「銃器と弾薬の違法売買をしているとの通報がありまして、3分間だけ猶予をあげるので今すぐ家から出てください」
黒いベストを身につけた、フルフェイスヘルメットを付けた警察官が、スピーカーを用いて家の中に大音量で勧告する。
装甲車が2輌、郊外の住宅地に止まっている。
メイプル宗教国、サイアミーズ産業特区にて警察がごった返している。
「よし、もう犯人は降伏勧告を無視した。」
「突撃!」
「了解。装甲車、前進します!」
住宅の玄関に装甲車が突撃する。
特殊なスパイクにより、壁は容易に破壊されてもはや天井が支えられているのは装甲車のおかげのような形となった。
この装甲車はただの装甲車ではない。
特別に生産されている歩兵戦闘車が元となっている装甲車なのだ。
なぜならここは国境地帯、なおかつ近くでは2カ国が戦争状態で争いまくり、よってこの先の道路は軍に封鎖されている。
新しく前線に送る戦車と歩兵戦闘車の中から警察用に再編されたものなのだ。
「なっ、RPG7を装備している!避け───」
装甲板はそこまで薄くは無かった。いや、装甲板の厚みは確かに250mmだが傾斜装甲があった。
それに、至近距離ということでそれほど強くもなかったのだ。
それが幸を奏し、とてつもない衝撃だけで済んだ。
「緊急的かつ代替不可な状況ゆえ、催涙弾を使用せよ!」
スモーク弾が、分隊支援装備によって割れた窓に向けて発射された。化学的作用により粘膜に対してダメージを与える。これで降伏するはずだと警察の誰もが思っていた。
「くそ、犯人はどこに逃げた!?」
だが、スモーク弾の白い特徴的な煙が晴れた後に家の隅々まで捜索しても犯人は居ない。
どこに逃げたのか、それを考えていた警察は不自然な床を見て訝しんだ。
「この床……凹んでないか?」
カーペットを剥がせばそこにあったのは地下室の扉と思しき物体。
当然、再開発地域は画一的な住宅……トラクト・ハウジングなため警察は家の図面を持っている。
地下室が家によってあるのは分かっていたが、この家は地下室があるのか無いのかと言うことまでは分かっていない。
だからこそ先の間取り図は分かるが、本当にその通りなのかは見るまでわからない。
「よし、ちょっと開けてみるか」
警察官は床に着いていた木の扉を開けた。だがその瞬間、衝撃的光景が広がっていたのを目にした警察官は固まる。
何百ものマガジンが転がり、銃の中にはメイプル宗教国で使われている最新式の銃があった。
そして梯子の下を覗いただけでこの量の情報を見た警察官は、スモーク弾を打ち込もうとした。
だが、バディの警察官は言った。
「いや待てここは密室だ。スモーク弾は使えない」
「じゃあ手榴弾か?」
「いや、中の証拠が壊れるかもしれない。ここはフラッシュバンだ」
「了解。」
短いやり取りの後に、室内に閃光が光った。
「うおぁあ!」
何かが落下するような音と、ハシゴの隣にあった棚が倒れる音がした。
そしてその声は紛れもなく犯人の声であった。
「な、何だこれは……」
2人は突入し、その先の光景を見て体を硬直させた。なぜならそこに広がっていた光景はあまりにも非現実的なものだったからである。
「まさかここまでの量を持っていたとはな……」
そして犯人は、もうかなり前に死んでいた。
「やめてくれ、まだ死にたくないよー」
悲痛な悲鳴を模倣しているのは、『怪物』。
だからこそ、モンスターを飼育するのは一般市民には不可能な事だ。
武器の横流しを行っていた軍需密輸人ならば……いや、出来なかったからこそこの密輸人は死んでいたのだ。
内部にいるのはただの『モンスター』。
リビングデットとも呼ばれるその存在は、この中央大陸の各地に伝承として伝わっている。
死人が墓から蘇る、死者が街を徘徊しているというのは概ねこのモンスターが引き起こすもの。
『幽霊』や『怨霊』などと呼ばれたりもするが、れっきとした現実にいるモンスターである。
「自分が殺した死者の最後の言葉と行動を真似する……こんな危険なモンスターを飼育していたとは」
『モンスター』は銃を構えている。
それはサブマシンガンであり、特別な反動軽減機構が組み込まれている銃。四角に近い形状をしており、破滅的な発射レートを持つことで近頃は犯罪者に人気になってしまっている。
その名を、クリスベクターと言う。
「助けてくれー、痛いよー」
腹を押え、蹲るような姿勢をしたりしている『モンスター』。
死人となっている犯人……いや、成り代わられた『犠牲者』は上半身と下半身を繋ぐものがなかった。
