キミとNEX→T!!   作:Ziz555

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 走って、走って、走って。叫んだ。



第7話:見上げる程に大きくて

 

「えぇっええ、えぇええぇえンジニア部!?」

 

 私達へと自己紹介をしてくれた少女、豊見コトリさんの言葉に、私は大きく取り乱す。

 

 だって、それは。その部活の名前は――!!

 

「ふむ。……と言うことは、コレは白石博士の?」

「おおっ!ウタハ先輩の事をご存知なんですね!?」

「ええ、まあ。その道に携わる者として、彼女の名前を聞かぬ日はありませんよ」

「ううぅぅぅうっ、ウタハさんって!“あの”!白石ウタハさん!?!!?!?!」

「ヒスイさんは少し落ち着いてください」

 

 馬鹿野郎これが落ち着いていられるものですかィ!!

 ……と、叫びたくなる魂をなんとか抑え込み、私は大きく息を吸ってから、そのまま深く吐き出した。深呼吸である。

 

「エンジニア部って!“単独での大気圏外活動”を可能にする事を目的としたパワードスーツ、“戦乙女(ヴァルキリー)シリーズ”を開発した、あの!エンジニア部ですよね!?」

「おおっ、その開発理念をよくご存知ですね!もしかして、宇宙とかにご興味があったり……?」

「機械のことなら何でも大好きですッ!!」

 

 ミレニアムサイエンススクールのエンジニア部。それは私にとっての目標であり、()()()()()()()()()()でもある。

 

 私がミレニアムサイエンススクールを志望していた理由は、エンジニア部にある。

 

 自由な発想と、こだわりを感じる独創的な作品の数々に、私はいつも心を躍らせていた。

 Bluetooth機能や自爆機能、搭載はされていてもエネルギー供給が足りず稼働ができない電磁砲(レールガン)など。そこには利便性や堅実性とは違う、抑えきれない探究心と、造り手のこだわり。そして――“ロマン”があると、そう感じていた。

 私の持つ愛銃、“マスターギア”の荷電粒子砲(ビームライフル)機能は、エンジニア部に触発されて搭載された機能であったりもする訳で。とにかく、私にとっての“エンジニア部”は、憧れの存在だった。

 

 まあ。私は結局の所、ミレニアムサイエンススクールの受験に失敗し、北蔭高校(何の変哲もない学校)に通い、趣味と仕事の合間のような機械いじりに精を出すだけの青春を送っているわけなのだが。

 

「は、はじめまして!私!北蔭高校に通う、陽風ヒスイって言います!あの!いつも!作品見てます!!」

「本当ですか!?そう言っていただけると私達としても鼻が高いです」

 

 感極まって差し出してしまった手を、コトリさんは優しく握ってくれた。

 

「はわわ〜……夢心地ですぅ……来てよかった……EXPO……」

「そ、そこまでですかね……?」

「あまり気にしないでください。彼女、少しズレてるので」

 

 保護者みたいな事を言うチーフに、普段なら文句の一つや二つ出る所だが――今の私は寛大だ。許してやろう。

 

「……所で豊見さん。このパワードスーツに関してですが――」

「あ、はい。説明の途中でしたね」

「その点はお気になさらず。……コレは、“戦乙女(ヴァルキリー)シリーズ”ではありませんね?おそらく、そのアーキタイプ。白石博士が、パワードスーツ開発に注力するきっかけとなった機体」

「アーキタイプ?」

 

 コトリさんに握手してもらった手をなんとなく擦りながら、私はチーフの顔を見た。

 アーキタイプ……つまりは、この展示されているパワードスーツが、“戦乙女(ヴァルキリー)シリーズ”の原点である。ということなのだろうか?

 

 ――私がこのマシーンに感じた既視感は、それが理由?

