PokéDun LEGENDS 風来のイーブイ 作:ゲーマーN
――シュテン山道初級 7F 無尽蔵の滝*1
中腹側から離れるほどに、反対側の岸が鮮明に見えてくる。湧き水の峡谷。そこから溢れ出た大量の水は、シュテン山の雪解け水と混ざり合い、大きな滝となって谷底へと流れていく。無尽蔵の滝――それが、第七階層の力強くも美しい風景に冠された名前だった。
『おーっし、到着っと!』
「チルッ♪」
対岸へ辿り着いた一人と二匹は、しぶきを浴びて白く磨かれた岩場を辿っていく。すると、目立つ影が一つ。小さく生えた羽とドリル状の尻尾が特徴のツチノコ型ポケモン――ノコッチ。臆病な性格で、視線を感じると尻尾で穴を掘って一目散に逃げ出す⋯⋯はずなのだが、当たり前のように開けた空間で眠っている。
「――先手必勝! 二人とも、ノコッチに目覚めの”スピードスター”!」
「ブイィッ!!」
「チルルゥ!!」
コッパとコズエが同時に”スピードスター”を放つ。不思議のダンジョンに生息する野生ポケモンは、眠っていたとしても傍を通っただけで目を覚まし襲ってくるため、近寄らずに遠距離攻撃で倒すのが基本中の基本。慈悲を与えても仇で返されるのは、もはや一般常識と言っていい。
雨霰と降りかかる星屑の直撃を受けて目を覚ましたノコッチは、己に害なす敵を視界に入れることもなく瀕死状態となり、持っていたものを落として地面の下へと消えていった。
『ほぞんの壺か。良いもんが手に入ったな』
「だね。こっちにはちゃぼんぐりが⋯⋯って、あっ、トラバサミがある!」
『危ねぇな、おい! またワナを踏み抜くところだったぜ⋯⋯』
ちゃぼんぐりを拾おうと腰を屈めたハルトは、進行方向の岩肌に違和感を覚えた。念のためによく調べてみると、周囲に溶け込むように配された岩や白い模様の中に、金属特有の細い縦線が微かに走っている。トラバサミだ。この位置だと、あと何歩か前に出ていれば確実に踏み抜いていただろう。ほっと胸を撫で下ろす一方で、もし気付かなかったら――と思わず想像してしまい、冷たい汗が頬を伝い落ちる。
「⋯⋯急にワナが増えてきたね」
『運が良かっただけか、それとも低い階層にゃワナが出ねぇだけか⋯⋯どちらにしろ、こりゃあ気を抜けねぇな』
ひとまず、この辺りにはトラバサミ以外のワナはないようだ。後付けでない限り、ワナが設置されるのは部屋に限定される。第五・第六階層とは異なり道幅が広く、どこからどこまでが通路で、どこからが部屋なのかが分かりにくい厄介な地形のため、ハルトとコッパは二人がかりで行く道を調べる。特に通路と部屋の境目は、その見極めにも注意を払わなければならない。
実際、次の部屋は軽く見ただけでは部屋だと判断できない複雑な構造で、グースカ寝息を立てていたフワンテのおかげでようやく見分けがついたほどである。
「今度はまきびし⋯⋯それもこんな絶対通る場所に仕掛けるなんて、本当に殺意が高いなぁ⋯⋯」
『こんなの踏んだって大したダメージにはならねえけどよ⋯⋯痛いもんは痛いしな』
「チルルゥ⋯⋯」
ニューラやコマタナと戦いつつ、おそらく四部屋目。左右を川に挟まれた中洲のような部屋の、通ってきた方とは反対側の橋の袂には、先ほどのトラバサミとよく似たカモフラージュが施されたまきびしがびっしりと敷き詰められていた。
空を飛ぶコズエは踏んだことこそないものの、その脅威自体は知っている。大したダメージにならない? とんでもない! あれを踏んだポケモンたちは、みんなとても痛そうにしていた。
「悪いけどコッパ、片付けてくれる?」
『あいよ、”ねんりき”!』
超能力に操られたまきびしがふわりと宙に浮き、まとめて橋の外へ払い落とされる。これで安全に通れるようになった――ハルトたちは中洲の部屋を離れて次の部屋へ。何もなかったのでさらに先へ進むと、部屋の片隅に見慣れた袋が落ちているのを見つけた。辺りにワナはなさそうだ。ギタン袋に手をかけ――
「――メメ!」
「なっ!?」
――なんと道具は メタモンだった!
「モォンッ!!」
メタモン――へんしんポケモン。薄紫色のスライムのような体に、点の目と口だけの虚ろな顔で構成される、極めてシンプルな姿のポケモン。自らの細胞組織を組み換え、どんなポケモンにも細胞レベルでコピーして変身する能力を持つ。変身できるのはポケモンだけでなく、寝るときは石などの無機物に変身することで、他の野生ポケモンたちに襲われないよう身を守っている。
獲物を狩るためか、ギタン袋に擬態していたメタモンは本来の姿へ戻ると、すかさず”すいへいぎり”――青いエネルギーの刃を無防備なハルトへ向けて放ってきた。
「――ッ!?」
右腕で首筋を庇う。息が漏れたのは、何も痛みだけが理由ではない。ポケモンに技を覚えさせる道具であるわざマシンを使用できず、普通は”へんしん”以外の技を覚えないはずのメタモンが、別のポケモンに変身していない状態で他の技を使ってきたことへの驚愕もあった。
『ハルト!? っ……こんにゃろう!』
「メッ!?」
咄嗟に前へ出たコッパが”にどげり”でメタモンを蹴り払う。メタモンはノーマル単タイプ。弱点タイプの連撃をまともに受けたメタモンは、背後の岩壁に激しく叩きつけられ――
――ポーン!
