U.C.0079-10から   作:zaq2

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 爆炎が発生した煙の中から現れた一つ目の巨人の状況を、一瞬の確認でもわかった事もあった

 

 

「ハッ!相手さんも、満身創痍って奴だな!」

「何言ってるんですか!?こっちも同じじゃないですか!」

 

 

 後方の座席からもそう言われる通り、こちらも計器類からアラート表示が止まることもなく警告を発している状況。

 機体操作も先程までとは異なり、どことなく鈍い感触を返してくる。

 

 

 だが、この闘牛(せんとうき)は、まだ"動く(たたかえる)"と伝えてきている。

 

 

「ど、どうするんですか?!」

「なぁに、答えはいたって簡単(シンプル)だ!」

「?」

 

 

 そう、こういった戦場における答えは、何時も簡潔(シンプル)である。

 

 

「"やられる前に、やるだけ"だ!腹を括れよ!主砲、照準!!」

「は、はいっ!やってます!!」

「ミサイルはこっちでやる!ラストチャンスだと思え!いくぞ!!」

 

 

 そうして、警告表示を無視しては機体を相手に向けて加速させる。

 

 

 やることはいたって単純明快、ヘッドオンのチキンレース。

 ビビった奴がヤられる、ただそれだけだ。

 

 

 一つ目の巨人は、残された腕を飛ばしてくるが、直感が"()()()()()()"と告げてくる。

 ひきつけるだけひきつけ、障害となる要素を無視するかの様に貫きとお──

 

 

 

 急激に機体に衝撃が走り減速がかかる

 

 

 

「なにがっ?!」

 

 

 相手から離れたその腕が、機体片翼の補助推進器にぶち当てられていた。

 警報が一段と強くなった矢先に、自動で両翼の切り離しが行われる。

 

 残るはメインスラスターのみ

 

 

「まだまだぁ!」

 

 

 メインスラスターの出力を無理矢理に上げてはさらに突進させる。

 確実に照準にとらえるために、確実に当てれる距離へと接近するために

 

 そうして、全てのロックオンが完了した表示が成された瞬間

 

 

「ぶっぱなせ!!」

「はいっ!!」

 

 

 残された主砲の一撃が本体へと、その回避先へ機首ミサイルが放たれる。

 一つ目の巨人は、その身のスラスターを噴かせる挙動を見せたが、

 

 

(今からスラスターを起動させての回避はもう遅い!)

 

 

 ──当たる。

 誰もがそう思える瞬間を想定できたはずであった。

 

 

 

 

 

 

 だが、その想定した結果は訪れなかった──

 

 

 一つ目の巨人は、残っていた両足で異様な動きを重ねては、まるで針に糸を通す隙間を縫うように、放たれた攻撃をギリギリで躱し、その場を通り過ぎるこちらのコクピットのすぐ上で、まるで不敵な笑みをこぼすかのように、その一つ目を照らしては過ぎ去っていった。

 

 

 その動きを、まるでスローモーションでもみるように捉えていた自分がいた。

 

 

 そして、その一つ目の巨人が緻密(ちみつ)なAMBAC機動を行っては、そのすべてを回避をしきったのだと、理解するまで一瞬の時が必要だった。

 

 

「なんだ……と……?!」

 

 

 そう言葉を発すると同時に、機体に強い衝撃が走っては時が戻る。

 

 

「うあぁぁ」

「ぐぁおぁ!!!」

 

 

 先ほどまで、無理をしていた機体がついに限界を超えたのか、警報が鳴りやまなかったメインスラスターが大きな断末魔を上げては、機体を大きく揺るがした。

 

 それと同時に、機体がさらに大きく揺れたかと思えば、状況モニターには前後に分離していく機体の表示がなされ、続けざまに爆発の衝撃なのかコクピットが強く揺らされ───

 

 

 そこで、意識が途絶えた───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──視界に星々の光がみえる宙空間

 

 

 それらを眺め見ているという認識により、生きているという意識が覚醒される。

 

 

「……生きてるか?」

「生きてますよ……生きた心地はしないですけど」

「なら、生きてるって証左だな」

 

