女神「輪廻転生しろ」 ワイ「はい……」   作:まっすァき

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タイトルを変更しました 2025/12/12 10:23:11


4度目の現世+18

色とりどりの花が夜空に咲く。

耳をつんざく雷が落ちたようなの炸裂音に、緑や黄色、紫や橙などのさまざまな色が、1度に数千個も出て夜景を照らす。

 

 

サザンクロス帝国からの使節団たちは、花火を見て大変おどろいた。

なにせこれほどの大きな音が鳴るのは、戦艦の砲火しか存在しないというのが彼らの常識。

 

彼らの驚愕は、この音が長時間続いたことにも由来した。

 

何が起きているのか理解したものはほとんどいなかったが、そしてこれが次第に目の前の明るい花によるものだということを理解してからは恐怖が強くなった。

 

夜空の遠くまで飛ばせるのなら信号弾にも使えるだろうし、どれほどの威嚇効果を発揮できるかと思考し、これほどの大量の物をたった1回の会食の最後に使うとは。

 

 

そういった思考が大多数を占めていた。

 

 

彼らは外交使節団であり、今回の訪問では妥協点こそ多かったものの良い結果を引き出すことができた。

 

サザンクロス帝国は絹織物とナイロンの交換貿易で大赤字、産業がまるまる火の車なのだ。

 

どうにかして貿易を正常化し、国交樹立後の貿易品目を増やそうという目的で外交使節団は来ていた。

 

まあそれが主な目的なだけであり、それだけが目的ではないのだ。

予防線やどうにかできるような物といった手段はあればあるほど良いというのは誰が言ったか、大量の手段をサザンクロス帝国は持っている。

そしてそれを使って、ホスト国であるメイプル宗教国と多大な貿易摩擦が存在するがそれをどうにかして埋めようとしているのだ。

 

 

「やはりカニは美味しいですね。北方産ですか?」

 

外交官の一人が、傍にいたメイプル宗教国の案内者に聞く。するとその案内者はこう答えた。

 

「ええ。それは我が国の技術で、生存させたままカニを食べることができるんですよ」

 

「なんと!それは素晴らしい。カニは美味ですからな、是非その技術についても次の会談などでも教えていただきたいものですな。」

 

 

蟹とは海の筋肉である。

夜空に浮かぶ月。猛々しい姿の蟹をふと古代の人々が見出してしまうほどだ。

兎か蟹か、それとも亀か。それぞれの解釈で数多の諍いが発生したものだ。

 

だがしかし古代の人々は願った。

蟹をどうにかして、遠く離れた土地でも食べたいと。

やがて願い続けた商人は、蟹が実る種を手に入れたという伝説が残っている。

 

まあその伝説は『欲が出すぎると悪い目に合う』という意味が後世になって込められるようになったので基本的に後味の悪い結果になりがちだが、かつての実話では大儲けだった。

 

それほどに蟹は『換金性の高いもの』としてのアイコンを持っている。

 

ではなぜ会食で振る舞われたのかと言うと、それは領土拡大の正当化と誇示だ。

 

ツァウスト帝国の蟹には旨味がぎっちりと詰まっている。寒冷な海により大きくなった蟹は上陸して漁師によって浜辺で殺されるため、速やかに解体すれば新鮮なままに食べられるという。

これが古典的な漁だったが、積極的にカニ漁がなされるようになってからは大きく変わった。

そしてカニで大量に儲け続けた後に、ツァウスト帝国とサザンクロス帝国の関係は急速に冷え込んだ。

表立って言うことは立場上控えたい話題だが、ツァウスト帝国がメイプル執政国として現在のメイプル宗教国の範囲を含む国を成立させていたころに、独立戦争が起こりそれを支援したためだ。

 

まあ政治的な影響もあるが歴史的経緯などの環境もあり、ツァウスト帝国は周辺国との関係が非常に悪い。

 

そのため、ツァウスト帝国の東海はサザンクロス帝国も狙う激戦区であるが、蟹を仕留めたツァウスト帝国の漁船をサザンクロスの私掠船が略奪に行くなど日常茶飯事。

そのような激戦区にメイプル宗教国も参戦したという意思表示だもあるのだろう。

 

外交官はそのような事を思考しながら蟹を食べている。

 

