空に憧れた。だから翼が生えた。   作:匿名

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20:00に前話が投稿されてます、まだの人そちらからどうぞ。

前回の続きですから、初投稿です!




ほら、変なもの食べたからお腹壊したんですよ

 

 

□【拳士】ベヘモット

 

 あの男は、いつか必ず、この手でしばく。

 

 そんな強い決意を宿したわたしは、改めて眼前にいる【闇竜王 ドラグダーク】を睥睨する。

 場所は怪獣形態になっているレヴィの肩。

 

『あの男をぶち殺すときは私も呼んでください。肉片一つも残しません』

『いつか成長したら、わたしたちで倒すよ』

 

 今回の敵は目の前にいる〈UBM〉だけど、将来的にはシエルを倒す。

 レヴィとそう誓う。

 

 ここ最近は、うちのレヴィが迷惑かけて申し訳ない気持ちもあったけど、今はもう無い。

 何故なら、ついさっき彼からやれって言われた作戦が頭おかしかったから。

 

 

「ベヘモット、小さいでしょう? だから【竜王】の口から中に入って、体内から攻撃すればいいんですよ!」

 

 

 こんなこと言われて、最初は本当に頭がおかしくなったのかと思ったけど、普通に元から頭がおかしかっただけだった。

 

 確かにわたしが就いている【拳士】は素手限定というハンデがあるけど、代わりに相手の防御力を無視した攻撃を出来るスキルがある。

 素手だから攻撃力自体は元から低い上に、更に威力落とされちゃうけど。

 

 多分普通に外から攻撃しても、ENDによらない竜鱗の固さに凌がれると判断して、体内から攻撃っていうのは理解できるけど納得できない。

 やるって言ったのわたしだから頑張るけど。

 

『それでシエルの予想…………合ってる?』

『癪ですがその通りです。羽トカゲの口に手を入れてみましたが、身体を覆っているアレが持つ不快な感触はありませんでした』

『そっか、合ってるんだ』

 

 レヴィは口に手を突っ込んだ影響で、片腕を食い千切られた。

 それでも平然としてるのは、やっぱり自分のことを最強だって思っているからなのかな。

 

 レヴィが腕を犠牲にしてでも調べてくれた情報を無駄にはしない。

 その為には、わたしが口から中に入るしかないんだけど…………。

  

 

『レヴィ。もう一回だけ、あいつの口を広げて』

『分かりました。何度でも抉じ開けます!』

 

 怪獣であるレヴィは、自身を上回るステータスを持つ相手に、一切怯むことなく掴みかかっていく。だけど、いくら勇猛でもステータスという絶対の数値は変わらない。

 時間が経てば剥がされてしまう。

 

 でも、わたしが欲しいのはこの一瞬だけ。

 

 【闇竜王】の噛み付きを、わざと腕で受け止めたレヴィは、喰われゆく腕を使って強引にその顎を開かせる。

 ギチギチという音が聞こえるほどに、力いっぱいに開かれた口。

 

『今ですっ! ベヘモット!』

『分かった』

 

 肩から半ば失われている腕を伝ってぴょんと跳び、口の中に入っていく。

 

 うへぇ、ネチョネチョしてて気持ち悪い。

 

 幸いにも、口内そして食道に当たる部分は、角張っていて足の踏み場や手の引っ掛かり場所があった。

 そこに両手足を挟ませ、どうするか考える。

 

『シエルから、なるべく重要器官に近い場所を攻撃しておいてほしいって言われたからそうするけど、どこがいいのかな?』

 

 突起に掴まりながら、声を出し頭を整理していく。

 

『まずは脳。この口から最も近いけど、多分硬い頭蓋骨に覆われてると思う。ここから防御無視をしても届くか疑問』

 

 一つ目は無し。

 

『次に喉。ドラゴンと言ったらブレスが代名詞、炎とか蓄えてる袋がある…………はず? というか、その袋破壊したら大爆発でわたしが死んじゃう』

 

 二つ目も無し。

 

『最後は心臓。このまま奥に進んで、それっぽい場所まで来たら攻撃する。これでいく』

 

 そう決めたわたしは、喉を通ってどんどんと奥へと駆け進んでいく。

 体格故に進みが遅い。今だけはこの小さな手足が妬ましい。

 

 表面のヌルヌルする突起物を使いながら、徐々に体内へと進んでいく。そして、それっぽい場所に着いた。

 

『多分、ここ?』

 

 スケールがでかすぎて分かりづらいけど、ここだってゲーム脳が叫んでる。

 わたしのゲーム勘はよくあたる。

 

『それじゃ、失礼して』

 

 両拳を振り上げる。

 そこにはアジャストされたアクセサリーたちが指にはめられている。

 

 シエルが『攻撃力を上げてくれるので使ってどうぞ』ってくれた品だ。

 攻撃力を+1000してくれるけど攻撃するたびに判定があって、運が悪ければ一回で壊れるんだって。ガチャで引いたんだって言ってた。

 

