U.C.0079-10から   作:zaq2

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 U.C.0079.10.某日 ルナ・ツー宙域近郊──

 

 

 薄暗い光しか照らしていない艦橋において、これまた同じく薄暗く映し出されるモニターをぼんやりと眺めていた。

 

 見つめる先に映し出されているのは、自身が座乗しているサラミス級早期哨戒改修型【メイソン・インガム】を旗艦とする艦隊の隊列が映し出されているだけであり、随伴艦となる改レパント級対空兵装強化型の3隻から連なる計4隻の哨戒艦隊が、輪形陣の様相で等間隔に移動している姿が、モニターに映し出している航路となる破線レール上を少しづつだがなぞるように動いている様子を映し出していた。

 

 

 

 サラミス級 早期哨戒改修型【メイソン・インガム】

 

 遠距離観測用レーダーや高解像望遠カメラ等の早期哨戒用の索敵機能をもつ情報収集(ピケット)艦として試験改修とされた艦である。

 

 だが、戦争がはじまり、ミノフスキー粒子の存在というものが本艦の機能を十全に運用させる事をさせなかった。

 

 戦争初期の艦隊戦闘で中破状態となり、からくも生き延びる事ができたが、復旧したあとは高性能レーダーと(アナログではあるが)長距離カメラなどの哨戒用の設備が幸運にも軽微(無事だったともいう)であった為に修復をされ、今では左遷先と揶揄されてもいるルナ・ツー宙域の巡視・哨戒の旗艦として運用する形になっていた。

 

 

 

 また、随伴となっている改レパント級対MS護衛艦【カナリアス】【ナバーラ】【サンタ・マリア】

 

 これらの元となったレパント級は、サラミス級よりもさらに一回り小さくした大きさで、主武装をミサイルとした、いわゆるミサイル艇という代物であった。

 

 だが、こちらもミノフスキー粒子の登場とモビルスーツとよばれる兵器によって、いままでの電波誘導のミサイル群の優位性がほぼ無くなり、前線に投入されてもお荷物という状況であった。

 

 実際に、戦線に投入された同型艦艇の約半数以上が大破・轟沈されるという、敵にとっては脅威にすらなっていなかったとも聞く。

 

 

 その中で、辛くも中破以下で残存したレパント級を多少なりとも何とかしようとしたのかミサイル発射管群のほぼとんどを撤去し、対モビルスーツ用にと実弾の弾幕目的で多連装機銃をこれでもかと増設した。

 

 艦種名も「対MS護衛艦」という大層な艦種名に簡単にとって変わってはいたが、モビルスーツに対して優位性があったのか?といえば、モビルスーツという相手が小さく、さらに高速で高機動ときていては大した結果もだせているとはいいがい付け焼刃でしかなく、結局は前線に投入するにも盾としての役目しかなく、またその見た目から、ついたあだ名は「ハリネズミ」とも揶揄(やゆ)されては"数合わせのお粗末な艦艇"となり下がっていた。

 

 

 結局、いろいろと艦艇を改修・改装を施したとしても「モビルスーツに対応するにはモビルスーツで対抗するのがもっとも有効である」という現実を突きつけられただけの話であった訳である。

 

 

 

 そんな改修艦艇の、いや、左遷艦隊ともいえる編隊が"何もおきない"宙域を進む──

 

 

 

 時折、高性能なレーダーに反応があったりはするが、その度に緊張が走り、確認をとれば宇宙ゴミと呼ばれる物が大半であり、哨戒としての仕事をこなすだけではあるのだが、その緊張の増減が心労というモノを蓄積させていくものであった。

 

 

 そんな艦隊を指揮する立場として、メイソン・インガムの司令席に座乗していた。

 

 

「ナガノ司令、先隊の"サンタ・マリア"から最終定時連絡です。"現時刻において宙域に敵性となる反応は見当たらず、波静か"と」

「ふぅ……代り映えが無い報告だが、気を緩めたくもなる内容だな」

「ええ、まったくその通りで」

 