ほとんど毎食のデザートが蟹や新しい『ソフトクリーム』だが、外交使節団の皆に全然飽きる様子はない。

 

特に『ラクトアイス』というソフトクリームの1種は大量生産が可能でありながらも濃厚な甘みを有していて、サザンクロス帝国にも製造ライセンスを卸す契約を獲得した。

 

これが大きな革命になるだろう。

サザンクロス帝国のある亜熱帯地域において冷たさというのは死活問題であり、氷だけでも歓迎されるものだがそこに甘みまでプラスされたのなら素晴らしいものとしか言いようがない。

 

「どのようにして凶暴なカニを沈静化させたのです?」

「こんなにも色艶が残ったままカニは直立不動だ」

 

 

そのカニはその場に留まったままであり、カニの足を目の前でボイルしているが、この工程を見てもカニは全く動じない。カニとは思えない大人しさだ。

 

「まるで、時が止まってしまったようだ」

「大きな筋肉も全く新鮮さに劣化がない……素晴らしい技術なのですね」

 

 

純粋な褒め言葉であるが、真を突いていた。

確かに、道のりを考えれば時を止めるのに等しい劣化の少なさであるが、これはそこまで高度な技術ではない。

誰でも再現できるような簡便な技術であるのだ。

 

「カニの頭を壊すのですよ」

 

にこりと笑いながら、会食中の外交官に向けてその案内者は解説しだした。

 

1:『生簀の中に満たした海水をミネラル添付した食塩水に変えていき、生かしたまま移動』

2:『蟹の生簀の中で、脳に向けて直接 攪拌魔法 を発動させ思考をできなくさせる』

3:『まろやかかつクリーミーな脳はその後、生簀から出され、

止血魔法 で無駄な出血を止める』

4:『血抜き魔法 で血液を一瞬で全て抜きカニを肉にする』

5:『腹を割り、内蔵を全て出す』

6:『カニの足以外を海に放流したり、カニの食料源にすることにより持続可能性を有したカニ養殖が可能に』

7:『現在に至る』

 

と、いうことだ。

 

カニは一見、生きているように見えるが足以外は模型なのだという。

カニが生前の姿のまま、立っているように見せているだけで生身の部位は足しかないのだ。

それを聞いた外交官はすこし残念そうに思いながらも、とてつもなく有用な方法に驚愕を隠せない。

 

「ちなみに……その脳はどこに行くんです?」

 

「栄養源として家畜の餌にされたり、もしくは新鮮なうちに食用としても並びます」

「その場合は1度、冷蔵する工程が挟まりますので解凍する関係上、味が落ちてしまう可能性が存在します」

 

少し残念そうにしながら案内者はそう言ったが、言外に今食べているカニは味の劣化が起こっていない新鮮なカニであるという事を表すものだ。

そしてそれを聞いた外交官は紙で口の端を拭いながら言った。

 

「なるほど、素晴らしい持久力を持った生産体制が敷かれているんですね。次回の視察ルートに漁をぜひ含みたいのですが、今回きりの関係で終わらないことを願っていますよ」

 

外交使節団たちはサザンクロス帝国に帰国するのだ。わずか10日間の歓待ではあったがこれでもかと技術格差を見せつけられた。

 

 

ぜひサザンクロス帝国に積極的に取り込み、さらなる技術的進歩を進めたいと外交官は思った。

 

△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

「私掠船切符はもう効力が無いからこいつら、全員が海賊なのか……?うそだろ?」

 

サザンクロス帝国はいまからちょうど5年前、私掠船の制度をやめた。

それに伴って政府からの許可である切符は効力を失い、船はすべて海賊になっているのだ。

 

海賊と言っても、それはイメージ通りのガレオン船や大砲が大量〜とかのアイコン的海賊ではない。

 

武装を積んではいるが、それでも彼らの環境において良質な火薬自体が入手困難であり、銃は海の湿気て使えなくなるために不可能だ。

 

サーベルを持って戦う方が近い。

 

まあサーベルよりも対人戦なら『銀歯鋸』と呼ばれる武器だ。縄の切断にも近距離の破壊にも何でもござれの武器である。

 

海賊に捕まるとゆっくり鋸を引かれて3日3晩叫ばされるという逸話の由来になっている武器だが普通に劣化が進むのでそんなことはしない。

 

