水属性こそ異世界にて最強と証明したいTS転生者   作:うん、でねー?

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5 今度こそ水属性にしかできないこと

 宿での一件は我ながら不覚だった。

 男が襲い掛かってくるのはわかっていて、しかも自動反撃が発動することも織り込み済みなのだから、水属性で反撃できるよう工夫しておくべきだったのだ。

 これでは私は水属性最強魔術師ではなく、ただのTS美少女メスゴリラである。

 美少女とメスで女が二回も発生してしまった。

 これからは、気を引き締めて水属性を活用しないといけない。

 

 そして、周囲から男に襲われたことを心配されまくったので、安宿生活も切り上げることとする。

 別の宿で襲い掛かった男を蹴り飛ばし、宿を壊滅に追い込んだ事実があれば、男が私を襲うことはもうないだろう。

 だが、周囲の心配を考えると、ちゃんとした宿をとるべきだ。

 アイナもマオも子供たちも、皆いい子なのだから。

 

 で、それと同時にマオたちからあるものを贈られた。

 それは地味な無地のローブだ。

 デザインらしいデザインはなく、質素。

 だが、少し特殊な素材で作られており、かなり頑丈らしい。

 値段はそこまで高くはなく、私が手伝ったことで効率化した薬草採取の報酬から購入したものらしい。

 

「これで、レンお姉さんが雨に濡れなくて済むです」

 

 と、いわれたらさすがに受け取らないわけにはいかない。

 今後は、ありがたく使わせてもらうとしよう。

 実際このローブの存在は非常にありがたく、以前と比べると明らかに視線の数が減った。

 いずれはどこかで購入する必要のあるものだったが、実害がないので後回しにしていたもの。

 結果として、このタイミングで手に入ったのはちょうどよかったかもしれないな。

 

 さて、安宿を引き払って……というか泊っていた宿が摘発されて別の宿に移ったことで出費が一気に増えた。

 効率化した今の薬草採取であれば、なんとか費用を賄えなくもないが、やはりここは次の依頼を受けるべきだろう。

 ただここで問題が発生する。

 

「薬草採取以外の……正確に言うと安全地帯の外で行う依頼は、七等級かつ成人している冒険者の同伴が必要になるんだよ」

「今の私は八等級だから、その依頼を受けられない……と」

「昇進条件は満たしてるから、研修期間の二週間を過ぎれば七等級に上がれるんだけど……」

 

 そもそも依頼が受けられなかったのだ。

 安全地帯、すなわち例の魔物除けが施された畑を含む町の範囲から外れた場所では、魔物との遭遇が発生する危険がある。

 そこで依頼を行うには、保護者の同伴が必須。

 二週間――つまりあと一週間でこの縛りは解けるのだが、それまでの一週間をどうするか。

 宿をいい宿にしてしまった以上、薬草採取だと貯金が増えない。

 完全に足踏みになってしまう期間が発生するわけだ。

 まぁ、そんな生き急ぐ必要はないかもしれないけど、私はふと思いついてしまった。

 

「町の外に出るには、七等級の冒険者と成人の同伴が必要、でしたよね?」

「ん? うん」

「ちょっと私も資料でギルドの規則を読んでいたのでその記述は覚えているのですが――この二つの条件、実は同時に満たす必要はないみたいなんです」

 

 つまり、どういうことか。

 私はちょうど子供たちを連れてギルドにやってきたマオちゃんに声をかけて、事情を説明。

 そしてからくりを二人に明かした。

 

「七等級冒険者であるマオと、()()()()()()()が同伴すれば、外に出ることは規則上問題ありません」

「……な、なるほどです?」

「あ、た、たしかに……そんなグレーゾーンな方法、考えたこともなかったけど」

「本来ならする必要のない規則の悪用方法ですからね」

「悪用って言っちゃったです!」

 

 なんというか、前世で培った迂遠な言い回しをする技術がこんなところで役に立つとは思わなかった。

 現代社会では必須とも言えるグレーゾーンの悪用方法が、素朴な異世界に襲い掛かる……!

 

「せっかくですし、子供たちに外の世界を見せるということで親御さんからも許可を取ってみるのはどうでしょう」

「それ、いいです! みんな最近冒険者活動に対する熱意が高まってるです。きっとみんなも賛同してくれるです! レンお姉さんが同伴してくれるなら、母さんたちも同意してくれるです!」

「レンさんの物理があれば、魔物も怖くないしね」

「あの、アイナさん? 私はあくまで水属性魔術師なので、そこは平にご容赦願いますね?」

 

 というわけで方針が決まり、さらにはマオちゃんが爆速で親御さんと子供たちに許可を取ったことで今日の仕事は町の外で行うことに決定した。

 しかし、子供たちはともかく親御さんにも一発OKをもらえるあたり、どれだけ子供たちの間で私の評判がいいんだろう。

 怖くもあり、こそばゆくもある事実だ。

 

 

 〇

 

 

 さて、外で受ける依頼はすでに決めてある。

 動物を狩ることだ。

 このあたりにはミコスラビットと呼ばれるウサギが生息している。

 ミコスというのは町の名前。

 このウサギ、かなり数が多いうえに肉がおいしいと評判なのだ。

 結果として狩猟依頼の報酬は、七等級が受けれる依頼の中では断トツ。

 ただまぁ問題もあって……

 

「見つからないです、ミコスラビット」

「草原が広すぎるのですよね」

 

 ウサギがみつからないのだ。

 というか、ほかの七等級冒険者もミコスラビットの狩猟は請け負っていることが多い。

 数が多い分競争率も高いから、なかなか狙ってウサギを見つけることは難しいだろう。

 だからこそ、知恵と水属性を働かせるのが私の仕事なわけだが。

 

