女神「輪廻転生しろ」 ワイ「はい……」   作:まっすァき

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 もう数も覚えていない。

 

 幾度も、幾度も、竜の首を断ち続けた。だが再生に終わりがない。

 

 幾層にも重なって出来ている鱗が、全身の鱗が砕けていた。

 ひび割れた爪。切り傷の多い、鱗の破片が刺さり、肉の見えた竜。

 竜は地面に伏していた。

 

 頭は既に無く、その人間は竜の頭を、できるだけ遠くに投擲し続けた。我がふるさとに贈る、竜退治(ドラゴンスレイ)の、証として。

 

 だが竜殺しは終わっていない。

 死体だった竜は、皮膜の無くなった翼に膜を張り、そして折れた尾の骨を一瞬にして伸ばした。

 そして、全ての関節の切られた腱を再生させ、死体の竜は首の断面から血を撒き散らし、今一度立った。

 

 そして、それと同時に今から竜の頭になろうとし、穂のように垂れていた首が再生し始めた。

 断面が蠢き、血をさらに撒き散らしながら。

 すでに地面は血で赤く染まり、泥沼と化し、()せ返る悪臭を湛えている。

 人間は、そんな地面を、右足の踏み込みで圧縮し固め、自らの身長の5倍はあろうかというほどの大剣をそのままの勢いで振り上げ、力一杯、首の断面に対して垂直に剣を入れた。

 

 首の骨を圧壊させ、内部で破片にしてもなお止まらない再生。

 

 前に殺した2体の竜は、死んだら蘇らなかったが、この竜だけは蘇り続けている。

 人間は、人生で初めてヒヤリとした。

 

 




 

 そして人間は、さらに竜の首を切り続けた。

 魔法が脅威であり、当たれば死ぬ。

 そうと確信していたからこそ、何十倍の体躯を誇る(ドラゴン)に対して、再生中も斬り続けることを選んだ。

 

 頭を潰し、目玉を踏み潰し、顎を蹴り壊す。

 そのようなことを続けても、その空になった、眼窩の瞳は人間を見つめ続けていた。

 

 人間は閃いた。

 倒せないのなら、封印してしまおうと。

 

 そして、竜を立方体のブロックに加工した。

 だが、そこからも再生してしまい、くっついてしまった。

 

 鮮血が滴り落ち、肉面に泡立つ脂肪があった。

 それは竜の末路であった。

 

 人間は、再生するのを諦めるまで切り続けることにした。

 もう首を斬るのはあまり効果がない、と分かってはいたが、それでも首を落とした。

 そして、人間はやがて年老いていった。

 

 竜の血を浴びし英雄は竜の肉を喰らい、そして生きていた。

 

 いつしか故郷(帰る場所)のことも、忘れてしまった人間は。

 

 竜のことを斬って、斬って、斬って、斬って。

 叩いて、賽の目切りにして。

 

 いつしか人間の、大剣が折れてしまった。

 地面に突き刺さることもなく、竜の首の骨に、刃を取り込まれてしまった。そして竜を倒しにくくなった。

 

 このころになると、人間は、爪、歯、そして四肢。

 ()しくも、竜と同じ戦闘技法(ファイト・スタイル)に到達した。

 拳は肥大化し、脚はより効率的に破壊するため、どんどんと太くなっていった。

 (やがて)、自らの体に鱗が生えた。

 皮膚は硬質化し、柔軟性を失い。

 

 人間は、鱗を見つける度に自分の体から剥いだ。

 

 目の前の竜が起き上がる。それを見た瞬間、首をへし折り、顎を粉砕して開かせた。

 竜はもう、悲鳴を上げなくなった。

 

 

 だが、まだ再生している。何度も。何度も、何度も何度も。まだ再生している。何度も。何度も、何度も、幾重も、何度も繰り返せ、と頭の中に響いた気がした。

 それはいつしか、常に喋るようになった。

 

 竜を潰せ。竜を、悪竜を殺せ。

 

 もう目の前も、ほとんど見えなくなった頃。

 気づいた。

 

 自分こそが、(ドラゴン)だった! 

 

 英雄は、こうして死んだ。

 竜退治の終わり。英雄の終わり。

 竜の死体が3体、そこには転がっていた。

 

 天変地異もかくや、という状態が山で続いていたので、通りすがりの好奇心溢れる行商人は止んだ原因を調べに行った。

 

 

 そして、竜が死んだ事に対して、たいそう驚いた行商人は、馬を走らせて、全速力で麓の街まで行った。

 

 妙だ。

 土がおかしい。

 

 色合いが赤茶けて、鉄錆のような漂っていた。

 

 背筋を凍らせて、泡を食ったように馬に鞭打った。

 ふと、木と目があった気がした。

 

 そこには。そこには。竜の首塚があった。

 あったというより、刺さっていた。

 

 豚の燻製を吊るすように、頭蓋を枝が貫いて固定していた。

 

 竜を倒せるようなやつが、すぐ近くにいる。

 あの量の竜を、倒せるような! 

 

 更なる恐怖に駆られた行商人は逃げた。逃げた、逃げ出した。

 周りを取り巻く全てが、不気味で仕方がなかった。

 

 そして麓の街に、気づけばいた。

 

 行商人は、大慌てで門兵に対して、見た惨状について話した。

 

 門兵は、それに慣れ親しんでいて、行商人に対して諭すような口調で言った。

 

「英雄のおかげだよ」

「勇者様が、竜を倒したんだ」

 

 

 それを聞いた行商人は、目を見開いて、唾を飛ばしているのも気づかないほどの剣幕で話した。

 

「あそこには怪物がいる!」

「竜を皆殺しにしてしまう、恐ろしい怪物が!」

 

 行商人は必死に説明したが。それを聞いた

 門兵は、疑問を浮かべたような表情で言った。

 

「怪物なんて、勇者さまが倒しているさ」

 

 

 何も心配は無い、と門兵の青年は行商人に対して言った。

 行商人は、自分が幻を見たのではないかと疑ったが、話を聞くに、たしかに(ドラゴン)を倒した人物がいたらしい。

 

 行商人は、常識を覆され、驚愕のあまり倒れた。

 

 







竜の体の呪い:竜に近づくことができる、竜の肉に秘められし力。

竜の血の呪い:竜の血を浴びた時、■■■■■■■■■(情報欠損)

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