女神「輪廻転生しろ」 ワイ「はい……」   作:まっすァき

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これは明らかに現代人がいる証拠だ

「'これ'はメイプル宗教国から齎された物だ。皆、見た事があるだろう」

 

「メイプル宗教国には明らかに1941年以降の地球から来ている地球人が存在する!」

 

【絶影】はそう言いながら、銃を広い机の上に置いた。カートリッジから銃弾は全て抜いていて発射は出来ないようになっているが その外見は、ここに居る誰もが知り得た情報の塊であった。

 

「PPSHが、作られているというのか」

 

 全員が息を飲み、その銃を見つめた。

 五体星たちはその銃を見た瞬間に、驚いて表情を固めた。

 

 メイプル宗教国は新興国家だ。

 現在はツァウスト帝国に対し勝戦(独立)しその賠償金で潤っている。

 

 だがそれが銃器生産に使われているのなら、連中は大量に銃を持つことになる。

 

 

 そして、緊張感が張り詰めたそんな空間に、さらなる爆弾が投下された。

 それは10枚ほどの写真フィルムであり、現像されていた。

 

 キャタピラに、太く長い砲塔。

 それはどこからどう見ても戦車であり、地球人が他にも居ることを示している。

 

「さらに、この最新鋭の戦車とやらは明らかに地球の物だ。

 この戦車はガソリンで動く。原油を何処かから獲得している決定的証拠だ!」

 

 この複数枚の写真フィルムや、新聞に掲載されていた『新兵器』。

 それはアメリカの物で、名をM60と言う。正確には、M60A1と言い、西部海岸にて【俊敏】が目撃した戦車でもある。

 

【俊敏】はかつて自走砲の装填手としても訓練を受けていた。それは日本で始まった『万能教育』。

 その要となる訓練であり、それを【俊敏】は受けていた。

 

 だからこそ分かる。

 この戦車は大量生産され、カナダ戦線に向かっていたが西部戦線にも登場していた。

 

 アメリカ・ソ連・日本のどちらかと関係があるのは確定的であり、それは真実味を帯びた仮説として円卓の上を走り回っていた。

 

 そして幾ばくかの時間が流れた後、会議は踊る。

 

「それに、これを見ろ。どう考えたってこれはステンガンだ。地球人がメイプル宗教国の重役に存在することは確定的だぞ!」

「私は、メイプル宗教国に向かいたい」

「地球人がいるか、その真実を知りたいんだ」

 

 

 簡素な作りはその銃の特徴であった。

 だが作れず、断念した銃。

 

 それが今ここにある。

 

「それにテクノロジーの発展速度があまりに早すぎる」

「これを回収してきた。どう考えてもペットボトルだ!」

 

 透明かつ軽量なその素材は、地球出身でなければありえない素材。

 カリフォルニアに日本が作った石油化学コンビナートが、本州に安価かつ大量に普及させていた。

 

【俊敏】はこれを見た時、完全に固まった。

「これは……」

「プラスチックの特許取得は20年前のアメリカなはず……」

「分かったぞ、メイプル宗教国にいる地球人はアメリカ人だ!」

 

【俊敏】はそう結論を出した。

 

 すると、【絶影】はこう言った。

「アメリカ人なら納得は行くが……まだ候補はある。決めるのはまだ早いんじゃないか?」

 

【鋭敏】は別の候補を提案した。

 

「漂白剤、石鹸……そして新聞に謳われた『秘密兵器』」

「必ず、メイプル宗教国は塩素系ガスを持ってるはずだよ?」

「というか潜入するにしてもさ、バレたらどうするのさ。吸ったら死ぬよ」

 

「そして、これらの知識があるということはさ」

「ドイツ人とか? いや、それだとPPSHとかイギリスのステンガンを持ってる理由が分からない……」

 

「国籍不明、お手上げだねもう私にはどうすることもできないや」

 

【鋭敏】はアンノウンな存在を前に、考察を放棄した。

 

 

 だが【白空】はこう言った。

 

「いや〜やっぱりこれ考えるだけ無駄じゃない? サザンクロス帝国は特に敵対してないんだから後からでも調査できる機会は巡ってくるよ」

 

 △▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

【絶影】は、1人で結局メイプル宗教国に潜入していた。

 

 そこで見たのは、圧倒的な工業化だった。

 国境地帯で、この世界で見たことの無い工場の煙を見た時に危惧感はやはり正しかったと思った。

 メイプル宗教国を長く放置すると、確実に工業化の波が起きる。

 

 それは決して良い事じゃない。

 確実に、全ての国家は経済的に依存させられ骨までしゃぶり尽くされることだろう。

 そして、影に潜航し【絶影】は直進した。

 

 陰謀論者じみた思考だというのは充分に理解しているが……

 

 それでも思考することは止められなかった。

 

「首都まで到達して指導者の意思を知ろう」

 

 そして再び、影に潜航して進んだ。

 

 

 ■

 

 

 ザワザワと騒乱が起きている。

 なんだ? 何が起きているんだこれは……

 

【絶影】はそう思い、聞きこみ調査をすることにした。

 

「なあ、これは何の騒ぎなんだ?」

 

「あー、あいつらだよ。そろそろ警察が来るだろうけど……あいつらもバカなもんたよ」

 

 毒づく市民はそう行って指をさした。

 

 その方向には木の看板を掲げ、抗議している者たちが行進していた。

 行進と言っても、どうやら中央広場とやらに向かうまでの事らしい。

 

 毎日のように広場を占拠していると、市民は言っていた。

 

 

「ほぉー……ちょっとあっちに行ってみるか」

 

