PokéDun LEGENDS 風来のイーブイ 作:ゲーマーN
――シュテン山道初級 3F 竹林原野*1
一階から二階にかけては木々が濃くなったが、三階へ向かう道中では逆に木々が薄れ、代わって竹藪が繁茂し始める。そして辿り着いた次の階層もまた、青々とした竹が生い茂る一面の竹林だった。第三階層・竹林原野。入口から覗く小川には、ぷかぷかと浮かぶ大きな蓮――を頭に乗せたポケモン。うきくさポケモンのハスボーが暢気に泳いでいるのが見える。
『こりゃ随分と景色が変わったな』
「ハスボーもいるし⋯⋯この階からは、野生ポケモンの顔ぶれが変わるみたいだね」
こうして数階層ごとに生息するポケモンが変わるというのは、不思議のダンジョンではそう珍しいことではない。地形もまた同じであり、時に両者は予想もつかない形で複雑に絡み合う。全ての階層に統一性を持つダンジョンはむしろ例外であり、よほど短いものか、或いは構造自体が相当に特殊な部類に限られる。
例に漏れず、シュテン山道も階層ごとにそれらが変化していくダンジョンだった。ハスボーのほか、コラッタやニョロモ、イトマル、ドジョッチ、ムックルなど、生物相が様変わりしている。
『⋯⋯この橋が階段っぽいな。場所は頭に入れといて、残りの部屋を見て回ろうぜ』
尤も、拾える道具まで一新されるわけではなく、今のところこの階で見つけたのはギタン袋(中身75ギタン)のみ。経験則から見て、まだ階層の半分ほどしか探索できていないため、あと一つか二つは何かしらの道具が落ちているだろう。
桁の上に木の板を六枚並べただけの桁橋の手前を離れてしばらく、竹藪の合間を縫うように歩いていると――
「チルチル~!」
綿雲のようにふわふわの翼を持つ青い小鳥ポケモン――チルットが、楽しげな鳴き声とともに通路の先から飛び出してきた。ダンジョンのポケモンにしては珍しく敵意がなく、ハルトたちに気付くと一瞬だけ驚いたように身を震わせたが、すぐに警戒を解いて三度笠の上へと舞い降りる。
『おっ、珍しいなーこんなこと。外じゃ大人しいポケモンでも、ダンジョンにいる奴らはたいてい気が荒いのによ』
「確かに⋯⋯。よかったら、食べる?」
「チル♪」
巾着袋から取り出したモモンの実を頭の上に差し出すと、チルットは丸めた翼を器用に使って啄むように食べ始めた。手渡す際に指先へ触れた羽毛の柔らかさが心地よく、ハルトはつい笑みを零す。コッパもそんな光景に毒気を抜かれたのか、どこか呆れたような面持ちで肩を竦めていた。よくまあ、こんな危なっかしい奴が今まで生きてこられたもんだ――と。
「ねえチルット、この辺で、ちょっと変わったモノを見かけたりしなかった?」
「チル~? チル、チルチルッ!」
「こっち?」
小首を傾げたチルットは、可愛らしい羽音を立てて飛び上がり、ハルトたちの前をゆるやかに旋回する。心当たりに案内してくれるようだ。その小さな後ろ姿を追いかけ、先程とは別の、南の川沿いを行った先――僅かに開いた竹藪の隙間でチルットは振り返った。下からそっと手を伸ばし、掌に乗せたチルットが右の翼で指し示す方を見てみれば――。
「あっ⋯⋯見て、コッパ。あれってもしかして」
『なんだよ、ハルト――⋯⋯あっ!!』
三本の丸太――ついに、城の材料と思しきものを発見した。三角形状に積み上げられたそれは、巾着袋の内部空間一枠にギリギリ収まりそうな大きさを有している。このサイズともなれば、巾着袋と同様に空間が拡張されており、名前通り一定数のアイテムを中に保管できる“ほぞんの壺”には入れられないだろう。
