調べたジョブに就いた。
【
理由としてはチュートリアルの時に適当に選んだ武器が槍だった、というのもあるが一番の理由はリーチが長く、投げやすいというのが挙げられる。
見ての通り、僕は翼を使って空に浮くことができる。
高度を上げすぎると襲われるらしいので、低空飛行ではあるが、それでも相手の攻撃が届かない位置から一方的に攻撃できるのが素晴らしいの一言。
魔法職という選択もあったが、〈エンブリオ〉のステータス補正やスキルの観点から除外した。
僕の〈エンブリオ〉【飛翼連理 ジズ】
ステータス補正はAGIに特化して、少しだけENDにも入る。スキルも僕のAGIを参照して性能が変わってくる。
何より、飛行状態の移動速度が完全AGI依存なのだ。
僕の目標は、遥か上空を誰にも邪魔されず謳歌すること。その為にもAGIは必須だった。
ある程度、AGIが伸びる物理職でジョブ埋めれたら、魔法職にも手を広げてもいいかもしれないが、今はまだその時ではない。
ということで、この3週間をみっちり使い、STRとAGIが伸びやすい【槍士】と槍士系統の下級派生職である【投槍士】のレベルをカンストまで持っていった。
【投槍士】は槍を投げる際に補正が掛かるジョブだ。
投げた後の回収や武器の補充からあまり就く人はいないらしいが、僕なら敵の攻撃を掻い潜りながら回収出来る。
【投槍士】に就いていても槍系統の技なら使えたので、あまり苦労なくレベルを上げることができたのも大きかった。
2つの下級職をカンストまで上げた今、僕の合計レベルは100だ!
そして、僕が今何をしているのか?
もちろん、転職だ。
次のジョブを探しているのさ。
下級職が2つ埋まり、ある程度の方向性も決まってきたので、ここからは次に就くジョブを吟味してもいいかもしれない。そう思ったんだ。
そういう訳で使うのがコレ!
「【適職診断カタログ】〜」
…………はい。
何でも、コレを使う時の様式美らしい。
いま、大衆食堂でカタログを取り出したんだけど、僕の声につられて視線を向けてきた人は、手に持ってるカタログを見て『あぁ、そういうことね』みたいな頷きをして、注目を外してきたんだ。
ちょっと恥ずかしかった。
〈マスター〉来訪記念とか何とかで、お値段が比較的安かったので購入してみた。
そして取り出した【適職診断カタログ】を使い、かれこれ5分ほど経過したタイミングでようやく合ったジョブが見つかった。
【
ステータスの比重がAGIに傾く槍士系統の上級職だね。
【適職診断カタログ】は就職条件を記載してくれるほど、便利ではないがオススメしてくるということは満たしている、またはすぐにでも満たせるということ。
〈エンブリオ〉の相性的にもグッドだから、【疾風槍士】に就きますかね。
◇◇◇
食事を済ませ、槍士ギルドにある槍士系統のクリスタルで就けるジョブを確認したところ、しっかりと表示されていた。
既に条件は満たしていたようだ。
詳細を見てみると、一定以上のモンスターを槍士系統のスキルを使って討伐することと、一定以上のAGIを持つことらしい。
モンスターの討伐は、この3週間で問題ないくらいには狩ったので大丈夫。一定以上のAGIは、今の僕では無理かもだけど、飛行時なら超えていた。
僕の〈エンブリオ〉が第二形態に進化していたからだ。
いや、してなくても超えてたかな?
進化に際して、スキルの文面が若干変わったのだ。
《飛翔》Lv.2:
飛行時、30分間AGIを3倍にする。
※発動中HP.MP.SPの最大値が常時10%削られる。
※クールタイム10分
アクティブスキル
効果が強くなったが、デメリットも発生した。
確かに+100は今後あってもなくても関係ない状態になりそうなので、今から消えても問題ない。
それにパッシブからアクティブへ変わったが、効果時間が長いからあまり気にしなくても大丈夫。
MP.SPはいいとしてHPの最大値が削られるのはちょっと気になるけど、当たらなければどうということはない理論で行きましょうか。
2つの槍士系統下級職のAGIの伸びは合計300ぐらい。
〈エンブリオ〉のステータス補正で600になる。
それが飛行状態なら3倍で1800だ。
下級職2つと考えたら、凄まじい数値だろう。
というより、〈エンブリオ〉がズルすぎる。他の〈マスター〉たちも何かしらの性能で、ティアンの方々よりも強くなっていくのだろうね。
条件の方は1000という閾値を超えたことで満たせたようだ。良かった良かった。
早速、就いてみるとしよう。
ジョブクリスタルに触れて、ウィンドウに表示されている【疾風槍士】を選択。決定!
