キミとNEX→T!!   作:Ziz555

3 / 11

 空のことを知らずに、私は生きていけただろうか。



第3話:飛べ!憧れの空へ!!

 

「――行くよ!ネクス!!」

 

 私のその声とともに、ネクスはセンサーを起動させ、私に周囲の情報を流し込んできた。

 それは、私が感じている気配をより鮮明にしたような感覚で、今の私には敵の姿がはっきりと感じられる。

 

「これなら――」

 

 そうして、反撃のために操縦桿を握る掌に力を込めて、ようやく気づく。

 

「……あれッ!?武器は!?」

 

 ネクスのマニピュレータには何も握られておらず、私達の周囲に散らばる、ネクスを収容していたコンテナの外装の中にもそれらしいものは存在しない。目視する限りでは、ネクスの腕部に砲身や銃口らしい構造もなく、ネクスも火器管制システムを起動しているようには見えなかった。

 

「武器、武器はッ!?」

 

 コンテナから出現したこちらの様子を伺っていたらしいドローンは、こちらを敵と認識した様で、ロックオンをされた事を示すアラートがバイザーへと表示された。

 反撃の為の武器を必死に探す私は、操縦桿のトリガーをガチャガチャと押しまくり。……ようやく一つの“武器”を見つける。

 

「コレだ!!」

 

 バイザーに示されたソレは、ネクスの右腕部に搭載されていた。

 私は、即座にそれにカーソルを合わせ、武装を起動する。

 ネクス右腕に搭載された、エネルギー発振装置が唸りを上げて、光の刃を形成する。

 

「ビームサーベル!?……えぇーい!無いよりマシだ!」

 

 至近距離(クロスレンジ)での戦闘など、運動部でもない私には経験があるはずもない。

 しかし、そんな事情をドローンたちが汲んでくれる理由もなく、それらの銃口が再び火を吹いた。

 

「やっ……!?」

 

 ヤバい。そう声が出るより先に、私の身体が――ネクスが、動き出していた。

 放たれた弾丸がこちらに到達するより早く、機体はその全身を横に滑らせるように移動して弾丸を回避する。

 

「――これならッ!」

 

 私が感じるより、動くより、ネクスの動きは比べ物にならないほどに速かった。

 火線は把握している。そして、それを躱せるだけの機動力があるのなら――話は単純だ。

 

「はぁぁぁぁぁッ!!」

 

 ぐい、と身体を前へと進ませる。

 

 ネクスは、私の指示を汲み取るようにしてバーニアを吹かし、戦場を駆け出した。

 

 二機のドローンは、距離を詰める私の行く手を阻むべく、機銃による弾幕を形成するが、ネクスはその間をくぐり抜けるようにして加速してゆく。

 

「今!」

 

 瞬く間に、ドローンとネクスの距離が詰まる。

 

 すれ違いざま、私は光の刃を振り抜く。

 

 翡翠色の発光を伴う刃が、宙に軌跡を描いて、ドローンを切り裂いた。

 

 切り裂かれたドローンは、搭載されたバッテリーが両断され、機銃の為に搭載された火薬へと引火し、爆散した。

 

「一つ!!」

 

 一撃で撃墜された仲間の姿を認識したのか、残されたドローンは機銃を放つことを止めて、向きを変えて空へと飛び上がってゆく。

 

「あっちは……、まあ、逃げる分にはいっか」

 

 そそくさと逃げるようにして地上を離れていくドローンを眺めながら、私は体制を整え、ビームサーベルの展開を停止し――。

 

 

 

__追撃を推奨。

 

 

 

 ネクスが、そんな言葉を提示してきた。

 

「追撃?……ただ逃げるだけをわざわざ追わなくても……戦争してるわけじゃないんだし」

 

 確かに、先に仕掛けてきたのはあのドローン、ひいてはその持ち主だが。何も私はアレがどうしても憎いと言うわけでもない。だから、空に舞い上がってゆくアレをわざわざ苦労してまで追おうという発想は出なかった。

