水属性こそ異世界にて最強と証明したいTS転生者   作:うん、でねー?

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2 まぁなんとかやってみましょう

 転生早々、水属性は不遇であるという事実を突きつけられてしまった。

 しかし、それは環境のせいで人々が水属性に目を向けないからに違いない。

 私が水属性は最強なのだと証明すれば、きっと世間の認識も改まるはず。

 ……私がおかしいだけという評価をされそうなことには、目をつむろう。

 

 だが、水属性を最強だと証明する以前に、私にはある問題がある。

 それはこれからの生活だ。

 現状私は、異世界にほぼ着の身着のままで放り出されたTS転生者に過ぎない。

 当然金なんて持ち合わせもなく、明日のわが身を心配しなければいけない状況だ。

 というわけで、まずは冒険者として資金稼ぎである。

 

 一応、私はギルドに来る前()()()()で最低限の資金は稼いでいた。

 しかしこの方法はそう何度も使えるものではない。

 ここぞというとき以外は封印して、基本は地道にお金をためていくべきだ。

 幸い冒険者ギルドがにぎわっていることからもわかる通り、この町は小さいながらもいろいろと仕事があるらしい。

 近くに魔物が多く湧く洞窟があるのも、いいのだとか。

 ダンジョン、というやつだな。

 

 といっても、最初に受ける依頼はさすがに魔物討伐ではない。

 森を抜ける間の検証で、魔物と戦う算段も多少はつけているけれど。

 残念ながら私は元現代日本人、いきなり殺し合いの場に出るのは気が引けた。

 そこでまず受けるべき依頼は――これだ。

 

「受付さん、初心者向けの依頼を教えていただけませんか?」

「……少しまってね」

 

 専門家に聞く、これに限る。

 異世界初心者の私にとって、何が初心者向けの依頼か、なんてわからない。

 一応、等級ごとに受けれる依頼は決まっているし、転生者特有の異世界小説から授かったノウハウはある。

 けれど、実際に聞いてみないと「あれ、私何かやっちゃいました?」が起きかねない。

 いや、どっかしらでは起きてしまうだろうけど、日常的に起こす必要はないのだ。

 

「……この薬草採取はどうかな。まだ冒険者として認められる年齢ではない、見習いの子供も受ける依頼だけど……」

「かまいません。それでお願いします」

「かしこまりました。……いやがらないの?」

「いえ、私が新人なのは事実ですし」

「レンさんの年齢で新人になる冒険者は、こういった地味な依頼を嫌う傾向があるの」

 

 私は一応、十六歳で年齢を登録している。

 冒険者になるにはギリギリ、くらいの年齢だそうな。

 町で受付をしてくれた兵士から、それとなく聞き出しておいた。

 要するにこの年齢で冒険者になるのは、たいていがほかで仕事の見つからなかったごくつぶし……という話なんだろう。

 割とありがちな話だなあ。

 それからいくつかの注意点を受付の人――アイナさんというらしい、話が終わってから名乗られた――に聞いて、私は早速最初の冒険に出かけることとした。

 

 

 〇

 

 

 説明の中で、薬草採取の依頼は一日やれば安宿を取ってトントンくらいの収入になるらしい。

 冒険者ギルドにやってきてからすでに数時間が経過し、時刻は昼を過ぎていた。

 情報収集に資料室へこもったのが、この時間になって冒険に出かけることとなった要因だ。

 まぁ、一応最低限のたくわえはあるので、この程度の遅れは許容範囲内としよう。

 

 薬草採取を行うのは町のすぐそばにある草原だ。

 そもそもこの町は広い草原と、それを開墾して作られた畑に囲まれた平野の中にある。

 薬草採取を行うのは、そんな町と畑の間くらいにある場所で――要するに人の目が届く。

 さらにはそもそも畑に魔物除けの魔道具が使われている関係で、魔物も寄ってこない。

 子供でも活動できる、安全な場所というわけだ。

 

 逆に言うと、一目につくので大っぴらに魔術を使ったりはできそうにない。

 まぁ最低限の検証は森の中でやってきてるわけだから、ここでは薬草採取に徹するべきだ。

 方針としては、数日中はこの薬草採取で金を稼ぐつもりである。

 その間に資料室に行ったりアイナさんから話を聞いたりして、情報を集めるのだ。

 薬草採取は日銭をギリギリプラマイゼロで稼ぐことしかできない。

 早急に収入が収支を上回るように動かないと、あとが大変だ。

 そしてそもそも、これは宿を安宿にして宿代を浮かせたうえでの話。

 安宿っていうのがなぁ、いろいろと不安が残る。

 

 というわけで、たとえ稼ぎが悪くとも、少しでも稼ぐために効率化を図るべきだ。

 そもそも薬草採取の報酬が悪いのは、依頼ではなくそれをとりまく状況に理由があるのではないか?