よーし、転職終わり。今日もリアルでやることなんてないから、全力でレベル上げに勤しむぞ!
◇◇◇
□【疾風槍士】シエル・ガブリ
…………1レベルあたりのAGIの上昇値が凄すぎる。
〈エンブリオ〉のステータス補正も相まって、異次元の上昇をみせている。
僕は【疾風槍士】に転職してから、ひたすらにレベル上げを続けていた。
何かしらイベントが起こることはなく、上からチクチクとモンスターを狩るだけの作業ゲーに近い感覚になっていた。
しかし、AGIが面白いくらい伸びてくれるので、それがモチベーションになって、苦痛なく続けられている。
リアルで1週間経ち、僕のメインジョブのレベルはカンスト間際まで行った。
そしたら【疾風槍士】の奥義と呼ばれる固有スキルが生えたんだ。
奥義とは上級職が持つ必殺技みたいなものらしい。
これが、まぁ凄い。
《ストーム・スティンガー》という名前で、スキル効果で加速しながら超音速の一撃を放つというものだった。
この奥義が生えて思ったのが、『そろそろ天空に挑戦できるのでは?』というものだった。
僕のAGIは飛行すれば、既に亜音速を超えている。音速にすらいずれ届くかもしれない。
街の散策も兼ねて情報収集していた時に、空を自由に動くなら少なくとも亜音速は必要だと聞いた。
だからこそ、このゲーム世界では航空技術が発達しなかったのだとか。
確かに、空という魔境で多くの人を運ぶ航空機を作るとなれば、ものすごく大変なのだろう。
けれど、僕一人が音速で空を飛ぶのは何ら問題ないというのも同時に分かった。
今の僕なら行ける。あの鳥に勝てる。
「だから、上空で待ってるんだけどねー」
かれこれ10分近く待ってるんだけど中々来ない。
初日よりかは高度を抑えているから、すぐに来てくれると思ったんだけど、予想が外れたよ。
でもどうするかなー。
このまま来るのを待つ? それとも違うことする?
僕はクルクル益体もなく、その場を回り続けていた。
『────KIIIIIAAAAAAAAAAAAAA』
「…………ん? なんか聞こえたな。《飛翔》」
考え事しながらだったので、うまく聞き取れなかった。
でも、こんな場所で聞こえる音の正体なんて簡単に予測できるぞ。ついでにスキルを発動させる。
「でも……何処だ?」
周囲を見渡しても空に動く影すらない。
下を見ても近くの地面には何もいない。
となってくると…………。
あっ、上か。
『KIIIIIAAAAAAAAAAAAAA!!!』
今度こそハッキリと聴こえた。
声の方向は…………上から。
声に合わせてさっと頭上に視線を向けると、そこには初日で見たような光景があった。
嘴を大きく開いた巨大な鳥──鳥の頭上に映る名は【クリムゾン・ロックバード】──がそこにいた。
構図で見れば軸が違うだけで、初日と同じ。
しかし、あの時の僕とは明確に違う。コレに対抗するステータスがある。
「危ない……っな!」
高いAGIで迫りくる怪鳥をするりと避ける。
…………うん、速度は問題ないね。
すれ違った怪鳥は、地面スレスレまで行ったかと思えば急旋回して、再びコチラへ向かってくる。
「危険なのは嘴と鉤爪だね」
よく観察してみると、猛禽類を思わせる鋭い武器と言っても過言ではない身体特徴を持つ相手。
代わりに、鳥類らしく防御力はそこまで高くなさそうだ。僕はSTRがAGIに比べると凄く低いからね、助かる。
昇ってくる怪鳥を同じように避けていく。
先の回避の影響か、嘴だけではなく鉤爪も使って僕を切り裂こうとしてきた。
まぁ、普通に避けてますけどね。
そして躱した後、その場に留まるのではなく、怪鳥の後ろを追い掛ける。