 

 __否定。アレは逃走ではありません。

「……逃走じゃ、ない?」

 

 じゃあ、一体。

 

 そんな言葉をいうより先に、強い風が辺り一帯へ降り注いだ。

 吹き抜ける、のではない。それは、(ウエ)から。

 

「――いッ、ウソでしょ!?」

 

 反射的に見上げた視線の先には、一際大きな航空機が一機。

 小型の航空母艦とでも言うべきだろうか。胴体部が大きく膨らみ、内部になにか──おそらく、回収する手筈だった“ネクス”だろう──を格納する機能を持つことが予想できる外見に加え、その大きな機体を支える為の飛行補助翼が両脇にとりつけられていた。その大きな機体を飛行させる為、上部に備えられた複数のプロペラがバラバラと大きな音を立てて回転している。

 

 そんな風に私が様子をうかがっていると、格納スペースから、先程私が撃墜したドローンと同型の機体がボロボロと放出された。

 

「無理無理無理無理!アリなのアレ!?」

 

 ドローンにあしらわれているようなデザインを施された、その航空機の両翼には、ドローンとは比べ物にならないほどに屈強なガトリングガンが二門搭載されているようだった。

 しかも、そんな大ボスは、取り巻きのドローンを撒き散らしながらこちらを狙いすましている。

 

「アーマードなネクスがあっても、現実はコアな死に覚えゲーじゃないんだよ!?」

__警告。狙われています。

「わかってるけど!何処に――」

 

 絶体絶命の窮地に悪態を吐いた次の瞬間。航空機のガトリングガンが火を吹いた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

 私は咄嗟に、両腕を頭の前で交差して鉛の雨を全身で浴びる。

 激しい破砕音と、弾丸に粉砕された周囲の木々の破片が辺りを満たした。

 

 そして、一斉射が止み――。

 

「ああぁ……………あ、れ?」

 

 私は、自分の体どころか、ネクスのボディに何の損傷もないことに気づいた。

 

波形(パルス)防壁(シールド)……?」

 

 ネクスの画面に表示された単語に、私は状況を理解する。

 

「なんだ!これがあるならぜんぜん大丈夫じゃん!よかっ――」

__パルスシールド、エネルギー残量15%。再度攻撃を受けた場合、消失します。

「――良くなぁぁぁぁぁい!?」

 

 全然理解してなかった。

 

「えっ!?えっ、じゃあ次はどうするの!?どうなっちゃうの!?」

__当機にあの攻撃を防げる装甲はありません。

「つまり?」

__ハンバーグのタネに最適ですね。

「最悪だよ!!」

 

 ネクスとそんなやり取りをしている間にも、航空機は再び攻撃をする為に、銃口をこちらへと向けていた。

 

「どどどどどど、どうする!?どうする!?反撃しようにも、あっちは空を――」

 

 次の攻撃への打開策も思い浮かばないまま、私は焦りのせいでまとまらない思考をぐるぐると回し――。

 

 

 

__飛行可能。

 

 

 

「……えっ?」

 

 ネクスの提示に、息を呑んだ。

 

「……飛べるの?」

__肯定。当機は限定的な飛行能力を――

「なら!!!!」

 

 私を狙うガトリングガンが空転を始める。

 

「私を――」

 

 けれど、私は――。

 

 

 

「――私を、“空”に連れて行って、ネクス!!!!」

 

 

 

 銃弾が放たれる。

 

 

 

__肯定。

 

 

 

 ネクスの脚部ウイングが展開され。

 

 

 

 そして。

 

 

 

 放たれた弾丸は、再び大地と森を粉砕し、大きな土埃を上げて周囲を煙で包み込む。

 

 一筋の光が、その煙幕を突き破って天へと舞い上がった。

 

 

 

「――凄い、私……飛んでるっ!!!!」

 

 

 