 

 私の視線は、その答えを知っているであろうコトリさんへと向けられた。

 

「よくご存知ですね。どこかでお話を?」

「職業柄、そういう話題には敏感ですので」

 

 そう語りながら、チーフは名刺を取り出して、それとなくコトリさんに手渡した。

 そこに記された“カイザーインダストリー 兵器開発部主任”の文字を見たコトリさんは、納得がいったように一度頷いてから、名刺を胸ポケットへとしまう。

 

「お考えの通り、このパワードスーツはウタハ先輩が“戦乙女(ヴァルキリー)シリーズ”を製作するきっかけとなった、始まりの機体。そのレプリカになります」

「では、コレが」

「はい。そのお話を知っているのであればご存じかもしれませんが。この機体が、ミレニアムの廃墟から発見されたパワードスーツ、“N――」

 

 

 

 瞬間。EXPOの会場が、大きく揺れた。

 

 続けて、けたたましい警報が鳴り響く。

 一瞬のうちに、会場に混乱と緊張が満たされた。

 

「非常警報!?一体何が!」

 

 コトリさんも、その警報を聞いた途端、目の色を変えて周囲を確認した。

 少しでも情報が欲しい。そう考えた私も、会場の周囲を見渡す。

 

 大きな振動こそあったが、展示物やブースの壁が倒れている様子もなく、会場内で爆発があったという様子もない。

 

 つまり。異変があったのは、会場の外――。

 

「……はい、はい。承知しました」

 

 いつの間にか、チーフが右手を耳に当て、ボソボソと小声で誰かとやりとりをしていた。

 緊急通信が入ったのだろう、チーフは、横目で私のことをみながら何度か頷いていた。

 

「チーフ」

 

 私は、コトリさんに聞こえないように小さな声でチーフに声をかけた。

 この状況、私の感が正しければ――。

 

「“デカグラマトン”ですね?」

「……その様です。ミレニアムのセキュリティを突破した存在が、こちらへ向かっていると」

「と言うことは、狙いは――」

 

 チーフは私の言葉を遮るようにして、小さく首を横に振る。

 

「ここはミレニアムです。元より他の狙いがあるかもしれません」

「でも」

「危険です。……今回の“敵”は、これまでとは格が違う」

 

 チーフの言葉からは、ごまかしのような気配を感じなかった。おそらく、今回襲撃をかけてきた敵は、私が今まで戦ってきたただのドローンとは比べ物にならないのだろう。

 

 けれど。

 

「やります」

 

 どうせ避けては通れない、そんな予感がした。

 だから、ほんの少しそのタイミングが前倒しになるだけ。それだけ。

 

「――わかりました。トレーラーに急ぎましょう」

 

 私の決意を汲み取ったのか、チーフはそれ以上私を止めようとはしなかった。

 私は小さく頷いて、二人でその場から駆け出した。

 

「あっ、ちょっと!お二人とも、どこへ!?危ないですよ!」

 

 コトリさんの呼び止める声が聞こえたが、私たちはざわつく会場を駆け抜けてゆく。

 

 それがどれだけ危険な選択だとしても、選んだからには――止まれない。

 

 

 


 

 

 

 トレーラーは、会場の外、すぐ近くの倉庫区画近くの裏道に停められていた。

 

「待ってたぜ、ヒスイちゃん!メンテはバッチリだ、今すぐ飛べるぜ!」

「ありがとう!おじさん!」

「オニーサンだ!」

 

 私は、運転席から顔を出していた特装隊のお兄さんに一声掛けてから、トレーラーの格納部へと飛び込んだ。

 移動用ハンガーとなっているトレーラーの中心には、ネクスが鎮座しており、そのコックピットは私の到着を今か今かと待ちわびているかのように開け放たれていた。

 

「お待たせ!ネクス!!」

 

 腰部ウェポンハンガーにマスターギアを装着しながら、私はネクスへと四肢と背中を預ける。

 

__待ちわびていました、パイロット。

「これでも全速力だったんだけど?」

__運動不足ですね。もう少し肉体を作るべきです。

「えぇ……。だって、仕事もあるんだよ?」

__“パイロット”は身体が資本といいますが。

「うへぇ……」

 

 そんな他愛ない軽口をたたき合いながら、出撃のためのフィッテイングプロセスが進行していく。

 四肢にそれぞれの部位に対応したセンサーが装着されていき、両手には操縦桿当てられた。

 最後に、頭部にバイザーが降りてくると、視界が最適なものへと変更されて、私の世界が広がった。

 

『ヒスイさん。聞こえますか』

「聞こえてます、チーフ!」

 

