U.C.0079-10から   作:zaq2

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「特設輸送部隊……ですか」

「ああそうだ」

 

 

 緊急性の高い話であると通達され、会議室へと呼ばれては「ルナ・ツー」における上官たちの面々が勢ぞろいしているまっただ中に立たされ、最初に告げられたのが自艦隊が特設輸送部隊へと変更する通知であった。

 

 駐留艦隊からも"窓際艦隊"とも"左遷艦隊"とも"お飾り艦隊"ともいわれている自分の指揮下艦隊が、まさかの輸送部隊へという、あまりにもな急変すぎる内容でもあった。

 

 

「とかく、モビルスーツを前線に運ぶための手段が乏しいのが実情である」

「それならば、コロンブス級を最大限活用すれば……」

「その"運ぶ側の数"が足りんと言っているのだ。使えるものは何でも使えという状況だ」

「では、マゼラン級やサラミス級にも搭載できる形にして」

「現在、既存のマゼラン級やサラミス級の格納スペースを活用する形で急ピッチで改装が進めているが、それでも厳しいと試算されている」

「艦上に係留して運ぶという前時代すぎる案まで出ている始末だ」

「それぐらい、モビルスーツを運搬する数が絶対的に足りていないのが実情なのだよ」

「……」

 

 

 ここまで輸送を主としている話と、そこに最近耳に入ってくる12月の大攻勢の噂。

 

 その戦力を加味して推測するできる大攻勢を行う場所といえば、"ソロモン"と"ア・バオア・クー"の宇宙要塞。

 

 今回の変更は、ジオン本国の門ともなりうる"ソロモン"といった所だとは思うが……

 

 私の艦隊に与えれられたのは、その先駆けとしてL-1宙域近郊を経由し、この"ルナ・ツー"にて製造されたモビルスーツ群を搬送()()()()という指令となっている点である。

 

 本隊である虎の子ともなる第三艦隊も総出となる作戦ではあるとは聞かされたが、それでも運ぶための脚が足りないという話は耳にはしていたが、その渡された指示書には、真逆のルートを指示されていた。

 

 

(第三艦隊となるルナ・ツー艦隊は、こちらとは真逆ともいえるL-5宙域のS-4のコロニー残骸に隠れるという内容であるが……これでは、我々は……)

 

 

「君が指揮する艦隊は、モビルスーツを輸送()()()()先遣部隊になると思っていてくれていい。その為、ある程度の武装を融通される形にはなるとは思うが……」

 

 

 改装図案を一通り読み返してみれば、何ともいえない"即興といえる"図案が目に入っていた。

 

 

 なにせ、モビルスーツを乗せるための部分が輸送艇のコンテナユニット区画を無理矢理に艦の側面に引っ付けるという形で、唯一残っていた武装が艦首部にある単装砲群とミサイル発射管の4門のみで、側面部は粗方とっぱらわれる始末である。

 

 しかも、一番の見た目のが変わっているのは、ごっそり兵装が無くなってる箇所の装甲板にはモビルスーツを貼り付ける固定支持具(ブラケット)と、運搬用のカーゴブロックが側面後方に申し訳程度に存在しているのである。

 

 改修計画の一つにあったネルソン級MS軽空母を真似てかと思いたかったが、蓋を開ければ戦時改造としかいいようがないとってつけたよう(パッチワーク)な代物であった。

 

 

「これでは、まともに運用なぞ……」

「言いたいことはわかる。だからこそモビルスーツを運び前線の艦隊への引き渡し任務の()()()()()となる」

「君の指揮する艦隊戦力は()()()()()()()()()()()()()()()()()()が重要なのだよ」

「どちらにしろ、改装は決定している。あとは運用書に目を通してくれ」

「……わかり、ました」

 

 

 艦にも乗らず、前線にも出ない狸たちの戯言に内心思うことはあったが、それを口にする事ができる訳もなく、その会議室を渋い顔しては後にしていた。

 

 

 

 

 これからクルーにどう説明すればいいのかと悩みながら……

 

 

 

 

   *    *    *

 

 

「ヒドイもんだ。まるで、おもちゃのブロックみたいだな……」

 

 

 鉄板の塊ともいえるカーゴスペースと開放型にも見えなくもない平板状の装甲板の側面に無骨に取付けられているソレを視界にとらえ、塗装もされてもいない作業中の「メイソン・インガム」を眺めみながら、そうつぶやいていた。

 

 

「そうですね……」

 

 

 状況確認のためにと同行していた副官と艦長らからも、同意する答えが返ってきてはいた。

 

 

 そうして、その増設されている急造内容をみれば、量産型のモビルスーツが搭載される駐機ユニットが側面装甲板に無理やり設置されていたりと、急造品であると余計に理解させられる。

 

 そんなモビルワーカーを使っての急ピッチな作業風景に、否が応でも渋い顔をさせられる。

 

 

「一番の懸念材料は積載重量が予定より超過という点でしょうか。機動力が殺された様なものですが」

「急造の計算なんぞ当てにできると思うか?最悪を想定すべきであろう」

「確かに……この見た目からでも数値以上の劣悪になりそうですな」

「索敵能力が下がらないようにしてはあるらしいが、それもどこまで信用できるか……」

「そればかりは、実際に確認してみないといけませんな」

 

 

 自分の背後では、副指令と艦長が現状を確認しては推測と憶測めいた議論が続いていたが、それらを耳にしながらもあの指令の真なる点に気付いては、それらをどう伝えればいいかと悩みもしていた。

 

 戦時改装輸送艦という艦種に分別されてしまうともいえる代物になっており、巡洋艦としての役割すらなくなってしまったとはいえ、自分が座乗する旗艦の「メイソン・インガム」に、一抹の寂しさというモノを感じてしまいながらも、改装の視察を終えてはドッグを後にしていった。