 私の眼下に、大地が広がっていた。

 遮るもののない視界の中で、見上げれば無限の空が、そして、見下ろせば歩き慣れた街の、見慣れない光景が映る。

 

「凄い!凄いよネクス!飛んでる!!」

__否定。当機のコレは一時的な高度保持です、滑空翼による移動であれば――

「細かいのは後!」

 

 余計な事を並べ立てるネクスの事を一蹴して、私は“ボス”の方を見た。

 

「これで。対等に戦えるね」

__警告。当機にはブレード以外の武装はありません。射撃武装の優位性は。

「あるんだなぁ!こんな私の、とっておきが!」

 

 そうして私は、ネクスの操縦桿から一度手を離し、腰のホルダーに戻していた“ソレ”を手に取った。

 

「私の愛銃……“マスターギア”には、秘蔵の仕掛けがあるんだから!」

 

 “マスターギア”。それは、工業製品に欠かせない“歯車(ギア)”の精度を測るために作られる、基準となる歯車の事を指す。

 

 そして、私のライフルである“マスターギア”は、私がこれまで改造してきたメカの火力水準器としての役割があり。それ故に、()()()()()()()()()()()()為の仕掛けが施されている。

 

 それは、パワードスーツとて例外ではない!!

 

「ネクス!!」

__Weapon Connect……

 

 私にとっては両手で抱えねばならないその大きな銃身は、ネクスのマニピュレータには手頃なサイズとして片手で収まる。

 そして、マニピュレータに握られたマスターギアの電力供給プラグに、ネクスのコネクターが接続された。

 複数のインジケーターが表示され、マスターギアとネクスのシステムがリンクする。

 

__Accept!!

 

 接続完了を示すその表示とともに、私はマスターギアをネクスのマニピュレータへと握らせ、コードを入力する。

 

「ネクスのエネルギーゲインは、ゴリアテのカタログスペックの五倍以上!なら――ッ!!」

 

 マスターギアのストックに当たる部分が分離、変型し、砲身へと変化する。それと同時に銃身がスライドし、弾丸の発射機構が再構成される事で、異なる回路が接続された。

 

 そして、それと同時に、ボスの周囲に浮かんでいたドローンの内数機が私へ向けて機銃を放つ。

 

 スラスターを吹かし、くるりと宙で身体を翻し、私はその攻撃を避け、返す刃に――マスターギアの銃口をそれらへ定めた。

 

「いっ、けぇぇぇッ!!」

 

 ネクスの操縦桿の引き金を引き、接続されたマスターギアのトリガーが連動する。

 

 瞬間。ネクスから多量のエネルギーがマスターギアへと流れ込む。その銃身に電流(プラズマ)が流れ、マスターギアの砲身にライトグリーンの光が収束され、それは指向性を持って、マスターギアのバレルから放たれた。

 

 亜光速の光条が、ドローンの装甲を容易に貫く。

 

 

 

「コレが!マスターギア、“ビーム・ライフルモード”!!」

 

 

 

 貫かれたドローンは即座にその機体を爆散させ、粉々となって地面へと落ちてゆく。

 

「どんどん行くよ……ッ!!」

 

 私はそのまま、勢いに任せてビーム・ライフルのトリガーを引いた。

 

 ネクスの照準補正(ロックオン)機能に助けられた私の射撃は、正確無比にドローンを貫き、次々に標的を落として行く。

 

 しかし、ボスだってやられるままでは当然無い。

 

 私の射撃を、その巨体からは想像もできないほどの機動性で持って飛行することで回避した航空機は、両翼の大型機銃を再び私へ向けて掃射する。

 

 私も負けじとネクスのスラスターを吹かし、空を滑るようにして移動して、降り注ぐ弾丸の雨を回避する。

 

 移動しながらの銃撃は著しく命中精度が下がる。だが、牽制にはなると考えた私は、大雑把な狙いをつけて標的へとビーム・ライフルを放つ。

 

