空に憧れた。だから翼が生えた。 作:匿名
ちょっと長いので初投稿になりそうです………
□【疾風槍士】シエル・ガブリ
あー、大変だった。
戦いが終わった僕は、その場に仰向けで寝っ転がった。
【ジズ】も半分なくなって、もう片方もボロボロだ。
こんな翼で、よく最後まで保った。すげぇよ。
それにしても、討伐出来ちゃったな。
いや可能ではあったけどさ、ガチャ産の【ジェム】だったりアクセサリーだったりを大盤振る舞いしての結果だけど。
ギルドへの報告はなんて言おうかなー。
調査ついでに倒せそうだったのでやっちゃいました?
逆に厳罰貰っちゃう気がする。地形への被害を大きくしたとか何とかで。
あ! だったら、ベヘモットの友人経由で伝えてもらえばいっか。ブッキングみたいになったけど、協力して倒しました。なら、文句は言われないでしょ。
…………とは言え、ちょっと休憩。
『お疲れ』
休もうとした矢先に、ベヘモットから労いの声が掛かる。そっちに顔を向ければ、小さな動物だけが居た。
「お疲れー、レヴィさんはどうしたの?」
普段はベヘモットを抱えている彼女だが今は見えない。
『戻ってもらった。歩くのも難しくなってたから』
そう言って小さな手に刻まれている紋章をこちらに見せてくる。
なるほど、確かに彼女ボロボロだったもんね。
よく見ればベヘモットも傷だらけだ。特に前足の爪が欠けてるのも見て取れる。
「お互いボロボロになったねー」
『うん、でも勝てた』
勝てた。いやー、本当に良かった。
デスペナったら内部時間で3日も入れないのはマズイもんな。クエスト失敗、バッドエンド突入ってわけ。
『特典武具は取られたけど』
「あー、やっぱり最後の《クリムゾン・スフィア》がトドメになったからね。それでしょう」
そうでした、MVPに選ばれたんでした。
ちょっと確認してみますか。
【闇竜珠 ドラグダーク】
〈
闇を支配し闇を纏う竜王の概念を具現化した逸品。
生きとし生けるものを滅ぼす究極の闇を世界へと解き放つ。
※譲渡売却不可アイテム・装備レベル制限なし
・装備補正
MP+10000
・装備スキル
《
取り出してみると首飾り型のアクセサリーだった。
真っ黒な球体にドラゴンが絡みついており、それに鎖が繋がっている。かなりオシャレ度が高いね、外見は気に入った。
中身も見ていこう。
装備補正はMPが上がるようになっている。上級職が前衛職だから、足りないMPを補おうとしてる感じかな?
装備スキルは…………結構ピーキーな性能だった。
確かに今回の戦いを参照しているんだなーって思えるような内容だ。使いどきを間違えたら
ま、スキルは下手に使えないけどMPへの補正が高いから常備装着になるかな。
『……それが特典武具?』
「そうそう、性能を確認してた」
ウィンドウを他者にも共有できるように可視化、ベヘモットをそばに寄らせて見えるようにする。
『…………使い時』
「だよねー、僕もそう思う。けど、特典武具ってアジャストされた武具って話だし、納得はしてるんだけどね」
『わたしだったら、どうなってたかな』
「……うーん。君の場合だと、レヴィさんをサポートする感じになるんじゃない?」
実際どうなるのかは、神のみぞ知るなんだろうけどね。
僕はそのままウィンドウを操作して特典武具をアクセサリー枠にセットする。手を首の後ろに回して身に着ける。
「これでよしっと。さて、それじゃ帰ろっか」
『分かった』
そして、ボロボロになった【ジズ】を紋章に収納する。何だかんだで翼を外すの初めてだ、新鮮な気分だね。
事変の原因がいなくなった以上、ここに留まってる意味はないからと歩き出す。
「翼が使えないから徒歩だー」
『……………………』
「皇都に着くの、どれくらいかかるかな」
『……………………』
「そもそも途中で会敵したらどうし…………ん?」
『……………………』
