水属性こそ異世界にて最強と証明したいTS転生者   作:うん、でねー?

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1 水属性は異世界にて最強

 昔から、異世界転生においては水属性こそが最強の属性であると私は考えていた。

 まず衛生環境の悪いだろう中世風異世界において、新鮮な水を確保できるという時点でチートもいいところだ

 加えて水属性には治癒や氷のイメージも備わっている。

 水をぶっ放すだけでなく、相手を凍らせられれば戦闘を非常に有利に進められるだろう。

 パーティの頼れるヒーラー兼攻撃魔術師。

 それが私の考える水属性魔術だった。

 

 そんな私がひょんなことから異世界に転生したのはついさっきのこと。

 事故で死んだと思ったら、いつの間にかどこともしれない森の中に立っていたのである。

 前世にはそこまで大きな未練はないけれど、さりとて現代の娯楽を捨ててまで異世界で新たな人生を送りたいかと言われると、なんともいえない。

 だから、私は思わず呆然としてしまった。

 どうすればいいんだ、これ。

 

 しかも良いのか悪いのか、私の体は美少女になっていた。

 背丈はだいたい150弱くらい、なんとも小柄だが胸が大きい。

 無駄に青のメッシュが入った白髪は腰のあたりまで伸びている。

 背は小さいが子供というわけではなく、小柄な大人の女性という感じだから年齢は前世の私とそう変わらないだろうか。

 いや、この体が普通の人間とはとても思えないけど。

 

 いやはや参ってしまった。

 服もなんかやたら豪華で目立つし、このままだと人攫いにあって同人RPG路線まったなしだ。

 何としても、異世界転生者特有のチートに目覚めないといけない。

 自身のうちに何かが眠っていそうなことを祈って、いろいろと試す。

 詠唱をしてみたり、体内の気みたいなものを放出しようとしてみたり。

 そんな時、ふと思う。

 もしこれで、水属性が使えたら――運命なのではないか、と。

 

 そして使った。

 できた。

 

 掌に、水の球を浮かばせることができたのだ。

 そして念じれば水は自由自在に動き回り、飛ばすこともできた。

 ――いける。

 私の中で確信が生まれ、それからしばらく水属性魔術の練習をすることにした。

 

 それから数日ほど、私は水属性魔術の練習をした。

 理由は単純で、一日森の外を目指して歩いたのだが、たどり着けなかったのだ。

 仕方ないので覚悟を決めて、そこらへんの木に成っていた果実を食べて一夜を明かす。

 幸いにも森に狂暴そうな動物……魔物のようなものは存在せず、地面が土であるにも関わらずぐっすり眠ることができた。

 おそらくだが、このTS美少女ボディは特別性なのだ。

 なにせ、余裕で木を一本へし折ることができたし。

 というわけで、一日で外に出られないなら腰を据えて水属性の練習をしながら外を目指そう、ということになったのだ。

 

 水属性魔術(仮称)は、私が水をイメージすることで生み出すことができる。

 生み出される場所は常に体の周辺、生み出す量はイメージ次第。

 高速で射出することもできれば、鞭のように操ることもできる。

 割と便利な能力に思えた。

 ただ残念ながら、氷を生み出すことはできなかった。

 氷は要するに冷やして固めた水なのだから、水魔術で生み出せないとおかしいのだが。

 異世界なので”そういう法則です”と言われたらそこまでである。

 

 ほかにもいろいろと私は私ができることを確かめ、ある事に気づいたりしながら森を出た。

 数日間、適当に見つけた果実だけで、健康に生活できたのはTSボディ様様だな。

 というか、なんなら消費カロリーに対して摂取量が全然足りていない気がするし、究極的には食事いらないんじゃないか?