 この依頼を受けるのは子供かやる気のないごくつぶし系新人冒険者だけ。

 子供の仕事が効率が悪くてもしかたないし、後者はまじめに仕事をしていないだろう。

 そう、それはまるでこの世界の事情で不遇扱いされている水属性魔術のごとく。

 まじめに効率化を図れば、アイナさんの言っていた「ギリギリプラマイゼロ」の状況もひっくりかえせるのではないか。

 

 かくして私は、如何にして薬草採取を効率的に行うか考えつつ、現場に向かった。

 そこでは数人の子供が、せっせと薬草を集めている。

 薬草といえば異世界にはありがちだが、この世界において薬草は「魔力を帯びた草」を指すらしい。

 その魔力を取り出して回復薬などに加工することで、薬草は薬草の効果を発揮するとかなんとか。

 じゃあなんで魔力草とか呼ばれていんないだろう、気になるから今度資料室で調べてみるか。

 ともあれ。

 ようするに薬草を集めるには魔力を察知する必要があるわけだ。

 この世界の人間は魔力で身体を強化することができる、それを応用して視力を強化すると視界に魔力が注がれる。

 結果、注がれた魔力によって周囲に漂う魔力を視認できるようになるとかなんとか。

 ただこの技術、非常に難しい技術のため、かなり訓練した大人でないと十全には扱えないらしい。

 子供たちは魔力による身体強化が満足にできないから、薬草採取は結構大変なんだとか。

 

「ふーむ、効率化、効率化……難しいですね」

 

 独り言をつぶやきながら、子供たちから距離を取って薬草を採取する。

 何やら、子供たちから怪訝な視線を向けられたからだ。

 ただ、これに関しては理由は簡単に想像がつく。

 薬草採取に来る大人は、たいてい子供を邪険に扱うからだろう。

 どう考えても粗野だろうしなぁ、ごくつぶしさん達。

 

「さて、やりますか。確かコツは……魔力に魔力を反応させる、でしたね」

 

 アイナさんの話を思い出す。

 視力強化による魔力の視認、これは簡単に言えば視界から魔力を”放出”することによって可能となる現象らしい。

 人間は身体強化に限らず、魔力を使用するとそれが放出される。

 それらが周囲の魔力と反応する瞬間を、視力強化によって視認するとかなんとか。

 

「……つまり、魔力と魔力がぶつかっていればいいのでは?」

 

 何せ、魔力と魔力の反応は常に行われている。

 ただ視界が強く強化されていないと、それを視認できないだけで。

 だったら、発想を転換するのはどうだろう。

 視界の強化に魔力を使うのではない。

 ()()()()()()()()()()()()()に魔力を使うのだ。

 要するに――

 

「水よ」

 

 私は、魔術で水を生み出した。

 それには私の魔力がたっぷりと含まれており、それを周囲の草に撒く。

 すると私の強化された視界に――鮮やかな複数の色が広がった。

 魔力だ。

 色とりどりの光が、地面を淡く照らしている。

 その中で、ひときわ輝く草があり、おそらくこれが薬草だろう。

 その光景をみて、さらに周囲の子供たちへ視線を向ける。

 私は一つうなずいて、彼らに声をかけた。

 

 

「すいません皆さん、少しいいですか?」

 

 

 ――それから、怪訝な様子の子供たちを何とか説得する。

 明らかにこっちを警戒した様子の彼らだが、私は言葉を重ねた。

 そもそも、これからやろうとしていることは彼らにとって何ら危険なことではない。

 むしろ薬草採取の効率がよくなるから、メリットが多いだろう。

 そのことを丁寧に伝えて――あとはまぁ、ちょっと気恥しいが自分の容姿も利用させてもらった。

 何せ、私が笑みを浮かべるだけで明らかに子供たちは男女問わずドギマギしてしまうのだ。

 そうやって説得を重ねれば、彼らも「まぁそれくらいなら」と私の提案を了承してくれた。

 

「では、行きますよ」

 

 子供たちが、私の指定した範囲から距離を取ったことを確認して、私は水魔術を起動させる。

 

「水の雨よ、恵みをもたらせ!」

 

 詠唱はぶっちゃけ適当だ。

 口にしなくてもいいのだけど、子供たちの前で格好をつけたほうがいいと判断したので、少しだけ仰々しくする。

 すると、私の手のひらから生み出された水が上空へと浮かび上がり――

 ある一帯に()()()()()()

 

「わぁ!」

 

 その光景に、子供たちが歓声を上げる。

 私自身、想像以上の光景に思わず息をのんでしまった。

 

 

 私の水が含んだ魔力に反応して、周囲の草花が色とりどりに光を放つ光景に。

 

 

「見ましたか? 今の場所に薬草があります。それを採取しましょう」

 

 とまぁやっていることは単純だ。

 さっきのように、強い魔力を薬草にぶつけて、反応を起こす。

 こうすれば子供たちでも薬草がどこにあるか一目でわかるし、探す効率も大幅アップする。

 私にとっても、どこに薬草があるかわかればせっせとそれを集めるだけでいい。

 なので、子供たちにそう呼びかけるのだが――私は振り返って、思わず苦笑してしまった。

 

 なにせ、子供たちは一人残らず、私の起こした魔力の光が躍る光景に夢中で、薬草のことなんて忘れてしまっているのだから。

 

 子供だから、と馬鹿にしてはいけない。

 むしろ子供だからこそ、こういう光景で純粋に感動できるのだ。

 なんだか、少しだけうらやましいなぁ……と、内心私は思ってしまう。

 何せ私は――

 

 ――でも、この方法って水属性じゃなくてもできるっていうか、水にぬれたり地面がぬかるむから水属性じゃないほうがいいんだよなぁ、とか俗なことを考えているからだ。

 この方法、絶対風魔術とかのほうが効率的である。

 おのれ、こんなところでも水属性は不遇であるか……許さんぞ、異世界!

 なんて、内心台無しなことを考えつつ、そんなことをおくびにも出さず私は薬草を採取するべく率先して動き出すのだった。

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