「なあ、なんであんたらは講義しているんだ?」

 

 すると聞いた瞬間に看板を振り回し、【絶影】や、その周辺の通行人などに向けて威嚇行為をする。

 

「なんだとこの野郎!」

「てめえは外野だろうが!」

 

「こっちは大変なんだよ!」

 

 少数の行進者はただ参列しているだけだが、

 この行進に参加している者たちの大多数はギラついた目で周囲の通行人を威嚇しながら説教をしている。

 

 だが【絶影】の耳にはそれは、 説教というにはあまりにも粗末、ただ大声で喚き散らしているだけのように聞こえた。

 

「70%しか補填されねえせいで俺たち市民は困窮してるってのにさあ、3割は自己負担とか言うんだよ。これは横暴じゃないか?」

 

 その内容は、土地の値段が暴落したことについての話だった。なにやら強引な規制政策のせいで、まだ成長するはずだったはずの経済成長が止まった〜とか言っている。

 

 

 まあここだけ聞いたら一端の論理性はあるが……まだ全容がわからないから黙って聞いていよう。

 

 

 ■

 

 

 うん、もういいや。

【絶影】は彼らの主張内容をよーく聞いた。

 3分ほどしか話していなかったが、それは突然現れた。

 

 

「おい! 勝手な路上デモは止めろ!」

 

 その装いは黒や白に染められていて、繊維は【絶影】がこの世界で見慣れたものでは無かった。

 

 リネンでもシルクでもない。これは明らかに『ポリエステル』の素材で出来た服だ! 

 

 警察は何やら銃を装備していたが、その具体的な名前は【絶影】には分からなかった。

 

 こっそり写真を取って、自分の足元の影にカメラを落とした。

 するとそのカメラは影に飲み込まれ、現実世界から消えた。

 

「デモは政策の国民投票でしろ! 散れ! 散れ!」

 

 警察は高圧的態度をとっていて、市民の1人が警察に銃を向けた。

 

「止めろ! 撃つなよ! 撃つなよ!」

 

 それを見た警察官は、銃を構えた。

 独特な形状だ。マガジンが後ろについていて、スタンダードな銃ではない。

 

「お前たち、投降しろ! 今の時間はデモは禁止されている!」

 

 警察はそう言うと、トリガーに指を置いている市民に向けて銃口を向けたまま下に下げず、降ろさない。

 

 大多数の市民は警察が到着した段階で帰ったが、さっき【絶影】に説教をしていた投資家と見られるエルフは帰らなかった。

 

 あろうことか、おもむろに銃を背広の中から取り出して警察に向けて撃った。

 

 乾いた銃声が鳴り響き、警察の肩に銃弾が命中する。

 それを見た【絶影】はゆっくり壁際に動き、逃げ出そうとする。

 

 大っぴらに影への潜航を使うとダメだと判断し、逃げ出すことが出来ない。

 

 そして再び、銃声が鳴った。

 だが今度は警察の発砲だ。

 

 次の瞬間、その投資家は死んだ。血を頭から流し、みるからに即死している。

 

 そして警察官は肩を抑えながら止血魔法で止血を行った。

 傷を強制的に閉じる魔法のため、かなりの激痛があるが 弾が貫通していることが幸を奏した。

 

「くそ、はあ、はあ」

 

 その傷口は閉じたはずだがその警察官は、肩を強く抑えている。そして、ビー玉のような球状の物体を取り出したかと思えば、それが割れて箱が出現した。

 

 書かれたマークは赤十字。

 

 それを見た【絶影】は思考した。

 

(スイスの関係者……いや、赤十字のマークを模倣しているだけかもしれない)

(だが、あの注射器もなんだ?)

 

【絶影】は、腕に注射器を刺したことしか分からなかったが……その兵士は痛がるのを辞めた。

 

(恐らく鎮痛剤とか、それに近いやつだろうか?)

 

「誰か担架を持ってこい! 早く治療しないとだめだ!」

 

 打たれた警官は仰向けに伏せて、周りの警官に救助指示を出している。

 よく見れば、その警察の地面に落ちた帽子には金色の星が1つ書かれていて、制服の両肩にも2つの星が着いている。

 

 

(どうやら偉い人とかなのかもしれないな)

(警官の中でも地位が高そうだ)

 

 △▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

 結局、【絶影】は銃撃戦に巻き込まれただけで終わった。

 それにデモ参加者たちは警察署に抑留されるみたいだし、危なかった。

 あのまま自然に離脱できてなかったら連行されていたかもしれない。そう思考し、【絶影】は安堵した。

 

 

(というか、道に車が数台停まっていたが……車社会化が進んでいるのか? 

 一般人っぽい感じのやつも時計を付けていたし、先進的な国だ)

 

 絶影はこの国の指導者についての評判を市民に聞いたところ、ほとんどが『素晴らしい』の一点張りだった。

 

 完全、無謬、全能……どうやら、指導者はプロパガンダか何か知らないが相当に強力な統治体制を敷いているようだ。

 

 敵対するのは賢くない。

 破壊工作なんて以ての外だな。

 

 

【絶影】は、道の一部が石畳では無くなったことに気がつきハッとした。

 

 そう、それはアスファルト。

 黒いその路面は、どう考えてもアスファルト以外の何物でも無い! 

 

【絶影】は確信を得た。

 石油化学工業がかなり進歩し、電気化学工業も発展済……と、メモに記入した。

 

(合成繊維に合成ゴムタイヤ、必ず石油の発掘地があるはずだ。そこを押さえ、サザンクロス帝国の権益に石油化学工業を組み込みたい)

 

 

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