春の花粉が目を刺激する。
サザンクロス帝国における名物の1つ、デカすぎる樹木。
今の季節に花粉を撒き散らすその姿は、生命力に溢れ、常緑樹の威厳を放つ。
だいたいどこの気候にも適応するお陰で植民地にされてる国とかにめちゃくちゃ生えている木でもある。
いや、生やされているという表現が正しいか。
「拙者はこの木のせいで幸福度が下がってると思うんだ」
「目も痒くなるし、根っこが道路の下に密集して隣の街路樹の根っこと物理的に繋がるじゃないか」
「良い部分は景観の良さしかないと思うんだよね」
そう言いながらぶつくさと不満を漏らすのは小宮永郎という名前の1人の人間。
その目には涙が溢れていた。
これは、花粉という異物に対する生物的に極めて自然な反応だ。
だが煩わしいのはその原因。
花粉を撒き散らし、葉っぱも常に落とすから実は周辺の地面は虫の天国。この前、ひっくり返したらダンゴムシみたいな虫が集団で落ち葉を齧っていた。
見た目的にもかなり嫌だ。
表面的には何も無いけど、裏は虫がびっしりだ。本当に腰を抜かした。
「それに、シンボル的な樹にするのはいいけれど、清掃費用が継続的に必要になるじゃないか!それなのになぜこの木を街路樹にしたんでしょう?」
するとすぐ横を歩いている男が口を開く。
「まあ日本で言うところの杉みたいなもんなんじゃね?知らんけど」
サザンクロス帝国の切り札、五体星の体現者。
それが2名も、一堂に会していた。
「まあ花粉とかどうでもいいじゃん?気にすることないよ。黄砂よりマシなんだしさぁ……」
それはそうだけど、と小声で漏らしながら、小宮が後を追うように通路奥へと進んでいく。
中庭あるひときわ大きな木。それを囲うように木が生え、通路はそれを眺められるように大きく湾曲している。
日光を与えられるように屋根はなく、雨水を作られた池に流すように角度が整えられていた。
大量の落ち葉が流れてるのを見るに、川も人工的に作られている。いやはやすばらしい中庭だ。これを見るだけで技術の高さがわかる。
サザンクロス帝国はかなり温暖な気候だ。だけどここの征服された領土は乾燥していて、日本とはまるで違う。湿度が1年を通して少ない。
まあそれはここいらの地域を通してそうなんだけども。
「それにしても全員が集まるなんて何があるのです?異常事態でござろう」
「あ〜、近頃は遠征ばっかりだったしな…まあなんかムズい任務とか?」
談笑しつつも、扉を開ける。すると、中にいたのは3人。
つまり全員がここに揃った。
五体星が全員揃うなんて、相当なレア。
まずすぐ動かせるようにサザンクロス帝国内に置くけども、多方面警戒を兼ねて全員を集める必要はない。
まさか複数人必要とするような任務なのか?
だとしたら、相手はかなり強いなあ…勝てるかどうか怪しい。
僕の能力が通じない相手、ってことだ。
「何をするのか聞いた?」
辺りを見渡し不安そうにラウンドテーブルの反対側に尋ねるのは【鋭敏】。
ここに居るみんな、本名は誰も知らない。
「拙者は知らないでござるよ」
うーん、なぜここに集められているんだ?分からないなあ。情報交換なら手紙でできるのに。
「情報共有らしいわよ?」
おお!【洞察】さんは知ってたみたいだ。
まあ彼女のチート能力を思えばそりゃあそうなんだろうけど、これで事態が進む。
【絶影】さんも、僕の隣の席で感嘆している。
「何の情報を共有するんだい?武器?それとも……」
暗に示す、続きの言葉は『能力の共有』とかだろう。
僕らはお互いの能力をあまり深く知ってない。
【白空】は、それに続いて言った。
「能力の本格的な共有、だろうね。」
「この円卓は僕の世界の中だ、盗聴は無い。」
五体星の体現者と僕らはサザンクロス帝国から呼ばれている。合わせて5つの、無二の能力を有しているからだ。
「能力の共有なら俺はいいぜ、戦術の幅が広がる」
【絶影】は共有に乗り気だ。
だけど、【鋭敏】はどこか悩んでいるようで、椅子の肘置きに片足を乗せつつ人差し指を額に付けている。
彼女は何の能力かあまり僕も知らない。
「私は……ちょっと能力が複雑だから難しいかもしれないよ?」
すると、【洞察】は言った。
「あー、鋭敏ちゃんの能力はえげつないもんね」
それに続いて【白空】も、深く頷いていた。
どうやら【洞察】、【白空】は【鋭敏】の能力を知ってるようだ。
'えげつない'ということは絵面がヤバいのかなあ?
「拙者の能力は説明いるでござるか?」
「拙者の能力はかなりシンプルでござるよ」
【洞察】、【絶影】とは知り合いだけど、【鋭敏】と【白空】はあまりコミュニケーションを取ってない。
洞察さん経由で白空さんと少し話したくらいだろうか?
