我々の艦隊は、ルナ・ツー所属の第三艦隊よりも先行する形で出港する。
輸送の主部隊といえるパスファインダー級輸送艇や戦時急造輸送船を中央に配する輸送船団の格好となり、「メイソン・インガム」を旗艦と改レパント級で囲むようにした輪形陣の隊形で、巡航速度よりもやや速い速度で指定されたルートを航行していた。
その間、攻略作戦に配備する物資の一部、モビルスーツと呼ばれる兵器の
さすがに敵の警戒宙域ともいえるサイド5近郊(コレヒドール暗礁宙域の近く)を経由し、月面都市のグラナダへ向かう航路(実際には偽装航路ではあるが)ということで、MSの配備を打診し続けた甲斐があったのか、まさか
(もっとも、先行運用ということで運用データを収集しておけという指令付きとはなったが、実験部隊とでもいう感じではあるのだろうな……)
その先行運用部隊の訓練を見る限り、ジム・コマンド部隊に関して正直にいえば、素人的な動きしかできていない。
当初は、従える僚機の方の動作がぎこちなく、機材は良いが扱う人材が"育ち切っていない"という感じが、素人目でもわかるほどであった。
(一応、この艦隊の虎の子の存在ともいえる彼らの中でも、リーダー機に関しては熟練者ともいえる動きをしてはいるが、それに追随する僚機といえば未だその域には……)
「ぎこちない連帯動作ですね」
「そう言ってやるな」
「新人が六人に熟練が三人、一応はスリーマンセルをとらせるには助かってはいますが……」
「何ともはや、といったところですかな」
「どこも人手が足りていない状況なのだ、致し方あるまい」
「だが、念願のモビルスーツを配備できたという点だけをみれば、贅沢は言ってられません」
「一応、選抜されたとも聞きます。育つ事を期待しておきましょう」
「ああ、そうだな……」
こうして、彼らとの数週間の偽装航路の航行を続けていった。
* * *
「レーダーに反応!熱源も感知!!モビルスーツと思われます!!」
それは唐突に訪れた。
地球圏ともいえるほど、L-5宙域が観測できそうな位置、敵の哨戒圏ともいえる場所に近づいた時に、レーダー手の一声で艦橋に緊張が走った。
「どこからだ!?」
「直下から3!ですが、速度が異常です!!!」
「何?!」
「ザクとは異なる速度です!」
「なっ、この宙域でその速度?まさか新型の
「いえ!画像データ照合では、どれもが
「3倍にデータに無い機体?新型か?!」
「熱源、来ます!」
「撃ち落とせ!」
データに無い機体こんな宙域にザクに似た新型の機体?
まさか、情報部から回ってきていた情報のビーム兵器が使えるモノアイタイプの新型機がいたとでもいうのか?
(いや、それならばビーム系の兵装を使ってくるはず)
「サンタ・マリア被弾!」
「喰いつかれたか!?」
「被害状況の確認急げ!!各艦、ミノフスキー粒子戦闘濃度散布!対モビルスーツ戦用意!」
「モビルスーツ隊も全機出せ、モビルスーツにはモビルスーツだ」
「はっ!モビルスーツ隊、全機スクランブル!急げ!!」
あわただしく指示が交錯する艦橋の中で、被弾状況の確認モニターに視線を向ける。
やはり、ビーム兵器というより実弾による爆破痕が大きく映し出されもした。
(実弾?ビーム兵器を装備できる新型機でもない?それよりもだ)
被弾したサンタ・マリアの状況は中破判定ではあるが、当たりどころが良かったのか悪かったのか、幸いにも改装された元ミサイル弾薬庫部の横にはみ出る様増設されたカーゴブロックの出っ張りになる場所であったため、見た目以上に被害が軽微ということで航行に支障はきたさないと連絡が入ってきていた。
(相手は輸送という意味の場所を的確に突いてきている?まるで、囮計画となる前の"輸送計画"を知っているかの様でもある)
(ええい、今はその状況を考えている時ではない)
だが、現状強襲をうけていることには変わりはない
「正面モニターにカメラ映像を出せるか?」
「やってみます!」
