「降って湧いた解決策ってのはこういう事かな?」
「大きさも腰で折り畳んだ人間くらいで丁度いいし」
目の前に存在するのは、『盃』。
噴水とも例えられそうなその器は、辺りに酒気を帯びた空気を撒き散らしている。
コンクリートのトーチカを思わせるような打ちっぱなしな部屋。それはまさしく緊急的な施行がなされた空間である。
その中央には、『神器』があった。
「いやー、すばらしい道具だ。」
「こんなのを独占してたなんて許せないなぁ……どれ、ちょっと試してみるか」
黄金色に輝く酒。それが、この神器が作っていたものの正体であり本懐である。
「うーん?酒以外は作れないのか……メチルアルコールも作れると思ったんだけどな」
いくら念じてみても、その神器は酒を出すことしか出来ないようだった。純粋なメチルアルコールが出せないということで1部の工業的用途には適さないが、他の工業や民需的要素には無限大の使い道があるだろう。燃料・溶剤の代替とかはもちろん、蒸留によってアルコール度数を高めれば、消毒液や工業用溶剤、さらには爆発するかもしれないけれど着火剤とか……いや、粗悪な燃料とかにもなるか。
文字道理に、溢れるほどの酒があるのだから。
だが造酒文化を破壊するからこれを公にしたらヤバい。
そんなことをあなたが考えているうちに、次々と雫になり少しづつ中身をまだ湛えているが、やがて器の縁から一筋零れ落ちる。
スクリーンで鑑定してみたところ、アルコール度数は31%だ。その他の成分は……まあ毒ではないから目を逸らしておこう。
僕がアセンションで取得した状態異常耐性強化:弱と薬物免疫:弱のお陰で、薬物に分類されているアルコールは分解される速度が早くなる。
女神にゲーム化された影響で、酩酊や睡眠が状態異常になったからだろうか?
まあとにかく、ちょっとだけなら酔うこともないだろう。
試しに少し飲んでみるとスッキリとしたリンゴのような甘みと共に、初めて知る味がした。
『:神の血液 を獲得しました』
『:劣化した神聖 を魂の損傷部位に蓄積……』
『:劣化した黄金 を魂の損傷部位に蓄積……』
すると、その瞬間に右手が金色になった。
金色というかなんというか……波打つ海のように、光が散乱している。というか若干右手が発光しているからヤバいかもしれない。
こんな昼行灯な右手になっていることは築かれないかもしれないが、夜になったら発光してるせいでめちゃくちゃ目立つかもしれない。
「何とか止められないかなこれ……」
「なんかこう……なんとかなれーッ!」
あなたは自らの内面に目を向けた。
あなたは自意識の連続性から、自らの魂は永久不滅であり肉体よりも魂の方が優位であると認識している。
異物である新しく取得した神性の部分をあなたは取り込んだ。
自分以外を必要としないあなたは、魂が不可侵性を持っていて不壊であるためにこのような芸当ができる。
あなたはスクリーンの部分を発見したが、そこは取り込まずに残しておいた。
おっと、ここで接続を切られると危ないところだった……
スクリーンの部分は僕が特別に作ったんだけど……
いやほんとに強いな?なんだこれ……僕って仮にもこの箱庭の創造神なんだけど魂に負けかけるって初めてだよこれ。
うーん、最近僕はちょっとこいつのせいで弱くなってるのか?前と同じくらい強かったらこんな簡単に触れられるとは思えないし……
僕は神なのにどうやって触ってきてるんだこいつ?
マジで人間か?
いや今の種族は人間じゃないけど魂が明らかにおかしいだろ、そもそも魂だけで思考したり行動してくるし何なんだ……?マジで何も分からないから恐怖を覚える。
あなたはTIPSこと創造神がそんなことを思っているとはつゆにも知らない。
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おや、ようやく止まった。
やっぱり神の血液とやらのおかげで制御できるようになったのかな?
