──L-1:サイド5宙域
開戦当初の大規模な艦隊戦において、スペースデブリとなった残骸により暗礁宙域と化している宙域があり、その中でも戦闘による難を免れているコロニーにおいては、非武装・非戦闘地域としての協定が結ばれている宙域でもある。
そのサイド5宙域の隅の一角、その戦闘によって発生した残骸が浮遊している宙域の中、元はコロニー港湾区画だけが機能している区画があった。
その区画に今、我々の艦隊と哨戒艦隊が駐機する格好で退避していた──
破壊されたコロニーの残骸がある中、使える港ブロックの船渠とでもいうか、簡易的な港としての機能が残った部分が、連邦軍の哨戒中継基地として運用されている場所でもあった。
そんな港湾区画の指令室に、自分たちと哨戒艦隊の司令とが面通しを行い握手をしていた。
「先の戦闘では助かりました」
「我々はただ、哨戒任務中に敵に遭遇したまでの事。それ以上でもありませんよ」
自分と哨戒艦隊の挨拶は、そこから始まった。
先の戦闘の結果をみてみれば、壊滅という判断がなされても不思議ではない。
荷が無事な物もあるにはあったが、それらを運ぶための輸送艇は全滅、輸送艦に関しては6割が何とか無事だったという状況である。
その為、輸送作戦の継続はほぼ不可能と判断し、本部への連絡を兼ねて哨戒部隊に随伴する形でこのサイド5宙域へと避難する格好としていた。
「まさか、この宙域にてこの様な場所が……非武装・非戦闘の地域と聞いてはいたのですが……」
「我々の艦隊は、特務艦と雑役艦の寄せ集め。いうなれば戦闘艦ではありませんからね」
その回答が、"艦種が戦闘艦ではないために非武装である"という無理やりな解釈で進めているという話であった。
「それは、屁理屈にも聞こえますが……」
「一応、自衛のための兵装は認められていますからね。それに、屁理屈であろうとも"筋が通ればそれが道理になる"のですよ」
「はは、それは確かにそう……ですな」
たしかに、元は戦艦の部品を使ってはいるが、実際には戦闘艦という訳でもない。
かといって、自衛火力かといわれれば、そういう火力であるわけでもなく……
「まぁ、ここら辺は昨今の戦局が目まぐるしく変わりすぎて、ジオンも対応しきれていない、とでもいうのがあるのでしょう」
と、この話はこれで終わりとでもいう事とも見え、これ以上の詮索はするべきではないと話を切り上げる。
「救援して頂いたのですが我々の艦隊は作戦を続行するのは厳しいと判断し、ルナツーへの帰投をと考えておりますが……」
「……」
そうして相手は苦労していますという顔をしながら手渡された書類便箋。
「……これは?」
「本部から返答がありました。これはその内容ですが"この場でだけ"見てください」
「は、はぁ……」
内容は作戦事項に関するモノであった。
端的に言えば"そのままソロモン宙域へ向かえ"という……
その内容文面を読みながらも、今の状況ではどういう意味合いなのかと思考を回そうとした矢先
「これは独り言なのですが……本日、チェンバロ作戦……まぁ、ソロモン要塞の攻略戦が開始される予定です」
「……は?」
急に話を振られては思考を止められる。
確かに史実としてはそのタイミング近辺ではあろうが、イチ将官にその様な情報が上から降りてきているものだろうか?
