「あ……ああ……」
ツァウスト帝国の兵士は、絶望していた。
『新兵器の投入』と聞いていたが、まさかこんなのがあるなんて!
どうやって止めればいいんだこんなの!
目線の先にあるのは、設置した障害物を破壊して突き進むキャタピラに、ショットガンでも傷がつかない堅牢な装甲。覗き窓に向けて撃っても撃っても乗組員が死んだ感覚がない。
それは戦車である。
サザンクロス帝国はボルトアクションライフルを量産し実戦投入しており、ツァウスト帝国での戦線や自らの植民地で苛烈な支配をさらに強化した。
ツァウスト帝国はサザンクロス帝国の銃と、メイプル宗教国の新兵器に蹂躙されていた。
銃のせいでどんなに分厚い鎧でも貫通され、さらに多数の兵士が勝利へと直結している。
サザンクロス帝国で作られた銃は、まともに飛ぶのは300mまでだが逆に言えばその範囲までならばどんなに強い者でも倒せる。
ツァウスト帝国は斜陽の極みであり、もはや1000年の栄光など翳りに翳って泥の中。
だが足掻くことはできる。
近寄って直接、発破魔法を使おうとして兵士か近寄って行った。
しかし、その兵士も戦車の上部に取り付けられた機関銃により死んだ。
戦場は2台の戦車に蹂躙されていて、サザンクロス帝国の兵士が歩兵として戦車のペアに追従している。
ボルトアクションライフルで次々とサザンクロス帝国の兵士は、遠距離からツァウスト帝国兵士のヘルメットを破壊していく。
銃弾で頭部に衝撃を走らせればそれだけで戦闘不能、後方行きになる。
そして戦車は砲塔上部に装甲板を備え、そして機関銃前方だけではなく密閉型の空間をしっかり設け、さらに機関銃手は銃弾が入る余地がないからガソリンタンクが爆発でもしない限り死なない。
その機関銃の名前はマキシム機関銃と言い、異世界の戦場をこれでもかと破壊し尽くしていた。
その戦車の名は、T34と言い、異世界の戦場を備えられた機関銃と共に蹂躙している。
だがツァウスト帝国に対抗策は無いわけではなかった。
戦車に近寄り、発破魔法で戦車の下部を吹き飛ばせば乗組員は爆死する。浮遊魔法で戦車を少しでも浮かせば、そこから動かなくなる。
だがどれも無茶である。
そのどちらも接触をトリガーにして発動する魔法であるため、そもそも近寄れないのにどうして魔法を発動できようか。
「帝国に栄光あれー!」
「栄華永遠なれ! 帝国よ繁栄あれ!」
兵士はそう言いながら、自らを鼓舞して突撃していく。
だが少数は機関銃と戦車の圧倒的な火力により沈黙した。
「避けろー!」
「そろそろ次の弾が来るぞ!」
兵士が必死に走り、陣地に帰ろうとする。
だがそれは不可能だった。
機関銃の弾が、集団に命中し、容易に掃討されていく。
「永遠……な……れ」
1人の兵士は、まだ生きていた。
否。
生きているのではなく、まだ死んでいないという表現の方が正しい有様だ。
両足は吹き飛び、胴体から臓腑が流れるほどの重症である。
だがその兵士は進む戦車の真下に自分が居ることを確認すると、発破魔法で戦車に触れた。
どの道、このままでは戦車にすり潰されて終わるのみ。
ならば味方に少しでも貢献して死ぬべきだ。
ツァウスト帝国のただの兵士は、鉄の怪物を目の前にして恐怖しながらも戦車下部を起爆した。
瞬間的に閃光と爆発が発生し、機関銃手は衝撃で気絶した。さらに、砲塔が炎上しながら真上に吹き飛び乗組員は爆死した。
だがたった1両が破壊されただけであり、
戦車という圧倒的な鉄の波は500以上存在する。
ツァウスト帝国のメイプル宗教国との戦線に投入された兵士たちは発破魔法を覚えたばかりの兵士であり、まだまだ新兵と言った所である。
なぜこのような兵士が大量に前線に送り込まれているのかと言うと、ツァウスト帝国の摩耗によるものだ。
サザンクロス帝国はツァウスト帝国の土地に向けて進軍し、国境線……特に南東諸島の周辺に兵士が釘付けになっているのである。
そんな状況で戦車の群れに熟練兵士が擦り潰されるのは損だと判断した皇帝はサザンクロス帝国に熟練兵を向かわせようとする。その意見に反対し、新兵などの新人兵士の摩耗を抑えようとしているのが……31世は暴走が過ぎる。
そのせいでメイプル宗教国との戦線では圧倒的に敗北が連続しておりこのままでは危うい。
そして皇帝は軍閥との折り合いが付いておらず、独走状態にある帝国の軍部を操縦できていない。
多数の戦線で一斉に戦車が投入され、機甲師団が戦場に舞い込んだのだ。
そのせいで北東部の湾岸に上陸されることはなかったものの、『船の上に戦車を載せる』という力技によりサザンクロス帝国の強襲上陸作戦は成功。大多数の島々で敗北を喫し、領土と排他的経済水域を蚕食されるツァウスト帝国はメイプル宗教国の方面を諦めて領土損失を受け入れてサザンクロス帝国の方面に兵士を引き上げようとしている。
