PokéDun LEGENDS 風来のイーブイ 作:ゲーマーN
――シュテン山道初級 5F 寂れた坑道*1
「昔はここで、金か何かの鉱石でも掘ってたのかな。かなり古い感じだけど⋯⋯」
『だろうな。まぁ今となっちゃ見る影もねぇし、完全に不思議のダンジョン化してるけどよ』
ぽつんと落ちていたバクスイの巻物を拾いながら周囲を見回すハルト。自然に形成された洞窟とは一線を画する光景――人工的に掘削されたことが明白な、かつての坑夫たちが残した採掘の痕跡が至るところに刻まれている。尤も、軽く見ただけでも、残されているのは人の手によるものだけではないのだが⋯⋯。
「⋯⋯これは、ココドラの噛み跡かな? それにこっちはディグダ⋯⋯いや、ミミズズが地面を掘り返した跡⋯⋯? こんなところに棲み着くポケモンらしいと言えばらしいけど⋯⋯」
『なるほどなあ⋯⋯竹林にいたカヌチャンは、まさにここから逃げ出してきたってわけだ』
5個ほど纏まって転がっていた赤い鉱石の欠片――”たまいし”の一つには、小さな歯型が付いている。確証があるわけではないが、おそらくはてつヨロイポケモン・ココドラのもの。また、こんもり盛り上がった土の山と、細長い体を引き摺ったような痕跡からして、ミミズポケモンのミミズズもこの廃坑内に生息しているはずだ。
いずれも金属類を好んで食べるポケモン――身を守るために鉄屑からハンマーを作り、それを持ち歩くカヌチャンにとっては、自らの武器をエサとする天敵中の天敵と言っていい。
「うーん⋯⋯せっかくの坑道だけど、”鉄”の入手は期待できそうにないね」
「チル⋯⋯」
コズエも肩を落として相槌を打つ。坑道へ入ってから四部屋を巡ったものの、見つかるのは野生のポケモンばかり――ズバット、ダンバル、ダンゴロ、モグリュー、そしてサンド。村にいたマルえもんも、元々はこの廃坑で暮らしていたのだろうか。そんなことを考えつつも辿り着いた五ヶ所目の部屋にて、ようやく収穫と呼べるものを一つ見つけた。しかもそれは――
「これって⋯⋯!?」
『マジか、ほぞんの壺じゃねぇか!』
ほぞんの壺――風来人なら誰しもが欲する便利な道具。この壺が優れているのは、他の壺とは異なり自由にアイテムの出し入れが可能なうえ、中身も含めて容量一枠として空間拡張を施した入れ物に収納できるという点だ。持ち歩ける道具の数に制限がある風来人にとって、これほど有り難いものはない。まずは、このほぞんの壺の容量を把握することから。大きなリンゴなど、罠の影響で駄目になるものから詰めてみたところ――
「容量6⋯⋯これ、最大容量の壺だ!」
『激レアってわけじゃねぇけど、それでも店売りのは容量が基本5だぜ? こりゃ、今日は本当にツイてるかもな!』
「チルルッ♪」
なんと、合計で六枠分のアイテムを入れられた。これにはコッパも興奮気味に声を弾ませ、尻尾をぶんぶんと振りながら喜んでいる。予期せぬ幸運にハルトも顔を綻ばせ、壺の表面を何度か撫でてから巾着袋にしまい込んだ。
この調子なら、もっと良いものが見つかるかもしれない。そんな淡い期待を胸に抱き、気合いを入れ直して探索を続ける。けれど、そこから先で新たな道具と出会うことはなく⋯⋯。
――シュテン山道初級 6F 寂れた坑道
「バルバル!」
続く第六階層。岩盤を削り木材で補強した、歪ではあるが正真正銘の階段を登り切った一行の前に、野生のバルキーが飛び出してきた。薄紫色の肌を持つ人間の子供に似た姿。けんかポケモンの分類通りに売ってきた喧嘩を、コッパが高値で買おうとしたのを片手で制し、ハルトはコズエに指示を送る。
「コズエ、”チャームボイス”!!」
「チルルゥ~~♪」
思わず聞き惚れてしまいそうな美しい鳴き声が反響する。閉じられた空間ゆえ全方位から押し寄せる声の波を浴びたバルキーは、脳を掻き乱され、平衡感覚まで狂わせてフラフラとよろめき――それでも根性と不屈の心で耐え抜くと、拳を力強く握り締めて殴りかかってくる。
「バルァァァッ!」
「避けて!」
「チルルッ!」
対して、その場でくるくる回ったり、空中でひらりと身を躱したりと、コズエは見事な身のこなしで翻弄する。やがて疲れが祟ったのか、バルキーの動きは目に見えて鈍くなっていき――
「――今っ! ”つつく”!!」
「チルッ!!」
横合いに身を滑らせたコズエは翼を畳み込み、鋭く尖ったくちばしでバルキーを打ち貫く。狙いすました一撃は鳩尾に深く突き刺さり、そのまま挟み込むように反対側の壁へ叩きつけた。
声にならない声を漏らし体内の空気を吐き出したバルキーが気を振り絞り、ポケモン共通の縮小化能力によって戦闘から離脱するのを見届けたコズエは、「ほめてほめてー」と言わんばかりにハルトの元へと戻ってくる。
「よしよし、よく頑張ったねコズエ」
「チルルゥ♪」
