PokéDun LEGENDS 風来のイーブイ   作:ゲーマーN

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14F シュテン村

 ⋯⋯激闘だった。*1

 

 結果だけを見れば、ハルトたちの完全勝利に映るだろう。アイテム消費は最小限。バクスイの巻物とばくれつのタネを一つずつ使っただけ。コッパもコズエも被弾はゼロで、精々が余波で掠り傷を負った程度。これ以上の勝利は存在しない――そう断じても、誰も異を唱えないはずだ。

 否――正しく言うなら、これ以外の勝利は存在しない、と言うべきか。オヤブンエアームドとの実力差を考えれば、たった一度でも直撃を貰った時点で殆ど詰みだったのだから。

 

「本当は少し休みたいところだけど⋯⋯この階層の探索に移ろうか。野生のポケモンたちが戻ってくる前に、ね」

 

 そう言いながら、オヤブンエアームドの入ったモンスターボールを拾ったハルトは、続けて、その傍に落ちていた小さなタネにも手を伸ばす。ヒマワリのタネを彷彿とさせる白と黒の縞模様に、一本ずつ縦に走った赤と青のライン――この特徴は、かいでんのタネのものだ。

 食べるだけで技を皆伝する――即ち、早業と力業を使えるようになる希少なタネ。特定の技を皆伝させるにはコツがいるが、そもそも無条件でポケモンの技を皆伝できるというだけで、十分すぎるほどの価値がある。

 

「⋯⋯まあでも、今回は即降りでいいかな? いいお土産も手に入ったことだし」

 

『かいでんのタネか⋯⋯確か、オヤブンを倒すと落とすんだったよな?』

 

「そうそう。……コズエ、あとでこれを使って、正しい力業の使い方を覚えてもらうからね」

 

「チルゥ……?」

 

 即降りとは、階段を見つけ次第、巡回を止めて次の階層へ移動する探索方針を指す。久しぶりのオヤブン戦で精神的にかなり疲弊している。別に一度の登山で城の材料をすべて揃える必要もないのだから、無理せず山頂への到達を優先するべきだろう。

 ちょうど次の部屋で階段を見つけたこともあり、その部屋に落ちていた道具類――丸太三本とギタン袋――を回収したハルトたちは、そそくさと第十階層を後にした。

 

 

 

 ――シュテン山頂上*2

 

『おい! ありゃ、もしかして……!』

 

「山頂の村⋯⋯!」

 

 階段――長い吊り橋を渡り切った先には、申し訳程度の広さしかない小さな足場があった。そこは三本の吊り橋が集まる合流点であり、足場の奥からは斜め上へと、石造りの――四本目の橋が伸びている。

 

「すごいね、これは⋯⋯」

 

「チルゥ……」

 

 湧き出る豊かな水を受け止め、外へと放出する不思議な建造物。岩盤に沿って組まれた壁面の各所から水が溢れ、一定の流れを保ったまま下へと落ちていく。人工の形をしていながら、水の動きは自然そのものだった。

 村の入口へと辿り着いたハルトたちが山紫水明な光景に目を奪われていると、不意に二足歩行のカメレオン――いろへんげポケモンのカクレオンを連れたガタイのいい男が声をかけてきた。

 

「シュテン村にようこそ! ここまで来るとはただものではありませんな」

 

「いえいえ、ただの風来人ですよ。……ここに材料を持ってくれば、城の部品を作ってもらえると聞いてきたんですが……」

 

「⋯⋯ほう、城の部品を」

 

 意味ありげに頷いた男は、ちらりと村の奥へ視線を流し、再びハルトたちへと向き直る。

 

「でしたら、ここをずうっと真っ直ぐ行って、門を潜って、階段を上がればよろしい」

 

「ここを真っ直ぐ、ですね。分かりました。ありがとうございます」

 

 遠目にはひとつの大きな施設に見えていたが、どうやら門だったらしい。礼を言い、教えられた通りに進んでいくと、門の前に立つ青年と、その足元で控えるように佇むデルビルが目に入った。

 

「あっ、デルビル」

 

「ええ、可愛いでしょう? 私のポケモンなんですよ。名前はゴロンゴロ・シュテンビッチ・ヒミコダッテ・サンタマリーア・ダイコクダッテ・ヨッテキーナ・イワンイヤン・三世と言います」

 

「⋯⋯なんて?」

 

「ゴロンゴロ・シュテンビッチ・ヒミコダッテ・サンタマリーア・ダイコクダッテ・ヨッテキーナ・イワンイヤン・三世です。⋯⋯長いので、普段はゴロと呼んでいますが」

 

 有名な落語『寿限無』を想起させるほど際限なく連なる名前を一息に告げられたハルトは、あまりの情報量に困惑し、思わず聞き返してしまう。ゴロンゴロ・シュテンビッチ・ヒミコダッテ・サンタマリーア・ダイコクダッテ・ヨッテキーナ・イワンイヤン・三世。寿限無よろしく縁起のいい名前なのかもしれないが、それにしたって流石にこれは長すぎやしないだろうか……。