 バイザーの装着が完了すると同時に、トレーラーの運転席から通信が入る。視界の端には、チーフの顔が映し出されていた。

 

『今回はこのトレーラーを仮の拠点としてオペレーションを行います。観測用のドローンを同行させますが、普段に比べるとどうしても精度は落ちてしまいますので、気をつけるように』

「わかってますって。……それで、敵は?」

『資料を送ります』

 

 そんな言葉とともに、バイザーにブリーフィング用のデータが表示される。

 

『今回のターゲットは、ミレニアムの通信ユニットAI、“Hub(ハブ)”。その変異体になります』

「変異体?」

『ええ。Hub(ハブ)は本来、ミレニアムの通信機器の敷設や修理を行うための特殊な巨大ユニットでしたが……昨年、それが何者かに乗っ取られました』

「乗っ取りって……。重要なユニットじゃないんですか?」

『ええ。それをいとも容易く行えてしまうのが、私達が相対している存在になります』

 

 チーフの言葉には重みがあった。けれど、私にはどうにもその“重さ”の実感がわかない。

 分からない、けど。それが何を意味しているかは、わかる。

 

「……デカグラマトン」

『その預言者たる一柱。第八目に当る、栄光を司る存在。その名を――“HOD(ホド)”』

 

 ――“預言者”。

 

 それが示す所の意味は、私には分からない。ただ、少なくとも間違いなく、私が今まで相手取ってきた有象無象の兵器たちとはわけが違う。

 

__システムオールグリーン。飛べます。

「うん。わかった」

 

 システムチェックが完了したらしいネクスの通知を受け、私は一度、大きく深呼吸をしてから、操縦桿を握り直した。

 

『“HOD”の武装ですが――』

「ごめん、チーフ。ハッチ開けて。後は飛びながら聞くよ」

『ヒスイさん』

「時間、あんまりないでしょ?」

 

 操縦桿のトリガーをカチカチと操作し、機体のレスポンスを確認しながら、私は視線を前へと向ける。

 

『……承知しました。くれぐれも無理はなさらないよう』

「大丈夫ですよ。ネクスがいます」

『…………ご武運を』

 

 トレーラーのハッチが開き、簡易カタパルトのコントロールが私へと委譲される。

 待ち受ける強大な敵の存在に、私の心は大きく揺れていた。バクバクと心臓は音を立てて、不安が抑えきれない。

 

 それでも、私は大丈夫だと。胸を張って言える。

 

「――――陽風ヒスイ!ネクス!出ます!!」

 

 カタパルトの加速と同時に、スラスターを大きく吹かして、私は一気に最高速度へと駆け上がる。

 

 離陸と同時に脚部を伸ばし、私は一息に大空へと舞い上がった。

 立ち並ぶビル群を越える高さまで到達すると、すぐにターゲットの姿が視界に映る。

 

 

 

 それはまるで、巨大なタコのようにも見えた。

 そびえ立つ巨体の上部には、頭部と思われるユニットが取り付けられており、その下部から細長い触手のようなケーブルが、左右ニ本ずつ合計四本展開されている。

 全身を純白の鋼鉄で作られた機械仕掛けの怪物は、周囲のビル群に負けず劣らすの巨体を有している。

 体躯をよじる動きだけで空間が揺れるようなその存在感は、生きた鋼の要塞の様だった。

 

 その巨体に見合わぬ速度で、ソレはぐるりと向きを変えて、私を正面にとらえる――。頭部の中央に備えられた、オレンジ色に輝く単眼が、私をじっと覗いていた。

 

 

 

「あれが!預言者!!」

__対象を認識。デカグラマトンの預言者。“輝きに証明されし栄光”、HOD。

「知ってるの?ネクス」

__アーカイブアンロック。所持データを開示します。

 

 HODを視界に捉えると同時に、バイザー内に詳細な情報が展開される。

 装甲情報や武装構成の詳細、行動パターン等まで詳しくが書いてあるらしいその内容に、私は軽く目を通す。

 

『このデータ、“X(エクス)”から?……しかし』

「チーフ!」

『……こちらの情報をアップデートします。今は現場の判断を』

「りょー……かいっ!」

 

 被ロックを知らせるアラートが鳴り響く。

 死角からの強襲。これは――!!