 ずるい。

 わたしもガチャしたい。

 

 そんな貰い物のアクセサリー。

 他の指輪も似たようなものばかり。ほとんどが攻撃力に関係した品。

 全部シエルがくれた。

 

 だから、全部使って、こいつの心臓をぶっ壊す。

 

『せーの!!!』

 

 振り上げた両拳を叩きつける。

 瞬間──ドシンと、わたしの小さな手からは想像できない程の音が衝撃を伴って体内を伝っていくのが分かった。間違いなく内側から【闇竜王】に強烈な一撃を与えれた。

 

『ッ! 逃げる!!!』

 

 立っていた足場が90°傾き、壁が床になる。

 恐らく、内からの攻撃に【闇竜王】が倒れたんだと思う。

 

 さっきまでも時折、通路が揺れたりしてたけど比じゃない。このまま中にいたら、傾き続ける床に対応できなくて大変なことになる。

 

 シエルからの注文は達成できたので、早いところ離脱したい。

 行くときに使っていた道を辿りながら逆走していく。

 

 迷うことなく道を進み、口まで戻ってくる事が出来た。

 このまま、口から出れば問題なし。

 

 汗で濡れた腕を払って、そう考え足を動かしたとき。

 …………ぞわり。

 

 と、何か今までで初めて感じるような悪寒が全身を貫いた。

 悪寒からか、だらりと額から流れる汗を手で拭った時、そこでようやく気付いた。

 

 悪寒だったからじゃない、汗が流れる原因は冷や汗じゃない。

 

 ふと、振り返る。

 ここからでも分かる、ぐつぐつとした焔が喉奥から漏れ出ている。

 いつでも発射できると言わんばかりに、こみあげられたブレス。

 

 わたしが汗を流したのは体内の温度上昇による暑さからだった。

 

 死ぬ。

 

 そう思った。身体は無意識に半開きになった口に向かって走り出す。

 逆光の都合で外の様子は分からないけど、外にさえ出れば即死は免れるかもしれないと判断した。

 

 距離以上に長く感じる舌を走っていると、中途半端に開かれた口が大きくあけられた。

 

 それに対するわたしの感情は外に出やすくなったという歓喜なんかじゃない。

 ブレスがもうすぐそこまで来ている。

 

 そんな、恐怖だった。

 

 あと少し、もうちょっと。

 そんな希望むなしく、背後からゴッっという力強い音が聞こえ──。

 

 背後に視線を向ければ、そこには灼熱の業火があった。

 

 

 

 

 終わったと思い、眼を閉じたわたし。

 ふと誰かに抱えられている。

 

 

 なんだか、とっても懐かしく感じた。

 

 

◇◇◇

 

 

□【疾風槍士】シエル・ガブリ

 

 

 危なかった! 本当にギリギリだった!

 ていうか、僕の翼が半分ほど焼き焦げてますね。

 

 けど、飛行状態は維持できてます。

 片翼でも墜落しない程度には、この翼の扱いにも慣れてきましたから。

 

 【闇竜王】のブレスを、首の可動範囲外まで逃げることで躱します。

 レヴィさんは逆に【闇竜王】に近づいて、無理矢理に口を閉ざそうとしていますね。でも、力比べでは負けてますからね彼女。

 あ、右足が消し飛んだ。

 

 レヴィさんの右足が無くなると同時に、ブレスが止みました。

 溜めが必要なのか、何かはわかりませんが、少なくとも彼女はまだ死んでいません。

 

 さて、こちらはこっちでやりますか。

 僕の腕の中で、ぐでっとしていらっしゃる小動物。

 

「ベヘモット、生きてますかー?」

『…………生きてる』

「それは良かった。ギリギリ間に合ったようで何よりです」

『死ぬかと思った』

 

 それはそう。助けに行った僕もよく生きてるもんだと思いますよ。

 

「運の良いことに互いに生きています。そして、ベヘモットが削ってくれたおかげで、足りると思います」

『何が?』

「これですね」

 

 そう言って、懐から取り出したのは一つの【ジェム】。

 しかし、侮ることなかれ!

 これに込められているのは、【紅蓮術師】の奥義である《クリムゾン・スフィア》だ。

 

 あの後、調べてみたんだけどこの奥義は、魔法職の中でも最上位に来るぐらい威力が高いらしい。超級職を除く。

 

 【闇竜王】は中々のHPを誇っていたから、一発で仕留めるのは難しいと判断したので、ガチャや魔王商店で購入したSTR上げる用のアクセサリーをベヘモットに渡して、内側からHPを削って貰ったのだ。

 

 おかげでこいつでとどめを刺せる。

 

「もし、足りなそうなら、外からちくちく攻撃してからという予定でしたが、必要なさそうですね」

『そんな小さな宝石一つでいけるの?』

「ええ、僕が出せる最大火力です。念のため、口の中に放り込んできましょうか」

 

 ベヘモットだけ、口の中に行かせたのは忍びなかったので僕も行くことにしました。

 

「よし。では口に入れた後、僕が離れるとそれに合わせてレヴィさんを引かせてください」

『分かった…………頑張って』

 

 おや、珍しい…………というほど、彼女とはそこまで関わってなかったです。

 けど、初めて声援をもらいました。

 

「ありがとう、いってきます」

 

 彼女を地面に優しく降ろした後、そう言って片翼のまま僕は【闇竜王】に向かって走り出した。

 

 

 あ、そうだ。皆さん知っていますか?