 とはいえ、人のネーミングにあれこれ口出しするような趣味もない。頭の中でゴロゴロと響き続ける名前を何とか隅に追いやり、「では」と軽く会釈だけ残して青年たちの横を通り過ぎる。

 

「あの階段かな?」

 

『だと思うぜ』

 

 本当に正面。前方にある、ではなく、進行方向の正面そのもの。左右に視線を振って探す必要もない。建物と建物の間、真っ直ぐ歩けば自然と行き当たる位置に階段は据えられていた。

 迷わず階段を上り、上の階へ。左手側には外を見渡せる展望台が設けられており、反対の右奥にはカウンターが構えている。標――木の立札によれば、望遠鏡を覗けば山の麓が見えるらしい。そちらには用事がないため、ハルトはカウンターの方へ向かう。

 

「いらっしゃいませ」

 

「すみません。城の部品を作りに来たんですけど、ここであってますよね?」

 

「はい、こちらで間違いありません」

 

「よかった。じゃあ――」

 

 ――と、ナタネ村で預かった城組み図を巾着袋から取り出す。城の材料と城の部品は各五種類ずつあり、それぞれの組み合わせは以下の通り。一つの施設/構造を完成させるのに、同じ部品が四個必要になる。

 

 本丸 :土 水 木 岩 鉄

 二の丸:土   木   鉄

 内壁 :土   木

 外壁 :土 水

 お堀 :  水   岩

 

 手元にある城の材料は土が一つと木が二つ。設計図に照らせば、内壁の部品を一個作れる計算になる。その旨を伝え、案内された別室の広いスペースに土嚢袋と丸太三本を取り出すと――

 

「これでしたら、普通の(・・・)内壁の部品へ加工することができます」

 

「普通の、というと⋯⋯?」

 

「城の部品には四つの等級がありまして、普通・良質・頑丈・最高、という区分になります。使う材料にも三段階の質があり、それらの取り合わせ次第で、部品の出来が変わるんです。最高の材料だけで仕上げた部品は、簡単にはびくともしませんよ」

 

「なるほど⋯⋯」

 

 良い材料を使えば良い部品が作れる。よく考えれば当たり前のことだ。少しでも高品質の部品を作りたいところだが、今作れるのは品質普通の内壁だけ。仕方がない。ここは諦めて――

 

『ヌンダ! ヌンダ! ヌンダッフル!!』

 

 ふと、ナタネ村を襲っていたポケモンたち――その中でも中心核に当たる3匹の姿が脳裏を過ぎる。イイネイヌ、マシマシラ、キチキギス。実際に戦った感覚としては、普通のポケモンに毛が生えたくらいで、そこまで強くはない――Lvを上げれば十分に対応可能といえど、彼らは紛うことなき『伝説のポケモン』だ。このまま妥協して、最低品質の部品で城を築いてもいいのか?

 

「ねえ、コッパ。イイネイヌは強かった?」

 

『……ああ、強かったぜ。戦いを何も知らねえ奴らからすりゃ、オイラたちが一方的に攻めてるように見えたかもしれねえけどよ。ありゃあ横綱相撲みてえなもんだ。最後、あっちが退いてくれなきゃ、捻り潰されてたのはオイラたちの方だった』

 

「だよね……やっぱり、そうだよね……」

 

 ふうぅぅ……と、深呼吸。誰かの命に関わる問題で手を抜こうとするなんて、自分も随分と腑抜けた考えを抱くようになったものだ。そうやって意識を切り替えたハルトの頭からは、先ほどまでの迷いは完全に消え失せていた。

 

「――すみません。部品の加工はキャンセルでお願いします。その代わり、最高品質の材料について、詳しい話を聞かせていただけませんか?」

*1
【推奨BGM:奥底にひそむもの】ポケモン超不思議のダンジョンより

*2
【推奨BGM:シュテン山頂上】風来のシレン2 鬼襲来!シレン城!より




ハルトの手持ち
・コッパ  (イーブイ)  Lv30
・コズエ  (チルット)  Lv20
・メタモン         Lv20
・オヤブンエアームド    Lv40

持ち物
・大きなリンゴ
・しゅんそくのタネ
・ばくれつのタネ
・かいでんのタネ
・オレンの実
・オボンの実
・分身の巻物
・土
・木
・木
・ほぞんの壺[5]:A
・ほぞんの壺[5]:B
・ほぞんの壺[6]:A
・モンスターボール×45

ほぞんの壺[5]:A
・リンゴの芯
・モモンの実
・モモンの実
・クラボの実
・ちゃぼんぐり×16

ほぞんの壺[5]:B
・くろいろたまいし ×6
・空き
・空き
・空き
・空き

ほぞんの壺[6]:A
・大きなリンゴ
・しゅんそくのタネ
・ワープのタネ
・バクスイの巻物
・空き
・たまいし×9
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