女神「輪廻転生しろ」 ワイ「はい……」   作:まっすァき

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労働飽和

ある男、ケビン・ニジマススキーは考えた。

なぜこの国は素晴らしいのだろうか?

 

 

ケビンは深く、昔のことを思案した。

彼はただの農民であり、領主の麻薬騒動で土地を失った者である。多くの小作農が領地から逃げ、収穫の前に苦しい冷夏で大不作。

彼は限界だった。

 

幸いにも、あの大飢饉の影響を辛うじてかわしたのだ。

 

僅かながら家財道具を持ち、現金を持って隣国のダジェル共和国に逃げたのだ。先祖代々受け継いできた家と土地を捨てるのには決心が必要だったが、背に腹はかえられ無かった。

 

しかし、ダジェル共和国はツァウストとの貿易摩擦を理由とする戦争が開戦し、敗戦した。

よって彼は、暫定支配区となった地域で暮らした。

そして直ちに国名が、ダジェル執政国へと変わった。

 

彼はツァウスト帝国がこの地の支配を完了させたのだ、と思った。

 

彼はそこから30年ほどをダジェル共和国改め、ダジェル執政国で過ごした。

 

するとある秋の日に、反乱が蜂起したことを知った。

その名を、人民解放革命軍。

それは救世主と呼ばれる主導者が人間たちを率いていたのだと、ケビンは後で知った。

 

彼はダジェル執政国に来た、『救世主の使徒』を名乗る者と交流した。

彼は革命軍の熱狂的なシンパとなり、労働者たちにその思想を共に広めた。

 

するといつしか、人民解放革命軍はダジェル執政国にも雪崩れ込んだ。

 

ケビンは真っ先に、業務官のいる地方郡政庁へと向かった。今こそ虐げられてきた精算の日、と思いながら。

 

すると見たのは、郡政庁の中に跋扈する邪悪。

魔法を使って抗いながら、人民解放革命軍たちと戦いを繰り広げていた。

 

ケビンは飛び出した。

これ以上、あの諸悪の根源がのうのうと生き延びていることに我慢ならなかった。

 

そして、業務官をケビンは討ち取った。

死体を引きずりながら、ケビンは雄叫びを上げた。

 

これが彼の革命戦士としての起源であり、自由の幕開けだった。

 

そして彼は、革命軍の本拠地のメイプル執政国に行きたくなった。

 

そこはツァウスト帝国が派遣した軍との最前線で、戦いに志願した。

 

 

ケビンは武器を扱った。

当時は、槍か何かだと思っていたがそれは筒状の穴が空いていて、とても突く様なものに見えなかった。

 

だが使徒はその武器を配りながら、特徴的なクロスの旗が刻印されていることについて話した。

 

 

これは、サザンクロス帝国という支援者に見せかけた裏切り者の武器であり、クロスボウより早く胴体に穴を開けることかできると。

そしてそれは、とても大きな鞭のような音とともに先端から発射されると。

 

使い方は、すぐに熟練した。

5つの円錐が、底の出っ張りに棒が付けられた特殊な装填具によって上部に入った。

 

その武器の名前は『銃』と言った。

 

そして最前線で、この銃を持って戦った。

ツァウスト帝国の魔法は凶悪極まりなく残酷であり続けた。

 

『手榴弾』と言われるその武器は、爆発を起こして隣にいた仲間を殺した。

 

棒の取ってが着いた爆弾で、ツァウスト帝国は戦った。

そしてツァウスト帝国はさらに、大きな爆発をあちらこちらで起こした。

 

石ころひとつでも、ツァウストの忌まわしい魔法が掛けられていた。

見た目は何も不思議なところがなかったが、ツァウスト帝国の兵士が合図を送ると大きな爆発を伴って破裂した。

 

 

そして、ケビンは霧が戦場で大きな障害となったと考えた。

 

ケビンの足は、冷たい霧のせいで凍え、戦場は霧によって湿潤な環境に瞬く間に姿を変えた。

 

ケビンは左足を失った。

爆発に巻き込まれたのだ。

あの爆発は周辺の地面を抉り飛ばし、爆心地……およそ9人が立つほどの幅は、即死する場所だった。

 

だがケビンはまだ軽傷だった。

ケビンたち負傷兵は黄色いまだら模様の着いた草を、紙巻き煙草にして吸った。

これは前線で生み出された創意工夫であり、かなりの数の負傷兵を痛みから解放した。

 

すると、吸う内にみるみる痛みが和らぎ、まるで母の腕に抱かれているような安心感が芽生えた。

そして自分は何でもできるという確信を得た。

 

 

ケビンはそんな負傷兵として戦後を過ごした自分を、雇用してくれたこの国が大好きだった。

 

なにせ、雇用はどこにでもあった。

農民にまた戻ろうか、と思っても足が無くなってしまい、もう収穫することはできないだろう。

 

だがそんな時、水道工事について知った。

指導者が広めた魔法は沢山あった。

 

誰も知らないような魔法もあり、それはそれは大量の魔法技能者が雇用された。

 

土や砂利の道は一瞬で平らになり、石畳はまとめて鉛直に浮き、とにかく便利だった。

 

水も毎日配られ、水に困ることは無かった。

 

そして指導者は、壁を破壊した。

 

都市庁郭の壁は分厚く、厳しい検問があったが、今ははない。

むしろその壁は徹底的に破壊され、家の素材になった。

ツァウスト帝国の素材だが、これは『コンクリート』と言い、作るのは難しいものの柔軟性があり、硬化した時には充分な耐久性があった。

 

ケビンは新しい家に住み、コンクリートを震わせた。

これは使徒たちが伝令した魔法で、非常に便利だった。

 

その名前は、『バイブレーター』と言う。

ケビンはこの魔法を使い、たくさんのコンクリートを固めた。

 

どんな規模や形状でも、意図した通りの強度に自由自在。それがこの魔法の素晴らしい点だ。

 

ケビンは特別な魔法で色んなものを作った。家の基礎、舗装剤の吹き付けに、リネンの着色。

 

「やはりこの国は素晴らしい」

 

ケビンは本心からこの国を讃えた。

 

なぜならこの国は最良の国であり、どの国を比べても並び立つものが存在しないほど急速に発展したからだ。

 

パノプリヌンには輸出規模が負けているらしいが、国の鉱物資源は豊富。いずれ貿易で競争が始まるほど大規模な輸出がされている。

 

揺れる朝露、五月雨の中にケビンは生きていた。

 

揺蕩う揺籃の中のようで、ケビンはこの国が本当に素晴らしいと思っている。素晴らしい以外で、何と言えばいいと言うのか。

それ以外に形容できる言葉がない。

 

 

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