 放たれたビーム・ライフルは、その正面装甲へと直撃するが、その表面に弾かれるようにして防がれてしまった。

 

「アンチビーム装甲!?」

__否定。純粋に装甲が厚すぎるだけの様子です。

「なら、薄い所を狙えば良いね!」

 

 背後から私を狙うドローンを片手間で落としながら、私は意識をターゲットへと集中していく。

 

 眼前の航空機からは、執念や敵意の様な、人の意志は感じられない。その動きは無機質で、機械的に見える。たぶん、中に人はいない。

 

 無人機のAI駆動であるのであれば、その回避パターンには一定の法則性があるはずだ。

 

 牽制のライフルを放ちながら、私は感覚を研ぎ澄ます。

 

 流れを読み。“機械の声”に、静かに耳を傾ける。

 

 世界が一瞬。止まって見えた。

 

 

 

「――そこッ!」

 

 

 

 機体を翻し二射、連続でトリガーを引く。

 

 

 

 初撃のビームを避ける為、航空機はその機体を大きく捻り――私が放った、僅かに照準をずらした二射目が見事に側面の翼へと命中した。

 

 光の弾丸に貫かれた翼は、爆発を伴い半ばから先が千切れ飛ぶ。

 姿勢制御のための飛行補助翼を失った航空機は、その巨体を大きく傾けた。だが、その飛行能力が全損したわけではない。懸命に姿勢の安定を取り戻そうと、残った翼とエンジンが駆動する。

 

 その一瞬は、私には十分すぎる。

 

「はあああぁぁぁぁぁッ!!」

 

 ネクスのスラスターを全力で吹かして距離を詰めながら、左腕部のビームサーベル機能を解放し、刃を形成する。

 出力を限界まで引き上げ、身の丈ほどのビーム刃を形成させた私は、それを全身の力を込めて航空機へと、叩きつけた。

 

 ビームライフルとは比べ物にならない出力を保持するサーベルは、航空機の分厚い装甲を容易く溶断し、中央から見事に真っ二つに切り裂かれる。

 

 赤熱した断面がショートを伴い――航空機は空中で大きな爆発を伴い、砕け散った。

 

「はぁ……っ、はあっ……、はぁ……!」

__対象、沈黙。

 

 ネクスの声に、私の中で何かの糸が切れるような感覚があった。

 

 張り詰めていた意識が、急激に力を失ってゆく。

 

――これ、やば……。

 

 そう思った次の瞬間には、もう、私の意識は暗闇の中に落ちていた。

 

 

 


 

 

 

 ――搭乗者の意識が失われ、操作を失った機体は、飛行能力を失い地面へと落ちていく。

 

 多大な質量を伴うその鉄塊は、裏山の柔らかい地面の上に強い衝撃を伴い落下し、凄まじい衝突音を伴って土埃を巻き上げた。

 

 幸いな事に、搭乗者保護機能を持っていたマシーンの性能のお陰でヒスイには怪我一つ無く、しかしそれほどの衝撃を伴って尚、彼女は意識を失ったままだった。

 

 そんな彼女の共に、一つの影が近づいていた。

 

「――ふむ。まさか、“X(エクス)”に適合者が現れるとは、思いもしませんでしたね」

 

 気絶したヒスイと、彼女を包む機体――“X(エクス)”を視認したそのスーツ姿のアンドロイドの男は、低く、落ち着いた声でそう零す。

 そして、その男はジャケットの内ポケットから小さな通信端末を取り出すと、何処かへと連絡を取る。

 

「ええ、はい。私です。……そうです、ターゲットを見つけました。回収のための人員を派遣してください。最も近いPMC駐屯地は――」

 

 短く目的だけを伝えたその男は、通信を手早く切ると、再び、眼の前で眠る少女の顔を見た。

 

 

 

「……さて、どうしましょうか」

 

 

 

 男は静かに、そう呟いた。





 感想、評価、頂けると励みになりますので、よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。