歯のような突起が付いていて、名前の通りに鋸の役割をする。銀と名前に着いているのは、実際に銀で作られているわけではないのだが……まあ色が由来だ。

 

そんな武器を持った海賊が大量にいるとなった時、あなたは頭を悩ませた。

せっかく外洋に進出できるかもしれないのに敵があまりにも多い。

海洋の王者と他称され、偉大な南十字星の島と自称するその国は海軍力が突出して強い。

 

(そんな国から出た海賊を掃討するとなったら、サザンクロス帝国と関係悪化する可能性が1%でも存在しうるために表立って攻撃したら何かまずいことになりなねないと判断し、掃討することをやりたくなかった)

(けど、だが今は事情が違う。)

 

「運河の通行料金も高いし、サザンクロス帝国の通商路や運河に依存しない海洋を獲得したと思ったらこれだよ」

 

少しばかり愚かな外交官のせいで気分と幸先が悪いが、すぐにあなたは明るい顔になった。

なぜなら証拠の補強材料を手にしたからである。

 

「でも外交使節団はいい回答をしてくれた。正式な回答は既に違法な私掠船で回答済だが、そのアンサーを更に補強してくれる証拠が欲しかった!」

 

「既に大量生産が進んだ複葉機から……焼夷弾を木造甲板に落下させたらどうなるだろうね?」

 

ワクワクしながらあなたは空軍を向かわせるつもりでいた。戦艦を作るにはまずノウハウがないから製造コストが爆上がりするし、製造のために使う技術を最初から開発するよりは空軍力を再編して対地攻撃より対艦攻撃に目標を切り替えた方が早いと考えたからだ。

高射砲も何も存在しない以上は、空軍は無敵!

 

まだ熱認識ロケットどころか対空砲すらない世界で、空軍の優位性は10年以上崩れないだろう。

なぜなら対空砲の開発が進む度に爆撃機でリセットをかけるから。資料が燃えたり爆撃で無くなればもはや関係はない。

 

 

「ククク……敵は全員炎上させてやるぜ」

「焼夷弾が空中で爆発して4方向に、なんていい発想なんだ……クラスター焼夷弾はあまり研究を進めていないが、対艦攻撃用に研究するか」

 

「ついでに単純な計算機から、コンピューター弾道計算まで進化させるためにもっと集積回路を作らなければならないな」

 

「だけどコストがなあ……1つ作るのにめちゃくちゃ時間もかかったし、精密な技術になるから普及させるには集積回路を作るための機械を量産するための機械が必要になる」

 

「トランジスタコンピューターは結局もう要らなくなったが……まあ初期の通信を支えてくれたし必要だったか」

「まあいい、ICT産業をここから数千年分スキップして進めるのだから」

 

「産業用ロボットの生産技術をさらに加速させれば、ロボットを生産するロボットを作る機械ができるようになる」

 

「いずれ機械を自己改良の領域に到達させなければ科学は停滞する。僕の知識があれば1000年の技術跳躍なんて訳無い」

「作るための素材も、必要な前提技術も全部知っているんだからね」

 

「ふっふっふ、もう笑いが止まらないね」

「もツァウスト帝国から戦争で人口を減らして、生産力を落としながら難民を作って、難民と移民保護で自国民に変えて人口を盛る……持続可能性はツァウスト帝国が崩壊するまでだが、戦争さえ起こせばもう一度、どの国でもこれが可能だ!」

 

「お得お得、最高の一石二鳥だなあ」

 

「いくら戦火で人民が犠牲になったとて、敵国の民衆なのだから将来的な兵士。プラスだと考えるほうがお得感が増してさらに良い!」

 

「さて……そろそろ仮眠するか。30分だけ寝て次は政務だ。今日の自由時間はあと2時間あるし、それで何かやろうかな?最近は彫刻もだんだん上達してきたし……

 

自国民の芸術性を刺激させるため、技術継承のために石窟寺院を建てられてるんだから僕も彫刻の分野で何かやるべきだなぁ……とりあえず滑石で試してみるか」

 

