女神「輪廻転生しろ」 ワイ「はい……」   作:まっすァき

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薄明薄暮の時間に、戦場へ霧が誘われた。

その霧は重く濃く、かつ冷涼で、兵士の足に酷く霜が掛けられた。

 

馬は地面に掘られた、飛び越えるのにはあまりに広く、水が溜まって底の見えない塹壕を前にして慄いた。

 

兵士は下馬し、我こそまず先に塹壕に一番乗りせんと、意気揚々に飛び込んだ。

 

プス

 

見えぬ水底にあった杭。

それに、兵士は右足の足裏を貫かれて、泥水に血液が混ざった。心臓から最も遠い部位であったが水中。

その兵士は、自らの鎧の重さと杭の返しにより抜くことができず、ついに足の甲まで貫通し、鎧の足甲により止まった。やがてそれも変形し、兵士は塹壕の中に叫びながら沈みゆく。

 

それを見た騎馬兵らは、凄惨な名誉のない死に、一瞬怯んだものの一番乗りの名誉を得ることが出来なければ、家族の恥だと思考し、重い鎧を脱がず(ランス)を塹壕の内部に突き入れたが、ランスレスト無しでの(ランス)の操作に慣れておず槍を落とした。

 

その兵士は、鎧を外すのにてこずり、前線で立ち止まったことにより前方から迫り来るエルフの矢により転倒した。

驚いた馬は塹壕の端を認識できず、前足の蹄が砕かれ、(いなな)きを戦場に、大きく齎した。

その声により騎馬は落ち着きを失い、後ずさりし始めた。

訓練されし精強な軍馬とはいえど、仲間の馬の凄惨な末路を見てしまったその馬は、隣にいた兵士のことを気にもとめず、泡を食ったように遁走(とんそう)した。

その兵士は、馬の後ろ足による不意の蹴りにより、エルフの矢を一度は弾いてみせた鎧を陥没させられて即死した。

 

戦場は名誉のないおぞましい死で(まみ)れ、陰惨(いんさん)かつ凄惨(せいさん)(むご)たらしい(最期)を見せつけられた兵士は逃げた。

誰が逃げることを咎められようか。

このような不浄の地で死せば、神も見放してしまう。

 

そのような動揺が、ヒューマン(人間種族)の軍の間で広まりつつあった。

エルフの矢の一斉弾道射撃は、霧の中において発射元を特定させず、また着弾地点は悲鳴があった所と云う情報しか与えない。

 

このような光景が、塹壕の前で広まりつつあった。

 

ある兵士が、重い鎧を時間を掛けてようやく脱いだ。

一斉射撃の後なら、まだ次の時間はあると未来を予測してのことだった。

そしてその兵士は、俺が一番乗りだ!(名誉の称号)と叫んだ。

 

直後、矢が襲来し、声を上げた兵士以外の、周辺の騎馬や、下馬した騎乗突撃兵は1部を除いて、死した。

 

だが、声を上げし一番乗りの兵士は死ななかった。速やかに退却し、ウオオオオオ、と、歓喜の叫び声を上げた。

彼の騎馬は奇跡的に死なず、また、周辺の目撃者は減ったものの存在した。

 

彼は本陣に帰るため、騎馬に素早く飛び乗って陣地へと帰投した。

 

 

一方、戦場では地獄が蔓延していた。

 

騎馬突撃を無力化する塹壕の下には杭、さらにいつ来るかわからない矢。

兵士は摩耗していった。消耗品かのように兵士を次々と投入するが、

突破したらまたすぐに次の塹壕が広がった。

 

エルフは、戦場の中で最も強くなる。

類まれなる生まれつきの戦士。

 

密林の中で育ったエルフは遠近感が掴めなくなるが、代わりに優れた脚力により伝令や兵士になり、ひとたび密林の外を知れば、優れた遠近感を獲得し弓の名士となる。

 

種族としての純粋な差。

それこそがヒューマンが、エルフに勝てぬ理由の一つである。

 

そして人間は、戦場から数千単位で減って言った。

弾道射撃は、上から襲い来る。この曲射は兜で防げるが、

鎧の肩部分の関節へと激しい打撃を加えるか、騎乗する馬の背中に容赦なく突き刺さる。

そして直線射撃は、鎧で弾けるものの最初に当たる確率が高いのは馬の顔や体。

そうなれば機動力を失うか、落馬して自らの鎧が()となり動けぬまま出血死する。

 

おお、恐ろしきかなエルフ。おお、憎むべきエルフ。

 

そう風聴されて育ったヒューマンほど、戦場にて前進する。

狂戦士と呼ばれるものと、英雄と呼ばれるものの区別などないのだ。

 

そして、暫くの間。

弓矢は来ず、恐ろしいまでの静寂が訪れた。

 

兵士たちは好機と見て、一気に下馬し、従者に鎧を外させる。

そして塹壕で泳ぎ、ひとつ、またひとつ、と塹壕を突破していった。

 

そして4つ目の塹壕に到達した時、地中から声が響いた。

 

掩体(えんたい)発破!

 

敵の声と判断する(いとま)もなく、数千の兵士たちは爆散した。

エルフの発破魔法(ダイナマイト)の力だ。

 

これにより、塹壕の間にあった地面は半月のように大きく抉れた。

その上にいた人間はもう居ない。そして、発破を行ったエルフも爆散した。

 

最も恐ろしい魔法とは、目撃者を一切出すことなく、その目的たる初見殺しを完遂するのである。

発破魔法を起動するのには指定の魔力パターンしかいらない。それを暗号化し、発破魔法を仕込んだ石ころを地中に沈めておけば、地中に堀り抜いた掩体の中からエルフが発破魔法を発動させるのは極めて容易だ。

 

そして戦場は、爆発音により完全に混乱に陥った。

退却しようとするが、そうはいかない。

 

ヒューマンの兵士たちは騎馬という機動力を失った。そして彼らの大部分は騎馬兵で構成されており、随伴歩兵の混合ではあるがもはや使い物にならないだろう。

 

爆発を皮切りに、矢が降り注いだ。

 

戦場に影を作り、まるで一瞬で雲が出来た様な……!

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

戦場から脱出できた兵は、

正確には判明していないが、約15万と6000となった。

長年、この戦争における資料は非公開であったが、情報解禁により判明した。それによると帰還できた兵士以外、人間の兵士たちは恐るべき数字。行方不明者、約41万。そして死者、約2.1万を叩き出した。

この攻防戦の1ヶ月後、休戦の調印式をエルフの国で行った。

この突撃作戦は、休戦すると上層部で決定した後に行われた物だった。

死者を(いたずら)に増やしただけであったが。

これが最後の抵抗であった。

敗戦としたくない上層部の悪あがき、それに魅せられた

人間の国の兵士たち。

 

そしてそれによる壊滅的な人的資源の損耗、そして戦費の高騰。

人間の間であった政治的陰謀によって引き起こされた馬の飼料の供給不足も相まって国は破滅的損害を受けたとされる。

 

全くもって愚かな種族である。

やはり、エルフより圧倒的に愚かで下等であると表現するのが

正しいと言わざるを得ない。

我が国の魔法技術革新により得た戦術的優位(タクティカル・アドバンテージ)は素晴らしいと言える。特にこの攻防戦で初めて実戦投入された発破魔法(ダイナマイト)は元々、坑道などで用いられていたものであるが、戦場に投入した際の有用性の実験として、この攻防戦は素晴らしい物であったと筆者はコメントする。

 

~~~~~~




一番乗りだ!一番乗りだ!

あはは!俺は士族の誇りだ!家族全員養える!俺のキャリアも高くなる!最高だあああ!!

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