 

 計器類からは警報が表示され続けてはいるが、生命維持には支障はなさそうでもあった。

 

 

「一応、救難信号はだしてあります」

「そうか……助かる」

「味方は無事なんでしょうかね……」

「……さぁてな。一応、脅威は無くなったはずだがな」

 

 

 そう呟きながら、キャノピーの外を眺め見る。

 先ほどまで激しい戦闘を行っていたと思えないぐらい、ただただ静かな空間が広がっていた。

 

 

 そして、一つ目の巨人の気配すらも消え失せては、夢だったのか?と思わせるぐらいに静かな宙域で流されていた……

 

 

 

 機体は"もう動けない"という感じで、操縦桿からの反応が皆無ときている。

 完全にスペースデブリと化した機体の中で、あとは救助を待つばかりである。

 

 

「こうなると、あとは運だのみだな」

「……まぁ、そうでしょうね」

 

 

 再び、宇宙(ソラ)へと視線を向ける。

 

 そこで感じていたのは、何とかなるという直感を信じるだけではあったが……

 

 

 

 

   *   *   *

 

 

 

 艦橋の窓から見える宙空間(ソラ)に突如として光線が訪れては、ある程度の距離で拡散するかの様に散っていた。

 

 それはまるで"光の花"とでも形容すべきなのか、散っては咲き、咲いては散るというのを数回繰り返していた。

 

 

「先程の敵ムサイ級巡洋艦からの艦砲射撃です!」

「見ればわかる!」

「ほかに敵の気配は?」

「今の所、索敵ドローンに敵艦艇を検知はしていません!」

 

 

(援護艦隊が来ていないにもかかわらず、その姿をさらす?どういう了見だ?」

 

 

 敵の巡洋艦の動きがはっきりと読めない。

 いや、戦闘が開始されて、そろそろ60分に近づくことに気付く。

 

 高速戦闘をしている場合、相手(ビショップ)は30分も稼働するのが限界であったはず。

 それが倍以上に時間が経過していることを察した。

 

 

(今の時期、ビショップの損失はなかったはずだ。となるとやはり、戦闘時間から鑑みればビショップの回収か……?)

 

 

 ミノフスキー粒子が散布されいる宙域でのレーダー観測射撃は不可能。

 ならば、この艦砲射撃は回収用の牽制とみるのが無難と確定させる。

 

 

「攪乱膜が効いているうちに残存艦で輸送艦の盾になるよう外側でC.T.T.(クロッシング・ザ・ティー)に形成を」(※C.T.T.:丁字戦

「はっ!!操船いそげ!!C.T.T.に立つぞ!!」

 

 

 モビルスーツがいたとしても、艦艇同士の撃ち合いになるとなれば、それは旧来の海戦とほぼ同じである。

 

 現状でできる手としては、生き残ってる艦艇で艦隊隊列を組んでの優位にもっていくのが無難な対応でもあった。

 

 

「これより本艦隊は、残存輸送艦の盾となりつつ迎撃にあたる。全モビルスーツは直俺として動くように指示」

「はっ!」

「追加で攪乱膜の散布も行え」

「攪乱膜準備いそげ!」

 

 

 ここが正念場であると腹をくくった。

 

 

 

   *    *    *

 

 

「熱源多数確認!ミサイル来ます!」

「絶対に撃ち落とせ!」

 

 

 ブリッジ内に響く声により緊張が走る。

 だが、熱源とも呼べるものは、先程の攪乱膜の影響を考慮されたのか、質量を伴う兵器が使われてくる。

 

 ECM子機が体当たりで止めるのもあれば、それをかいくぐってくるものもあったが、それらは防空艦の名をいかんなく発揮した僚艦により迎撃されていた。

 

 

「それが、こちらには……」

 

 

 そのいくつもの射線が通っている場所というのが、こちらの艦隊から離れた方向であった。

 

 

「ムサイの攻撃なのはわかるが……」

「どこを狙っている?」

 

 

 先程からの艦砲射撃が、こちらの船団を狙っているとは思えない場所に撃ち込まれており……

 今度は、その方角から多連装の砲撃が撃ち返されていた。

 

