空に憧れた。だから翼が生えた。 作:匿名
初投稿か……では此方も初投稿にせねば無作法というもの
□【古文書:天使族についての考察資料】
天使
この存在自体は現在においても確認されている。
〈マスター〉が知る由もないが、空中を漂う神造ダンジョン〈優越の天空城〉にて出現する
しかし、モンスターにしか居ないはずのソレが昔は人間範疇生物として世界に溶け込んでいたことを覚えている者はどれくらいだろうか。
今よりはるか昔、化身襲来より少し前。
そう。
最後の《終焉》が世界に牙を剥くまでは、かの種族たちはこの地に根ざしていた。他生物よりも身体に優れ、能力に優れた彼らは、世界を護らんと初代フラグマンらと共に戦っていたのだ。
結果として、《終焉》は終わりを告げる。しかし、ソレが残した爪痕が重すぎた。多くの種族が根絶したのだ。なまじ人よりも強い種族であるが故に、その多くが戦いに参加し散っていった。
天使族も同じだ。大半が死に絶えた。残った一族もなんとか種を残さんと奮起したが、間もなく"化身"の襲来が確認され、彼らは世界からその血を無くしたのだった。
そんな天使族が就くジョブがある。
吸血氏族における吸血鬼系統と同じようなものだ。
それが天使系統職。
シエルが手に入れた【古文書】は"化身"襲来から100年ほど経った時代で、根絶した天使族の記録を見つけた考古学者が存在を残そうと書き記したものだ。
天使族の特徴、天使族の住処、天使族の歴史などなど。
その中へ当然のように記してあるのが、天使系統の超級職の存在だ。一族の長を務める【
別枠で【
しかし、その中でも一際特殊な超級職が存在した。
「『下級職6枠、上級職2枠を天使系統でも特殊な派生職で埋め尽くし、上限までレベルを上げることで就職可能になる、才能に溢れる者しか就けない究極の超級職────』」
天使系統特殊派生超級職
「『【
シエルは読み上げた箇所を指でなぞりながら、口から出た言葉の意味を理解する。
「天使族という限定されたジョブの更に、器がカンストの才能を持つ者しか就けない超級職か」
先々期文明時代ですら就ける者がおらず、口伝とジョブリストでのみ存在が確認出来るというティアンからすれば理不尽とすら言える超級職。
「────最高」
たった今、シエルの向かうべき目的地が決定した。
超級職とは元より
だというのに天使系統の超級職はロストしており、誰も就いていないのが確定している。
なにより、翼の生えた種族専用のジョブというのが素晴らしいとシエルは思ったのだ。モチーフが異なるとはいえ、彼の〈エンブリオ〉は翼なのだから。
また、何処にでもあるようなジョブクリスタルでは、天使系統のジョブに就くことは出来ない。現代において全ての才能を保有する〈マスター〉の誰もが【
何故か。それは人類未踏の領域に置かれているから他ならない。というのは少し異なるか。
踏み入れた者はいても国に報告することが無かったが為に、世界に知られなかっただけなのだ。
場所はレジェンダリア最南端に位置する山岳地帯。
その中心。山脈に囲まれたが故に、地上からは確認できず、その場所に行くには空でも飛んで山を越えなければならない。
徒歩で山を越えるという手もあるが、山岳地帯は多くの部族が集落を形成している。
それぞれの掟がある場所を無視して突き進むのは困難を極めるだろう。
「少なくとも、レジェンダリアにはありそうだな。この資料にも、天使族は大陸南西の秘境に住まうと書いているし」
そんな事情もつゆ知らないシエルからすれば、手掛かりは【古文書】一つだけ。
彼らが昔住んでいた場所を目指すのは当然と言えた。
◇◇◇
□皇都・ヴァンデルヘイム
「まだかなー、早く行きたいんだけどなー」
皇都内に借りた宿の一室。そのベットに寝転がっているシエルは、天井を見上げながらボーッとしていた。
本当であれば、【古文書】の内容を知ったその日のうちには国を出たかったが、そうもいかない。
理由としては、ギルドから優先して旨味のあるクエストを回してもらっていることにある。
これはシエルが空を飛んで亜音速で移動できる為、どれだけ離れていてもすぐに駆け付ける事が出来ることに起因している。緊急の討伐依頼を多く受注するギルドからしてみれば、非常にありがたい人材で、そういった喫緊のクエストを熟してもらう代わりに、難度は低くとも報酬が高いクエストを優先的に斡旋していたのだ。
彼が一時的に国を離れることになれば、それだけでいくつかの工程に支障が出始めるくらいには中核になっていた。(これでも<マスター>であることを鑑みて、彼に頼る量をかなり減らしている)