「近頃の30人以上の行方不明事件……全ては、人間を積極的に食い、模倣していたお前の仕業か」
バディの警察官と、その警察官は銃を発砲した。
跡形も残さないように。
もしくは無力化するように。
だが、モンスターの方が少し早かった。
リコイル制御なんて理解していないが、それでも銃を撃った。8発ほどが左半身に命中した。
だが同時に、対物ライフルの弾が正中線上に2発当たった。
モンスターは頭が無くなっても、口はまだ動いている。
マガジンが既に無くなっているが、まだトリガーを引き続けていて右手を外さない。
「やめてくれー、金ならいくらでもあるー」
こいつはそういう形をしているだけの『モンスター』なのだ。
人を襲い、自らを覆う殻を欲する『怪物』。
既に両腕が無いが、傷口がうねうねと伸びて落ちた腕へと再接続しようとしている。
「ショットガンを使え、これじゃ弾が無駄だ」
対物ライフルを撃っていたバディが、背負っていた銃を警察官に渡した。
国内では絶対に流通しない弾を込めたショットガンが、怪物の首に命中した。
その弾は8つに裂け、先端が残留するように作られている。
切込みが入れられた弾頭はショットガンの火力によって発射されることで強化されている。
この世界に地球と同じ非人道的武器使用に関する制約は存在しないがそれを定めたのはメイプル宗教国の指導者。ならばできるだけ従わなければならないが、現在は『緊急事態』である。
超法規的措置により罰則を迂回することが可能となるのだ。
「いくら極悪人だったとはいえ……こんな最期、俺はごめんだね」
死体には顔がなかった。首から上を再現するためにこの怪物が食ったのだろうか。
50口径の弾が当たり、何度も胴体を破壊してもうねうねと血管……いや寄生虫のような線が、何千本も伸びてきてくっつけられる。
「怪物狩り、モンスターハントには銃だよ銃」
バディの警察官はそう良いながら再生を続けるモンスターに、永遠と銃弾を叩きつけ続ける。
■
「ようやく……諦めたか?」
モンスターは再生しようとしなかった。
傷口から線が出てきて、近くの死体に乗り移ろうとする。
このモンスターが銃のことをそういう形状の物体だと認識しているだけで良かった、とバディの警察官は言った。
既に空間縮小によってモンスターは閉じ込められた。
後は野となれ山となれ。
警察官2人は疲れた顔をした。
まさか密輸人かと思ったらモンスター案件だったとは、という顔だ。モンスターは往々にして厄介なもので、モンスター退治の話は地方伝承にも多く存在する。
だが今日が、その伝承に新しい1ページが加えられた日になるだろう。
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「リビングデットで死者を蘇らせようとしたんだとさ」
バディの警察官から、その警察は事件の話を聞いていた。
真相としては死んだ夫を生き返らせようとあらゆる手を尽くした結果、金が必要だと言われて代わりに大量の軍需品を横流し、報酬でリビングデットを購入した……そんな顛末だった。
「リビングデットなんてただの寄生虫だ、とは言わないが……正体を知らなかったんだろうな」
「ま、どのみち誰かはやる必要がある。」
「それがたまたま、俺たちだったってことだろうね」
「RPG7を撃ち込んできたのは、モンスターの仕業で……武器密売は被害者がやっていたことだった。」
「対戦車ロケット弾で乗組員の1人は気絶……まあ俺を除けばほとんど全員軽傷だ」
バディの体は包帯が大量に巻きついていた。
「俺は退職するが……まあ、お前は元気でな」
ああ、とだけ返した警察官。初夏の密輸事件で体験したその話は、どんな怖い話よりも実体験として怖い話だとその警察官は思っていた。
肝試しは今年、しなくても良さそうだ。
文章の1話辺りの量について(調整)
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10000文字ほしい←現在の基準
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3500以上ならいいよ
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5000文字くらいほしい
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6000以上ならいいよ