視線を感じて、ふと振り返るとそこには先ほどから動いておらず、こっちを見続けるベヘモットがいた。
何故? いや、ちょっと待つんだ。
僕は察しはいいからね、考えるよー。
彼女は普段、移動する時レヴィさんに抱かれている。
僕が出会ったときは、基本的にそんな感じだった。
でも今は回復の為にレヴィさんは出てこれない。
必然、ベヘモットは一人だ。帰るのも自前の足ですることになる。
しかし、彼女の歩幅では小さすぎていつ帰り着くか分からない。
帰ろうとする僕を動くことなく見つめ続ける意味を理解しようとしてみれば…………。
ふっ。見えたね! そうと分かれば即実行。
ベヘモットの下まで戻り、僕はそのまま彼女を両手で抱き上げた。
『……っ……』
「嫌だったら言ってね。レヴィさんがいない今、君の脚だと移動に時間かかりそうだからさ」
『………………NP』
「よかった。それじゃ行こっか」
ベヘモットを抱えなおし、歩きを再開する。
帰りはお互いに無言。
しかし、それが苦痛ということは不思議となかった。
あ、この娘寝てる。
◇◇◇
□【魔術師】シエル・ガブリ
いやー、大変でしたね。
あの後ベヘモットを起こさないように、ゆっくりと徒歩で帰っていたので4、5時間掛かったよ。
結局、道中で目を覚まさなかったので皇都に到着してから起こしました。
その日は別れて、お互いギルドと友人に報告しに行った。僕の方は特典武具と《真偽判定》のチェックでOKを貰い、ギルド職員が現場を確認次第クエストクリアとなると言われた。
翌日である今日、ベヘモットの友人が手を回してくれたのか、ギルドから調査依頼の報酬+αで結構な額を渡されたのだ。やったね。
大金を手に入れた僕が向かう先は、当然ながら魔王商店。気分らんらん、スキップを刻みながら街の中を闊歩する。
「ふへへ、この金でガチャしまくるぞー!」
『………………』
「いや、それよりもアクセサリーか? 一分間、各種ステータスを一万上げてくれる奴があったっけ。ふふふ」
『………………』
「……その気色悪い声音を止めなさい。羽虫」
そんな心が小躍りしている状態だった僕に、冷水をかけてくる怪獣さんがいた。
「えっ……うわっ!? びっくりした~」
気が付いたら僕の隣には、いつものようにレヴィさんと彼女に抱えられるベヘモットが居たのだ。
脅かさないでほしいものだね! 心臓に悪いぜっ。
『気付かないのが悪い』
「我々が近づいてあげたというのに無視するなんて、不敬を通り越して万死でしょう」
なんてひどい暴論だ。
確かに、ちょっと浮かれてた自覚はあるけども!
「そうだ。こっちはギルドの報告滞りなく終わったけど、そっちは大丈夫だった?」
『問題ないよ。ギルドとのブッキングを伝えたら、正式に国からお金がでた』
おー、それは良かった。友人からの頼みとは言え、あれほどの激戦に報酬無しは悲しいですからね。
それはそれとして…………。
「今日はどうされたので? いつもの戯れではなさそうですが」
「何が戯れですかっ!? 強くなったら絶対に潰します」
はいはい、レヴィさんは大人しくしてましょうねー。
『………………お金たくさんもらったから』
「国からの、ですね」
『わたしもガチャしたい。ズルい』
貴女もゲーマーですね。やっぱりガチャがあるのに、引かないのは無作法というもの。
「分かりました。僕もこれからガチャが置いてある雑貨店に向かう予定でしたので一緒に行きますか」
『うん』
僕の誘いに頷いたベヘモットは、レヴィさんの腕から跳んでこっちの肩に飛び付いてきた。
うわ、レヴィさんが、形容し難いすごい顔してる。
『はやく』
「あ、ハイ」
「…………」
小さな手で肩をペシペシ叩き催促するベヘモット。
唯々諾々と従う僕ことシエル。
その様子をヤバい顔で見つめるレヴィアタン。
こちらカオスすぎる現場です、どーぞー。
というか、距離近すぎない?
大丈夫? ハラスメントとかに接触しそうじゃない?