 自身のボディの人外説がさらに高まった。

 

 んで、森を出ると一気に状況は改善した。

 街道らしきものを見つけたからだ。

 明らかに整備された石畳の道。

 これ、結構文明レベル高くないとできないんじゃないか? って感じのきれいな舗装具合。

 この道を歩いていけば、そのうち町にたどり着くはずだ。

 少しだけ、異世界のイベントに胸を躍らせながら、私はのんびりと街道を歩くのだった。

 

 

 〇

 

 

 それから、人と通りすがることなく、小さな町についた。

 結構ちゃんとした街道だと思ったのに、人が通らないのは少し不思議だ。

 たどり着いた町は、小さいけど活気があった。

 いかにも異世界って感じの、牧歌的な街並み。

 少し、テンションが上がる。

 ただ、活気があるということは人の目も多いということ。

 明らかにいい感じの服を着た美少女が、一人で街を歩くものだからじろじろと視線が向けられてしまう。

 これで胸が小さかったら、まだ視線も減ったんだろうなぁ。

 明らかに、この身長のわりにでかい胸に視線が集中してますよ、いやらしい。

 まぁ……(転生直後のあれこれを思い出し)私も人のことは言えませんが。

 

 さて、ここからするべきことは決まっている。

 冒険者登録だ。

 異世界に体一つで転生したなら、冒険者にならない選択肢はない。

 町に入るとき、警備の兵士からギルドの場所は確認済み。

 確認したとき、お嬢ちゃんが行くところじゃないといわれたけど、そんなこと言われても中身は元男なのだから仕方ない。

 多分、社会人生活で身についた敬語と一人称「私」のせいで、そこまで立ち振る舞いに違和感なかったんだろう。

 ともあれ、冒険者ギルドに入ると中には様々な冒険者が思い思いに行動をしていた。

 時刻はおそらく朝九時頃、たぶん一日の長さは前世と変わらないとおもうので、そう違ってはいないはず。

 だから、これから冒険にでかけようって連中がたむろしているらしい。

 

 そんな視線が、一斉にこちらへ向いた。

 いや、そこまでまとめてこっちを見なくてもいいじゃないか。

 この世界の女性は、私ほどじゃないけど美人が多いのは町にたどり着いてから気付いているぞ。

 容姿だけなら負けてないんじゃないかって人も、一人か二人見受けられる。

 まあ、衣服まで合わせると明らかに格が違うな、とは自分でも思ってしまうのだが。

 

 そんな異世界転生らしい一幕もありつつも、人に絡まれることはなかった。

 おそらく、場所がギルドであることと、人が多いこともあって良識のある冒険者もその場にいたからだろう。

 私と同じくらい美人なお姉さんが、明らかに心配そうにこっちを見ていたし。

 そんな状況だから少し危惧していたのだが、意外なことに冒険者登録もつつがなく行うことができた。

 容姿と服装から、やめたほうがいいんじゃと止められるかとおもったが、そんなこともなく。

 ちなみに名前は「レン」とした。

 実際の本名は「廉太郎」なのだが、さすがに女性名としては厳つすぎるので。

 いい感じの部分だけ、使わせてもらうこととする。

 

 この世界の冒険者制度は等級によって、受けれる仕事が変わってくるらしい。

 下は八等級、上は一等級。

 特別枠として特級なんてものもあるそうな。

 まぁ、一般的な異世界モノのギルドの範疇だろう。

 ほかにも色々説明は受けたけど、今のタイミングで特筆すべき点はない。

 しいて言うなら、冒険者登録の認証を「魔力」で行うと説明されたくらいかな。

 魔力をギルドが所有する魔道具に登録して、個人認証を行うらしい。

 同時に、そこでいろいろとスキルの鑑定もできるのだとか。

 

 スキルは、本人の適正を示すもの。

 ランクがEからAまであって、Sはないらしい。

 Eがあれば「練習すれば仕事にできる」、Cあれば「一流」とか、そんな世界らしい。

 私の場合は、案の定といった感じのスキル構成だった。

 前世で得意としていたいくつかのこと――計算とか――がEランク、そして水属性魔術の適正が堂々のAランク。

 如何にも転生者って感じのスキル構成じゃないか。

 ただ、一つここで懸念事項。

 私のスキルが水属性魔術一本だったことに、ギルドの受付さんがけげんな表情をしたことだ。

 豪華美少女な私が冒険者登録を申し出ても、一切うろたえなかった、明らかに仕事ができそうな受付さんが、である。

 それに、周囲からも「あちゃー」という雰囲気が漂っていた。

 これは……ちょっと嫌な予感がしてきたぞ。

 