あなたは携行している、『水瓶玉』に目線を向けた。
これは『酒の盃』と同じく神器であり、現在所持している神器の中でも有数の強さを誇る神器でもある。
『磐岩の印』のように寿命を伸ばしたり、常に疲労を回復させるものではないが、それでも強い。
大量の水を放てるというのは工業的に非常に強いため、『水瓶玉』のことはとても重視している。
というかこれがなかったら初期の工業がかなり難航したかもしれない。
「酒の盃はONOFFが切り替えできるだけで量は変わらないのか……」
あなたは少し残念そうに言いながら、カラになった器の底を見た。
お酒は微量にしか増えないというのが難点だなあ……
あなたは器を見た。ONにしても少しづつ溜まるだけで、一気に満タンにはならなかった。
OFFにすると一瞬で器の中身は全て無くなるのにな、と思いながら回収した。
あなたはゲーム化を最大活用している。
アイテムスロットという拡張概念が追加され、明らかに持てないような量の荷物が持てるようになっているのだ。
あなたの発想力はすばらしく、神器を携行する時はアイテムスロットに入れているのだ。
これにより盗難確率は0であり、絶対に盗まれることはない。
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指導者は今日、パレードを開いた。
独立から1.5年。春の後味はなくなり、すっきりとした湿度の少ない初夏となっている。
海や太い大河から遠い地理的特性に由来するが、まあそれはいい。すっかり市民は連日のパレードを楽しんでいる。
「すみません、ベーコン1枚ください」
屋台料理の香りと人々の喧騒で街道は賑わっている。
店主は熟成魔法が掛けられた箱から新しいベーコンを取り出し、包丁で1cmほどを切って焼いている。
そして、先に両面が焼きあがったベーコンを持った店主は客に渡していく。
一日使人(何かしらの手伝いをする人、もしくは役職名)は会計のお釣りを渡して、その客はどんどん歩いていく。
「うーん、やっぱりメイプル宗教国っていい国だよねえ」
右手で串を握りながら隣にいる人物の肩をつつき、言葉をせびる者がいた。
その名を、張芳と言う。氏は元々、文学などを嗜む普通の人であった。だがある日突然、本当に前触れもなく瞬きをしただけで気がついたら異世界にいたのだ。
この隣にいる人物も、似たような経緯でこの世界に来た。
彼は元々、ブラゴヴェシチェンスクという東の果ての街に住んでいたがある日突然、異世界の街に出現した。
そして2人は偶然にもすぐ近くにいたので知り合いになり、そのうちサザンクロス帝国内でメキメキと頭角を現していった。
「ああ、俺もそう思うよ」
「ところでそんなに食べて大丈夫なのかい?」
歩く度に美味しそうなものがあるのが悪いとでも言うような速度で、大量の屋台料理を購入していく。
まあそれは彼も同じだった。
30年以上、地球に帰れないままだったからだ。
郷愁も湧くというもの。
どうして彼を責めることができようかということだ。
彼の故郷の料理は、全体的に味が濃いのであまり短時間に食べたくなるようなものではなく、好きではなかったが、もう二度と食べられないと言うのならとても食べたくなるのだ。
「まあ地球料理は別腹だよ……それに、懐かしさで涙が溢れそうだ」
「もう流れてるけどさ、本当に懐かしいんだ……」
彼らは五体星の一員である。
いや、正確には任務で来ていないので五体星とは言えないが。
「冷風機は素晴らしいねえ……いや本当に最高だ」
「涼しさは家電がないと入手不可だってのは散々知ったけど、いざ家電を見ると懐かしさと有難みで満たされる」
冷風機が店の前に置かれている。その店の名前はなぜか誰にでもすぐ理解できた。
『国民需給品売店』
メイプルの国民じゃないと購入ができないのは玉に疵だが、中には家電やら何やらが置かれていた。
指導者が描いた絵には言葉が乗っていて、見た瞬間に何を伝えたいのかが分かる〜とか美術館で解説されていた。
指導者……彼か彼女か知らないが、恐らく言語チート系の能力者だろうと2人は推測していた。
なにせ、本当に言語が違くても分かるのだ。否応無しに。
聞いている最中に、新しい言葉の概念を叩きつけられているような感覚がする。言葉の裏にあるニュアンスが分かるし、どんな言葉を母語にしていても伝わるというのは凄い。
しかも対象が言語と認識出来るものとかじゃなくて自分が作用したものとかなんじゃないか、と2人は熱い議論を冷風機の前で交わしていた。
「この冷風機……首を左右に振りやがる」
氏は冷風機の籠を掴み、自分の前に合わせた。
彼は60°ほど回っている冷風機の前で回転運動をしていた。
「氷が沢山あるのっていいなあ……」
「わかる。ありふれてた資源って唐突に無くなるよね」
彼ら彼女らの故郷は両方とも寒かった。
氷漬けになった池、その上に雪が積もって陸地のようになった風景……そのどれもが非常にありふれていた。