△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

会議室。その中心に置かれた円卓に、5人の人間が座っていた。否。そのうちの全員が純粋な人間とは言えない。

なぜなら、その5人は老化を遅くする神器の力が掛けられているからだ。

外見年齢が20歳ほどでも、実情は50歳の者もいる。

 

さて、そんな者たちがなぜ集まるのか。それは会議のためである。何のための会議か?それはもちろん、新しい大型新人を歓迎するためである。

 

 

「どうも、新しく加盟しました【絶画】です」

「五体星は今から六体星になりますね」

 

 

彼の能力はまだ知っていない。全員が新人に対して、自己紹介を済ませたばかりなのだから。

 

「私の能力は『絵侵入』。絵の世界に入り、自在に出入りできます。【絶影】さんと似たような能力ですね」

 

「絵だけじゃなくて、写真などにも入ることができますよ」

「絵の世界は時間が見られている時しか動けないので【絶影】さんとはちょっと違いますね……」

 

そんな言葉を言いながら、実演してみせる。

艶々しいリンゴの木が描かれた絵を額縁ごと、懐から取り出した。

すると足を絵の表面に立てたかと思えば、すぐに落下して言った。

【絶画】はその絵画と同じタッチで描かれ、油絵の人物画のようになっている。

 

すると絵画の中にいた【絶画】は、喋った。絵の上に吹き出しが出て、その上に乗って絵の中を移動している。

 

 

「おお……」

「漫画みたいだなあ」

「絵の世界だから吹き出しがつくのかな?」

 

三者三葉な反応をした。だが、【絶影】と【白空】は沈黙したまま絵画を見つめ続ける。

 

「ちなみに笑うと吹き出しの演出が変化するんですよ。試しに笑って見ましょうか? / ╲  / ╲  / ╲ / ╲ / ╲  / ╲」

 

「おお……ちゃんと吹き出しが大きくなってる」

 

 

「ちなみにこういうこともできます」

 

そう言うと、リンゴをひとつもぎ取って腕を絵の内部から外に出した。

すると現実世界に普通の腕が出現し、それ以外は絵画風になっていた。

その手が絵の緣を掴むと一気に絵の中から飛び出し、反対側の右手にはリンゴがひとつ握られていた。

 

「これ食べられるんですよ。」

 

絵だから横から見ると幅がない……そう思って、回り込んで見ようとすると先程までずいぶんと平面的なリンゴだったが、どの方向から見ても正面を向いているように見える。

 

「ちなみになんと増やせるんです!」

 

そう言いながらリンゴを白紙の紙に押し当てた。

その瞬間、現実にあるリンゴと同じ歯型のついたリンゴが紙の中に絵として出現した。

 

「なので1つあれば無限に複製できます。欠点はどこまで行っても絵の具とか、画材に影響を受けるんで水をかけられると消えちゃうところですね」

 

ペットボトルの蓋に水を注ぎ、1杯注ぐと滲みながらも少し待てば綺麗にそのリンゴは消滅した。

だが複製元のリンゴは消滅していない。

 

「めちゃくちゃ便利だね……いい能力じゃないか」

「それ、写真でも出来るのかい?」

 

【洞察】と【俊敏】は問う。

写真でも同じことができるなら、絵の具と違って水に弱くないはずだ。

 

「はい。現実のものを撮影して写真にすれば複製元も無限に取れます」

「デジタル画面も結局、光で描かれた絵なので、現像式のカメラじゃなくても普通にできます」

 

5人が目を見開いた。

【鋭敏】が、最も早く口を開いた。

 

「それってつまり、画面ならなんでも対象内なの?」

もしかして瞬間移動とかできる?」

 

「はい。多分ですけど、絵として僕が認識しているものならなんでもできます」

 

「皆さん、異世界転移してくるときに神から説明受けましたよね?僕はあの説明で質問しまくって応用方法を聞き出したんですよ」

 

「ああでも、絵の中で車とかが描かれてるとかじゃないと凄いスピードで移動することはできないですね」

僕の認識に縛られるせいで車とかの乗り物がないと絵の中を長距離移動することはできないんです」

 

 

へぇー、と言いながら提案する【鋭敏】。

 

「でもそれさ、絵に車とかを書いたらいいんじゃない?」

 

