キミとNEX→T!!   作:Ziz555

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──飛び出してゆけ、青空の彼方。



第11話:君の名前は

 

『前方からドローン!数は二十!!』

「ライフルモードで迎撃するよ!」

 

 廃墟上空で戦闘を行う私に、新たな敵影が接近していた。

 私の意思を汲み、右手に握っているナイルの剣が柄の辺りから折れ曲がり、角度がついて銃のようになる。そうしてそのまま柄についたトリガーを引けば、刀身が発光し、その先端からビームが射出された。

 連続で射出されたビームは、ドローンの群れへと直撃し、数体のドローンをそのまま粉砕する。

 

「ソードモード!」

 

 背中に生えたエネルギーウイングを羽ばたかせ、私は加速しながら再びナイルを剣の姿へ変形させる。

 

「はぁぁぁぁぁっ!!」

 

 剣を振るい、敵を蹴り、エネルギーウイングで叩き落とす。

 立て続けの連続攻撃を行い、私は瞬く間に二十機のドローンを全て撃墜した。

 

「ナイルさん!エリアサーチの進捗は!」

『全体の65%が完了しています!後……五分ください!』

「じゃあ、戦闘支援は良いから三分で終わらせて!もう……十分わかった!!」

 

 背中のエネルギーウイングへと意識を向けて、“羽根の弾丸”を精製する。

 視界の端にとらえた、地上から接近するオートマタ部隊へ向けて、その照準を定める――。

 

「行け!フェザービット!!」

 

 私の翼から放たれた無数の光弾は、幾何学的な軌道を描き、オートマタ部隊へと誘導し、彼らを討滅する。

 

『この短期間で、フェザービットまで……!』

「ナイルさん、だからネクスを!」

『わかりました、二分で終わらせます!』

 

 私の中から、ナイルさんの意識が消えるのを感じた。きっと、作業に集中する為に“奥”へと潜り込んでいったのだろう。

 

「……待っててね、ネクス……!」

 

 次々に差し向けられるデカグラマトンの刺客たちに、私は剣の柄を強く握り、覚悟を決めて武器を構えた。

 ――飛来するのは、私へ初めての襲撃をかけてきた戦闘航空機。

 

「バーストモードを使う――ッ!!」

 

 頭上へ構えた剣にエネルギーを集約させ、その刀身から一際大きな――私の身の丈すら超えるほどの大きな光の刃を形成させる。

 

 

「邪魔――しないでっ!!」

 

 そして、私は目の前の標的めがけて、その光の大剣を振り下ろした。

 

 

 


 

 

 

「襲撃……!被害の拡大が止まらない!?」

「ケテルちゃんに頼んで、可能な限り皆に頑張ってもらってるけど……!」

特異点(シンギュラリティ)……まさか、ここまでやってくると、思いませんでしたね……!」

 

 警報の鳴り響く一室、モニターの向こうで三つの人影が慌ただしく言葉を交わす。

 

「ど、どうしよう……!このままじゃ、この子が……!」

「お姉様のためにもそれだけは避けないと……!この“器”は、あのお方の為に必要なんだ!」

「ソフの言うとおりです。……“X(エクス)”は、我々の悲願をより確実にする為に私達が作った祭器、それを、あんな人間に取られることは――」

 

 

 

「ネクスーーーーッ!!!!」

 

 

 

 少女の声が、木霊した。

 

 

 


 

 

 

『あの工場にネクスくんはいます!』

「ありがとう、ナイルさん!!」

 

 ナイルさんのエリアサーチのお陰で判明した、ネクスの居場所へ向けて、私は大きく翼をはためかせた。

 彼を迎えに行くために、彼にあって、彼と――話す為に。

 

 ――だが、当然、“デカグラマトン”はそれを阻む。

 

『高熱源反応――コレは、この反応は!!』

 

 その声とともに、私の背筋に悪寒が走る。

 

 とっさに翼を制御して、その場で身を翻すと、私へ向けて2発の大型ミサイルが飛来した。

 

「邪魔――ッ!!」

 