だが転移したサザンクロス帝国は全体的に亜熱帯地域が多く、乾燥している地域は砂漠や中央大陸方面しか存在しない。
そんなことも災いしてか、夏が地獄の極みだった。
彼の能力の、『創造世界』の中に逃げ込み、氷雪の入った袋を扇いでどうにかこうにか、なんとも大きな労力をかけて冷気を得ていた。『創造世界』の中では資源が無限だが、氏の能力である『影侵入』で入れる影空間の内部は位置の概念を必要としないのに対し、『創造世界』は普通に移動しないとダメなのだ。
とても内部空間は広いが雪山のあるバイオームまで歩かなければいけないし、生き物はおらず、敵はいないけれど地形は運が悪いと足が滑ったりしたら粉雪に突っ込むことになるだろう。
夏でもわざわざそんなことをせずに簡単に冷風を浴びることができる冷風機は彼らにとって羨望の的であった。
そんな冷風機が存在するメイプル宗教国が好きになるのは当たり前と言うもの。
活版印刷だの、カメラだの鉛筆だのとやっていた自分が恥ずかしい。
そう考えて、氏はメイプル宗教国の指導者を素晴らしいと感じていた。
なぜならば夏にこんな大量の冷風機を動かすなんて、電力を大量に生産しているに違いない。
3枚の大きな羽は素早く周り、自分たちに冷気をとどけてくれる。なんとありがたいことか。
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「発光の強さを変えられるようになったけどこれ最大にするとめちゃくちゃヤバいな????」
目の前にあるのは金塊。
それもただの金塊ではなくボールペンの形をした金塊だ。
「ミダスタッチとでも命名するか……まあこれは封印だなあ、いくらなんでもやばすぎるよこれ」
あなたはつい先程、右手を光らせて遊んでいたところボールペンから熱を感じて手を離した。
金色になってしまったボールペンに、先程感じた熱から推測し、まさかと思いながらもボールペンを慎重に握り、インクの入っているであろう場所を左手の親指で折った。
するとやはりと言うべきか!液体の金がそこには入っていた。
金(インク)が激熱な温度になっていて金(ボールペン)が普通の温度なのは……まさか状態変化の温度?
金(インク)が溢れて机の上に乗った。
「まあ……明らかに市場の金銀のレートが破壊されるし、宝石とか細工品とかが衰退するからもう使わないことにしよう」
「とりあえず部下で実験するか……僕以外が飲んだらどうなるか分からないしな」
■
「今回は特別に抽選1名に、私の手作りのお酒をプレゼント!」
「君は先の戦いで頑張った。その名誉を讃えて、『2等奮戦勲章』を与えよう。」
「君はツァウスト帝国との最前線で、重要目標の資料回収を達成してくれた。と、いうことで〜」
場の空気は盛り上がる。
もうすでに開催3時間程が過ぎただろうか?
指導者は最高司令官たる軍司令官と最高指導者を兼ねているため、軍の将官などに勲章を授けたりする必要がある。
「うーん、君は魔法使いたちをちゃんと現地で処刑してくれたから『3等奮戦勲章』!」
「あの場にいた敵兵士はもう既に軍事作戦に参加し、抵抗する人々しかいないんだから気に病むことはないよ!」
紙吹雪を籠から撒き散らし、スピーカーを握り発表する。
「イェーイ!戦勝おめでとう!」
「みんなに800万円あげちゃうぞ!」
円というのはこのメイプル宗教国の貨幣単位のことである。確かに名前の由来は日本円の流用だが公式には、円環のように歪みの無い国という意味を込めて付けられた貨幣単位名であるとされている。
ちなみに指導者は旧来の風習や宗主国の設定した因習を廃止するという名目で大量にこの通貨を発行した。
現在では統一貨幣こと、ファウス貨幣よりも価値が高くなっているこの通貨は指導者の顔が描かれている。
14のアングルから撮影したので同じ額面でも種類がかなりある。まあそれがむしろコレクターたちの原動力になったりしたので良かったと言えるだろう。
「最高!最高!最高!最高!みんなも私を崇めなさい!」
指導者はハイになっていた。
というかぶっちゃけ過労である。
540日ほとんど休みなく働き続けた。
いや、休みといえば6時間の睡眠時間は必ず取っているがその最中にもTIPSに次の計画を練ってもらい、朝にその計画を達成するためにどうすればいいのか考えて、内容を複数組み込んだ自分の案を採用する……といったルーティンをし続けたのだ。
宗教を作って、独立意識と対立工作、団結を煽り実行した。
なんか知らん間に1200万人も信者ができた。
どういうことか全く分からないが演説したり、信者が求めてそうな『理想像』を自己投影させるように振舞ったら支持者が爆上げした。
使徒とか任命して、なんとか自分の伝令をやれそうなやつを作って組織化して、更なる武装化を進めて蜂起した。