皇帝の判断は正しいのか、それとも間違っているのかは未だ分からない。
なぜなら彼らは今を生きているからであり、判断の連続が間違っているのかそれとも正しいのかという議論は未来からでないと不可能だからだ。
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「やってやりましたぜ! メイプルのやつらを壊滅させましたぞ!」
ツァウスト帝国の兵士は考えに考え抜いた。
投降した兵士が大量にいる中でも彼らは思考することでなんとか状況を切り抜けようとしたのだ。
その発露が、これである。
「師匠、これを使えば戦車なんていちころですよ!」
指さすその先にあるのは、全く新しい戦車に対抗するための武器。それはいわゆる、『対戦車地雷』と言われるもので、これはただの対戦車地雷では無い。
およそ30年前に初めて実用化された、発破魔法を用いた対人地雷。
それをより効率的に改良したのだ。
前からの課題であり続けた、遠隔起爆の難しさ。
それをやりとげたのだ。
具体的には魔法を込めた物をもう1つペアで用意するのだ。一斉起爆ができるなら、片方を起爆してもう片方も連鎖的に爆発させることで実質的に遠隔起爆ができる。
『新兵器開発技術者』──安直な名前だが、この名前で後世に残るだろう。
ツァウスト帝国の技術者はほくそ笑み、これで形勢逆転できると思った。
「ふむ……いいじゃないか。」
「君の分野の魔法技師、それを最大限生かしているね。」
師匠と呼ばれた技術者も頷き、メイプルの方面の戦車を壊滅させた製品に満足している。
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「離陸まで……あと10分か」
メイプル宗教国の内部では、さらなる新兵器が開発されていた。それはいわゆる三角形に近い形状をしていた。
それはいわゆる空気力学に適した形状をしていた。
それはいわゆる航空機である。
パイロットはコクピット内部で特別な装備を着ながら、首を横に回した。
視界の下にはエンジニアたちがいて、離陸直前まで調整を続けている。
残りの燃料は100%。メーターは満タンのままである。
パイロットは、指導者からの無線を聞いている。
指導者は40分ほどでトランジスタや回路などを完成させ、コンピューターのプロトタイプを組み上げた。
無線通信は、指導者が6時間ほどかけて設計した『通信計算機』により行われている。
この通信計算機は魔法と科学を組み合わせた巨大なコンピュータであり、並のエンジニアならこの内部設計を見ただけで失禁しながら自分の未熟さを思い知ることになるだろう。
計算機のサイズは1m×2mほどの大きな基盤が大量にセットされ、それが演算処理をしている。
内部は特別な液体で満たされており、放電させることなく水冷を続けていて、絶えず計算している。さらに、膨大なトランジスタたちの群れは何十万にも及び、その全貌は百メートルを優に超越している。
指導者は急速に科学を進歩させた。真空管をスキップし、暗号通信を発明し、コンピュータを作った。
このどれもが1人の知識で出来ているという事実は、驚愕に足るものである。どれほど機知に富んでいるのかという思いは、エンジニアたちや国民が1番抱いている。
パイロットは、航空機に搭載されたメーターを見ながらすこし興奮している。何故ならこれは、彼に課せられた試験機の運用であるからだ。
実質的な1番乗りであり、自分の前にはエンジニアしかいない。
後のパイロットは自分の操縦を元に改善させていく……だからこそ、パイロットは喜んでいるのだ。
「あー、飛行実験の手順を念の為もう一度、復唱せよ」
指導者からの通信だ。
これで5回目だが、さすがにパイロットもこれだけ再確認されればわかる。
ロール、ピッチ、ヨーを実行して滑走路に帰ることだ。
「はい。飛行実験の手順は……
■
試験場は興奮で満たされた。
浮遊魔法により垂直離陸を実現させている。
垂直に、重力に逆らうようにフワリと軽く浮いた。
この状態から空中で滑空し、その後に本格的に加速を行う。
離れて見ていたエンジニアたちは目を見開き、録画装置が壊れていないか何度もチェックを重ねる。
これは世界初の実験なのだ。エンジニアたちはこの飛行実験に携われたことを光栄に思っている。
メイプル宗教国はついに、空に到達した。
それはヒューマンの身体では不可能な領域で、バードマンのように翼を持つ種族でなければ無理なものだった。
だからこそ録画を辞めない。
『ライト号』と命名されたその試作機は、世界初にちなんだ命名のようだ。
エンジニアたちは、地球のとある兄弟の話を知らないが、それでも命名に込められた意味はなんとなく理解していた。
光の速度という最速への願いか、あるいは……そんな命名だと考えるエンジニアもいた。
