女神「輪廻転生しろ」 ワイ「はい……」   作:まっすァき

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絶対に、渡されてるチート能力の格差があると思う

 乾いた音。しかし、確実に威力を持っている音。

 それが鉄板に当たって、ぽとりと先端を凹ませて落ちた。

 それは弾丸だ。

 

「これ滞在する度に思ってるんだけどさ、空間系の能力って本当にチート能力ですよね、やんなっちゃうな」

 

 洞察はそう言いながら、目の間の光景を見ていた。

 ボルトアクションライフル。銃口に溝……いわゆるライフリングは付けられなかったが、それの製造が出来た。

 モシン・ナガンなんてとてつもない旧式だが、この世界には通じる。

 

「白空さんは本当にすごいですよね」

 

 地球からの知識。その大半は全く役に立たなかった。僕みたいな普通の現代人が銃火器という精密で高等な知識を持っている訳もなく。

 外見と整備方法だけは授業でやるから分かっていても、銃の内部構造なんて専門家でもないし分からない。

 

「確か、今作ろうとしてるのはソビエトの銃らしい」

「さすがは世界でいちばん作られた銃、いくらでも資源がある環境なら作れちゃうんだ……」

 

 木のストック、鉄の銃身。

 日本などのソビエト陣営に属していたアジア圏なら誰でも知っているもの。

 アメリカへのソ連の核攻撃により、長らく続いた戦争は終結して、それでも作られ続けた銃。

 

「これが量産できるなら……」

 

 まだまだこの世界はテクノロジーが遅れている。

 独ソ戦争の時に、核ミサイルを最初に作ったソビエト。

 それと比べて、圧倒的に違う。日本がカリフォルニア州を獲得した時のような、大規模な戦争を経ていない。

 

 ここに集結した同士たちは、既に記憶と知識を白空さんの持っているものにしている。

 

 白空さんは中ソ共同工場で働いていた経歴を持ち、唯一無二の知識を有しているのだ。

 これにより、定期的に【鋭敏】さんに頼み、同一の知識を有した自分を複製して会議を影空間ですれば銃器の改良設計図を引き出せるとのことだ。

 

 アメリカの銃はベークライトが合成できないから作れなかったが……40年前のカラシニコフ銃は木と鉄がメインだ。

 

 モシン・ナガンを置き、肩当てとクリップを射撃場のロッカー中に置いた。

 

「やっぱり反動がキツイっすよね」

 

 現地に存在する火薬は黒色火薬。しかも無煙火薬までたどり着いていない。

 白空さんが無煙火薬の製法とかを伝えてたからなんとか弾は出来そうだけど……

 化学合成産業を1から作るのは難しい。

 やっぱり無煙火薬じゃないとプライマーで叩いても不発だったりしちゃうし、どうしても火薬が旧式のやつではダメだ。

 

 それに真鍮製にしようにも現地には潤沢に金属資源が無い。

 銃を量産しようもんならバレルに大量の鉄を消費して鉄鋼製品が作れなくなる。それこそ優先順位が逆転してしまう。

 それに、給弾不良、弾詰まり……まだまだ課題が沢山ある。

 

 全ての作られた資源はクリエイティブワールドから持ち出せない。ならば、外の現地で原料を調達可能で、なおかつ大規模に作成可能なことが必須。

 

 モシン・ナガンで何とかするしかない。

 繋ぎとしてSKSを作るよりはAKMだ。AKMは30年くらい前の銃だが、AK47の近代化版。

 

 それに、性能としてもAKMの方が良い。製造ラインを使いまわせるし。

十二分に過不足なく力を奮ってくれるだろう。

 

 

 小宮は【洞察】に向かって、銃を普及させるにはどうすれば良いか尋ねた。

 

「うーん、でもさ、その考えはいいと思うけどやっぱり生産手数が削減できないと無理じゃないかなぁ」

「モシン・ナガンだって、あっちからしたら最新式かもしれないけど、黒色火薬だけなら煤とか湿気で暴発する可能性もあるんだし」

「手動装填式より自動装填式の方が確実に良いし〜」

「ま、モシン・ナガンを配備させても大体の雑兵には効くしどんな銃でも今は最新鋭なんだろうね」

 