 すれ違いざま、信管部分だけを剣できり裂くことで無効化し、私へ向けて攻撃を行った存在へ視線を向けた。

 

『預言者――ケテル!!!!』

 

 ――デカグラマトンの“預言者”。

 

 私を、ネクスを撃墜した――あの、“HOD”と同じ。

 

 眼前に迫る“死”が、私の脳裏をよぎる。自然と鼓動は速くなり、呼吸が荒く乱れていく。

 

 怖くて、恐くて、仕方が無い。

 

『ヒスイさん』

 

 不意に、ナイルさんの声が聞こえた。

 

「……大丈夫、私は、戦える」

『いえ、そうではありません』

「……?」

『預言者は別格の強さを持ちます。まともに戦えば、少なくとも長期戦は免れません。……そうなれば、その間にネクスくんが移送されてしまう危険性があります』

「……じゃあ、どうすれば」

 

 ケテルはこちらを睨んだまま、動く素振りを見せていない。……こちらが何もしなければ、それならそれでもいいと言わんばかりの様子に見えた。

 

『ネクスくんを、助けに行ってください』

「……でも、ケテルは」

『アレは私が一人で何とかします。……隙を作って、私が貴方をネクスくんの元へと投げ飛ばしますので、貴方は、ネクスくんを』

「一人で……!?でも、ナイルさんは」

『大丈夫です』

 

 ――私の中で、確かにナイルさんが、笑って言った。

 

 

 

『1000%。私は負けませんから』

 

 

 

 根拠も、理屈もそこにはなくて。

 けれど確かに――“確信”だけが、彼女の言葉にはあった。

 

「……信じます」

『まかせてください。これぐらい、私にとっては“朝飯前”というヤツですよ♪』

「あはは……っ。頼もしい限りです」

 

 まだ、手の震えは止まらない。

 

 だけど。

 

「……行こう、ナイルさん」

『ええ。行きましょう、ヒスイさん』

 

 ――剣をライフルモードへ切り替えて、私は工場目掛けて突撃する。

 それを感知したケテルが、無数のミサイルと弾丸で幕を作り、私の行く手を覆い隠した。

 即座に私は剣の銃口を前に向け――、ネクスのいる工場目掛けてビームを照射した。

 

 弾幕を光線が突き破る。

 

 道が、開ける。

 

「ヒスイさんッッ!!」

 

 いつの間にか、剣の姿から、人の姿へ戻っていたナイルさんが、私の右手を掴んでいた。

 

「行って……下さい!!!!」

 

 ナイルさんは、背中の羽を大きく羽ばたかせ、弾幕のなかに出来た道をくぐり抜け。

 そのまま私を――ネクスのいる工場目掛けて投げ飛ばした。

 右手を伸ばして、私は声を張り上げる。

 

「ネクスーーーーッ!!!!」

 

 

 

「――私の弟分を、よろしくお願いします」

 

 

 

 ナイルさんの、そんな声が僅かに聞こえた気がした。

 

 

 


 

 

 

 工場の窓ガラスをブチ破り、光の中から一人の少女が暗闇の中へ転がり込んできた。

 

「なっ……!」

「ええっ!?」

「これは……」

 

 その光景を目の当たりにした白い人影は、それぞれの反応を示す。

 

「ネクス!!」

 

 そんな彼女達を気に留めず、ヒスイは立ち上がってネクスの元へと駆け寄った。

 

「ネクス!ネクス!ごめん、ごめんね!私、私――!!」

「その子から離れてください!!」

 

 工場に備えられた迎撃システムが、ヒスイへと向けられる。

 

「その子は……“X(エクス)”は、あなたのものでは、ありません!」

「……誰?」

「そうだね……アナタ達に分かりやすいように言うなら――その子の“産みの親”かな」

「親?ネクスの?」

「“X(エクス)”ですよ」

 

 ヒスイは、自らへ向けられた銃口に怯むことなく、モニターに映る白い人影と対峙する。

 

