PokéDun LEGENDS 風来のイーブイ   作:ゲーマーN

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第1章 シュテン山道初級
5F 新緑の森


 ――ナタネ村 城の予定地*1

 

「いいかい? 城の作り方を説明するぞ。まずこっちへ来てくれ」

 

 村長との話を終えたハルトたちは、そのまま村人の案内で城の建築予定地へと向かった。鬼の本拠地たる鬼ヶ島を遠くに望む海岸とナタネ村のちょうど中間に位置するその場所は、中央に斜めの板橋で結ばれた台地を擁する平坦な地形という、城を築くには申し分のない立地をしている。確かにここに城があれば、防衛線として機能し、鬼の襲撃からナタネ村を安全に守れるだろう。

 

「ここが城の予定地だ。それで――どうやってここに城を建てるかだが⋯⋯」

 

「たしか、山に城の材料が落ちているんですよね?」

 

「ああ。その材料を道中で拾い集めながら山頂を目指してくれ。山頂には山の民がいる。彼らに材料を渡せば、城の部品に加工してくれるはずだ。その部品をここで組み立てれば、次第に城ができていくというワケだ」

 

 なるほど、とハルトは頷いた。一見すると手順が多く煩雑にも思えるが、要はそう難しい話ではない。集めた材料を城の部品に加工してもらい、それを持ち帰ってここで組み立てる――ただ一つ気になるのは、肝心の部品をどうやって持ち帰るかという点だ。おそらくはエスパータイプのポケモンに”テレポート”で送ってもらうのだろう。流石に、自分の身一つで村まで持ち帰れなんていう無茶ぶりはないと思いたい。

 

「次はこっちだ」

 

 村へ戻ると、北のはずれ――通り道の両脇に木の柵を僅かに設けただけの、簡素な門へと連れて行かれた。境を越えた先には、空を衝くように聳え立つ険しい山と、その麓に連なる新緑の森へ続く一本道が伸びている。

 

「ここがシュテン山の入口だ。山にはいろんなポケモンがいるから気を付けるんだぞ」

 

「はい」

 

「それと、何か分からないことがあったら、この『城組み図』を見てくれ」

 

 渡された巻物を開くと、そこには城の設計図とともに、必要な材料や組み立て方、気を付けるべき要点まで細かく書き込まれていた。

 ざっと目を通した限り、城の構造は本丸、二の丸、内壁、外壁、お堀の五つに区分されており、完成させるにはそれぞれ部品が四個必要になるらしい。また、材料にも土・水・木・岩・鉄の五種類があり、部品の種類ごとに必要な素材とその組み合わせが異なるようだった。

 

『よし! 頑張っていこうぜ、ハルト!』

 

「うん、登山開始だ!」

 

 勇ましく掛け声を上げ、二人は揃って山道へと踏み出した。吹き抜ける風に背を押されるたび、地を蹴る足元から土の匂いが立ち上り、木々のざわめきが彼らを迎えるように耳朶を打つ。

 

 

 

 ――シュテン山道初級 1F 新緑の森*2

 

 第一階層・新緑の森――その名の通り、鮮やかな緑に包まれた森林地帯。春を思わせる穏やかな気候と豊かな自然に、木漏れ日が柔らかく降り注いでいる。だが、その美しさは常に危険と隣り合わせだった。

 

「ヒメッ!」

 

「ミネミネッ!」

 

 額の黄色い三日月模様が特徴のクマ型ポケモン――ヒメグマと、警戒心の強さを示すように大きく目を見開いたリス型ポケモン――ミネズミ。突入早々、ハルトたちはその2匹に囲まれた。

 

「コッパ! ”バークアウト”!!」

 

「ブラアアアッ!!」

 

 ”バークアウト”――周囲の敵に激しい音圧を叩きつける、あくタイプの技。夜の闇に溶け込む漆黒の体を持つブラッキーへと進化したコッパは、体中の黄色い帯状の模様を眩く輝かせ、その可愛らしい姿から放たれたとは思えない咆哮で、ヒメグマとミネズミを纏めて薙ぎ払う。もう慣れているハルトはともかく、これが初めての2匹は堪らず耳を塞ぎ、森の奥へ一目散に逃げ出した。

 

「⋯⋯ふぅ。取り敢えず、野生ポケモンとの戦闘は問題なさそうだね。まだ一階だし、この山の何処かにはいるだろうオヤブンポケモンのことを思えば油断はできないけど⋯⋯」

 

『ま、今から考えたって仕方ねぇさ。気楽に行こうぜ。それに、オイラたちなら何とかなるって』

 

「ふふ⋯⋯まあ、そうだね。それじゃ行こうか。今回は城の材料集めが目的だから、階層ごとに隅から隅まで調べないといけないし」

 