 

 一息、深々とため息をつき、軽い冗談ともいえるやりとりを行う。

 

 艦隊といっても、4隻による小さな物。

 最小といえなくもないが、運用としては立派な"艦隊"でもある。

 

 その艦隊を指揮するのが、自分こと「ケン=ナガノ」中佐、何の因果か若くして艦隊を指揮する立場となった存在である。

 

 

 自分がまだ佐官教育の段階で戦争がはじり、その後に人手が足りないという事で、あれよあれよという間に荒波に飲まれる様に現場へと駆り出されていった。

 

 なにせ、開戦当初の艦隊戦で上の席がごっそりなくなり、40歳にも遠く及ばない自分が急遽中佐に昇進させられるぐらいなのだから。

 

 

 現場を経験していない新米の時に、後方における兵站部隊運用を確実に行っていた方がまだ気が楽でもあったが、自身が佐官教育の際に作成し提出した、ミノフスキー散布下における強行兵站輸送運用論に目を付けた人物が大きすぎたためか、規模は小さいが艦隊の運用指揮をまかされる恰好となってしまっていた。

 

 

(強行輸送作戦を自分なりにまとめ上げただけなのだが、やりすぎは身を亡ぼすのかもしれないな……)

 

 

 そう思いながらも、モニターを眺める

 

 

「ここ最近はおとなしいものですね、ジオンは」

「"おとなしい"という表現が正しいかはわからないが、戦略的に価値が低いルナ・ツー宙域にまで粉をかける意味が少ないのだろう、例えるならWW2のラバウルの様なものといったところか」

「WW2?これまた古い歴史を。まぁ、それはそうでしょうが……」

 

 

 戦略的に価値が低くなっている宙域「ルナ・ツー宙域」

 ジオン公国から地球を隔てて真逆といってもいい位置する宙域。

 

 この近くにあるのはサイド7ぐらいであり、他のコロニー群からも離れている。

 そのため、戦略的に意味があるかといえば、現時点に前線基地ともなりえる位置には存在しておらず、戦略的にみても資源を消耗してまで占拠する価値も低い。

 

 

(そもそも、その価値が低いと思われるサイド7から反撃の狼煙があがった様なものなのだがな……)

 

 

 付け加えれる話として、自分らが乗艦している艦艇もジオンの主力兵器「モビルスーツ」に対し、対策できているとはいいがたい艦艇でもあるために、相手からしたらいつでも何とでもなる。と思われているのかもしれない。

 

 

(何とでもなる相手……もう、そういう時期は過ぎ去っているとは思うがな……)

 

 

 ルナ・ツーにおいても量産型モビルスーツの生産は始まっている。

 

 が、そららも前線配備が優先されてもおり、この宙域に残っているとしても完熟訓練として使われるのが先であり、急増ではあるがモビルスーツを運用する艦艇に戦時急造の改装が施す余裕がある艦への配備が優先である。

 

 

 そのため、この早期哨戒型のサラミス級や、随伴の「ハリネズミ」と揶揄される改レパント級対空艦に乗せる場所など無いに等しく、情報収集艦と改修艦としてしそのまま運用されているわけでもあるのだが……

 

 

 そんな、現状使いつぶしが効かない宇宙艦の艦隊が、定時の哨戒任務を後続に交代するためにルナ・ツーの制宙権へと静かに入っていった。

 

 

「ルナ・ツー警備部隊から連絡入ります。宙域哨戒の任を引き継ぐとの事です」

「了解した。引継ぎご苦労さまと返しておいてくれ、それと、ルナ・ツー宙域に入ったことを各艦の乗員に通達を、それだけでも多少なりとも気が休まるだろう」

「そうですね、了解しました」

 

 

 そうして、自分たちの艦艇の近くを3つの人型の機械が通り過ぎていく。

 そのシルエットを見ては

 

 

RGM-79[E](GM Early Type)か……慣熟訓練と併用といったところか」

「我々にもモビルスーツが配備されてほしいモノですね。乗せる場所があれば、ですけど」

「……まったくだな」

 