正面モニターに映し出されるは本艦特別製の高精度望遠カメラの映像。
画像解析編集も兼ね備えては処理された映像に映し出されるそのモビルスーツの特徴は、確かにあの頭部形状からは"
随伴する2機のその両の脚から吹き上がる推進器の光が浮かび上がり、その大きなバズーカを携えてはいるものの、そのシルエットから
だが、その
頭頂部にもモノアイ・スリットが刻まれており、片肩に「02」という数字が記載されてはいた。
気になったといえば、その両腕は通称"ゴリラ腕"ではなかったが、それでもビーム兵器が格納されているものであると理解していた。
情報部の知り合いから、噂話も含めて回ってきたニュータイプに関する資料を覚えている。
そう、自分はその
「
「ゼロ ロク ゼット?司令、それは?」
「ニュータイプ用の試験機と噂されていたもの、と聞いてはいた代物だ……」
もちろん回ってきた情報部からの知識であり、噂話云々は作り話の嘘ではあるかもしれないが、ただ、現実で分かった事と言えば……
(コレヒドール暗礁宙域の外延部だぞ。まさか、グラナダに向かっている偽装航路を信じてジオンの
「いかん!対空弾幕いそげ、近づけさせるな!モビルスーツ隊はアルファを直掩とし、ベータとガンマは迎撃に回せ!!」
(06Zが動き出す前に落とせなければ……!)
06Rと06Zの機動力は高いだろうが、ジム・コマンドで対応できないこともない、懸念があるとすれば、あの06Zが持つニュータイプ専用兵装を許してしまえば、被害を被るのは……
その嫌な未来を予想したとき、モニターに映し出されたMS-06Zが、いままさにその両腕を切り離した姿を映し出していた。
* * *
輸送船「ブービー」
カーゴブロックを乗っけてるだけともいえる艦艇で、コンテナブロックを乗せる箇所が井型の梯子状の本体に、エンジン部と操作部を前後に取り付けた、余り資材艇とも揶揄されるほどに中身がスッカスカの輸送"船"である。
構造の単純化として製造コストを抑え、また、運用コストを削減するために運用人員を少なくても長期航行が行えるように最低限の設備を装備した艦艇であるが、その簡略化の弊害として"
たとえるなら、先程の被弾した味方艦艇が受けた実弾の一発でも骨子の部分に命中すれば
その為、ひとたび戦火にまきこまれれば神経質なほどに注意をめぐらさなければならなかった。
「中尉!敵の攻撃です!!」
被弾した味方の"船"を視界にいれながらノーマルスーツを急ぎ着こみ始めた副操縦士は叫ぶ。
戦闘が始まった為に、だらけてきっていた感情を切り替え、こちらもノーマルスーツをしっかりと着こみなおす。
「みりゃぁわかる!指示はどうなってる?」
「直掩のモビルスーツ隊を全機出せとの指令です!」
「なら、武装の無いこちらのやれることは、そいつらを信じて待つしかねぇってことだ」
「そう、ですけど……」
輸送任務として駆り出された俺たちの船団部隊は、簡単に言えば輸送品を携えてついていけという任務としか聞かされていない。
その航行ルートも極秘ときているが、もたせられた荷物も「極秘」とされていた。
だが、輸送船に乗る誰もが理解はしていた。
俺たちは"モビルスーツを運んでいる"と。
今でこそ輸送船の搭乗員だが、こちらは元戦闘機乗り。
昨今の機動兵器は戦闘機からモビルスーツへと変更されていき、作業用の宇宙ポッドでさえも兵器に転用されて運用されていったのに、自身のモビルスーツ適正が低いという事でこの様な配置へと転換された。
"戦闘機乗りは時代遅れ"──
その波にのまれるまいと、自身も機種転換試験に挑んではみたが、シミュレーションで試験結果が基準のスコアにまったくとどかなかった。
そこではっきりと解ったことは、「モニター越しで見る映像」というのに直観と感覚が狂わされている事だった。
そのことを伝えはしたのだが、今の兵器はモニター越しがほとんどになっており……
そうして、戦闘機乗りの自分が機種転換先に配属されたのは船だった──
「始まったか……」
