モンスター。モンスター。またモンスター。
まあこんな
僕もさすがに8年以上、ほとんど同じ行動の反復は飽きるし疲れる。
そんなわけで。
「旅をしたいです」
「いいぞ」
驚くほど、軽く許可が降りた。
「目的地は?」
「それに、何ヶ月ほど休職する?」
僕はこう返した。
「うーん、10年くらいですかね」
10年!?
「初めての旅でいきなり10年も旅をするのは大丈夫か?」
「それに、言語も違うのだぞ」
「あ、言語はどうにかなります」
「いやいや、言語の壁をそう易々と越えられるわけがないだろう」
「君は知らないかもしれないけれど、世界にはたくさんの言葉で溢れている」
「私は主要な20の言語と、その他の128ほどの言語を覚えているけれど──」
「正直に言うと語学に堪能でなければ1人旅は厳しいぞ」
「両替の比率を知らなければ両替商に詐欺をされるだろう。そして長旅となると気候や風土への適応も難しい。病で倒れ、帰還ならず……ということはままあること。」
「それに、その国特有の不安もある」
「情報を知り、治安が良い国かどうかなどを考慮しないとまともな旅にはならないだろう」
僕はほとんど言い返せなかった。
だけど、僕の目的地はどうしても外せない。
「その、目的地がエスメープクド王国なんですけど」
帳の奥で、椅子がひっくり返ったような音が聞こえた。
「エスメープクド王国!?」
「ああ、メイプル執政国のことか?」
「その、随分と物知りだな」
訝しむような、驚愕するような声色だった。
「ええ、信頼できる筋から聞きました」
すると、管理人は言った。
「何故そのような国に渡ろうとするのだ」
「メイプル執政国はほとんどツァウスト帝国の傀儡国家だぞ」
「それに、今はやめておけ」
「政情不安があまりに大きすぎる」
「歴史的経緯についての解説が必要かね?」
本気でめちゃくちゃ心配してるけど、僕はあの国に行かなければいけない。
復讐について、最近は殆ど忘れかけていた。だけどさ、過去はできるだけスッキリさせとこうと思う。
それに最近、僕は幸せだ。
ワフルは僕を置いて結婚したけど、まあいい。
羽根は誰も彼もが優良物件だし、しょうがないか。
「うーん、要点だけお願い」
管理人は、かいつまんで言った。
まず、メイプル執政国になる前はツァウスト帝国と戦争をしていて、それで敗北。講和したその後は指導層がエルフにすげ替えられ、当時の首都だったメイプルを名前にして国家を再編、封建制度をやめ、領地という形を変更し、全てを国として統一。
反乱を全て鎮圧し、抵抗した領主は一族根絶やしの連座で抵抗を削いだ。
そして今に至る、との事だ。
めちゃくちゃに激変していた。いや、まあ当たり前か。
僕がパラダイム家にいた時は戦争が続いてたし、平民だった時だと戦争は休戦調印してた。
そりゃ講和するか。
「え、ツァウスト帝国ってそんなに強かったの?」
「強いもなにも、エルフ主体の国としてはほぼ最大の規模の帝政国だ」
「さらに独自の魔法技術を持つが、はっきり言って魔法技術に特化しすぎている」
「公人として、こういうことをあまり公に言うのは控えているが…事実だ。」
「というかメイプル執政国は現在ほとんど入国できないぞ」
「エルフ以外の人種は宗教観的に、神から見離された烙印の証として耳が短いという信念が優位だ。」
「無論、住んでいる大半の種族はヒューマンだが、ヒューマンも人間至上主義を掲げていた。」
「たがメイプル執政国には現在、思想検閲と、発表される情報の厳しい校閲がある」
「メイプル執政国で産まれたら戸籍管理により国から出られない。」
「さらに、外国人のイデオロギー的流入を防ぐため海外からの渡航を防ぐ身分証会などの検査が激しい。」
「それによりとてつもない独裁体制国として評価できる」
語られた内容はどれもとても背筋が凍る様なものだ。
現代社会ではありえないな。
やはり異世界は未開の文明だ。
だが、だからこそ未知がある。未知という発展の余地がある。
まあどうせ帰れもしない世界について考えるのは無駄だ。
コンピューター様もこの世界では見ていないんだから。
それにしても、エスメープクド王国がそこまで惨敗したとは。一体、戦争で何があったんだ…?
まあいいか。
「あ、それならツァウスト帝国なら入国できる?」
その返事は、肯定だった。
「ツァウスト帝国なら入国できるだろうが、あの国は豊かだが貧富の差が激しいぞ」
「10年間も過ごすのなら、向こうで職を見つけなければなるまい」
「何をするのだ?」
鋭い。何も考えてなかった。
「それは…」
「まあ後から考えます」
僕は結構、無策でも何とかなる。
今は力もある、金もある。なんだってできるはず。
そして、あなたが浮遊島を後にしたのは、快晴の日だった。翼の管理人から供与された身分証と、ワフルが餞別代わりに詰め込んでくれた乾燥肉、旅行ガイドブックなどを携え、あなたは翼から地上に降り立つ。
地上。そこは荒野だった。
草がない。
あなたは走った。走って、走って、走って─
走り続けて1時間ほどで、港に着いた。
だいたい秒速30mほどで走ったから…あーめんどい。まあとにかく長い距離を走った。
僕は結構疲れた。
いや、息切れというのを今回の人生で一度もしたことが無かったから新鮮だ。
ライカンスロープ、流石の身体能力。
港で身分証を見せたら、でっかい船に来た。
どうやら管理人が根回ししてたらしく、港に船がない、なんてことは無かった。
さてはて、ツァウストまでの海路は船に任せるとしますか。
さすがにこの毛皮のある肌で泳げる気がしない。
溺れて終わりだ。それに海はやばいし。
シンプルにめちゃくちゃでっかい魚がいて、そいつが体当たりしただけで小型船なら破壊されるらしい。
いや、ここがファンタジー世界だってことを忘れかけていた。
ファンタジー世界ならそんくらいでかい魚もいるか。
なんでも、伝説によれば釣り人が灯台から釣り糸を垂らして、海面に向けて揺らしたら、大きな波と一緒にその灯台を折ったらしい。
灯台を折る?
灯台を…?地平のジョークならいいけど。
それに、出現前はそいつが海水をたらふく食べて、海が引けるらしい。
その伝承は各地にあるとのこと。
なんで恐るべきパワー。
というかなんというか…うん。
そりゃそうだよね。そんなやつがいるなら船舶が大型化するわけだ。
停留してた船はほとんどが輸送船だから大きいんだろうけどさ、それにしたってやけに大きいように見えた。
ま、波乱万丈が度の醍醐味と言うけれどさ、さすがにそんな物理的な波は求めてない。
僕は船の中に乗り込んだ。
振り返りたくなったけれど、ここで振り返ったら僕は…きっと行かない。
少なくとも、今回は。
だから振り返ることはしないことにした。
船の客室扉の奥、船の後方。
そこには僕の専用の部屋があった。
はちゃめちゃに大きいがこれ一人で使う想定では無さそうだ。
幸い、これは全額、管理人が負担してるけど…これ個人で支払ったら破産しそうだし。
ま、気楽にいくか、ラッキー、幸運ってね!
ifルートを作ろうと考えてるんですが、先に本編(章)を完結させてからの方がいいですかね?
アンケートにします
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