 

 艦長とのやり取りを経て、再び映し出されるレーダーへと視線を向けなおす。

 随伴する他の3隻からも、レーザー通信による今後の指示が通達されるだろう。

 

 

「今回も、何も起きずに済んでよかったよ」

「そうですね」

「クルーには休息をとらせたいが、半舷上陸なのが申し訳ないな」

「それでも十分だと思いますよ」

「だといいがな……」

 

 

 先程のモビルスーツ部隊の母艦となるのか、艦隊近くを過ぎ去っていくサラミス級数隻を眺めていたが、ふと、視界に入ったモニター画面の隅に映る日付に目が行った。

 

 

(来年まで残りわずか(にかげつ)か……)

 

 

 いまの攻勢の勢いからみれば、来年早々には()()()()()()()()()()()()と、そう思うしかなかった。

 

 

 入港の時間まで、残り数時間。

 

 

 入港が終わるまで、何もおきないでくれと司令席に深く座り直し、映し出されるモニターの状況表示を、ただただ見つめ続けていた。

 

 

 




〇設定
 サラミス級早期哨戒改修型【メイソン・インガム】

特徴:
 サラミス級(前期型)の改装艦
 大きな特徴としては、ピケット艦としての役割を持たせるため、索敵機能部を艦橋後方部と艦橋前部下段(対空機銃座撤去までしてある)に搭載。
 主にドローンを使用した索敵・傍受、望遠カメラによる監視など、情報収集能力に特化されている。
 補助兵装ユニット部と下部索敵機能を艦底や格納庫に専用増設する形でとなっている。

 側面部の構造は従来通りのまま残されており、ミサイル発射管および単装メガ粒子砲と側面艦橋はそのままであった。

 また、情報伝達設備に関しては、多様な手段がとれるようになっている。
 (従来の電波式からレーザー通信に光学通信、果てはドローン中継の有線通信など)


戦歴:
 ブリティッシュ作戦においてピケット艦として参戦するが、側面艦橋と兵装関連が軒並み被弾し早々に後方へ離脱し、以降中継艦として立ち回る。
 (ミノフスキー粒子の影響下において役割が限定されたためとも)
 なお、兵装部への被弾はしたが、誘爆する事がなかったという幸運にも恵まれた。
 (ダメージコントロールが成功したためとも言われている)

 その後、機関及び索敵・通信能力は健在だったため、修理も簡易的なままでルウム戦役に中継艦として参戦。
(兵装は艦首上部にある単装メガ粒子砲しか、まともに使えないという状態で)
 後方位置にいたためか、戦火には巻き込まれることもなかった。

 ルウム後は、本格的な修理のためにルナ・ツー工廠に入渠。
 その際、被弾してほぼなくなっていた側面の艦橋部の復元はされず全撤去され装甲板がはりつけられた形になる。
 (これがのちに……)

 なお、修理完了した後にビンソン計画が発動された事もあり、モビルスーツ搭載改装計画の対象から除外された。
 (もともとピケット艦用に改装済みで改装する余地が無かったともいうが……)

 その後は、大きな艦隊戦が行われることもなく、索敵能力が高いためにと哨戒艦としてルナ・ツー所属艦として運用されつづけていたが……



〇設定おまけ
 改レパント級対MS護衛艦【カナリアス】【ナバーラ】【サンタ・マリア】

 レパント級ミサイルフリゲートを対MS用に対空兵装に置き換えた艦艇
 対艦ミサイルのVLSを取り外し、これでもかと対空座を取り付けた代物
 稼働エネルギー的な問題があるため、実弾系の対空座ばかりが取付けられている。

 実際、対MS護衛艦と名をうってはいるが、役に立ったとは言い難い代物にしかならなかった。 



〇おまけ設定2
 RGM-79[E]:GM Early Type
 ルナ・ツー工廠で開発された先行量産型の宇宙用ジム。
 前期生産型ジムとは系列が異なる。
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