 

「ムサイ、後退していきます!」

「助かった……のか?」

「索敵ドローンは何と?」

「少しまってください……味方艦を確認!第52哨戒艦隊です!!」

「急ぎ、その味方艦艇へと通信を繋げろ」

「中継ドローンだします!」

 

 

 中継ドローンによってのミノフスキー下における通信が可能になる。

 いうなれば、本艦の能力ともいえる機能である。

 

 そうして、モニターに映し出されたノーマルスーツ姿の相手艦隊司令。

 たたき上げの軍人ともいえる壮年の人物であった。

 

 

「こちら、第52外延部哨戒艦隊旗艦"コンバラリア"……貴艦隊の援護を行う」

「特設輸送任務艦隊旗艦"メイソン・インガム"。援護に感謝します」

 

 

 記憶から"コンパラリア"と呼ばれる哨戒艦なる艦艇を聞いた覚えはない。

 

 どういった部隊なのかと艦隊を映像確認すれば、マゼラン級の胴体を双胴船のように継ぎ合わせているという、なんともはや不格好といえる大型艦であった。

 

 それに随伴するサラミス級……いや両側面に独特なコンテナを取り付けてあり、見た目はネルソン級とでもいうものも数隻をとらえていた。

 

 

 

「そうそう、道中で落とし物を拾いましてな、貴艦隊の物だと思われるので、後ほど返させてもらいますよ。では、また後程」

「は、わかりました……」

 

 

 

(落とし物?何のことだ……?)

 

 

 

 艦艇状況表示に切り替わったモニターを眺めながら、何かあったのか?と、一瞬だけ思案を巡らせていたが、"今は戦闘中だ"と、余計な思考から切り替えた。

 




〇設定
雑役艦:コンバラリア(意味:スズラン)

ブリティッシュ作戦やルウム戦役において、廃艦となった艦艇の無事だった部材を寄せ集めては艦艇に仕立て上げた大型艦。
別名「フランケン」

 使えるものは何でも使えという思想の元(のちにビンソン計画の計画参照とされたテストベッドとも)突貫工事で修復・改造されたが、ツギハギだらけの艦のために実戦となる戦闘行為には不安点しかないため、基本的には特務・雑役艦として運用される。
 なお、もともとあった主砲などの兵装は無事だった一部しか残っていない。

 見た目の構造は、艦橋やジェネレーターが使えなくなったマゼラン級の無事だった船体2隻を、逆に艦橋部分が無事だったマゼラン級やジェネレーターが無事だったエンジンブロックを中央に配した音叉形状の双胴船としている。

 破壊されて使えない主砲構造部分は格納庫かつ簡易ガントリーアームが取り付けられる構造となり、音叉状の二股になっている中心部の空洞箇所は中・小型艦の簡易船渠として機能する。

 簡易船渠として運用される際、当初は部品等の飛散防止用・スペースデブリからの保護用に専用のカーテンが展開される構造としたため、見た目が「スズランの花」を連想され、その様な名称がつけられた。
 (後にカーテンは撤去される)

 その独力の工作艦能力と雑役艦としての扱いだった為、サイド5宙域における独立哨戒艦隊として運用されるに至る。


〇随伴艦 サラミス級(サルベージ艦)
 先の大戦で大破や中破した艦をサルベージして運用している艦。
 主兵装の修繕もままならないままで、とかく作業艇の搬送手段としての意味合いが強い。
 その船体には簡易格納のコンテナブロックが取り付けられている。
 コンテナブロックの中身は、作業用RB-79[ボール]の運搬がメインの雑役艦(運搬艦)としており、武装も自衛程度で無いに等しい。
 なお、モビルスーツの搭載は考慮されていない。



〇第52哨戒艦隊
 サイド5周辺を活動範囲としている艦隊。
 主に、先の艦隊戦闘でまき散らした艦船やコロニーの残骸など、スペースデブリの清掃作業部隊とも言われる。
 そのため、主力にはならないフランケン艦やサルベージ艦の再利用先となっている。

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