と、投げつけられたモンスターボールに吸い込まれた。コッパが振り向けば、真剣な表情でメタモンの入ったボールを睨み据えるハルトが。一回、二回、三回とモンスターボールが震え、そして完全に静止する。捕獲完了――ふぅ、と詰まっていた息を吐き出した。
「よし! 捕まえ──っつつ……!?」
「チ、チルチルゥ⋯⋯」
「⋯⋯大丈夫大丈夫。これくらいなら、オレンの実を食べればすぐ治るから」
喜びに浸る暇もなく、ハルトは右腕の痛みに呻き声を漏らす。首の致命傷は防げたものの、庇った右腕が深く裂け、血が流れ出ていた。狼狽えるコズエに声をかけて宥めながら、腰の巾着袋から取り出したオレンの実に齧りつく。
辛味、渋味、苦味、酸味……様々な味が一つになった不思議な味わいだ。これだけ混ざれば不味くなりそうなものだが、全てが絶妙に調和し、複雑で深みのある味覚美へと昇華されている。
「うん、美味しい」
果肉を噛むたび、口の中に広がる味とともに、腕の傷から痛みがふっと引いていく。傷ついた体へオレンの実の薬効が染み渡り、失われた活力がじわじわと戻ってくる。十秒も経つ頃には痛みは殆ど収まり、腕の傷跡も嘘のように綺麗さっぱり消え去っていた。
「――改めて。メタモン、ゲットだぜ! ⋯⋯なんてね」
『それはいいけどよ⋯⋯なあ、そんなホイホイ新しいポケモンを捕まえても大丈夫なのか?』
「正直、あまりよくはないけど⋯⋯流石にこのメタモンは見逃せない」
メタモンの変身には、変身開始から完了までの短いながらも確かなタイムラグがある。これは、特性”かわりもの”を持つような変身を得意とする個体であっても変わらず、たとえ擬態に騙されたとしても、その僅かな猶予で体勢を立て直すことができた。
――しかし、このメタモンは違う。素の姿のまま、迷いなく命を狙ってきた。野生のまま放置するのは、あまりにも危険すぎる。
「⋯⋯ま、この子に関しては村に戻ってからかな。今は探索に集中しないと。ほら、そこにまたぼんぐりが落ちてるし」
メタモンが入ったモンスターボールを腰のベルトに収めると、同じ部屋に落ちていた6個のちゃぼんぐりを回収する。すぐ近くの壁には、次の階層への階段と思しき洞窟の入口があったが、中に踏み入るのは残りの部屋をしっかり探索してからだ。
オレンの実が落ちてたりしないかな――と願ったものの、残念ながら収穫はなし。洞窟まで戻ったとき、崖上から襲いかかってきたガケガニがばくれつのタネを落としたが、それだけだ。
『⋯⋯ま、こんなもんだよな。もうちょい良いもんがあれば嬉しかったんだけどよ』
「無いものは仕方ないよ。さあ、そろそろ次の階層に進もうか」
「チルゥッ!」
名前 :???
性別 :なし
種族 :メタモン Lv20
タイプ:ノーマル
特性 :じゅうなん
元ネタ:???
【すいへいぎり】
使用者:メタモン
タイプ:なし
分類 :物理
威力 :100(ポケダンでは威力20。これはアイアンテールと同等の威力)
命中率:90 (ポケダンでは命中率88。中途半端な数値なので90に調整)
効果 :前方3方向1マスに攻撃する。
元ネタ:【青の救助隊・赤の救助隊】より『すいへいぎり』
ハルトの手持ち
・コッパ (イーブイ) Lv26 → 27
・コズエ (チルット) Lv12 → 14
・メタモン Lv20 NEW!!
持ち物
・しゅんそくのタネ
・ばくれつのタネ
・オレンの実
・分身の巻物
・土
・木
・ほぞんの壺[5]:A
・ほぞんの壺[5]:B
・ほぞんの壺[6]:A
・モンスターボール×49 → モンスターボール×48
ほぞんの壺[5]:A
・リンゴの芯
・モモンの実
・モモンの実
・クラボの実
・ちゃぼんぐり×6 → ちゃぼんぐり×10 → ちゃぼんぐり×16
ほぞんの壺[5]:B
・空き
・空き
・空き
・空き
・空き
ほぞんの壺[6]:A
・大きなリンゴ
・しゅんそくのタネ
・ワープのタネ
・バクスイの巻物
・バクスイの巻物
・たまいし×9
シュテン山道初級7F 無尽蔵の滝
・ニドリーナ
・ニドリーノ
・ゴルバット
・メタモン
・ノコッチ
・ニューラ
・フワンテ
・リーシャン
・コジョフー
・コマタナ
・ウデッポウ
・ガケガニ