女神「輪廻転生しろ」 ワイ「はい……」   作:まっすァき

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4度目の現世+7

さてはて。あれから僕は結局、女エルフから紹介された宿に泊まった。まあTIPSでも良かったけど、現地民とやり取りしてみたいってのが旅の醍醐味じゃないか。

だいたいの物は携行するから片手で持てるくらいにしてあるしそんなにお金を取られることは無かった。

 

そしてどうやら…どうやらというか、よく考えたら当然だったけど、パノプリヌンの貨幣はこの国より高かった。

 

産業的優位性による国の信用度の差だろうか?それとも種族で単一で閉じた経済圏と、種族関係なく貿易する広い経済圏の違いだろうか?

 

まあこの国の貨幣に両替してもらった。

レートはTIPSから教えて貰ったから詐欺られてない。

 

いや、にしても凄いなこれ。+181%の為替レート…?

1.81倍になるのか。ほぼ2倍じゃないか。

 

 

どっさりとしたお金になった。

この『ツァウスト貨幣』は、平均して金の含有率が30%ほど。良貨だ。素晴らしい!

 

悪貨は良貨を駆逐する、というのは誰の言葉だったか。

どうやら国内経済はとても豊かなようだ。

まあエスメープクド王国から奪い取った金鉱から吸い上げた金で作った貨幣なんだろうけどさ。

 

というか金で貨幣を作るなよ。

複数枚持った時にかなり重いのは貨幣として致命傷じゃないのか…?

 

僕は思わず口に出してしまった。僕が稼いでいたパノプリヌンの軽量な合金の貨幣の快適さを知っている身としては、この物理的な重さは、貨幣として致命傷だとしか思えない。

1枚につき275グラムくらいありそううだ。

 

なんでこんなに重い貨幣を作ったんだよこれマジで。浮遊魔法でちょっとズルして沢山持ち運んでるけど魔法使わないとこれは一般市民とかが苦労する重さだぞ。

 

というかどの貨幣にも5%以上は金が含有されてるからどれを見ても若干輝いて見える。

 

1番価値が小さいのは、この銅と真鍮と金を少々、みたいな含有率のやつだ。

 

若干錆びてる部分もあるけどまあこれは軽い。安いほど軽い、ということで統一されているとのことだ。

まあTIPS曰く、最重量の275グラムくらいのやつがいちばん価値が高いらしい。

 

なんでも、エルフの価値観は貨幣の価値はその重量がなければ測れないという価値観だそうで。

物理的サイズを抑えつつ、なおかつ重くすることの出来る素材として金が選ばれた…と、歴史をTIPSが言った。

 

貨幣の役割は交換・尺度・貯蔵なのに交換がしずらい重さなのはどうなのか、と思ってしまうけども、まあ彼らの価値観からしたら良い事なのだろうか。

 

と、その時、ドアが叩かれた。

僕は、マラカスエルフに紹介された宿のベッドから立ち上がり、ドアを見た。

 

どうやら朝食付きの宿だったみたいだ。

 

サンドウィッチに似た、パンで挟まれた野菜と肉の料理を宿主が配っていた。うむ、中々にうまい。

 

マラカスを振るエルフ…名前は聞いて無いけども、あのエルフは恩人だ。

 

僕は宿屋を出ることにした。主人にその旨を伝え、僕はポケットから取り出した銅貨を一枚、カウンターに置いた。

前払いだったから払わなくてもいいけれど。まあこれはサービス料ってことだ。

 

うーむ。エルフの人々にも善良な者も居るんだなあ。

 

あなたは考えていた。

もしもあなたが迫害の対象だったのなら、全力のドラゴンブレスで今回の人生を終わらせてでも、戦争に関わったエルフを7000人ほど塵にしてやろうと。

 

だがその必要は無かった。素晴らしきかな。無用な衝突はない方が良い。と、あなたは思考していた。

 

「おい、どこ見てんだ!前見て歩けよ!」

 

おや?

 

あなたが視線を向けた道路の先では、2人のエルフの女が喧嘩をしていた。

おお、お互いガチだ。険悪そうな雰囲気が醸し出ている。

お!そしてお互い戦闘態勢だ!

顔面に腰の入ったストレートが直撃した!

これはぶつかったエルフの勝ちかな?

 

「喰らえやこの豚年増!」

 

おお、お互い外見年齢はふつうの大人ほどだが、エルフはやはり外見年齢と実際の年齢が違うのだろうか?

巧みに追撃をかわしてからの思い切ったアッパーカットで後頭部から道路に落下させた───!

 

「ペッ!」

「この私を怒らせたことを後悔させてやるよ凡愚ゥ…」

 

おお、曲芸かな?足首の力だけで道路に倒れていた体を起こした!

というか吐いた唾を4mくらい飛ばすのは凄いぞ!

しかも命中精度が高ぇ!相手のちょうど首元に唾を吐きかけるエイム力!

 

あの姿勢から発射されたとは思えない唾の軌道だ!

 

おや。ここでナイフを抜いた!

素晴らしい。沸点がここまで低いのはむしろ芸術的だ!

 

そしてそのまま刺した────!

