水属性こそ異世界にて最強と証明したいTS転生者 作:うん、でねー?
この世界の魔物は魔石を持った生命、と話をした。
それはすなわち、魔石を持っていない生命は魔物ではないということだ。
何を当然の話を、と思うかもしれないが、これが結構大事になってくる。
魔石は主に魔力で構築されている、これに力を蓄えると魔物はより強力になっていくのだ。
ゲームのレベルアップシステムが魔物に適用されている、と考えればいいだろう。
逆にそれ以外の生命――それこそ人類種には、こういったレベルシステムが存在しない。
なんだか普段のゲームとはあべこべのシステムで、変な感じになるな。
まぁ、人類種にはスキルと呼ばれるこのハンデをひっくり返す、別種のチートがあるから問題ないのだけど。
ポイントは魔石に魔力を溜め込むという点だ。
これ、今まで私がやってきた方法で魔物を集められそうじゃないか?
そうだね、魔力をたっぷり含んだ水場を用意すれば、そこに魔物が集まるね。
どう考えても普通にやったら危険すぎるこの方法だが、ギルドの規則には特に罰則がない。
七等級の私が、魔物の居ないエリアでやるから危険になるけど、本来なら危険な方法ではないからだ。
だって、そんなことができる人間は普通、上位等級の冒険者だし。
行う場所も、魔物の出るエリアで行うのが普通だから。
アイナは私が「いい人」だと言っていたけど、本質はこういう危ないことにも手を染める人間なのだ。
まぁ、そのアイナには事前に相談して、根回しというか調整はしてあるんだけど。
そもそもアイナ曰く、「こういう方法は割と皆やってる」とのこと。
なにせ罠を仕掛けるだけなら、水魔術じゃなくてもできるのだから。
なんなら昔、小説の中でそういう方法で効率的に昇級した冒険者がいて、同じような方法が流行ったこともあるのだとか。
やっても犠牲になるのは実行した本人だ。
だから自己責任でやれ、ということらしい。
異世界特有の命の軽さが、こんなところで私の倫理観とズレを起こしているようだ。
ちなみにこの世界は生活魔法と魔石のお陰で活版技術も発展しているので、結構色々本を読めるし前世のラノベみたいな小説もあるとのこと。
生活が安定したら、そういう本に手を出したいものだ。
というわけで早速、水場を作って少し離れたところから魔物がやってくるのを待つ。
私が現在いるのはミコスの街から結構離れた森の側。
常人なら移動に数時間かかるところを、身体能力にまかせて三十分で踏破。
周囲に人が居ないことを念入りに確認してから、ちょうどいいくぼみに水を設置した。
そしてまつこと、十分。
「……早いですね」
十分で現れるのか……と思いつつ、現れた魔物に目を向ける。
ゴブリンだ。
緑色の肌と、全長1メートルくらいの背丈。
手には棍棒を持っていて、腰蓑以外は何も身につけていない、あのゴブリン。
生態に関しても異世界の定番そのままらしい。
当然、女をアレしたりする生態もそのまま。
うーん、ゴブリンとヤるのは流石に遠慮願いたいな。
まぁそうなったらイコールそのまま死なので、気にする必要もないんだけど。
何にせよ、集まったからにはやりますか。
「水弾」
口に出して、手を前に突き出す。
向こうはこちらに気付いていない。
なので私の狙いは、一方的なアンブッシュだ。
一回までなら、きっと許される。
放たれた水弾は、一気にゴブリンの頭を狙って飛んでいき、向こうが気づくよりも早くその頭部を覆った。
途端に窒息したゴブリンはしばらく暴れたあと、動かなくなる。
討伐完了だ。
「……人型の魔物を討伐しても、何も思いませんでしたね」
そして思った以上に、私は自分が人型魔物の討伐に忌避感がないことに気がつく。
自分がそれくらいドライだったのかと言われると、そんな気もする。
このチート美少女ボディはメンタル面までチートだったのだ、という気もする。
まぁ、どっちにしても都合は良い。
そういう面倒は、無い方が楽なのは言うまでもないからだ。
それから、私はゴブリンに近づいて心臓の辺りを持ってきたナイフでえぐる。