 

「インベイドピラー!」

 

 機体を旋回させ、私を狙う砲撃を回避する。

 本来であれば、都市の防衛を担うために備えられた迎撃用の対空砲が、私に向けて放たれていた。

 それらの付近には、一際大きな“柱”が突き刺さっている。

 ネクスの開示した情報によると、あれには高度なハッキング機能が備わっており、あれが周囲の防衛機能を支配しているらしい。

 

__パイロット、まずは露払いです。このままでは接近は難しいでしょう。

「対策は!?」

__CC状態に(CodeCrack)できれば妨害も可能ですが。当機にその機能はありません。

「じゃ、いつも通りだ!!」

 

 連続で放たれる砲弾を回避しながら、私はマスターギアのライフルモードを起動する。

 

「狙うは一つ!!」

 

 目標はそびえ立つだけの“(インベイドピラー)”だ。狙いを付ける必要すらない。

 

「最大出力!!」

 

 ジェネレーターが唸りを上げ、マスターギアの火力を大きく引き上げる。

 

 出力限界ギリギリ一杯!最大火力で粉砕する!!

 

「いっ、けぇぇぇぇッ!!」

 

 マスターギアのサブグリップを展開し、両腕でマスターギアを押さえ込んでから、私はトリガーを押し込んだ。

 マスターギアの銃口から放たれたビームは、迎撃のために放たれた砲弾を一瞬のうちに蒸発させながら、インベイドピラーへ襲いかかる。

 凄まじいエネルギー量に、インベイドピラーの外装がまるでゲルのように溶け、光条は容易くその本体を貫通し――爆散した。

 

「やれる!!これなら!!」

 

 インベイドピラーの破壊により、正常な機能を取り戻した防衛システムは、ビナーへの射撃を開始する。

 例え相手が“預言者”だとしても、攻撃が通用するなら、私にだって――――ッ!!

 

『ヒスイさん、聞こえますか』

「チーフ!」

『インベイドピラーの撃破を確認しました。ですが、HOD(ホド)にはインベイドピラーを無尽蔵に生成する機能があります。すべてを相手取っていては、いくら“X(エクス)”と言えどもエネルギー不足になりますので、注意を』

「りょー……かいッ!」

 

 チーフの指示を受けて、私はネクスのエネルギー残量に目配せをしながら、二機目のインベイドピラーを撃ち抜いた。

 

 ネクスのエネルギーは、ほとんど無尽蔵だ。

 

 搭載されたバッテリーの容量は、既存のいかなるモノより高性能な上、解析ができずにいるジェネレーターは、常に電力を供給し続けている。

 

 しかし、“エネルギー切れ”が起こらないわけではない。

 ジェネレーターが無尽蔵に電力を供給し続けられたとしても、一度に生成できるエネルギー量には限度があり、バッテリーに蓄積されている電力にも限界がある。

 

 ネクスの飛行は、厳密には“滑空”する行為であり、高度を維持する為には一定のエネルギーを常に消費し続けることとなる。

 加えて、マスターギアの最大出力による射撃は、一度にバッテリーの15%近くの電力を消費する大技だ。

 飛行により常にエネルギーを消費しなくてはならない戦況において、この消費を連発してしまえば、すぐにバッテリーの貯蔵電力が底をついてしまう。

 

「かと言って――!!」

 

 通常出力によるビームなら、まずエネルギー不足は起こり得ない。だが、それでは火力が不足してしまう。

 インベイドピラーに侵食された防衛システムはそこら中にあり、油断をすれば背中からの攻撃を受けてしまう。……そして、直撃を受けてしまえば、姿勢制御と波形防壁(パルスシールド)の可動でその分エネルギーを消費する。

 

「なら、やっぱりここは!!」

 

 マスターギアの出力を落とすことは無く、私は次のインベイドピラーへ向けて空を駆けた。

 防衛システムの砲撃に加えて、HOD(ホド)本体から発射されるビーム砲による攻撃をくぐり抜けながら、二機、三機とインベイドピラーを破壊して――。

 

__対象、交戦距離に入りました。

「頭を叩く!最速で!」

__加速します。

 

 HOD(ホド)の触腕の射程圏に入ったネクスに、鞭のようにしなる一撃が迫る。

 私達は、それを急加速することでくぐり抜け、左腕のエネルギーブレードを発振させる。

 

「でやぁぁぁぁぁッ!!」

 

 触腕の内側へ潜り込み、刃を構える。

 狙うは一つ。頭部中央に備えられた、煌々と光を放つ場所。“目”のような器官――!!