「コッパ、”ねんりき”で入れるのを手伝ってくれる?」
『あいよ、袋の口しっかり開いとけよ』
ハルトが巾着袋の口を開くと、コッパは“ねんりき”で丸太をふわりと持ち上げ、そのまま袋の中へと滑り込ませた。袋口の広さも丸太の大きさも、物理法則を完全に無視しているが、ハルトたちにとっては今更驚くようなことでもない。
続けて残る二本も押し込み、チルットに礼を言って頭を撫でる。チルットは嬉しそうに翼をはためかせ、まるでそこにいるのが当たり前かのように三度笠の上へ戻ってきた。
「それじゃ⋯⋯この階層も大体調べたし、そろそろ次の階層に行こうか」
『へへっ、やっと城作りがスタートって感じだな』
「チルチルッ!」
一行は来た道を引き返し、北の川沿いに架かる桁橋を渡った先へ。その道中でも、竹藪の陰からニドラン♀やらスカンプーやら野生のポケモンが現れては襲いかかってきたが、コッパと、それからチルットが”スピードスター”を使って援護してくれたおかげで難なく切り抜けられた。
本当に人懐っこいなぁ――などと思いながら、和やかな空気のまま竹林の奥へと分け入るハルトたち。しかしその先、第四階層で彼らを待っていたのは――。
――シュテン山道初級 4F 竹林原野*2
「タッチョーーーーー!!」
「チャッ!?」
「タチョタチョ!!」
オタチが3匹。そのうちの1匹がハルトたちを見つけるや否や、鋭い警告音を放つ。それが合図となり、他の2匹も即座に身構えた。生来の臆病さゆえに、神経質なオタチらしい反応速度――これはもう、戦いは避けられない。ならばと、薄い水色の体毛と冷気を纏う氷の進化形・グレイシアへ進化したコッパは、大気中の水分を凍らせて氷の結晶をいくつも作り出す。
『”こおりのつぶて”だ!』
こおりタイプの先制攻撃技――“こおりのつぶて”。技自体の威力はさほど高くないものの、コッパとの能力差からか、直撃を受けた1匹はごっそり体力を削られた上に、残りの2匹も動きを鈍らせてしまう。これをチャンスと見たコッパは、間合いを詰められる前に数を減らそうと、立て続けに凍てつく冷気を吹きつけ――
「チルッ!!」
刹那、チルットが短く鳴いた。何事かと振り返れば、全身が濃いピンク色で、鉄の前掛けを付けた赤ん坊のような見た目をしたポケモン――カヌチャンが、いつの間にかハルトたちの目と鼻の先にまで迫っていた。
「ヌカチャ!!」
「チルルッ!!」
ガラガラ型のハンマーに銀光を纏わせ、勢いよく振り下ろすカヌチャン。チルットも“スピードスター”で迎え撃つが、フェアリー・はがねタイプのカヌチャンには効果がいまひとつであり、振り抜くまでのほんの僅かな時間を稼ぐことしかできず――
ガリッ!
――けれど、それはハルトが反応するには十分過ぎるほどの猶予を齎した。反射的に身を翻し、すんでのところで回避すると、衣嚢から取り出した“ばくれつのタネ”に歯を立てる。
「――ッ!!」
ばくれつのタネは使い方を誤れば自傷するリスクもある危険な道具だが、その危うさと引き換えに、ただの人間でもLv50級のポケモンを確定二発で仕留められるほどの威力を秘めている。
タネを噛み砕くと同時に大きく口を開くのがポイント。爆風を吐き出すという特性上、口を閉じていれば逆流して体内を焼くことになる。また半端に開くだけでは自らの口腔をも巻き込み、最悪の場合は歯がへし折れてしまう。ヒトカゲが”りゅうのいぶき”を放つときのように、大口を開き、一気に爆風を吐き出す――!