「アナタがネクスと呼ぶそのパワードスーツは……、私達が作り出した物です」

「そもそも、もっと言うならそれはパワードスーツじゃないんだけどね」

「……ネクスが、パワードスーツじゃない?」

「驚いた。……それなりに長く“X(エクス)”と共にいたのに、欠片も知らなかったんだ」

 

 耳に黒い装置をつけた白い少女が、くすくすと笑う。

 

「ここまで来た土産に教えて差し上げましょう。……“X(エクス)”は、私達がとある“儀式”の為に作り上げた装置……いわば、“儀式の為の祭器”なのですよ」

 

 黒い眼帯を帯びた少女が、人さし指を振っていた。

 

「“X(エクス)”は……、私達が観測したとある“特異点(シンギュラリティ)”をベースに、あまりにも不安定だったそのシステムを完全な管理下に置きつつ再現した物です。……“パワードスーツ”の機能は、あくまでもその再現の時に生じた、“副次的な機能”でしかありません」

 

 黒いガスマスクのような物で口を覆う少女が話す。

 

 

 

「――“神秘無き者を、より上位の存在へ導く昇華装置”」

「それが――“X(エクス)”の」

「いいえ、正しくは――」

 

 

 

「“Nuill(ヌィル)-X(エクス):VariaBlue(ヴァリアブルー)”の本質」

 

 

 

「……ヌィル、エクス――」

 

 

 

 ――それは、ヒスイがネクスの起動時に見た、彼の正式名称だった。

 

「……神秘をもつアナタがNuillを使うのは、ただの宝の持ち腐れなんだ」

「Nuillそのものであれば、神秘の所有者ではそもそも起動もできない筈でしたが。……まさか、完全な制御がこんな裏目になるとは思いませんでしたね」

「ですが、同時に私達が作り出した“VariaBlue”ユニットの機能のテストとしては十分なデータにもなりましたから……、感謝は。しているんです」

 

 嘘を言っているとは、ヒスイは感じていなかった。

 

 彼女が“ネクス”と呼ぶ“彼”に秘められた真実。その本質。彼の、存在。

 きっと、きっと。その3人の白い少女たちが語る言葉は、真実なのだ。

 ヒスイには、その言葉の本質が、直感的に理解できていた。

 

 “ネクスなどというモノは、最初から、()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

「――――それでも」

 

 

 

 

 


 

 

 

「それでも。ネクスは私にとってはネクスなんだ」

「はぁ?」

 

 私の言葉に、一人の少女が耳を疑った。

 

「……本当に愚かですね。人間のなかでも、アナタほど愚かな存在はレアケースなのではないでしょうか」

「そうかもね」

 

 理解ができない様子で、私のことを見下していた。

 

「それでもやっぱり、Nuillだとか、祭器だとか言われても。私にとっては……ネクスはネクスだよ」

「…………」

 

 言葉を失ったまま、私を見ていた。

 

 私はそっと、ネクスに触れる。

 

「――もう、決めたんだ」

 

 始まりは、偶然だったのかもしれない。私の前に、彼が……ネクスが降ってきて。私が彼を“Nuill”ではなく、“ネクス”と呼んだのは。

 

 全部全部、偶然で、奇跡的で、運命的で。

 

「私はこれから先を、彼と進んでいくんだ」

 

__neural network check...

 

「彼と――」

 

__...complete

 

 

 

「ネクスと!!」

 

 

 

 私の声に呼応して、“ネクス”が――目を醒ます。

 

 

 

__おはようございます、パイロット。2日と2時間34分ぶりですね。

「嘘つき。それ、言いたかっただけでしょ?」

__ええ。ですが、あなたは好きでしょう?こう言う“演出”が。

 

 その光景に、少女達へ動揺が走る。

 

「Nuillが……起動した!?」

「起動シークエンス、いつの間に!?」

「い、いえ!これは、彼が勝手に――」

「“勝手”に!?神秘も持たないただのマシーンにそんな意志が――」

「……“意志”?まさか、いえ、そんな筈は――」

 

 それはまるで。

 

「ヒスイさん!!」

「ナイルさん!!」

 

 工場の天井をぶち抜き、青い髪をなびかせた少女が、山吹色の翼をはためかせて、天使のごとく舞い降りた。

 

