PokéDun LEGENDS 風来のイーブイ 作:ゲーマーN
「――すみません。部品の加工はキャンセルでお願いします。その代わり、最高品質の材料について、詳しい話を聞かせていただけませんか?」*1
「ええ、構いませんよ」
1ギタンの価値にもならない迷惑な頼みだろうに、加工屋の男性は嫌な顔ひとつせず、あっさりと快諾してくれた。曰く、最高の材料は道具袋の空間を二つ消費する大きさで、シュテン山道の中腹以降でしか入手できないという。それも、今日ハルトたちが登ってきた初級の山道ではなく、踏破難易度が高い中級以上の山道に出現が限定されているらしい。
「基本的に最高の材料は上級の山道に落ちています。ただ一つ、注意が必要なのは、最高の木だけは中級の山道でしか取れないということです。上級をいくら巡っても、これだけは絶対に見つかりません」
「中級と上級の山道へは、どう行けばいいんですか?」
「中腹から上級山道への行き方は私どもにも分かりませんが、中級山道の入口は、その危険性からこちらで封鎖しております。ただ、最高の材料をお求めとのことですので、明日皆さんが中腹へ到達された時点で、封鎖を解かせていただきます」
ハルトは一つ頷く。これで中級の山道へ行く――最高の木を確保する目処は立った。となれば、問題は残りの材料だが……。そんな考えが顔に出ていたのか、加工屋の男性は口元を引き結び、僅かに言葉を選ぶような間を置いた。
「⋯⋯実は、このシュテン村から上級山道へ通じる入口はございます。しかし最近、その入口に極めて強力なポケモンが棲み着いてしまい、私どもも対処に苦慮しておりまして。恐れ入りますが、相応の実力を証明していただくまでは――そうですね、中級山道を踏破されるまでは、お通しするわけには参りません」
「そうですか……分かりました」
これについては仕方がない。この村――シュテン村というらしいが――が上級山道への入口を封じているのは、実力のない者を通して無為に命を散らせるわけにはいかないからだろう。危険を承知で虎穴に踏み入るのと、むざむざ死にに行くのとでは、意味が全く違う。余所者だからと命の安売りを黙認するほど、彼らは冷酷ではない。少なくともハルトは、そう受け取った。
「――それと、これは初来店の方へのささやかなサービスです。最高の城作りを目指されるのであれば、こちらもお持ちください。鍛冶屋で不要な砂鉄を鉄の欠片へ加工できるレシピです」
「ありがとうございます」
――ハルトは 鉄の欠片の レシピを 手に入れた!
レシピ:鉄の欠片
砂鉄 1個 → 鉄の欠片 15個
よい砂鉄 1個 → 鉄の欠片 30個
最高の砂鉄 1個 → 鉄の欠片 45個
レシピを見る限り、品質の高い砂鉄ほど多くの鉄の欠片を精製できるようだ。鉄の欠片は、上位のモンスターボールを製造するのに必要不可欠なクラフト素材。品質の低い砂鉄にも――必要数を揃えたあとは最高の砂鉄も――用途があるというのは精神的に大きい。見つけた城の材料が必要のないものだった、という精神的ダメージを多少なりとも防げるうえ、ポケモンの捕獲に有利な上位モンスターボールの素材になるのだから。
「ほかにご用はございますか?」
「えっと……それじゃあ、城の材料の買取はしていますか?」
「はい、もちろんです。こちらが買取価格になります」
手元の帳面を開き、加工屋の男性は買取価格表を見せてくれた。普通の材料は800ギタン、良質な材料は1600ギタン、最高の材料は2400ギタン。手持ちの材料を売れば合計で2400ギタンになる。懐具合も心許ないため、それらをまとめて売却することにした。
「なら、買取をお願いします」
「土が1個、木が2個で、買取額は2400ギタンとなります。よろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です」
ひとまず、今はここまでだろう。情報収集に資金調達。あとはナタネ村に帰るだけ――と、そう考えたところで、ようやく重大な問題に思い至る。
「⋯⋯! そうだ、帰り道!! すみません、麓のナタネ村に帰る方法はありませんか? もしかして、歩いて帰らないといけないとか⋯⋯」