友好ポイント稼いだ記憶ないですよ。
【闇竜王】戦ぐらいじゃない、稼げるタイミング。
あの一回でそんなに貯まったんですかね。
そんな益体もないことを考えながら、大通りの喧騒を抜けて馴染みの店へと足を進める。
この間もベヘモットは僕の肩、レヴィさんは斜め後方に控えているけど刺さる視線が痛い。
最初のランラン気分から一転して、ちょっと重い空気(僕とレヴィさんの間だけ。ベヘモットは鼻歌刻んでる)を醸しながら、ようやく到着。
「いらっしゃい」
店内に入るといつもと変わらぬ声が聞こえてくる。
気さくな口調に、真っ黒フードで顔隠し。
そして客である僕と、後ろにいるレヴィさん…………ではなく、肩に乗ったベヘモットを見たオーナーは軽く目を瞠っていた。
「おや珍しい。シエルが誰かを連れてくるなんて」
「あー、そうですね。基本的に一人だけど、今日は知り合いと一緒…………別に連れてきても良かったよね?」
ちょっと心配になって確認してみた。
如何にもな雰囲気の店だし、これまで僕以外に客を見たことは無い。そもそも、自分から店に入ったのではなくオーナーに誘われる形で来たのが最初だったっけ。
「あまり多くを引き連れられると困るけど、ある程度は問題ないよ。何かお求めでもあったのかな」
ほっ、良かったー。これでダメですなんて言われたらレヴィさんが暴れ散らかしかねなかったからね。
「かなりいい収入があったので【リング・オブ・ゴッド】シリーズを幾つか欲しいなと…………ついでにガチャ」
「ふふっ、君の場合はガチャのついでにアクセサリーではないかね?」
「そうとも言いますね! っと、紹介がまだでしたね」
いけないいけない。オーナーのと会話に夢中で、彼女たちのことを忘れていた。
肩に乗ってるベヘモットも両手で掴んで抱きかかえる。
「この小動物が同僚のベヘモット。僕と同じ〈マスター〉で、こっちの人は〈エンブリオ〉であるレヴィアタン」
『……よろしく』
「初めまして、私はここ【魔王商店】の店主を務めている者だ。それにしても……君と同じ〈マスター〉か。それに人型の〈エンブリオ〉、情報はあったね。確かメイデンだったかな? あまり数は居らず、私も初めて見た」
こうして二人を紹介する。
これで、僕を経由しなくても彼女たち単体で、来れるようになるだろう。
「ふむ。まぁ、それは良いか。それで、お連れの君たちは何をお求めかな」
『わたしもステータスが上がるアクセは欲しい。それとガチャ』
「ハッハッハッ、君もあれに惹かれたのかい。まぁ、適当に何か買っていってくれるなら、いつでも利用してくれて構わないよ」
オーナーは手で示すように、毎日のように見ている機材へと振る。
その後、幾つかのアクセサリーやアイテムを見繕った僕たちは、ガチャへと挑むのだった。
◇
ベヘモットの場合。
『ALL IN』
「E」「D」「C」「C」
『負け』
レヴィアタンの場合。
「この私が負けるなどあり得ないことです」
「F」「F」「F」「S」
『GAAAAAA!!!!(喜びすぎて怪獣化)』
シエルの場合。
「そろそろ天井じゃないですか?」
「B」「C」「B」「A」
「近年稀に見る当たりガチャ来たぁぁっ!!!」
お店の中は混沌としていた。
怪獣化の影響で内装の一部が壊れて、爆死した小動物が机にぐだっと崩折れてたり、戦いの勝者が舞を踊っていたり。
「…………弁償代は払ってもらうよ」
その声が聞こえた者はいなかった。
◇
□魔王商店 【魔術師】シエル・ガブリ
はい、すみませんでした。狂喜乱舞してたシエルです。
でも許してください。最高位の「S」やまだ一度しか見たことのない「X」は出なかったけど「A」に「B」が二つなんですから!