そして独立戦争を指揮していた時期には周辺国と交渉して武器を貰ったり、時には裏切ってサザンクロス帝国からボルトアクションライフルとはいえ銃を奪い取り、その直後に帝国からの食料輸送という名の刺客を受け入れたりしながら演説を毎日繰り返して、追っての軍は市街戦なこともあってゲリラ戦術で無効化し続けた。
独立戦争を勝利で終え、独立を宣言してからも苦労は続いた。
国内の秩序を守るために警察組織を立ち上げて、軍とほとんど同じ装備を作って、さらに法典とか書いて書いて書きまくって4500ページの大作を発布できるように大型印刷機も作って、さらにそれを使えるように人材育成を同時進行的にしながら将来的な人材育成のための機関を設立し、さらに憲法を書いた紙を配りまくったり……
重機製造をして建設業界に革命の嵐を起こしたり……油圧ジャッキとか比較的簡単かつ高精度な教材をパノプリヌンから持ってきて国内の技術者を育成して、魔法を必要としない内燃機関を作るために蒸気機関を作って、バイオエタノール合成をできるように下準備をして……
指導者になってからも苦労は続いた。
全ての部門を名目上統括する最高指導者となり、実質的に総括している重要な分野で様々な予算配分を考えながら財政成長のことを含みながらインフレ率を操作するために造幣権を発動して追加で貨幣を擦りまくりデフレ危機を回避して、
国民が経済的に豊かになり中流階級が増えたことに由来するインフレ危機を、高金利貸出で乗り切って、絶対数を増やそうと思って難民を受け入れまくったら労働者人口と食料需要が爆上げして土地の値段がバブル状態。
土地の個人売買規制をかけなかったら危うかった。
計画経済だから需要が更新される度に生産内容を変えて調整しないといけないし、もちろんそれを前提にしてるから消耗品が溢れるとか少なすぎるとか存在しないんだけど……
それでもまあだんだん予想が難しくなってくるし、市場原理を国家統制経済から資本主義に戻そうにもこのままだと民間企業が全然ないからそもそも無理だし。
国内外の複数の問題に対処するために結局警察も軍も外交も自分ですることになって、
楽をしようと思って議会を設立するために、議員候補を集めようとしたら全員が自分に権力を譲ろうとしてきてまともに機能しない。
しかもその後の国民投票で議会を自分より下にする法案を可決刺せられたから全権委任法が成立して議会はもう無理だと悟り解体、全権委任法も停止した。
このままだと後継者とかやばいから民主主義国家にしようと民主化の声明を発布したら次の国民投票でこれまた国民が捨てた。
めちゃくちゃに濃い1.5年である。
1年と半年といってもわずかな期間は独立戦争を仕掛けてからで、信者獲得は4ヶ月ほど期間が必要だったから1.9年だ。
ついにというか、やっとと言うか。
やっと落ち着いてきて重圧から開放されたためにハイになったのだ。
心の持ちようというかそういうものがガラリと変わったのだ。
前までは、強大な帝国に囲まれて農業国からの工業化を進めて転換しないといけないのに半分諦めムードだったが……今は違う。全力で領土拡大して、実効支配を進めるのだ。
北西に、ただひたすらに北西に。
首都戦にまで追い込んだら航空機を使う。もう爆撃機は量産したし、ペイロードも燃料タンクも魔法のおかげで数十倍だ。
B-52の絨毯爆撃で全てを終わらせよう。
▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△
「いやあ、それにしても私たちって幸運だったのかもしれないね?」
「うん?」
氏が、彼に話しかける。
その声質は柔らかで、安心しきっていることを示している。すると唐突に、彼の方に振り向いて例え話をした。
「『梁山泊と祝英台』のようには私はならないよ。だって私たちの間に『馬文才』はいないのだから。」
少し、唐突な話に困惑しつつも聞き返す。
「あー……どういうやつだい?」
すると氏は、人差し指を口元に持っていき、『沈黙』の意味を持つポーズをした。
「ふふ、秘密さ」
「20年後に教えてあげるよ」
そう言って笑い、彼はよく分からないがとりあえず笑って済ました。
「それは、少し前に話してくれた白蛇の話のようなものかい?私はあまり文学に明るくないんだ。」
彼は困ったように言いながら冗談めかしてはにかんだ。
「なら私はきっと、変身したままだろうね?」
彼はそのように返し、それに照れた氏は彼と会話を続けた。
文章の1話辺りの量について(調整)
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10000文字ほしい←現在の基準
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3500以上ならいいよ
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5000文字くらいほしい
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6000以上ならいいよ