水属性こそ異世界にて最強と証明したいTS転生者 作:うん、でねー?
さて、異世界にやってきて二週間、無事に七等級へ昇格した。
これで受けれる依頼は一気に自由度を増し、ある程度生活は安定するだろう。
まぁ、一番いいのはミコスラビット狩りなんだけど。
ただそうなると、一つ問題が発生する。
「おめでとうございますです、レンお姉さん! これで同じ七等級です!」
「ありがとうございます、マオちゃん。何だか少し気恥ずかしいですね」
「……ああでも、そうなると私達とは一緒に行動する理由がなくなっちゃうです」
というわけで、子供達とお別れになってしまうのだ。
嬉しそうにお祝いしてくれたマオちゃんが、すぐにしょんぼりしてしまった。
これの問題は、子供達の依頼報酬が一気に少なくなってしまうということでもある。
私という恩恵を半ば一方的に受ける立場だったわけだから、仕方ないと言えば仕方ない。
だが、いくらなんでもこのまま放り出すことは、私の良心が許さなかった。
「そうですね、私はマオちゃんたちとは別行動になりますが、私なりに残せるものは用意しておきました」
「残せるもの……です?」
それは一言で言うと、水差しだ。
別に特別な水差しというわけではない、町の商店でそこまで高くはない値段で販売していたものを三つくらい購入しておいた。
これを何に使うかといえば単純で、草に水を上げるためのものである。
ただし
そう、この水差しで水属性魔術の水を草に与えると、魔力がそれに反応して光るのだ。
果たしてそんなこと、本当にできるのか?
疑問に思うのも無理はない。
実際、多少なりともコツが必要だ。
具体的な話をすると、この世界の魔術を発動するために必要なものはイメージである。
どう言う魔術を発動したいか脳内に明確なイメージを描き、それを魔力で表現することで魔術は発動するというわけ。
魔術系スキルのランクが高いと、このイメージが割と適当でも魔術を発動できるらしい。
逆に言えば、低ランクでもちゃんとしたイメージさえあれば、魔術は発動する。
そしてそれは詠唱や道具で補助が可能なわけだ。
「今回、私達が発動させたい魔術は、魔力が反応するくらいたっぷりの魔力を含んだ水を生み出す魔術です。そしてそれによって、魔力を含んだ草木は地面から伸びてきます」
「そのイメージを、水差しで花壇の花に水を上げるイメージで再現するですか」
「はい。この方法であれば、水属性魔術のスキルを持っていれば誰でも、魔力を反応させることが可能です」
言ってしまえばこれは、薬草を見つけるための全く新しい魔術だ。
水差しという杖を使ってイメージを膨らませて水を生み出す。
この世界では魔力とは力の源というイメージが根付いている。
それを、花に水を与えるイメージで補助すれば、たっぷり魔力を含んだ水を生み出せる。
「事前に、水属性適性のあるクラオくんとシェネちゃんに手伝ってもらって、効果は実証済みです」
「そうなのです!? すごいです!」
クラオくんとシェネちゃんは、子供達の中で水属性適性を持つ子。
この世界、魔術の適性を持っている子供は結構な数おり、十人いれば二人くらい水属性の適性をEランクでもいいから持っている子はいる。
と言うわけで、そう言う子に私のやっている魔力反応を代わりにやってもらうのだ。
これのいいところは、クラネとシェネが成人していなくなっても、別の子に引き継ぎができると言うこと。
本当に簡単な魔術だからな、こっちは冒険者ギルドの職員……つまりアイナの伝手で紹介してもらったEランク水魔術使いに同じことができるか試してもらった。
子供たちにやり方を説明してもらって、だ。
なんかその人がアイナに「よかったね」と言っていたのが印象的だった。
そして何より、水魔術の普及に繋がるのがいい。
この世界でも、草木に栄養を送るイメージがあるのは水くらいなものだ。
土魔術でも似たようなことはできるかもしれないが、イメージは間違いなく水魔術より複雑だろう。
我ながら、子供達に残せるものとしては最高のものを用意できた気がするな。