だがこれは間違いなく、未来を切り開く一手になるだろうと誰もが考えていた。
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「クソ!魔導列車め……」
「ヤクラン将軍の件といい、さすがの量産型だなぁ……味方が壊滅しちまったよ!」
歩兵部隊は大敗北を喫した。
なぜならば彼らの所属しているサザンクロス帝国軍、虎星軍は海軍の竜星軍と仲が悪いからだ。
なぜ仲が悪いのかについてはまあ多岐に渡る長年の理由があるが、いちばん重要なのは予算だ。
植民地支配には両方の軍隊が必要になるが、長期的支配・短期的支配ならどちらとも『お互いに不要』だと感じているからだ。
海上輸送物資は有難いがコストがかかる。サザンクロス帝国の海軍は、ツァウスト帝国のように輸送艦隊をそう何度も派遣できるような燃料に恵まれていないからだ。
世界中の植民地を支配し続けるのはコストがかかるので半独立・経済的従属といった状況に置く。
そんなに陸上では竜星軍たちは活躍しないのだが、まずそもそもとして陸上は彼らにとってアウェーであることが第一の理由として述べられる。そして次に、本領を発揮するのは遠距離派遣なとであること、そして次に補給を採るのは船であるため持久力が陸上ではフルスペックを発揮できないということ。
「味方の船は……あと幾つ残っているんだ?」
「さあな!会話する暇があったら1発でも多く撃て!」
ボルトアクションライフルとは本来、狙撃などにも向いているが中距離を想定している。
歩兵の交戦距離がおよそ300m付近であることを考えると有効射程の限界がある。
そして有効射程が交戦距離と同じ300m付近という状態になっているのは、そもそも滑空銃であることが大半だからだ。
旋盤はもちろんあるのだが、ツァウスト帝国と比べると重工業が国内ではそこまで進んでいないし一極集中・多方分散生産を進めていない。
なので、サザンクロス帝国は銃火器の射程距離が残念なことになる。
島という全方位に警戒を貼らなければならない空間においてはツァウスト帝国は不利なはずなのだが、これの影響で強くなっている。
島に設置された回転砲塔は船を次々と榴弾砲で沈めていき、丘の上という位置エネルギーを活かして海の上にいる船も沈めていく。
他の島の影に隠れた船以外はおおよそ回転砲塔が沈めていき、そして魔導列車が島々ではなく大陸を走る。
当てずっぽうかと思われた散布界は、魔導列車から数えておおよそ4000m~4800m以内に収まっていて極めて正確に島々を間接射撃する。
サザンクロス帝国の歩兵部隊は無限かに思える間接射撃の時間のせいで歩兵部隊を次々に失って、島に潜むツァウスト帝国陸軍らがショットガンで直接船に乗り込んで破壊していく。
しかし、最も恐ろしいのは『火炎放射兵』だ。
直射ならば180m付近まで火が届き、ゲル化した燃料を着火させながらボッボッボッと小刻みに飛ばしているので曲射して大量の焼夷弾となることもできる。
こんな火炎放射兵がそこら辺の窪みや人間1人が入れる程度の穴に腰を屈めて伏せていて、発見するのが発射されてからでしか不可能。
航空機が空を飛んでサーチライトで照らしまくり、サザンクロス帝国は航空機のせいで情報の優位性を失っている。
降下兵を撃ち落とせるが当てるのは難しく、むしろパラシュートに銃弾を撃った方が確実。
降下兵は幸い防げているが、いつ負けてもおかしくない。
そのような状況下でも、工兵が立てた砲兵陣地の外で撃ち続ける。
近寄る兵士を排除するのが仕事だが、ツァウスト帝国の矢面に立つので最も死ぬ確率が高い。
「ッ」
頭を撃ち抜かれ、言葉を発する間もなく隣の兵士は死んだ。
兵士は銃が落ちたのを確認すると、クリップを取り出して自分のボルトアクションライフルに装填する。
真鍮の原料となる銅と亜鉛の禁輸措置がされているせいで鉱山が少ないサザンクロス帝国は銃弾を生産する能力に乏しい。
つまり、1発たりとて無駄にはできない。
だがそんなことを戦闘中に考えている兵士は、砲兵陣地に向かって撃たれた回転砲塔の榴弾砲で死んだ。
文章の1話辺りの量について(調整)
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10000文字ほしい←現在の基準
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3500以上ならいいよ
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5000文字くらいほしい
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6000以上ならいいよ