 元々、余裕があるときは階層全体を調べるのがハルトたちのスタンスだが、今回は特定の道具を探す必要があるため、いつも以上に入念に探索を行わなければならない。その分手間と時間は掛かるが、焦っても仕方がないので、ハルトたちはゆっくりとした足取りで森の中を進み始める。

 通路を抜け、隣の部屋へ。別の通路の入口の傍らにギタン袋と、もうひとつ。非合同、つまり上下で高さの異なる双円錐の形をした藍色のタネが落ちていた。あれは――

 

「あっ、ワープのタネ⋯⋯いや、高とびのタネだっけ?」

 

『名前なんて別にどっちでもよくねえか?』

 

「じゃ、ワープのタネで」

 

 ワープのタネ、或いは高とびのタネとは、食べると同じ階層の何処かにワープする効果を持つ特殊なタネだ。ワープ先をピンポイントで指定することはできないが、いざという時の奥の手としては十分以上に頼りになる。保険があるのとないのとでは精神的余裕がまるで違う。ギタン袋と合わせて、巾着袋の中へ放り込んでおく。

 さらに、その次の部屋で遭遇したタマタマとケムッソを倒すと、オレンの実を落とした。それに加え、部屋には行動速度を引き上げるしゅんそくのタネが落ちていたので、忘れずに確保する。

 

「⋯⋯これは置いていこうかな」

 

『ちょきんの壺か』

 

「うん。売り物にもならない壺のために、枠を3つも消費するのはちょっとね⋯⋯」

 

 エスパータイプのポケモンの力を借りて作られたハルトの巾着袋は、見た目よりもずっと多くの物が入れられる特別製となっている。内部には20の空間が設けられており、よほど大きな物でもない限り、最大で20個のアイテムを収納することができる。

 ちょきんの壺は、その「よほど大きな物」に当たり、1個で巾着袋の内部空間を3つも使用してしまう。ダンジョンで倒された際に所持金を守ってくれる便利な道具ではあるのだが⋯⋯。

 

「えっと、そっちは最初の部屋に戻る通路だから⋯⋯こっちに行こう」

 

 コの字を描くように二人は階層を巡ってきた。左に行けば最初の部屋に戻ることになるため、右の道を選ぶ。途中の部屋で眠っていたポッポを”でんきショック”で倒しつつ奥へ向かうと、両側に四角石柱が立つ通路に出た。どうやら、これがこの階層の階段のようだ。ハルトとコッパは短く頷き合い、その先へと歩みを進めた。

 

 

 

 ――シュテン山道初級 2F 新緑の森

 

『おっ、幸先がいいな。いきなり階段があるぜ、ハルト』

 

 階層を上がってすぐの部屋に階段があり、おまけにバクスイの巻物まで落ちていた。これは、読めば同じ部屋にいる野生ポケモンを眠らせるというもの。コッパの言う通り、二階の探索はなかなか運の良い滑り出しだ。この階でもハルトたちは、一階と同じように階層全体を回っていく。

 ポケモンの分布はおそらく変化なし。新たにヒマナッツの姿を見かけたが、それも一階ではたまたま遭遇しなかっただけだろう。少なくとも、階層ごとの違いは感じられなかった。

 

「オレンの実が1個に、モモンの実が2個⋯⋯うん、まずまずってところかな」

 

『けどよ、城の材料はサッパリだな』

 

「だね。でも、ここはまだ浅い階層だから。この先どれだけ続くかも分からないし、回復アイテムは多いに越したことはないよ」

 

 第二階層の全ての部屋を巡り終え、二人は再び階段の前へと辿り着いた。道中で拾ったモモンの実は、食べることで毒や猛毒の状態を回復してくれる桃に似た木の実だ。中が空洞になっていて食べられる部分こそ少ないが、ひと口含めば優しい甘さが広がる。少々時間はかかったが、そのぶん得たものは大きかった。

 

「次は⋯⋯三階だね。行こう」

 

『応っ!』

*1
【推奨BGM:商いたるは陰陽の品】あやかしランブル!より

*2
【推奨BGM:鼻歌まじりで森を行く】風来のシレン2 鬼襲来!シレン城!より




ハルトの手持ち
・コッパ  (イーブイ)  Lv26

持ち物
・ばくれつのタネ
・ワープのタネ
・しゅんそくのタネ
・オレンの実
・オレンの実
・モモンの実
・モモンの実
・バクスイの巻物

シュテン山道初級1~2F 新緑の森
・ポッポ
・タマタマ
・ヒマナッツ
・ヒメグマ
・ケムッソ
・ミネズミ
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