「ご安心ください。奥の部屋にあるイカダ屋から、山の麓へ降りることができます」
「イカダ屋?」
「はい。城の部品を運ぶためのイカダ屋です。……とはいえ、人を一緒にイカダで流すわけにはいきませんので、“テレポート”を扱えるエスパータイプのポケモンでナタネ村までお送りします」
――肩の力が抜ける。徒歩以外に帰る方法があるだけでも十分だが、イカダで流されるわけではないというのも大きかった。もしこの標高から放り出されていたら、どれほど身体が丈夫でも着水の衝撃であの世行き――もとい、次の人生行きになっていたのは想像に難くない。
来た道を引き返し、再びカウンターの部屋へ。奥へ続く通路は人が一人通る分には問題ないが、二人並ぶには足りないほどの幅しかない。それゆえ縦列になり、壁に沿って進んでいく。
「チルチル〜♪」
開けた空間へ出るや否や、コズエは嬉しそうに翼を広げ、白い綿雲のような身体をふわりと浮かせた。軽やかに一周、二周と弧を描いて飛び回り、やがて満足したのか、すとんと三度笠の上へ舞い戻ってくる。
「すみません。イカダ屋で、ナタネ村まで送ってもらえると聞いてきたんですが……」
「おや、こんなところに君みたいな若い子が来るなんて! ええ、このフーディンの“テレポート”で、麓の村までひとっ飛びですよ」
フーディン――ねんりきポケモン。皮鎧のような肩と胸部、鳥のようにY字状に三本指が分かれた足、立派なヒゲが特徴の狐型ポケモン。体色は黄色で、皮鎧の部分が茶色。エスパータイプの代表格といえるポケモンであり、生まれてから体験した全てを覚えているほどの記憶力を有する。
イカダ屋の言葉を受け、人間でいう右の親指とスプーンを立てたフーディンは、自信満々に胸を張って答えた。
「フーッディン!」
「おお、これは心強いですね」
「でしょう? とても頼りになりますよ! 流石に城の部品を”テレポート”させるのは、この子にも難しいですが⋯⋯って、あれ? そういえばあなた、城の部品をお持ちではありませんね?」
「ああ、実は⋯⋯せっかく城を作るなら、最高の部品だけで作りたいと思いまして」
「なるほど。それなら部品がないのも納得です。最高の材料はなかなか見つからないですからね」
軽い応酬が一区切りついたところで、イカダ屋は商いの顔に戻り、改めて問いかけてきた。
「では、”テレポート”で村まで戻りますか?」
「はい、お願いします」
「分かりました。フーディン、皆さんに”テレポート”を」
「フー、ディンッ!」
目を閉じ、瞑想状態に入るフーディン。紫色の光がハルトたちを包み込み、そのまますうっと薄れていく。足元の感触が消え、意識が何処か遠くへと引き寄せられ――そして次の瞬間、目を開けば、そこはナタネ村の西、城の建築予定地だった。
「チルゥ……!」
『ほんっと便利だよなぁ、“テレポート”。なあハルト、オイラたちも“テレポート”を使えるポケモンを仲間にしねぇか?』
「良いアイデアではあるんだけど……ケーシィ、ネイティ、ラルトス、リグレー……あとネンドールもだったかな。“テレポート”を使えるポケモンって、珍しいポケモンばっかりなんだよね⋯⋯」
空を見上げれば、まだ陽は高い位置にある。城の部品を持ち帰っていれば、夕暮れまでに一個くらいは組み立てられたかもしれないが、ない以上はどうしようもない。もう一度登山するほどの余裕もないため、せめて村長に報告だけでもしておこうと、ナタネ村の方へと足を向けた。
ハルトの手持ち
・コッパ (イーブイ) Lv30
・コズエ (チルット) Lv20
・メタモン Lv20
・オヤブンエアームド Lv40
持ち物
・大きなリンゴ
・しゅんそくのタネ
・ばくれつのタネ
・かいでんのタネ
・オレンの実
・オボンの実
・分身の巻物
・ほぞんの壺[5]:A
・ほぞんの壺[5]:B
・ほぞんの壺[6]:A
・モンスターボール×45
ほぞんの壺[5]:A
・リンゴの芯
・モモンの実
・モモンの実
・クラボの実
・ちゃぼんぐり×16
ほぞんの壺[5]:B
・くろいろたまいし ×6
・空き
・空き
・空き
・空き
ほぞんの壺[6]:A
・大きなリンゴ
・しゅんそくのタネ
・ワープのタネ
・バクスイの巻物
・空き
・たまいし×9