「あ、あとできるだけ読心で済ますからさ、私だけ喋るから考えるだけでいいよ、俊敏」

「その方が楽だし、時間もかかんないでしょ」

 

 そう言いながら、銃口を下に向けながらロッカーに歩いていく【洞察】。だが、手を掛けたところでロッカーの扉が開かないことに気づいた。

 

 とてつもなく面倒そうな顔をしながら、銃口を蝶番のある位置に水平に押し当て、トリガーを引いた。

 するとその瞬間に扉の上半分の蝶番が、物理的に破壊された。それを見た【洞察】は、筋肉を用いてロックが外れた扉を開いた。

 

 ガンロッカーの中にモシン・ナガンを詰めた【洞察】は振り返り、出口の方面に歩いていく。【俊敏】は【洞察】と共に、クリエイティブワールドの内部を歩いた。

 

 

 風は全く流れていないが、こうして見ると風情がある。

 皆で作った鉄板の的は、代替わりをして今はもう7世代目まで交代した。今は傀儡がひたすら量産してるけど、射撃場の拡張が止まらなさすぎて廊下が長い。

 

 

 

「というか、さっき撃ったモシン・ナガンもさ現地で量産できるだけでもこの世界じゃ奇跡だよ。AKMに移行できなきゃ、いずれは頭打ちになる。黒色火薬は湿気にやられるし、暴発のリスクも高い。何より煤でバレルの寿命が短くなる。つまり、無煙火薬の化学合成産業の構築が、銃器の製造と並行して、いや、それ以上に最優先の課題になる」

 

 小宮は、心の中で同意しながら歩調を合わせた。

 

 だけど……化学合成産業って言ったって、それをいちばん知ってるのは【絶影】さんだ。

 彼の知識になきゃ僕らには無理だ。

 

 

「確かにその通り。僕たちの知識では、石油をナフサに分離するところから始める、石油化学工業の知識が決定的に足りていない。

 特に【白空】の銃火器の知識は、木材と鉄鋼の規格に偏っている。ベークライトすら作れない」

 

「石油を僕の透視で位置を特定し掘り出したとして、石油純化も、石油の大量分離もできない」

「僕らだけじゃ、無煙火薬の化学プラントや精密加工に必要な工作機械をゼロから作るのは、時間がかかりすぎる。

 その間に、この世界で強力な敵が現れたら終わりだ」

 

「僕らみたいに、転移者たちは確実にこの世界にいる。なぜなら痕跡があるんだ」

「シャーロック・ホームズはイギリスの推理小説だ。それがこの世界にあるはずがない」

 

 

 そう言いながら【洞察】が指さしたのはざっと数えただけでも100を超える粘土版。ホームズシリーズは60つ、だったはずなんだがなあ……

 シャーロック・ホームズの推理劇、か。いい題名をつけたな。粘土板に書かれた言語は古代の言葉だ。

 死語になった表現があるし、そもそも写本でこれと似たようなやつが作られていて、それが失伝したとかなんだろうな。

 

 

 目の前に鎮座しているのは影空間にいつも収納されている貴重な資料。風化が起きず、時間が常に一定のこの空間では消失する理由はただ1つ、手で触れば非常に僅かながらでも徐々に削られていく。

 既に莫大な時間が流れたのか、表面が擦れて文字が少し薄れている。

 

 

「それに、この文字はどう見ても英語だ。俊敏、お前は英語とか言えるんだろ。これは何と書いてある? 全ての粘土板の右下に彫られてるんだ」

 

「昔の転移者のメッセージかもしれない。それこそ、何か大きな災害とか」

 

 W e s t m i n s t e r A b b e y

 

 

 Westminster Abbey……ウェストミンスター寺院? 

 無関係だ。何も無いな。

 

 人生一度はウェストミンスター寺院に行きたかったと書いてある。これはただの独り言だ! 何の仕掛けもない! 

 ウェストミンスター寺院は教会だ。確か、かつてのロンドンにあったはず……確か、建設されたのが西暦300とかそんくらいの時期だったか? 

 ダメだ、絞り切れるわけがない。年代は確定で19世紀後だろうけど細かい時期は分からない。

 

「あー、じゃあ暗号とかでもないのか?」

 

【洞察】はガッカリと、やや大袈裟に言いながら眉を顰めた。

 

 

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