星々が煌めいている黒いキャンパスに、線が映し出されては消える。
その中、大きな閃光という煌めきが発生はするが、再び光線が引かれていった。
「ミノフスキーによる障害なのか、詳細な状況がわかりません」
「だろうな……ん?後ろから来る……いや側面?違う!多方向から同時に来る!!衝撃に備えろ!!」
「えっ?どこからって?……うわぁぁぁぁぁ!!」
大きな振動と共に揺れる船体。
はっきりと解る事と言えば被弾したという事。
自分の目で世界を眺めているとき、たまに解ることがある。
悪い感じを直感というか感覚というか、そういうものでだが。
そんな中、船内は非常用電源に切り替わる。
それは後部の航行用エンジンが死んだか、途中からちぎれたかで電源が供給されなくなったという証左でもあり、宇宙を漂うデブリとなったという証拠でもあった。
「くそったれが!おい、無事か?!」
「な、なんとか……」
「急ぎ非常用電源も落とせ、生きていると悟られるな」
「わ、わかりました!!」
急ぎ非常用電源も落としては、死んだふりを慣行する。
少なくとも、トドメを刺してくる事はないだろうが……
「中尉、これからどうなるんでしょう」
「わからん。わからんが、優勢……とは思えないな……」
肉眼で見える範囲ではあるが、味方の輸送船は軒並み落とされている。
こちらの輸送船には兵装なんてものは積んでいないので、護衛艦艇やモビルスーツたちが迎撃に対しての頼みの綱だが……
(何もできないというのが、こんなに歯がゆいものとは……なにかできることは……)
そこでふと、自分の船が何だったのかを思い出す。
そして、何を積んでいたのかを予想していたことを。
「おい、お前はモビルスーツ訓練をうけたか?」
「機種転換は受けましたが……最終模擬戦闘で不合格でした」
「うし、ならとりあえずは動かせるな?俺はモビルスーツは赤点だったからな、じゃ荷を動かしにいくぞ」
「え、えぇ?!」
そう言っては、ベルトを外して後部のハッチへと向かう
「そ、それは不味いのでは?受け渡し品を運用するのは」
「どうせここでヤられるなら、少しでも生き延びる確率が高い方がいいとは思わないか?」
「それはそうですけど……」
そう言いながら、ハッチを開けて外へと踊りだす。
ハンドサインで余圧室を強制的に解除しては外の状況をみれば、そこには運んでいた、ひしゃげたカーゴと船体から離れていくエンジンブロックが宙を漂う姿を拝みとれた。
(やはり、ちぎれていたか……誘爆しなかったのは、これ幸いだったかもしれないな)
遅れてやってきた相棒のヘルメットに自身のメットを軽く押し当て
「"聞こえるか?カーゴブロックの中身を拝借するぞ?パスコードはわかるか?"」
「"そんなのわかるわけありませんよ、知らされてもいないんですから"」
「"そりゃそうだわな。なら……"」
そうして、船体がちぎれかけている本体にギリギリぶら下がっているカーゴブロックの変形している箇所をみつける。
それは、船の骨子に引っかかってはひしゃげた箇所があり、そこからのぞかせる隙間はそれなりの大きさであり、そこから中へと入れそうでもあった。
「"みえるか?あの隙間から中に入るぞ。ほらついてこい"」
「え、えぇ?!まってくださいよ!」
そうして潰されたカーゴブロックの中に入り込んで視界に入ってきたのは……
「モビルスーツじゃない?戦闘機?」
「なんですかコレ、今更戦闘機なんて……モビルスーツ相手にどうするんですか」
「いやまて、こいつにはメガ粒子砲がついてるぞ……」
その姿を見た自分の直感がつげる。
このメガ粒子砲を2門携えた戦闘機は
コクピット部分があろう場所に飛んでいけば、そこにあったのは
「お、こいつは丁度いい、複座になってるぞ。戦闘機ならば俺が動かせれる」
「ちゅ、中尉が動かすんですか?!」
「東洋のコトワザに"昔取ったキネ・ヅカ"っていうのがあるだろ?モビルスーツは赤点だったが、戦闘機ならまかせろ、いけるはずだ。お前は後ろに乗れ」