第五階層に入ってからチルットと相性の悪いポケモンだらけで、ろくに戦えず相当鬱憤が溜まっていたのだろう。優しく頭を撫でると、コズエは喉を鳴らし、嬉しそうに身を預けてきた。羽を伸ばす、とはまさにこのこと。抱きつくように、小さな体を目一杯使って甘えている。
「技の名前もしっかり覚えてくれたみたいだし⋯⋯この調子で少しずつ強くなっていこう」
「チル!」
当然だが、ポケモンの技名は人間が考えたものでしかない。野生のポケモンに向かって技名を指示したところで伝わるはずもなく、まずは一から名前を覚えさせる必要がある。それがポケモン使い――いやさ、ポケモントレーナーによるポケモン育成の第一歩なのだ。
第四階層にいた時にコズエの使える技は全て確認済み。技名は教えておいたが、実際どれだけ理解してくれたか不安だった。しかし、先ほどの戦いを見る限り、どうやら杞憂だったらしい。
『ハルト、バルキーがコイツを落としたみたいだぜ』
「ありがとう、コッパ。――クラボの実か。さっきエレキッドを見かけたし、保険にはちょうどいいかな」
でんきポケモン・エレキッドの特性”せいでんき”は、直接攻撃してきた――つまり触れた相手を麻痺状態にしてしまうというもの。クラボの実には、その麻痺を回復させる効能がある。
見た目はサクランボに似た真っ赤な木の実だが、非常に辛く、そのまま食べるよりも香辛料として料理に使われる方が多い。ピリッとした辛味がクセになる、料理初心者でも扱いやすいシンプルな味わいの木の実だ。
「⋯⋯さてと。一休みしたところで、そろそろ探索の続きに戻ろうか」
『だな』
「チルチルッ」
ふぅ、とひとつ息をついて歩き始める。追加で拾ったたまいし4個をほぞんの壺に放り込み、通路で遭遇したドッコラーをコッパとコズエのダブルチャームボイスで見敵必殺し、それ以外にもイシツブテを倒したあと――
ヒュンッ!!
「コッパ!?」
「チルッ!?」
突如、コッパが姿を消してしまう。消える直前に立っていた場所を見れば、渦を描くように緑の八角形が三つ、さらにその外側に赤い八角形が一つ描かれた金属製のスイッチらしきものが。
「――ワープのワナ⋯⋯! っ、ちょっと油断し過ぎてたかも⋯⋯」
シュテン山を登り始めてから一度もワナを見ていなかったこともあって、すっかり油断していたとハルトは反省する。爆破のワナなど、直接命に関わる類のものでなかったのは不幸中の幸いか。とはいえ、今さら悔やんだところで、既に起動したワナはどうしようもないわけで⋯⋯。
同じ轍を踏まないよう、見えているワナはもちろんとして、足元にも注意を払いつつ部屋の中を隅々まで調べる。
「ちゃぼんぐりが6個⋯⋯モンスターボールに関しては大丈夫そうかな。いや、元から問題はポケモンを預ける場所のほうなんだけど⋯⋯」
「チルル⋯⋯」
「大丈夫。コッパならすぐに戻ってくるから。こっちの居場所はテレパシーで探せるからね。下手に動き回るより、大人しく待っていたほうが早く合流できるよ」
不安そうに鳴くコズエを宥めつつ、見つけたアイテムを巾着袋に詰めておく。ラルトスのように特性になるほどではないが、エスパータイプのポケモンなら大なり小なりテレパシーを扱える。エスパータイプのエーフィへ自由に進化できるコッパもそれは同様で、同じフロアにいる味方の位置を感じ取るくらいの技術は疾うの昔に教え込んでいる。
しばらく待っていると、予想通り――数分と経たないうちにコッパが戻ってきた。道中で見つけたのか、口に巻物をくわえており、首を振ってハルトのほうへと放り投げる。
『悪ぃ、待たせたな。土産に拾ってきたぜ』
「お帰り、コッパ。⋯⋯分身の巻物か。これはまた、便利なものを拾ってきたね」
『だろ?』
4体の分身を作り出す分身の巻物。これまで集めた道具と合わせれば、そうそう不覚を取りはしないだろう。⋯⋯尤も、いつどこで何が起きるのか分からないのが不思議のダンジョン。今さっきコッパが踏んだワナこそがその最たる例だ。過信は禁物、用心に越したことはない。
閑話休題。無事に合流を果たしたハルトたちは、第六階層の残りを一息に駆け抜け、次の階層へと繋がる階段を登っていった。
ハルトの手持ち
・コッパ (イーブイ) Lv26
・コズエ (チルット) Lv10 → 11
持ち物
・しゅんそくのタネ
・オレンの実
・オレンの実
・モモンの実
・モモンの実
・クラボの実
・ちゃぼんぐり×6
・分身の巻物
・土
・木
・ほぞんの壺[6]:A
・モンスターボール×49
ほぞんの壺[6]:A
・大きなリンゴ
・しゅんそくのタネ
・ワープのタネ
・バクスイの巻物
・バクスイの巻物
・たまいし×9
シュテン山道初級5~6F 寂れた坑道
・サンド
・ズバット
・イシツブテ
・バルキー
・エレキッド
・ココドラ
・ダンバル
・ダンゴロ
・モグリュー
・ドッコラー
・カヌチャン
・ミミズズ