まぁ、別にこれから子供達と交流がなくなるわけではないんだけど。
特にマオちゃんからは、あることを誘われていた。
一緒に冒険者パーティを組まないか、と言われたのだ。
冒険者パーティといえば、冒険者の定番。
私は動きやすさと周囲の視線を考慮して、一人で行動するつもりだったが、マオちゃんなら話は別だ。
ただ、本人曰くあることがネックなのだと言う。
「私、レンお姉さんよりずっと弱いです。だから対等なパーティを組むと足手纏いになっちゃうです。だから私を師弟にして欲しいです!」
「師弟……と言うと、あれだっけか」
「はい。上位の冒険者パーティに見習いとして参加して経験を積ませてもらうやつです」
師弟、以前アイナから教えてもらった制度だ。
この世界の冒険者は同年代の子供達でパーティを組むか、年上冒険者パーティに弟子として加えてもらうのが定番らしい。
大きな町だと前者が主流だが、ミコスの街は小さいので後者が主流なのだとか。
弟子になったら、定番の雑用をする代わりにご飯の面倒を見てもらいつつ、冒険者として修行するのだとか。
マオちゃんは優秀だからすでにこの街の冒険者パーティで引くて数多だが、それでも私とパーティを組みたいらしい。
「弟子を取るには、私の等級が第四等級まで上がらないとダメなのですが、もしマオちゃんが成人するまでに私が四等級になれなかったら、マオちゃんを待たせてしまいますよ?」
「それでも、レンお姉さんとパーティを組みたいです! だ、ダメ……です?」
「ダメということはないですが……」
むしろマオちゃんは優秀だから、マオちゃんからそう言ってくれるなら私も嬉しい。
しかしなんと言うか、そうなると私も頑張って冒険者をしないといけないな。
第四等級は、そこまで上がれば冒険者として一流と周囲から見られるようになる。
これが結構、ハードルが高い。
しかしあれだな、アイナはマオちゃんがこう言い出すことを想定して私に師弟制度の話をしたな?
「そうですね、私としてもマオちゃんが成人するまでに第四等級を目指しましょう。お互いに、大きな目標ができましたね」
「あ……はいです!」
私の了承を聞いて、マオちゃんは顔を輝かせながら頷くのだった。
◯
かくして私は再び一人で行動することになった。
アレだけ賑やかだった私の周囲から、子供達の姿が消えるのは少し寂しい。
だが、残念がってはいられない。
マオちゃんとの約束のため、私はできるだけ早く等級を上げなくてはならないのだ。
素早く等級を上げる方法は二つ。
一つは真面目にコツコツ依頼をこなすこと。
これまで私は週六ペースで働いてきた。
あんな感じであくせく働けば、等級はそこそこ早く上がっていくらしい。
だが少し待ってほしい、私は別にそんな社畜精神に溢れた人間ではないのだ。
アレは早急に生活を安定させないと行けないからやっただけで、マオちゃんとの約束がなければ私はしばらく七等級でぬくぬくしたはずである。
というか、約束があっても勤勉に働きたくはない。
そこでもう一つの方法を選択することにした。
もう一つの方法は、魔物を倒すことだ。
といっても、魔物討伐の依頼は六等級からでないと受けれないし、受けるにしても上位等級の冒険者の同伴が必須。
だが、
ようするに、偶発的な魔物との遭遇が発生し、それを討伐した場合は七等級でも魔物を討伐したことになるのだ。
ただし、七等級だと魔物と遭遇する危険性の高いエリアには入ることが許されていない。
もし入ったら、逆に信用が落ちて昇級が遠のく。
行けるのはせいぜい、ミコスラビットが出現するような草原エリアだけ。
逆に言えば、ミコスラビットが出現する草原エリアに魔物が出現し、これを討伐する場合は問題ない。
そこで私は、ある方法を考えた。
アイナにも確認して、規則の上でもこの方法が問題ないことは確認済み。
無論、それによって私以外に被害が出れば、一発冒険者登録を剥奪なんてことになるわけだが。
被害が出なければ問題ないのだ。
よって私は――
魔物が出てくるエリアのすぐ近くのくぼみに、水場を作成することにした。
本格的な悪用の始まり。
前回のはジャブですよジャブ。