 なお、この世界だとスキルは隠してはいけないものらしい。

 個人情報だと思うのだが、逆に隠すと犯罪をしようとしているのではないかと思われるそうな。

 うーん、文化の違いだなぁ。

 

 

 〇

 

 

 ――大変なことがわかった。

 結論から言えば、この世界において水属性魔術はカスや。

 山岡はんの鮎くらいカスや。

 あれからギルドの資料室にこもって、いろいろと本を読み漁った。

 文字に関しては前世とはまったく違う英語っぽい文字列だが、何故か読めた。

 チートボディ万歳。

 

 ともあれ、まず水属性魔術は()()()()()()()()の魔術だ。

 この世界だと、氷を生み出すには氷属性魔術が必要だし、治癒には治癒属性魔術が必要である。

 私の思っている最強水属性魔術には程遠い仕様だ。

 

 そもそも、魔術師に適性のある人間は複数の属性をバランスよく持っていることが普通、だそうな。

 水属性魔術を持っていれば氷属性魔術を持っているのが普通だし、それが前提だから属性間でも明らかに優劣があるとかなんとか。

 

 まず、魔術で敵を攻撃するときに最もポピュラーな方法が「弾丸を飛ばす」ことらしい。

 水弾とか光弾とか呼ばれている。

 んで、水や火、土や氷といった物理現象として再現可能な属性は、その作用も物理法則に大きく依存するのだ。

 水は「液体」だ、個体と違って水弾が着弾しても、その瞬間に形状を失って飛散してしまう。

 無論、水にだって質量はあるから当たればそれだけダメージになるけれど、どう考えても固体をぶつけたほうが厄介だろう。

 とはいえ風属性や火属性だって固体ではないから条件は同じ……と思うかもしれないが、そうではない。

 火属性は着弾すれば燃焼ダメージが期待できるし、風属性はそもそも戦闘に使うのではなく浮遊や飛行、探知などの風に関する便利な魔術がずらりと並んでいるらしい。

 

 そして中でも、光と闇は別格だ。

 何せ魔術的な不思議パワーで固体である土属性や氷属性と同じような挙動をする上に、味方にぶつかってもダメージがないように設定できる。

 なんだそれ、チートやん! と思うけど、どうも光と闇はこの世界の創造神の属性らしい。

 要するに、露骨な贔屓を受けている。

 実際にはもっと複雑な事情があるんだけど、ここでは割愛。

 

 対する水属性は、本当に不遇としか言いようのない能力をしている。

 水弾は威力が弱いし、治癒や氷を内包してもいない。

 しかも最悪なのは「水を生み出せる」という最大の利便性も別の魔術にお株を奪われていること。

 その名も「生活魔術」。

 小さな火を生み出したり、水を出したり、生活に必要な魔術はだいたいそろう便利な魔術。

 これ、適正がなくても使うことができるのだ。

 自分でも実践したからな。

 

 ほかにも、「この世界の魔術は手元や体の周囲から射出する形でしか使えない」とかさっきも言った「物理的に再現できる属性の魔術は物理法則にしたがう」特性が非常に厄介である。

 どう厄介なのかは、まぁそのうちわかるだろう。

 

 かくして私は、Aランクという恵まれた適性を得ながら、それが不遇オブ不遇であるというハンデを背負うことになってしまった。

 何より許せないのが、私の信じる最強属性である水属性が、環境要因でデバフをくらっていること。

 これは水属性が弱いんじゃない、()()()()()水属性が弱いんだ。

 だから、証明してやることにした。

 

 

 水属性は異世界にて最強である――ということを!

 

 

 ついでに、冒険者としての立場を確立させて、周囲の面倒な視線や厄介ごとをはねのける力をつける。

 そして生きていくのに困らない程度の報酬を得て、安定した生活を送ることを。

 ……後半が現実的なのは、まぁ現代日本人の性ってことで。




水属性が不遇である理由を整理して修正しました。
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