 

 

 

 瞬間、HOD(ホド)の“目”が光る。

 

 

 

 刹那。私の脳裏に強烈な悪寒が走った。

 

『――ヒスイさん!回避を!!』

__パイロット!!

 

 二人の声が届くより先に、私はネクスのスラスターを操作して、強引に機体をよじる。

 姿勢やバランスなんてものを考慮しない、()()()()()()()()()()退()()事を優先した無茶な加速に、ネクスの機体は空中で横転するような挙動のまま、HOD(ホド)の眼前から転げ落ちる。

 直後、極熱の光線が私の鼻先を掠めるようにして放たれた。

 

 振動、轟音。

 

 肌身で感じるその強大なエネルギー量に、私は顔を歪ませた。

 

「くぅぅぅぅっ!?」

__パルスシールド、エネルギー残量65%。左腕部ブレード発振器、損壊。スラスター負荷上昇。姿勢制御に不具合が――

『機体損傷増加――、ヒスイさん!』

「こな、クソぉッ!!」

 

 たった一撃。たった一撃で、状況が坂を転げ落ちるようにして悪化していく。

 掠めただけだというのに、ネクスの機体は機能に不備をきたし、私の鼓動が自然と速くなる。

 

 だが、HOD(ホド)の攻撃が緩むことはない。

 頭部左右に付けられたビーム・キャノンから、空中でふらついている私に向けて砲撃が放たれる。

 無理な挙動で姿勢を崩した私にとっては、単調な攻撃であってもそれは強烈な一撃だった。無理な回避を繰り返し、空中で錐揉みするような挙動をするネクスに、私の体が引き裂かれるような痛みを覚える。

 

「ぐッ……!!つぅぅうううう!!」

__パイロット!!

 

 痛い。

 

 苦しい。

 

 息が詰まる。

 

 こんな戦いは、知らない。

 

 

 

 ――空から、墜ちる。

 

 

 

 砲と触腕による攻撃を、ギリギリのところで回避をするたびに、体と機体が重くなってゆく。

 私を縛るものがなかったはずの大空に、いつの間にか私を絡め取る重い鎖が現れて、私の体を雁字搦めに縛り付ける。

 

 機体の制御を失い、私はビルの一つへと墜落した。

 

__パルスシールド全損!姿勢制御システムリブート開始!火器管制……狙われてる!?

 

 墜落の衝撃で、私の身体が硬直する。

 

『ヒスイさん!!回避を――!!』

 

 橙色の瞳が。

 

「ひっ――」

 

 私を。

 

 

 

 

「――――距離修正。フレイヤユニット、推力安定。距離120(ヒトフタマル)。」

 

 

 

 HOD(ホド)の強力な光線が再び――。

 

 

 

「計算完了。援護――今!!」

 

 

 

 刹那。私の眼前に、大きな二枚の盾が割り込むようにして飛び込んできた。

 それは、HOD(ホド)の放った光線を遮り、防ぎ、私を守ってくれていた。

 

 その構造は、その形状は。私の焦がれた、憧れた。

 

「これって――」

 

 “白石ウタハ”の、最高傑作――。

 

 

 

「――よく耐えてくれたわ。誰だか知らないけれど、私たちの学校を守ってくれてありがとう」

 

 

 

 凛とした中に優しさを感じる、そんな声が聞こえた。

 

 推力を感じさせない、浮遊しているような、緩やかな速度で彼女は私の前に舞い降りる。

 

「でも、もう大丈夫よ。ここはミレニアムの長である私が後は引き継ぐから。無理せず下がりなさい」

 

 青い髪をたなびかせ、黒いスーツを身にまとう、戦場に似つかわしくない冷静さを伴う女性は、静かにHOD(ホド)を見据えてこう言った。

 

 

 

「私が負ける確率は、極めて低い。……いいえ」

 

 

 

 

 

「1000%。存在しないわ」





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