すると残念そうに【絶画】は答えた。

「いや、僕が後から書き足したものは具現化できないんですよ。元から書かれているものでしか具現化することができないんです」

「それに、車って最近登場した新しい物じゃないですか。車は値段が高いですし、ぜんぜん車が写ってる写真がないんですよねえ」

「もうちょい普及すれば車が全ての写真に写るようになると思うんですけど、やっぱり車を製造している所が海の向こうだから車は輸入品なんです。」

「だから関税と元から高い値段が組み合わさってとんでもない値段になって普通の写真だと不可能なんです」

 

だが頭を回転させ、新しい応用を閃いた【鋭敏】は容易そうに言った。

 

「うーん……でも思ったんだけど、コラージュってあるじゃん。車を撮った写真を切って張り合わせたら1枚の写真になって車を合成できるんじゃないの?」

 

【絶画】は、思いもしなかったとばかりの表情をして愕然としているのが誰の目にもよく見えた。

 

「天…才!

凄い!思いつかなかった!確かにそれなら出来そうだ!」

 

 

(自分の認識によると言っていた。なら可能だと思い込ませれば出来るはず。成功するかどうかは賭けだが成功したらかなり能力の幅が広くなるはず。

私の能力は自力で発見したが、こいつは認識によって可変する。なら出来るんじゃないか?)

 

【鋭敏】は能力の発展系について自力で考えて実践していた。出発点が極めて難易度が高い能力だったが、気づいてからは発展速度は極めて高速だった。

これも出来るはず、ならこれもできると気づいてしまえば後はほとんど能力を新しく作るのと同じような気持ちだった。

 

 

「そういや、異世界何年目?」

 

【俊敏】が急に尋ねると、【絶画】は答えた。

 

「年というか……サザンクロス帝国の傘下に入ってからだと3ヶ月?転移してからだと9ヶ月っす」

「まだ1年も経ってないっすよ」

 

【俊敏】は愕然とした。

自分は転移してから9年ほどツァウスト帝国のとある村で過ごし、訳あって住民が全員いなくなってからツァウスト帝国を離れ、サザンクロス帝国に渡った。

早いうちにサザンクロス帝国に渡った【絶画】に羨ましいと思ったが、転移位置の関係もあるだろう。

街にスポーンしたと言っていたからかなり異世界生活はマシだったのかもしれないと考え、さらに羨ましくなった。

 

「へぇー、俺は17年だよ」

「先輩と呼んでおくれよ、後輩」

 

そんな様子を見た【絶影】と【白空】は良いジョークだと思った。完全に内輪ネタだが、異世界転移歴だと【俊敏】がいちばん短いために先輩と呼ばせたがっているのだろうと考えた。

 

▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△

 

 

「油田開発が進めば進むほど豊かになっていくなあ……ここを失えば文明が全部無くなるのと同じだし、やっぱりまだ足りないかな?」

 

原油の生産地、『レミンアスム地域』。

ここの住民はほとんどが兵士だ。

 

あなたは黒い爆発する池が湧いているというこの地域を知り、狂喜乱舞した経験を持つ。

石油精製をしなければプラスチックが少量しか作れなかっただろうし、エチレンが足りなくなっていた。

 

ナフサは万能であり、科学を大いに躍進させる物質だ。

 

だからこそ、それが最も多く取れる石油というのは大事なのだ。石油が枯渇して以来プラスチックは急速に社会から消えたが、それでもおよそ10万KTの地球産石油を争って企業が利権獲得のために多数参入するほどだ。

 

だからこそ、独占の象徴であり、枯渇した資源の象徴でもある。その石油が地中深くまで掘削しなくても湧くなど、素晴らしいことだ。

 

かつての常識においては、石油が自然に湧くなどほとんど有り得ないような事態だがそれは真実だった。

真実だからこそ、石油のRGOを複数に跨るように、このロケーションに固めて形成し、効率よくレミンアスムというプロヴィンス石油を吸い上げ続けている。

 

(資源の分業を進めるのもいいが、集積して一極集中をするのも資源開発においても大切だ。)

 

あなたはかつての故郷で起きた資源の一極集中による石油危機を知っているが、それを解決できるような仕組みを実装こそすれどより高度な文明を発展させるのに必要な

強化素材を作るつもりは今のところ無かった。

 