チート身体能力のおかげで、面白いくらい簡単に切り開かれた臓器の中から心臓の横に存在する器官――魔石を取り出す。
オタクが「クリスタル」と呼称したらいの一番に思い出しそうな見た目をした結晶体。
中には、なんとなく黒い渦のようなものがぐるぐるとしていた。
これはこの魔石が闇属性であることを示すもの。
炎であれば火が揺らめいてるし、土だったら小さな石がコロコロしている。
魔石には属性があって、魔物の能力によって変化するのだ。
ゴブリンなら闇属性、というのはなんとなく直感的に「だろうなぁ」という気がするものの。
闇属性? という気もする。
確か私が調べた限り、ゴブリンの魔石は大半が土属性だったはず……
「あ、消えました」
魔物は魔石を取り出すと、消滅する。
魔石を持つ生命が、本来の生命の法則から外れた存在だからだ。
まぁ、ありがたいと言えばありがたいけど、だったら死んだ時点で消滅して魔石だけ残してくれ……と言いたい。
ただ、この仕様のおかげで獣系の魔物は剥ぎ取りができる。
剥ぎ取る部分のない魔物だけ、死んだ時点で消滅してくれ……というのがこの世界の総意だろう。
何にせよ、私はそれからゴブリンを何匹も狩った。
狩っていく度に、違和感は膨れ上がっていく。
なんか、現れるゴブリンのサイズがどんどん大きくなってるのだ。
当然、取り出した魔石は闇属性。
普通、ゴブリンの属性は地属性である。
なぜ地属性なのかは諸説あるが、どこからともなく石の棍棒を取り出して武器にしているからではないか、というのが最有力の説。
種類によっては、石の棍棒を持ったまま生まれてくるゴブリンもいるらしい。
それを産み落とす母体の負担は、考えたくないな。
私は気になったので、一旦水場を消してみる。
これで魔力は霧散するので、ゴブリンはやってこないはずだ。
実際、暫くの間は消される前の魔力を感じたのか数匹ゴブリンがやってきたけれど、やがて現れなくなる。
ただ最後のはなんか……ゴブリンではなくない? という大きさだった。
というかどうみてもオークだった。
異世界特有の生物、なんとなくゴブリンの上位っぽい強さの存在。
これは……この森に何か異変が起きているな?
いや、アイナからそんな話は一切聞いていないのだけど。
「しかしちょうどいいですね、ちょっと試してみますか」
本来ならこのオークも窒息死させればいいのだけど、私は自分の体の動きを確かめるために直接戦ってみることにした。
ここまでのゴブリン解体で、戦闘に対する精神的な忌避感が薄いだろうことが想像できたというのもある。
であれば、このチート美少女ボディの性能は、どこかで測っておきたい。
私が姿を見せると、ぐおおとオークが吠えたのを見て、そのまま駆け出す。
結構な距離があるものの、それは全速力への滑走路にしかならない。
一気に距離を詰めると、私はオークの土手っ腹に拳を叩き込んだ。
結果――
オークは凄まじい勢いで吹っ飛んで、動かなくなった。
ええ。
そんなに。
いや、可能な限りの全力を打ち込んだつもりだけど。
まさか一撃で死ぬとは思わないじゃないか。
これだと水魔術の真価を発揮することが出来ない。
私は脳筋インファイターではなく、水属性魔術師なのだ。
そう思いながら、慌ててオークのもとへ駆け寄る。
するとそこには――ピクピクと痙攣して、けれどもまだギリギリ息のあるオークがいた。
なんだ、死んでいなかった。
これなら水魔術でトドメをさせる。
水魔術師の威厳ヨシ! ということで、水をぶっかけて窒息させて殺す。
そこまでやって――いや、威厳ヨシ、じゃないんだよと冷静になった。
残虐ファイトに気が動転して、更に残虐ファイトを行ってしまったのだ。
いやまぁ、気が動転しても慌てずトドメを刺しに行けるというのは、我ながら一種の適正だと思うけど。
こう、自分の精神性がドライ通り越してサイコ入ってるんじゃないかと思って、少しショックだった。
それはそれとして、魔石を取り出してこのオークも魔石が闇属性であることを確認。
明らかに、何かしらの異変が起きている。
はて、どうしたものかなぁ。