 僕のスキルにある、飛行状態って単語。

 

 これってどういう状況まで含まれるのか。

 自身の核となるスキルでしたので、闘技場で色々と検証したんですよね。

 

 まず片翼でもしっかりと機能してくれます。

 歪ながらも、飛ぶということはできるので。ただ体勢が安定しないので、すぐ落下して効果は切れます。

 

 次に地面。

 どんなに翼をはためかせても、地面に足がついていたら効果は無しです。

 普通に飛行していても、足で地面を削るように移動したら、効果が切れたのです。

 

 ということはですよ?

 片翼でも1秒程度は不安定ながらも前に飛んでくれます。

 そして1秒あれば?

 音の速度で飛行する事が出来るんです。

 

 すなわち、今の僕の状態は、全く問題ないということ!

 

 さて、おしゃべりはここまで!

 突貫します。

 

 いままで走っていた僕は、ポンと地面を蹴って浮き、それを推進力に片翼をバサリと羽ばたかせて、前へと進みます。

 

 グイっと視界が流れ始め、そして僕の身体が徐々に斜めになっていくのを感じます。

 やっぱり片翼だと体勢が変な風になりますね。でも問題ありません。

 

 ()()()()()()()()()

 

 睨み合う【闇竜王】と【怪獣姫】に認識されない程に早く、されたとしても対応されるより早く、僕は【竜王】の顎から生えている歯の一本に掴まります。

 

 それと同時に、AGI加速が切れて景色が元に戻ります。

 

『GYA!? GYAAAAAAAAAA!!!!!!!!』

 

 おっと、抵抗が激しい。

 恐らくベヘモットに体内をやられたのが相当にトラウマにあったようですね。

 

『GYAAAAAAAAA!!!!!!!!』

 

 っ!? なんか【闇竜王】の頭上に闇の球体が出現しました!

 危なそうな雰囲気がめっちゃありますが、もう遅いですよ!

 

「MPを込めまして、ぽいっと」

 

 手順を満たした【ジェム】は、直後から爛々と輝き出す。

 明らかに危険物ですよー、となったソレを【闇竜王】の口の中に放り込む。

 それも、手前ではなく奥の方に。コロコロと転がるそれは、喉の奥まで落ちていく。

 

 その様子を確認した僕は、すぐにその場を離れました。

 レヴィさんもまた、そんな僕を見てベヘモットの所まで、ジャンプで下がっていきました。

 …………あんな大怪我してるのに、よく跳べますね。

 

 そして、数秒の後──。

 【闇竜王】の身体が膨れ上がったのもつかの間、全身の至るところから炎が漏れ出て、最後には発動準備段階だった闇の玉諸共、大爆発を引き起こした。

 

 爆風が吹き荒れ、怪獣バトルで脆くなった周辺一帯が、それに合わせて剥がれていくのが見えました。

 僕自身も、強い爆風に吹き飛ばされないように抵抗するので必死なので、あまり見えないんですけどね!

 

 光と音、そして爆風が落ち着き、そこには──。

 

 もはや何も残っていなかった。

 

 【<UBM>【闇竜王 ドラグダーク】が討伐されました】

 【MVPを選出します】

 【【シエル・ガブリ】がMVPに選出されました】

 【【シエル・ガブリ】にMVP特典【落涙闇球 ドラグダーク】を贈与します】

 

 

 あー、大変だった。

 

  

 





ベヘモット視点、難しかった。


【闇竜王 ドラグダーク】
最近になって、〈UBM〉の仲間入りになったドラゴン。
闇属性を使う竜王がこれまで存在しなかったので、純竜級の下位だったが闇属性使えるようになったら、即〈UBM〉認定された。
現在は〈逸話級〉相当の力しか無かったけど、成長性は抜群だったらしい。

知性はあったが、人の言語を理解する気はないらしい。
曰く、贄の言葉を知って何になる?

〈厳冬山脈〉内で調子に乗って、他の竜王に喧嘩売って返り討ちに遭い、追い出された。


《ダーク・エクスプロージョン》
言ってしまえば【爆裂姫】の《爆心》の闇属性版。
火力は低めだが、防御無視のため実質こっちのほうがダメージは大きい。
発動時間に難あり。


あ、評価感想ありがとうございます〜。
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