離れるにしてもあらかじめ伝えて、そのうえで幾日か待機してもらい、ギルド側の準備が整ってからになるだろう。
それ以外は特になかったが、個人的に親しい人たちに何も伝えずに行くのは不義理になるだろう。まぁ、基本的にフィールドで空飛びながらモンスターを狩っている彼と親しい人たちなど結構絞られるので人数は少ない。
怪獣娘たちと魔王商店オーナーぐらいのものだ。
オーナーは店の経営者という観点からも問題はなさそうだが、色々とお世話になったので挨拶は必要である。
怪獣娘たちに関しても、これだけ関わってしまったのだ。なあなあで済ませてもいいことはないと判断し、伝えることになった。
それらの理由があって、あのガチャから数日経った今でもまだ出発していない。
ギルドは明日には大丈夫になるらしく、オーナーも一切問題なかった。怪獣娘たちもベヘモットが駄々こねたぐらいで、特段まずいことは起こっていない。
「レベルを上げようにも、【熾天使】目指したらジョブリセする羽目になるしなー」
シエルにとって一番の問題は、現段階におけるレベル上げのモチベーションが完全になくなってしまったことだろう。
【古文書】に書かれている天使系統特殊派生超級職である【熾天使】は、アバターが保有する全てのジョブ枠を特定の派生職で埋め尽くす必要がある。
それすなわち、今持っているジョブをリセットすること他ならない。
あとでリセットするのだから上げる必要なくない? ということだ。
レベル上げを完全にしなくなったわけではないが、ちまちまと一日に1,2時間だけモンスターを狩るぐらいになっていた。
それでも現在のメインジョブが下級職の【魔術師】なので、サクサクとレベルは上がっている。
変なところで生真面目な性格が影響してか、レベル上げには火属性の魔法しか使っておらず、【紅蓮術師】の条件開放の一つとなっている火属性魔法の累計使用回数を稼いでいる。
今のシエルに出来る事と言えば、ここ数日間で穴が開かんばかりに読み込んだ【古文書】をもう一周するか、初ガチャで入手した動力炉を眺めるぐらいだ。
取り出した紙束を持ち、指を少しずつ緩めればパラパラと一枚一枚落ちていく。
取り出した動力炉にMPを流してみるも、何かしら反応することはない。
「やる気でなーい」
彼は今できることをやってみたが、すぐに飽きた。
ゲームの中で飽きるとは、これ如何に。
「…………ジョブに関係ないことするかー」
しかし、このまま過ごすのは流石にもったいないと感じたのか、シエルは重たい身体を動かして外に出る。
「武具、市場、図書館、工場。どれにしようかな…………図書館、行ったことなかったな」
こうして彼はこの世界に降り立って、初めて図書館へと赴いた。
◇◇◇
□ヴァンデルヘイム〈図書館〉【魔術師】シエル・ガブリ
えー、やってきました皇都にある唯一の図書館。
僕がリアルで知ってる図書館のような趣はなく、本以外はメカメカしい金属と機械で染められていた。
司書さんに聞くと、なんでも建国時代から稼働しているらしく、MPさえ供給すればオートメンテナンスもされる凄い建物らしい。
先々期文明で造られ、1000年以上沈黙を続けていたが、建国時に初代ドライフ皇王が起動させることに成功したのだとか。
防衛設備も整っており、緊急時の皇族避難場所にもなっているんだって。
いや、それを公開しちゃダメでしょうに。
そんな訳でこの図書館には建国当時からの書物がずっと残り続けている。発見当時に散策したが先々期文明の本は一つたりともなかったらしい。
まぁ、そこまで希少な本は閲覧レベルが高く、許可が降りてる人はごく一部らしいけどね。
一般人は閲覧レベルが0の書物しか読めません!
僕は暇だから全然いいんだけどね。
入館して、近くの棚においてあった本を一冊手に取る。
機械の国だけあって僕のような一般人でも、かなり専門的な本を読むことができるようだ。
内容は全くわからないけどね。
これはいけないな。本の中身が分からないと暇つぶしにもならないや。初心者用の奴、さーがそ。
そうして、その日はドライフ皇国に住む住民なら当然のように知っている常識だったり、ちょっとレベルの高い機械関係の本を読みながら過ごしたのだった。
大図書館の奥に、最高閲覧権限がないと入れない場所があるんだって。いつか入ってみたい。
オリジナルジョブの登場です。
もはや【熾天使】をしたいが為に、この小説を書き始めたまである。
ストックが切れたので、投稿ストップです。
いつ再開するかは未定。
ある程度、まとまったら再開するかも