 

おお、めちゃくちゃ血が出てる…いや、止まった!?

そうか、腹筋の力で腹部の血管を締めた!

腹部は人間にとって脚より大きく、最も太い筋肉を持つ!

 

その力でナイフを逆に押し出したのか!

 

形勢逆転だ!ナイフを失って逆にピンチに陥った!

 

 

おや…周りのエルフと一緒に観戦してたけどもう気づけば真昼時じゃないか。

 

乱闘騒ぎをやめろ

 

あなたにとって楽しい時間を終わらせたその声は、警官の声だった。

黒い腕章をつけていて、服装も黒い。

威圧感を感じる服装だが治安維持をする警官ならこういう服になるのか。

 

いや、パノプリヌンだと皆が犯罪を自粛するから問題無かったけどそうか、他の国だと大規模な警察組織が必要になるのか。

 

あなたの目線の先には2人の女エルフたちがいた。

彼らは手枷を嵌められて、両脇に抱えられてどこかに行った。

 

まあ彼らがぶっちゃけ悪いしな。

まあそりゃそうか。

 

あなたは自然解散した観客の群衆に紛れて大通りを直進していった。

 

「メイプル執政国に通じる通路は…やっぱり目の前のアレか…」

 

パリゲタン侯爵の封建領域だったかな?

確か名前はゲタン山。

 

TIPS曰く3000m級の山でろくな登山道もなく、林業のための土地として使われるばかりだったところ。

そして戦争で、一番最初に地図から無くなった部分。

 

ライカンスロープなら登攀できるか…?やってみるか。

まあでも今やったら真昼時だしバレバレだもんな。

 

あなたは踵を返して、覚えている道に従って来た道を戻って行った。

そしてやがて脇道に逸れ、曲がり、曲がり、直進し…到達したのは半地下のようになっている二階建ての建物。そしてその扉を開けた。

 

「と、いうことで現在に続くまでのツァウスト帝国の元となる国がこの紀元前352年ほどに河川流域の一帯にて誕生しまし…おや?」

 

クラブハウスだと思ったが…どうやら違った。

あなたは扉を閉めようとしたが、教師役をしているエルフから止められた。

 

「あなたも学びに来たのですか?ここは無料学校ですよ?お金は取らないので入ってきていいですよ」

 

その言葉に、興味が湧いたあなたは結局、彼女の授業を受けることにした。

どうせ12時間半くらいの長い時間を潰す暇つぶしが欲しかっただけだしな。

と、あなたは椅子に座りながら思案した。

 

ファウス国の建国紀元前364

ファウス国の分裂ウスト歴114年

 

ふむ。なるほど、当時の王が傾城傾国の美女と星占いにハマって最終的に没落し、ツァウスト国や西ファウス国、東ファウス国などの8つ以上に分裂したとのことだ。

この世界の古代の歴史って意外と面白いなあ…

 

「と、いうわけでウスト歴の514年には西ファウス国では宗教と政治が分離し、この分離のことを政教分離の大改革と言い〜」

 

なるほど。

王権神授説を捨てた政治に移行したのか。

それはそれは大きな革命だったんだな。

 

「そしてこの東ファウス国では西ファウス国の改革の波及を恐れ軍備を進めた記録が残っています」

 

へえ。まあそりゃそうか。

 

「その結果、西ファウス国と東ファウス国では大戦争が始まってしまいました。」

 

あー、まあそうなるわなあ…

 

「そしてそれを見たツァウスト国は西ファウスの改革を受け入れつつ、宗教の権威を完全には貶めないことにより聖職者と市民両方を救済しました」

 

おー、この時代にそんなの出来たんだ。なるほど…賢いな。

 

「結果的に、初期は優勢だった東ファウスが戦争で負け、西ファウスが勝利したことにより東ファウス国は西ファウス国に吸収されました」

 

へぇー…

 

「そしてこの西ファウス国の戦乱を当時のツァウスト国は復興支援し、戦争のその後も国交を確立することになります」

 

なるほど。そんな流れがあったのか。

 

「現在のツァウスト帝国のファウス区は、この西ファウス国と東ファウス国のあった位置と概ね一致します。ファウスの流れを汲んだ区なので、歴史的に西と東で川を挟んでいたので水利権の争いが絶えないんですね」

 

へえ、そんな問題が。

 

 

あなたは、関心を示し、感心したという一言を残して帰った。

 

白状すると、へぇという感想しかない。歴史も何も、本当に縁もゆかりも無かった外国の歴史を聞かされてそんなに深く共感できるわけが無い。

 

チップとして銅貨を先生役をしていた女エルフに渡した。

いやはや、ああいう場所だったとは思わなんだ。

 

生徒がほとんど子供のように見えたし私が乱入して驚いたかな…まあいいか。

 

 

あなたは浮遊魔法を使い浮遊し、建物の壁と壁の間を一直線に飛び上がった。そして屋根に着地した。

 

「屋根の上からなら行けるやろ」

 

ニッと、あなたは口角を上げた。




無料学校

個人が開く、ボランティアの学校。高等な内容ではなく、初等・中等教育的な学習をさせるという立ち位置のもの。
作中に登場した無料学校はボランティアだけで行われている。

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