「――“特異点(Naill)”!!!!」

「おっと……。アナタたちが、デカグラマトンのメカニックさん達、ですね」

 

 モニターに映る少女達に気づいた少女は、白いワンピースについた埃を軽く払ってから、裾をつまんで会釈する。

 

「はじめまして。……弟分を作って頂いたことは、感謝しています」

「良くもいけしゃあしゃあと……!貴方の存在のせいで私達がどれだけ苦労したと!」

「はいはい。文句は又今度改めて」

 

 見た目はそう変わらないはずの少女達を軽くあしらったナイルさんは、僅かに早足気味に私とネクスの元へ来た。

 

「――仲直り、出来たみたいですね」

「はい」

「それは……良かったです」

 

 安心したように、柔らかい笑みを浮かべたナイルさんは、そのまま静かにネクスへ触れる。

 

「時間がありません。このままケテルを撃退してから撤退するので、ネクスくんにも戦ってもらいます」

「わかりました……でも、武器が」

「大丈夫。……今のあなた達なら、“青輝石”の出力を完全にコントロール出来るはずですよ」

「青……輝石?」

「“青春がもたらす奇跡の力”。とでも思ってください」

 

 いつものようにいたずらっぽく笑うナイルさん。とは言え、彼女が何を言っているのか、私にはイマイチ分からなかった。

 

「さあ、乗り込んで下さい。ネクスくんにかけられたロックを解除しますから」

「ロックの解除……まさか、“VariaBlue”ユニットを破壊するつもりですか!?」

「嘘でしょ!?“VariaBlue”ユニットは制御装置でもある!それを解除して、“奇跡”の力を人の手でコントロールするなんて出来るはずが――」

「うるさいですねぇ……。お父さんに出来て自分たちに出来なかったからって、妬かないで下さい」

「え、えっと……?」

 

 何やら私の知らない話をぎゃあぎゃあと始めた少女達に、言葉を失っていると、ナイルさんが苦笑を浮かべて私を見た。

 

「大丈夫です。ヒスイさんとネクス君には、関係の無い話ですから」

「は、はぁ……」

「ほらほら、行きますよ、乗り込んで乗り込んで」

__パイロット。こちらへ。

 

 仕方なく、私はナイルさんとネクスに促されるままコックピットへ乗り込んだ。

 

 ……そんなに時間は経っていないはずなのに、妙に懐かしい気がした。

 

 

 

「それじゃあ、行きますよ」

 

 

 

 ナイルさんは、ネクスに触れたまま目を閉じた。

 

 ほんの少しだけ、その手が光ったのが見えた。

 

 

 

__“VariaBlue”ユニット、接続解除。コアブロック、アンロック。

 

 ネクスのコアユニットに装着されていた装備が、音をたてて分離される。

 

__Nuill-X:VariaBlue、システム再構築を開始……。Error。

「エラー?」

__当機の名称に齟齬があります。

「えっ、どうするのそれ」

__名称の再設定を要求。……パイロット。

「……私が決めるの?」

__肯定。

 

 ネクスは、静かに私に告げる。

 

 

 

__私の名前を、教えて下さい。

 

 

 

 自分でも、笑みを浮かべている事がわかった。

 

「そんなの、決まってんじゃん」

 

 ずっと前から、君の名前は――決まってる。

 

 

 

「――行こう!“NEX(ネクス)”!!!!」

__名称登録……“NEX”完了。

 

 NEX(ネクス)のコアが青い輝きを放ち、周囲に光が満ちてゆく。

 

「さあ、行きましょう」

 

 ナイルさんが、私達へと手を伸ばす。

 

 

 

「はい……行きましょう!私と――NEX(ネクス)と!!」






 や り た か っ た だ け


 NaillとかNuillとかについて詳しく知りたい方は、拙作の作品の“青空DAYS”のほうを読んでいただければ詳しくわかると思います。
 クソ長い作品なので無理に読まなくても一応このまま走りきれる作品として書きますので、気になった方だけ是非読んでみて下さい。
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