 その後、しばらく子供たちに町の外を眺めてもらいつつミコスラビットを探し、数匹捕獲することができた。

 といっても子供たちは十人単位でいるし、数匹じゃ薬草採取と比べても効率はほとんど変わらない。

 せめて全員が一匹ずつ捕まえられないといけないのだが、捜索を続けているうちに私はちょうどいい場所を見つけることができた。

 

「ここにしましょう」

「レンお姉さん、何をするです?」

「みていてください」

 

 言いながら、私は見つけた場所――草原のちょっとしたくぼみに、水魔術を使用する。

 すると勢いよく放たれた水が、一瞬でそのくぼみを満たした。

 つまり、即席の水場が作られたのである。

 

「ミコスラビットは水場に集まる、とギルドの資料にありました。つまり、ここへミコスラビットをおびき寄せます」

「な、なるほどです」

「ついでに即席の罠を作りつつ、別の方法でも報酬を稼ぎましょう」

 

 先ほどウサギを捕獲するとき、子供たちにやってみてもらったのだが、結構苦戦しているようだった。

 ウサギは小さくてすばしっこく、子供たちでは手に負えないことがあるのだ。

 そこで、水場にちょっとした罠を設置する。

 これにも、水属性魔術を使う。

 具体的には、水場の周囲に少しの間、強めの雨を降らせたのだ。

 

「ぬかるんだ地面に足を取られれば、ウサギの動きも鈍るでしょう」

 

 そして子供たちは、薬草採取の依頼をこなすために汚れてもいい頑丈な靴を履いている。

 多少のぬかるみでも、そこまで足を取られることはない。

 ついでに、こうして水で地面を濡らしたということは、そのあたり一帯の薬草が反応するということだ。

 

「というわけで、皆さん。薬草を採取しながら、水でぬかるんでいるところを踏んでさらに緩くしてください。そこにウサギを追い詰めて捕獲します」

 

 子供たちから、一斉に元気な声が聞こえてきた。

 薬草採取に関して、彼らはほとんどプロみたいなものである。

 効率よく薬草をあつめていく。

 これを副収入にすれば結構な実入りになるだろう。

 

 かくして、水場とぬかるんだ地面という即席の水属性罠が完成。

 ミコスラビットを集めるべく、私たちは一度その場を離れる。

 ついでに、もう一つ別のくぼみを見つけてそこに同じ仕掛けを施すのだ。

 こうすることで、あとはこの仕掛けが施された二ヵ所を行ったり来たりして、ミコスラビットを集めればいい。

 

 二ヵ所目の罠設置が終わり、一ヵ所目に戻ると結構な数のミコスラビットがいた。

 ここからは、まず子供たちに泥の罠を利用してミコスラビットを捕まえてもらう。

 そして逃がしたミコスラビットは、私が仕留めるのだ。

 

「よし、皆さん頑張ってください!」

 

 私が小声でゴーサインを出すと、子供たちは思い思いにウサギのほうへ走っていく。

 できるだけ音は立てないようにしているものの、一斉に子供たちが襲い掛かったらさすがにウサギも気づくだろう。

 そこで、逃げようとしてぬかるんだ地面に足をとられるわけだけど、子供たちはその瞬間を的確に狙って狩猟していく。

 動物の首にナイフを突き立てることもいとわないのだから、そこはさすがファンタジー世界のメンタルというかなんというか。

 

「レンお姉さん、四匹逃げました!」

「わかりました、あとは任せてください」

 

 マオちゃんからの報告を受けて、さっそく私も動く。

 逃げていくミコスラビットたちに向けて手をかざし、魔術を起動させるのだ。

 

「水弾!」

 

 生み出される四つの水の弾丸。

 私の頭くらいの大きさはあるそれが、一気にウサギたちへと迫る。

 そして、着弾。

 ばしゃあんというすごい音がして、ウサギは少し吹っ飛んだ。

 

「やったです!?」

 

 フラグを立てないでマオちゃん、と言いたいところだけど問題なく倒している。

 ウサギが、起き上がる様子はない。

 子供たちから水魔術でも動物って倒せるんだ……という声が聞こえる。

 なんだか失礼な物言いだが、この世界で水魔術を攻撃に使う奇特な人間はほとんどいないようなので、知られていないだけなのだろう。

 

 水魔術は火魔術のように対象を焼けないし、土と比べて質量は全然ない。

 だが、当たれば結構な衝撃にはなるし、でかい水が生物の顔にぶつかればあることが発生する。

 ()()だ。

 いわゆる鉄砲水というやつで、砂漠で人が溺死する原因と同じ事が魔術でも起きる。

 ただ、結局間接的な殺害方法なので、ほかの魔術と比べると効率が悪い。

 でかい水弾を生み出してぶつければいいんだけど、それにはかなりの魔力が必要になるそうな。

 私ならそれも可能だけど、普通の魔術師ではなかなか用意できない量だ。

 そもそも今の寸分たがわず水を相手にあてる技術だって、スキルのランクが高くないと難しいらしい。

 的を外して掠めただけに終わると他と比べて相手にダメージがほぼ入らない関係上、やっぱり水属性は他と比べて不遇だ。

 

 とはいえ、こうしてウサギを水属性特有の方法で捕獲できたことは事実。

 これで少しは、水属性の有効性が証明されるといいのだけど。

 ちなみに、私が生み出した水場は私が魔術を解除すれば消える。

 こういうところで環境に影響を与えないのも、水属性の強み……のはずだ。

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