そうして乗り込んだ
それらを軽く触れては確信する。これは爆撃機や雷撃機ではない、戦闘機であると。
戦闘機の操作方法は、身体に嫌というほど身に染みている……
「あれ?これモビルスーツの火器管制に似てる?」
「そっちはソレか、こっちは戦闘機のままだな」
「それよりも中尉、どうやってここから出るんですか?」
「そりゃぁ、さっき見えた2つの主砲があっただろ、そいつをぶちかませばいい」
「え、えぇ……」
そう言いながらも、体が覚えている操作で起動シーケンスをクリアしていく。
そうすると、機体から静かに重戦闘機とでもいう重厚感のある駆動振動を発する
そう、こいつは"
「心臓は動かしたが、どうだ?撃てそうか?」
「やってみます……操作は同じ?なら……セーフティ解除。これで、撃てそうです!」
複座席の側面から射撃用の
「よし、なら派手にいくぞ、蓋が開いたら最大加速をかける!5カウント後にぶちかませ」
「りょ、了解っ」
「ほら、いくぞ!5・4・3・2・1・撃てっ!!」
「はいっ!!」
二つの砲身から、二つの閃光が放たれた。
* * *
オールレンジ攻撃による攻撃は、こちらの迎撃部隊を翻弄してはことごとく落とされていった。
「ガンマ部隊全滅!」(意:部隊として機能しない)
「アルファとベータ部隊で何とか持ちこたえさせろ!」
「輸送船「ラーサー」撃沈!!」
「くそっ!最後の輸送船まで!せめて輸送艇は守り切れ!!」
艦橋内であわただしく行われてる怒声まじりのやり取りを聞きながら、映し出せれている情報を読み取るのだが、詳しく読み取るまでもなく、映し出される損耗率が4割を超え始めいるのを示していた。
「3機のモビルスーツで、これほどまでの被害を
「まったくです……」
あわただしくもなる艦橋で、レーダー主からひときわ大きな声が発せられる
「後方より新たな機影!」
「まだ来るのか?!」
「いえ、信号は味方機ですが……機体登録……戦闘機?」
「はっきりと答えんか」
艦長から檄が飛ばされるが
「識別番号、FF-X78GFとしかなく」
「FF?戦闘機か?」
「FF-X7……?」
その番号でふと気づく、FFーX7ならばコア・ファイター系の戦闘機
だが、疑問も感じていた。
(
だが、それならばそれで、機動力と高火力のビーム兵装でモビルスーツにも太刀打ちはできるはずでもあると、納得もした。
「敵機直上!来ます!!」
そんなおり、いつまにか取り付かれた06Rがコチラを狙っているのがモニターに映し出され、無意識に視線を見えるはずもない相手がいる天井を見上げてしまう。
(なっ、ここまでか?!)
だが、それは二条の光線によって防がれる──
その二条の光線は、06Rを飲み込んでは大きな閃光を作り出しては消え去っていた。
「先程の戦闘機です!」
「でかした!!」
「(たすかった……)」
艦長とクルーとのやり取りを他所に、戦況モニターに映し出された機体を見て確信する。
その白色のノーズに本体は紫色、黄色小型レドームの上に大型のメガ粒子砲を2門搭載し、モビルスーツを「搬送」もできる重戦闘爆撃機……
コア・ファイターの系列機なんかではない
「あれは……G・ファイター!」
〇設定
RGM-79[E]GS:ルナ・ツー先行量産型改修ジム
ルナ・ツー先行量産型を現行のGS型に合わせてアップデートさせた機体
見た目はジム・コマンドに似ている
RGM-79GS:ジム・コマンド(宇宙戦仕様)
ルナ・ツー工廠で生産されたジム系統の一つ
MS-06R-1[A]:高機動ザクII R-1A型改修機
高機動ザクIIのR-1型をR-1A型に後に改修した機体
MS-06Z(-02):サイコミュ試験用ザク(2号機)
サイコミュ試験用ザクの2番機。通称【ビショップ】の一つ。
ゴリラ腕の方ではなく、ノーマルタイプ風の腕に推進器を取り付けた代物
火力・稼働時間ともにゴリラ腕タイプには大きく劣る。
サイコミュ腕の試作型ともいえる。