(強化素材は環状惑星を作るのに最適化された素材だし、まず星外航行技術が成熟してからじゃないと無意味。)

とあなたは考えているからだ。

 

「前世では石油の湧いてる惑星を中央コンピューターに売りつけたら9900京円くらい稼げたんだけどなあ……」

「やっぱり生命がたくさんいた惑星は少ないし、もっと交渉しとけば良かったかな?」

「この世界は宇宙世紀にも到達してないし、銀河文明にも到達していない状態だしなあ……古代すぎる文明だ」

 

「石油が湧く環境は銀河でも少ないし、ファンドのゴリ押しじゃないと購入するのも厳しいからなあ」

 

「ま、もう中央コンピューターは存在しないし、いいや」

「結局、僕はエキュメノポリスをいちばん良い世界だと思ってたけど、リングワールドが羨ましかったんだなあ」

 

(そんな昔話よりも目の前に現実として存在する石油の方が大切だ。もしここが襲撃されでもしたら……ああ考えたくない)

 

(機銃掃射でだいたい死ぬとは思うけど……神器は何でも出来てしまうからなあ、もしこの地域をまとめて破壊する核兵器のような神器が存在するなら、絶望だね)

 

「それより、なんか大量に出てきた神器は使い方が難しいし、完全に僕の下位互換なあ」

「インベントリの中に眠らせとくか」

 

『心を読む神器』『目線が自分に集まっているか知るモノクル』『5人以上30人未満の集団において自分の意見が通りやすくなる腕輪』『不幸の船』

 

 

読心は使えなくもないけど代償として、両手両足の指が確定で弾け飛び、ついでに3分の1の確率でそれぞれ肝臓か肺か心臓が破裂するらしい。

コストがデカすぎるし即死要素があるメガネは最悪だ。かけるだけで発動するから普段使い用にもできない。

要人暗殺とかに使えそうだからキープしておくか。でもとりあえず封印しておこう。

 

注目されているかわかる片目用のメガネもわりといいけど……僕は演説する時は集団催眠とが使うし、自然と大衆を操作できる弁論力が足りてないなら有用だろうけども足りてるなら無用の長物。それに代償が論理的思考力なのがヤバい。緩やかに低下するとはいえそれはダメだ。明らかに封印だ。

 

腕輪は少人数グループとかなら向いてるけどダメだ。30人未満なのが使い道を無くしている。それに代償として毎月1回、誰かの髪の毛が1本があらゆる飲食物に混ざるようになるのがリスキーすぎるし飲食店を閉店させるテロにも使えそうだから封印しておこう。

 

それに不幸の船は、誰か1人が船に取り残されて2ヶ月分の未来で起こりうる不幸を押し付けられるのがダメだ。

そもそも1人で使うことを想定されてないし、裏切られそうだからこの船も封印しよう。

 

『レミンアスム中央地区』。それは州(プロヴィンス)の都であり、内包されているロケーションをまとめた行政の指示を出す場所だ。

州都は分かりやすいように全て中央地区と着けているし、レミンアスム地域で言えば銅とか石油とか特化した産業があれば産業特区とかに命名している。

 

 

一時的に産業地区に滞在しているけれど、まあ兵士がその場にいる生物の多数を占めているから防衛は完璧だ。

機銃もかなり大量にあるし、これを突破できるならどこでも無理だろう。

戦車みたいに移動することはできないけど榴弾砲があるし範囲破壊も余裕。

 

ここの石油を空間縮小で小さくして運んでいるけれども、普通に重さはそのままなので面積あたりの質量がとんでもない事になり沢山積めるようになったが重すぎで普通の車両だと動かないという事態に陥った。

 

そこで浮遊魔法を用い、さらに本来は測量用の魔法だけども水平魔法も併せて使うことで

箱に詰めた原油を浮かして運搬するスタイルになった。

これは現代式の輸送業あるあるの光景だ。

ホバークラフトで輸送をするという発想は数千年前からあるものだが、もののみごとに予言していた。

 

「さて、そろそろパイプラインを増設するか」

「石油工場が多くなってきたらここら辺で増やすべきだし、まあちょうどいいタイミングだ」

 

「あーあ、物を軽くする神器とかあったらなあ……」

 

 

あなたは肩を落としつつも未来を見据えていた。

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