否、独り言と付け加えた時点で、独自の情報網からの情報という事と思えば良いだろうか……
「我々、連邦としては"その後の対応"という形なのでしょう」
「……ソロモンは落ちる、と?」
「そこまでは私個人は断定しません。が、上はそう判断しているのでしょう。決戦兵器まで持ち出しているようですので」
決戦兵器……ソロモン……太陽光を使ったソーラ・レイの事であろうとは推測できる。
確かに、史実通りならば攻略戦に勝利し、その勢いのまま敵本国までいこうとはするが、補給物資の調達如何という話でもあるか……
「我々の艦隊は招集されてはおりませんが、哨戒任務の航路に丁度そちらの艦隊がおられる形になるかもしれませんね……」
「それは……」
つまりは、哨戒ルート上であるならば、一緒に行動しますよと言ってくれているという話である。
少なくとも、今のこの状況においては
「それは願ってもないお話ですが、よろしいので?」
「ええ、それはもちろん」
「とても助かります」
そうして、新たな航路の指針計画を興じる時間へと移行した。
* * *
「中尉、僕たちはどうなるんでしょう……」
「さぁてな、どうなるんだろうな」
運よく哨戒艦隊に救助された自分らは、その後もとの部隊へと引き渡される前に、医療設備に放り込まれては検査をうけていた。
ここがどこかは分からないが、医療設備としては一等クラスとでもいえる軍医も在籍していたりと、チグハグな印象をうけはしていたが、あまんじてその処置をうけていた。
乗っていた船は沈んでいるし、荷物を勝手に使い込んだ事で、軍法会議ものになる可能性だってある。
だが、艦隊を防衛するという事で動いていた点を考えてもらえるならば、ある程度は許される部分もあるのでは?と
けれども、その結果はいまだ未知数であることにはかわりない。
「はぁ、なるようにしかならんだろうな」
「ですよね……」
そう不安な感じを伝えていながらも、そう悪くはならんだろうという直感を感じたのを思い出していた。
* * *
メイソン・インガムの執務室内、少数の人数がその場を支配していた。
自分はデスクに座り、副官はその傍にたっては、残りの二名を睨むように立っていた。
「さて、君らの処分だが……」
目の前に直立姿勢を保っている二人に対し、副官が声を強めて話を始める。
先の戦闘において、
それと、過去の戦績を鑑みても、なぜ船乗りとなっていたのかと問いたくもなったが……
「兵器の無断使用、および戦闘指揮からの逸脱行為」
「……」
「……」
「ほかにも諸々あるが、この二つだけでも君たち二人を
副官が声をさらに強めて簡易的な状況を通達する。
二人にとっては、断頭台の階段を上がる感じであろうか?
「ゴホン……副官、ここからは私が話そう」
「はっ」
「現状、機種転換したばかりのモビルスーツ隊の戦力では、先の交戦からこちらとしての戦力が乏しい事実であると露呈した」
二人は、だまったまま此方を見続けている。
「そのため、本作戦の継続にあたり、すぐにでも効果的な運用が可能な
「……!」
「……」
「したがってだ……私の権限における戦時特例として、先の違反は現状凍結とするが、船乗りとしてではなく、艦隊指揮下の
「えっ?……」
「そ、それは……」
「ンッン……私語を慎め」
副官にたしなめられ姿勢をただす二人
この先に最終決戦で地獄がまっているかもしれないのだがな……と思いつつ
「詳細は追って通達するが……、君たちの今後の活躍に期待する。以上だ」
「「ハッ!!」」
お互いの敬礼と返礼と共に、通達事項の終わりを告げた。
* * *
「こいつの機体名が
「一応、モビルスーツを搭載できる重爆撃戦闘機だそうですよ?いまはモビルスーツの代わりに弾薬兵装ブロックが積まれてますが」
取って付けたとでもいう側面の平甲板の上で係留されている機体。
自分たちが乗っては大破させたあの機体の同型といえるものが、まだ残されていたとの事でそれを戦時運用として回したそうだ。
今度ばかりは、ぶっつけ本番の運用とさせるわけにもいかない為、移動中に慣熟訓練と称して、そのコクピットに相棒と乗り込んでの最終機体チェックを行っていた。
「武装に関しても前回と同じ様ですね」
「了解……こっちの機体チェックはおわったぞ、そっちは?」
「兵装チェックおわりました。そうだ中尉」
「ん?なんだ?」
「僕たちのチームのTACネーム、どうします?」
部隊のタクティカル・コードネームを決めてもいいといわれたが、機体のマニュアルを頭に詰め込む時間でつぶれてしまっていたため、そこまで考える余地はなかったが……
ただ、コイツに乗ってから、おのずと答えは導き出されていた。
「そんなものは決まってる……」
『発進、いつでもどうぞ』
管制指揮から発艦の合図が来たと同時に、こう告げる
「BullFighter!出るぞ!!」
一応、これでおしまいです。
おまけ:
BullFight:闘牛
〇設定
・FF-X78GF(-01,-03):G・ファイター宙間戦闘試作量産型
G・ファイター宇宙型と標準型との中間形態ともいえる試作機体。
その為、試作機ナンバー(FF-X)が割り振られており、番号はとある機体番号からの縁起担ぎともいわれている。
標準型との大きな差異としては、降着装置(
原機と同じく、モビルスーツの搭載機能は残してあるため、兵器コンテナをパージすれば搭載が可能である。
メガ粒子砲:2門
機首マイクロミサイルハッチ:3x2列-6門
後部マイクロミサイルハッチ:4x2列-8門
兵装ブロック(今回)
→小型ミサイルポッド:16連装x2列(最大64発)
→スモーク・チャフユニット:各1基(最大16発)