「ヌカッ!?」
まさか人間に――それも、たった一撃で倒されるとは思いもしなかったのだろう。もろに爆風を浴びたカヌチャンは、勢いのまま竹に叩きつけられ、ズルズルと力なく滑り落ちていった。
ハルトは軽く咳払いをして呼吸を整えつつ、視線を正面に戻す。見れば、ちょうどコッパが最後の一匹を倒したところだった。ポケモンは弱ると小さくなる習性を持っている。オタチたちが縮んでいくのを見届けてから、コッパはひと息ついたようにハルトのもとへと戻ってきた。
「コッパ、怪我はない?」
『おう、なんとかな。それよりハルト、そっちこそ問題ねぇか?』
「大丈夫、チルットのおかげでね」
「チルチル♪」*3
カヌチャンの標準的なサイズは高さ0.4m。成人の膝ほどの高さしかないが、その小さな体には侮れない膂力が宿っている。当たりどころが悪ければ骨の一本や二本は容易く持っていかれるし、脳天に喰らえば致命傷も免れない。
よし、とひとつ頷いたハルトは、巾着袋から木製の球体を取り出した。赤と木目の半球を組み合わせた形状をしており、勝手に開かないよう中心の開閉部はパッチン錠で留められている。
「⋯⋯チルット、僕たちと一緒に来ない?」
「チル?」
「僕たち、今は麓の村で城作りをしているんだけど⋯⋯それが終わったら、またいろんなところを旅するつもりなんだ。もし君が嫌じゃなければ、仲間として一緒に来てくれないかな?」
「⋯⋯チル、チルルッ!」
数秒ほど首を傾げて考える素振りを見せたあと、チルットは三度笠の上から飛び降り、羽ばたいてすぐ目の前に身を寄せてきた。続けて、翼をぱたぱた動かして力いっぱい答えを伝えてくる。どう見ても、それは承諾の返事だった。掌に置いたボールへ指を滑らせると、パチンと小気味よい音を立てて留め具が外れる。
「――ありがとう」
チルットの体にボールを押し当てる。青い光に包まれたチルットはすうっとボールの中へと吸い込まれていき――何度か微かに揺れた末、カチッと小さく音がしてロックがかかった。
「チルット、ゲットだぜ!! ⋯⋯なんてね」
そのボールの名前はモンスターボール。野生のポケモンに投げて、捕まえるための不思議なボール。ハルトは再び留め具に指を掛け、捕獲した――仲間になったばかりのチルットを呼び出す。
「それじゃ、まずは君の名前を付けないとね。うーん⋯⋯コズエっていうのはどうかな?」
「チルチルッ!」
「ふふっ、気に入ってくれてよかったよ。これから改めてよろしくね、コズエ」
「チルルッ♪」
新しい仲間を迎えた一行は、これまで以上に意気揚々と探索を進めていった。結果、この階ではしゅんそくのタネとモモンの実1個が見つかり、どちらも回収。他に空腹時でも1個で満腹になる大きなリンゴと、中に土をぎっしりと詰め込んだ布袋を拾うことができた。間違いなく、この土嚢袋が城の材料の一つである”土”だろう。
そうして何事もなく全体を巡り、第四階層を後にする。第五階層へと向かう道程は、それまでとは明らかに様相を変えていた。竹藪の合間から覗いていた山肌は厚みを増し、足元の地面も岩肌が剥き出しになる。竹林の景観が途切れた先――彼らの前に現れたのは、その内に暗闇を湛えた洞、数え切れないほどの坑木によって天井や壁を支えられた寂れた坑道の入口だった。
登場人物紹介
名前 :コズエ
性別 :メス
種族 :チルット Lv10
タイプ:ノーマル/ひこう
特性 :ノーてんき
元ネタ:【アイドルマスターシンデレラガールズ】より『遊佐こずえ』
ハルトの手持ち
・コッパ (イーブイ) Lv26
・コズエ (チルット) Lv10 NEW!!
持ち物
・大きなリンゴ
・ワープのタネ
・しゅんそくのタネ
・しゅんそくのタネ
・オレンの実
・オレンの実
・モモンの実
・モモンの実
・バクスイの巻物
・土
・木
・モンスターボール×49
シュテン山道初級3~4F 竹林原野
・コラッタ
・ニドラン♀
・ニョロモ
・オタチ
・イトマル
・ハスボー
・チルット
・ドジョッチ
・ムックル
・スカンプー
・カヌチャン(4Fで追加)