 

 

 ドッグから離れる通路の道中、副官から「それと……」と濁す言葉から始まる懸念の話。

 

 

「任務の内容を確認はしましたが、これでは……」

 

 

 その運送任務の航路は、まさに「見つけてください」というぐらい、敵の哨戒圏の真っただ中を通るルートとなっている。

 

 

 そして、ごまかす事も何もかも断念し、素直に打ち明ける事。

 それがいま一番重要なことでもあると判断する。

 

 

 そう、それは即ち───

 

 

 

 

 

 

「我々は、体のいい囮部隊という事だ」

 

 

 

 

 

 

 

  *   *   *

 

 

 ブリーフィングルームにて集まった各班の代表に敬礼をし、返礼を受けては全員の前に立つ。

 無重力下のため、少しフワッとした停止にはなったが、それはまぁ致し方ないところである。

 

 

「傾注!」

 

 

 全員に目配せをしてから、話をする。

 

 

「……さて、諸君らも知っているとは思うが、旗艦メイソン・インガムが輸送艦へと変貌してしまった。いままで生死を共にしてきたパートナーともいえる女房を弄られ続けて、多少なりとも感傷に浸ることもあるかもしれないだろう」

 

 

 少し笑ってやると、みなからも小さく笑い声も聞こえてくるが、司会役の副官から「ゴホン」という咳払いで再び静かになる。

 

 

「そして役割から大きく変わる部署もあるだろうが、まずは我々が新たな艤装の扱いになれなければならない、なにしろ出撃は三日後だ。まずは慣熟運用を先に消化し、追加のカーゴ艤装に関しては最後にまわす事とする。まずはどう動かせばいいかの確認を優先とする。各所において……」

 

 一通りの簡易的な説明を済ませ、囮部隊という話をどう説明しようかと思ってはいたが、ここはあえて伝える必要は無いと副司令と艦長と先だって話し合っておいた内容がつづいてはブリーフィングが進み……

 

 

「では各班、一応は資料を渡されているので、各部の端末に送っておく。ただ、仕様はあくまでも仕様と割り切り、現状との差異を確認しておけ、特に機関長は追加された積載状況による違いを把握してほしい」

「「「了解」」」」

 

 

 テキパキとした指示が飛ばされ、それぞれが携えている端末を確認していく。

 タブレット上に表示されている内容は、各部署ごとには違うだろうが、基本的な運用方法は同じであるはず。

 

 

「最後に、苦労をかける事になるとは思うが、諸君らのたゆまぬ労力によって、本艦隊は命を長らえてきた。今回も、諸君らの双肩にかかっているといっても過言ではないだろう。だからこそ、この戦争に生き残るために、よろしく頼む」

 

 

(この戦争は状況から察するにそう長くはないだろう、ならば……勝つためとは言わないでおくが……)

 そうして、深々とお願いするために、その頭を下げる。

 

 

「ナガノ司令、またクルーに頭を下げる必要は……示しが……」

「何を言う、専門的なことは専門家に任せるのが一番だろう?コチラから無理難題をふっかけるのだ、頭の一つや二つ下げるのは必要だろう?それに、今までもそうであったのだし、これからもそうなるだけだろうしな?」

 

 

 苦笑いというような声が響く中、先任曹長から

 

 

「そうですね、おまかせてください。我々はプロフェッショナルですからね。そうだろ?みんな」

「おうよ」

「その通りです」

「ええ、専門的な事はおまかせください」

「司令は大船にのったつもりで安心してください」

「それはもう、ゆりかごに乗ったつもりで」

「なら、赤ん坊を乗せるってことですか?」

「乗せるモビルスーツは生まれたてだしな。たしかに、そうなる……のか?」

「違いない」

 

 

 緊張するような雰囲気はどこ吹く風か、談笑の様な会話が始まっていたが

 

 

「静粛に!!」

 

 

 副官の一喝によりその場が収まる。

 

 

「貴様ら!わかってるのか!?我々の命がかかってるんだからな!」

「もう、それだけでいいだろう。それに、正直に言えば時間が惜しい」

「ですが……」

 

 

 何かを続けようとしているのを手で制し

 

 

「諸君らの双肩にかかっている命だ。だから、よろしく頼む」

 

 

 そうして、敬礼をすれば、

 わかっていますとばかりの表情と共に返礼が返される。

 

 

「では、各自急ぎ対応!解散!!」

「「「ハッ!」」」

 

 

 何をどうすればいいかをお互いが打ち合わせをしながら、ブリーフィングルームから各人各班が順に出ていく。

 だが、それぞれの表情は、職人軍人という表情をしていた。

 

 

「司令、示しというものがあるのですから……」

 

 

 おっと、こんどはこっちの小言が始まりそうだった。

 

 

 

「私と君たちも、確認する要綱があるだろう?さっそく取り掛かろうじゃないか。時間が惜しいのはお互い様だろう?それが終われば秘蔵のウィスキーを開けようじゃないか。そこまでは付き合ってはくれるだろ?」

「では、私は肴としてナッツを準備しておきます」

「……はぁ、わかりましたよ。では、改めて司令室へ向かいましょう」

「ああ、そうだな」

 

 

 

 副官はあきらめの表情をし、艦長は少しうれしそうな表情をしながらも、自分と共に司令室へとむかうリフトグリップにその手を伸ばした。

 

 

 




〇おまけ
ネルソン級MS軽空母
着工:U.C.0079年9月頃
完成:U.C.0082年

なので、作中では着工の計画書を見ているとしています。
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