鋭敏さんの姿は初めて見た。
「自身の超加速?」
「あー、【鋭敏】さんは知って無さそうでござるね」
僕は鋭敏さんに向けて説明することにした。
能力の解釈を一致させてないと後々が怖い。
「正確には、主観時間での超加速と……相対時間の遅延?でござる」
「拙者が石を投げたとして、拙者の目ではその石は普通に動いているのでござる」
「しかし、能力発動中の拙者は他人の目から見ると超高速で動いている、という現象が発生するのです」
「僕は…、あ拙者は、これをフルスピードと名付けたのでござる」
そう言って、置かれていた紙に簡単な絵を描いて図示した。
「【俊敏】さんの忍者口調、ちょっと雑っすね」
「忍者口調で喋らなくても良くないすか?」
くすりと笑いながら、【鋭敏】は指摘した。
鋭敏さんってこんな感じだったんだ …正統派美少女かと思えば、かなりギャル風味を感じる。
「ああ、それじゃあ忍者ロールプレイはやめることにするよ」
「拙者とかわざわざ言っても日本人同士じゃないと細かい意味が伝わらないしねぇ」
「僕の能力はこの差を利用して破壊力を生み出しているんだ」
「主観時間だと1秒が経過していても、主観によって変化しない絶対的な時間……絶対時間と僕は呼んでいるけど、絶対時間だと0.1秒未満しか時間が流れてない」
「つまり、10倍の速度で僕が動いてることになって、10倍の速度で投げられた僕の石は主観視点だと普通の速さでも絶対時間ではとてつもない速度なんだ」
ほほう、と白空さんと鋭敏さんは興味深そうに聞いている。
「この主観時間と絶対時間の差こそ、このチート能力の核心的な部分さ」
「主観視点の加速はどんどん加速度的に、放物線みたいな感じになるから途中でフルスピードを切ってまた再開してるのさ」
「広範囲攻撃には僕は弱いね。主観時間で3年くらい歩き続けて本気で逃げ回ったことがあるよ」
「あの時の僕は油断してたし、致命傷寸前だった。」
「というか今、僕についている傷がこれだよ」
そう言って【俊敏】こと小宮は、右の首から目の下にかけて広がる斑点のような部分を指さした。
「僕の服に隠れてるけど左半身はほとんどケロイドだし、服の下は見ないでくれよ」
はーい、と言うのは【洞察】。こいつは確か、透視とかも出来た。僕の傷を見たら後悔することになるだろうし……
バイオハザードのタイラントみたいになってるしな。
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そして僕は、3人の説明を聞いた。
「じゃあ、私の能力について説明するから聞いてくれよね」
1人あたり、2時間半くらい話しただろうか?本当に疲れた。
というか鋭敏さんの分の紙があるんだろうか?
小宮は、表面を埋めつくし、既に裏面の3/4が埋まってしまった紙を見た。
すると、箇条書きで大胆に筆致を巡らせた。
「固有能力:ネクロマンスの概要
1:自分が殺した生物は蘇る
2:蘇ったやつは傀儡として完全に生かすも殺すも自由自在
3:あらゆる人格や記憶も完璧に保存
4:傀儡が殺した生物も傀儡として蘇る
5:傀儡の入れ子構造は理論上無限
6:外見に大きく差が出るように殺さなければスパイも楽勝
7:傀儡の意思を優先させてデフォルトで設定されてる思考ロックを解放することも可能
8:傀儡に対する命令は絶対
9:傀儡の視点では自分が傀儡だと思ってない
10:傀儡に事前に考えた設定を付与して、人格の書き換えもできる
11:設定付与を行うと洗脳も余裕
12:行動を遠隔で操作することはできない
13:設定付与はすべて空白にすると廃人になる
14:死体は死んだ時点の傷が保存され、いかなる方法でも治癒しない
15:傀儡はどのような命令であれ、命令を出せば必ず従う
16:傀儡は新しく傷を負うが、その傷は治らない
17:自分の情報を傀儡に上書き保存すると自分が増殖する
」
いや……悪用し放題じゃないか!?なんだこのチート能力!?
「まさにチートですねえ……」
小宮は驚嘆と言った感情を抱いた。本当に強すぎるじゃないか。
「そうだろう?そうだろう?はは、私の能力は凄いんだ」
彼女は自慢するように、胸を張った。
ラウンドテーブルに集まったこの面々の中で最も対集団に優れるのはコイツだろう。
というかワンマンアーミーな僕と比べてかなりいいなあ……こっちはスピード特化だから能力発動してないと回避とかできないし。
多彩な能力っていいなあ……!
【洞察】と【絶影】は、そんなことを考えながら目を輝かせている小宮のことを見ていた。
お前も充分強いだろ、と思いつつ。
活動報告に能力の詳細を纏めておきます
文章の1話辺りの量について(調整)
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10000文字ほしい←現在の基準
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3500以上ならいいよ
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5000文字くらいほしい
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6000以上ならいいよ