ついでに、僕は何も壊してないんだけど、商店の内装代を弁償代を半額支払いする羽目になりました。連帯責任だそうです。
さて、話を戻してガチャの結果を見ていきましょう。
まずはベヘモットから。
彼女のガチャ結果はなんとも渋かった。
「E」「D」「C」「C」
間違いなく…………負けです。
「E」:【エメンテリウム】
「D」: メイド服
「C」:【墓標迷宮探索許可証】
「C」:【身代わり竜鱗】
こんなラインナップになっていた。
【エメンテリウム】は2万リル程度の換金アイテムで、「E」ですねという印象。
【メイド服】も、これといった特徴は無い。
唯一、良い点を挙げるとすれば、多少サイズをアジャストしてくれることだろうか。しかし、ベヘモットまでの小さいサイズには流石に適応外だったので着ることができなかった。だからレヴィさんが着た、めっちゃ可愛かった。
【墓標迷宮探索許可証】はアルター王国にある神造ダンジョンへ潜るのに使えるとのこと。しかし、国に所属しないと【許可証】があっても入れない為、ドライフから出る予定の無い彼女にとってはゴミ。
最後の【身代わり竜鱗】は被ダメージ時にダメージを10%に軽減してくれるアクセサリーだ。欠点として効果発動後、100%の確率で壊れてしまうけど、【ガチャ】の中では当たりの部類だろう。
次にレヴィアタン。
最後の最後に巻き返しに成功。
「F」「F」「F」「S」
両極端な結果だ。
「F」: 簡易食料セット
「F」:【ぬいぐるみ】
「F」:【HP回復ポーション】
「S」:【ヒヒイロカネ】
「F」は何も言うまい。ベヘモットが【ぬいぐるみ】を気に入ってたぐらいかな。
問題は「S」のアイテム。
【ヒヒイロカネ】
神話級に分類される最上位の金属。
極めて稀少且つ高性能な赤色の金属で、天地等が原産地とされているらしい。価格は1kg1000万リル以上する。
オーナーに聞けば非常に硬い金属で、よっぽどのことがない限り破損する心配がない代物らしい。
加工するのに超級職が前提とされるのだとか。
「S」は僕も初めてみたから驚いたね。
レヴィさんが苛つきながら最後の一回を回して、ガチャの口から虹色に輝くカプセルが出てきた時は、流石に眼を瞠った。
ベヘモットは【ヒヒイロカネ】をある程度成長するまで、使わずに取っておくらしい。
強力な装備には装備制限が付くのは当たり前なので、仕方ないことだろう。
そして僕ことシエル。
今日のガチャは豊作でした。
「B」「C」「B」「A」
狂喜乱舞不可避。
「B」:【大容量アイテムボックス】
「C」:【紅灼の外套】
「B」:【リソース・チャージャー】
「A」:【古文書:天使族に関する考察資料】
まずは【大容量アイテムボックス】だけど、これは凄い。サイズは手のひらに乗る程度の袋で、チュートリアルで貰った初心者用のアイテムボックスの1000倍以上の容量があった。間違いなく当たり。
次の【紅灼の外套】は僕の進路を決定づける物になった。この外套はある属性の魔法を強化してくれる。
それは火属性、元よりその道に進む予定ではあったけど、背中を押された形だ。
見た目の色はダークレッド。普通にカッコイイ。
【リソース・チャージャー】
これはオーナーも初めてみる物らしい。
《鑑定眼》が通ったので、詳細自体はすぐに分かった。
言ってしまえば"ふしぎ〇あめ"。
しかし、効果は絶大。なんと、一個使えば下級職ならカンストまで持っていってくれる程、経験値が詰まっているらしい。当たりだ。
最後の「A」で出たアイテムだけど、〈天使〉についての記録が記された資料だった。
オーナーが言うにはモンスターとしての天使ではなく、先々期文明末期に血筋が途絶えた亜人としての天使族のことらしい。詳細は今度読むので後回し。
天使族についてはもう殆ど知られていないので、僕だけが知れる重要な情報になりそうです。
いやー、楽しかった。やっぱりガチャだよね!
もう所持金がスッカラカンになったので、また稼ぎに行かないとですねー。
悲しみに暮れるベヘモットと、最後にいい結果を残せて満足したレヴィアタン。そして、近年稀に見る当たりガチャの余韻に浸っている僕。
三人は【魔王商店】を後にし、騒がしさが残る皇都の街へと移動していく。
今日はここまでかな? というわけで、バイバイ!
…………天使族についてすら知ってるオーナーって何者?
レイやルークがポンポンとXやSを出してるけど、本来は小数点の彼方ぐらいですよね。
まぁ、今回はたくさん出しましたけど。
特典武具のスキルの詳細については、またいずれ。
使う時が来たら、出すと思います。
あ、評価感想ありがとうございます〜