……AGIは僕が高いね、すぐに追いつける。
【ロックバード】はある程度まで上がった後、ゆっくりと下へと振り返った。僕と正面を向く形だ。
自身に追い縋るモノは初めてだったのか、ひどく驚いたモーションを取った。
その隙をついて、両手で構えた槍(新しく買った新武器)を飛行突進のままに、【ロックバード】の身体に突き刺した。
「ヨイショォォォ!!!!」
『KUEEEEEEEEE!?!?!?!?』
スキルによらない通常の攻撃だが、速度は重さと言うくらいには攻撃に影響はある。
僕の重たい一撃に、堪らず身体のバランスを崩す鳥。
槍を離すと同時に【ロックバード】は地面へと落下していく。
そんな墜落物を目で追いながら、【疾風槍士】の奥義の発動準備に入る。
体勢を変え、地面に向けて全力飛翔の構えをとる。
発動までのチャージ時間がたまったと同時に、僕はそのスキルを宣言する。
「《ストーム・スティンガー》ッ!!!!!」
落ち行く【ロックバード】へ向かって、全速力で突き進む。少しだけ距離が遠のいた筈の敵が、一瞬の内に目の前にいた。
(AGIの思考加速ないのか!?)
僕のAGIでは、【ロックバード】に近づく直前までの視界の動きを捉えられなかった。この距離を突っ込みながら使用したのは初めてだったから、少し驚いた。
だけど認識できてなくても、奥義はしっかりと敵を捉えた。
「堕ちるんだよっ!!!」
『KUAAAAAAAAAAAA!?!?!?!?』
叫びながら加速のままに、突き刺さった槍をしかと握り、効果が切れるまで進み続ける。
そして、当然ながら地面にぶつかる。
「……うぐっ」
『KIIIIIAAAAAAAAAAAAAA!?!?!?』
ドンッと強い衝撃が間に挟んだ【ロックバード】と槍を通じて僕に降りかかる。
今の反動でHPの3割が削れたよ。
クッション有りの僕でこれだけ削れたんだ。
下敷きになったコイツが無事で済むわけがない。
『KI……KIAA……A…………』
「……はぁ……はぁ……ふぅ」
もはや死に体になった【ロックバード】から起き上がり、息を整えながらゆっくりと離れる。
そして、改めて槍を片手で肩に担ぐように構える。
「……雪辱、これでチャラさ」
槍士系統で既にカンストさせた【投槍士】のスキルである、《ジャベリン》を発動し、勢いよく投げる。
投げられた槍は寸法違わず、倒れ伏す【ロックバード】の眉間に突き刺さる。
『………K…………I…A……』
眉間を穿たれた鳥は何かを言い残すことなく、そのまま沈黙する。
死んだモンスターは死体を残さず、光の塵へと変換されていく、と同時に代わりにと言わんばかりに、ドロップ品が鎮座する。
【クリムゾン・ロックバードの宝櫃】
しっかりとドロップアイテムになったね。
「……はぁ…………疲れた」
アイテムを回収して、僕は一息ついた。
戦闘自体は短かったけど、神経使ったなーって感覚。
精神的な疲労がどっと襲いかかってくる。
初日の雪辱を果たす事が出来たので、比較的満足!
でも、ちょっと休憩しようかな?
一旦、ログアウトしてご飯でも────
「むっ! 矮小な生物を発見しました、蹴散らします」
…………なんか、変なのに絡まれた。
形態ごとに上昇する倍率……盛りすぎたか?
まぁ、別にいいか。
〈エンブリオ〉の成長遅すぎィ!と思われたそこの君。
……正しいです。
デスペナしてるから遅くてもいいやろって、書いてる時は思ってたんだけど、原作読み直すと一か月もすれば第3形態にはいけるらしいんだ。
まぁ、成長は個人差があるので、気にしない方向で。
最後に絡んできたのは一体、誰アタンなんでしょうね?