女神「輪廻転生しろ」 ワイ「はい……」   作:まっすァき

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大量の命が損なわれていた。

 

その実行者は赤色のマントを服の上から被り、もしくは赤色の服を着て自らの所属を示した。

 

「今からぁ!3分やるから死ぬか物資を出すか選べ!」

 

まさに略奪。テロリストと言って間違いない行為をしていた。

何故こんなことをしているのか。それは、ツァウスト帝国がとても憎いからだ。

なぜ憎いかは明白だ。親世代を大量にツァウスト帝国の侵攻のせいで失って、大量に単純労働者として採用され、『インフラストラクチャーの建築』という名目でこき使われたからだ。

 

槍を地面に立て、部屋の中に篭っている者たちに向けて蹴りを放った。

 

ガンガンと木製の扉が揺らされ、蝶番が折れる。

 

そして住民らは駐屯軍が来ることを祈りながら目の前のテロリストをどうにかする術を探っていた。

 

何かしたら槍のせいで死ぬ。何もしなくても死ぬ。なら、従うしかない。

 

このような論理が働いて、テロリストの勢力は拡大した。

Bravo Juliettの2350年、圧倒的なテロリズムが恐怖で民衆を従えさせた。だが、先月に中核的メンバーが殺傷されテロリストたちも勢力拡大を急ぐ。

 

目的はツァウスト帝国に少しでも報復を与えること。テロリストたちにとって、憎しみだけが救いだった。

 

だが住民らもそのような状況を体験していて多少なれどもツァウスト帝国を薄らと憎んではいる。

だからこそ、物資を提供するのは『自分が表立って支援したくない』という心情と、『もしかしたらツァウスト帝国が負けるかもしれない』という小数点が10桁続いても確率から0以外の数字が見えない確率の事象を願っているからだ。

 

家の中を荒らされても抵抗はしない。なぜなら、見るからに荒事に慣れていて武装しているテロリストに、1:1でも厳しいのに人数差がある状況で抵抗などできようはずもない。

 

11月のこの日、『赤色のテロリズム』と呼ばれる運動が大規模に鎮圧される。だが、この時点ではまだテロリスト集団は散発的に潜伏し、逃亡を続けていた。

 

「おい!両手両足を伸ばして床にうつ伏せになれ!」

「財布の場所を言え!」

 

2人のテロリストが鋒を向け、両手を上げている市民に脅迫をする。テロリスト集団とは本来このようなもので、クーデターに正義なんてものは無い。

 

市民は怯えつつ、お金を渡す。

 

テロリストの潜伏の手法とはいつもこれだった。

ツーマンセルで略奪者の部隊を沢山作り、勧誘部隊がササッと動き、鎮圧をしにきた駐留軍より早く住民らを助ける。

 

そして組織勧誘をし、入らなかったなら殺して身ぐるみを剥ぎ、新しい服や金銭を調達する。

 

 

「は、はい!」

 

言われた通りに床にうつ伏せになり、両手両足を伸ばした。すると略奪者たちは財布を強奪し、至る所の窓を短い鉄の棒で割って行った。

なぜ窓を割るのか。それは突入される時に抵抗を少しでもする為だ。

ガラスの上を歩けば、一枚歯の木靴を履いているテロリスト以外は侵入できない。

駐留軍は特殊な靴を履いているが、それはあくまでも長時間の巡回に耐えられるような耐久性、そして伸縮性と排熱性を併せ持った靴だ。

物理的に接触面を減らす一枚歯の木靴などとは違い、むしろ地面を深く踏むように踵に傾斜が着けられ、自然と前傾姿勢になるように工夫が成されている。

テロリストのような者を鎮圧するのが駐留軍の仕事ではあるが、それは警察を兼ねているからであり、そもそもとして駐留軍はデスクワークをするオフィサーがちゃんと居るので鎮圧に向かうのは少数。

駐留軍全体として見れば9割以上の時間は事務作業だからだ。というか占領地の統治をする軍隊のモチベーションはどこから出てきているのかというと『ツァウスト帝国にそのうち戻る』からだ。

元々、駐留軍たちは『遠隔地支援チーム』が元となっていて、オフィサーたちは『都市部支援チーム』が元となっている。

そもそもが多様な地域の支援を行うチームの集合体なので事務能力は約束されていて当然である。

 

 

「……おい、さっさと次を出せよ。まだまだ貯め込んでるだろう?」

 

テロリストの男が、槍の石突きで床を叩く。その音は観葉植物が倒され、片っ端から漁られた現在進行形で壊れゆく部屋に不気味に反響した。床に伏せられた市民の背中に、冷たい敵意が突き刺さる。

 

略奪者たちは奪った財布の中身を数え、そして財布ごと袋に詰め込んでいく。紙幣を出すことすらしない。たが、資金調達とは名ばかりに奪うという行為そのものが、彼らにとっての帝国への復讐という歪んだ儀式になっていた。

彼らは自分たちの行為を必要な資金の調達と呼ぶが、その実態は、力を持ちえぬ弱者から最後の一片を剥ぎ取るただの暴力だ。

 

「よし、窓を割るぜ!気前よく、全部だぁ!」

 

一人が腰を捻り、短い鉄の棒を遠心力を用いて振るう。ガシャーン、という耳を突き破るような音と共に、窓ガラスが粉々に砕け散った。 窓を割るのは、自分たちがここを去った後、この家を誰も住めないような廃墟にするためではない。次にここへ踏み込んでくるツァウスト帝国の駐留軍を、一歩でも、一秒でも足止めするため。

 

彼らにとって、この家の主が冬の冷気に晒されることなど、考慮の対象外で、自分たちのことを優先することと、ツァウスト帝国の駐留軍の足止めだけが考慮対象だった。

 

一枚歯の木靴を履いた足が、ガラスの海を歩く。 サクッ、サクッ。 その軽快な音は、特殊な軍靴を履いた帝国兵には決して真似できない。彼らはこの珍妙な蹄のような履き物で、自ら作り出した鋭利な罠の上を、ガラスが砕ける音と共に闊歩する。

 

だが金銭を得たという成功感は家の外から響く『声』によって一瞬で凍りついた。

 

バラバラバラバラバラ、とテールローターが回転し、大きな逆方向に回転するローターが2つ重なって飛行する。

いわゆるヘリコプターというものだが、その形は少々異なる。

本来、反転ローターがあるのならテールローターは要らない。だが着いている。

なぜか?それは単純に、左右揺れの抑制だ。

 

作用反作用の法則でメインローターが1つだけの場合、ヘリコプター本体も回転してしまう。

ということでメインローターの上には逆方向に回転するローターが追加され、ここで本来はテールローターが無くなる。

 

が、しかし市街戦においては左右の揺れは致命的。それに、さほどこの地域は高低差のある建物が少ないのでコンパクトさ───────取り回しの良さを全て捨てて良い。

 

大きなスピーカーが機体から飛び出した速度計の棒の後ろに付いていて、さらに8つのサーチライトが機体下部で猛烈に輝いている。夜間も照らせる、偵察用の航空機としての元の軍隊用の仕様を感じさせるが今は真昼時。

 

ライトでガラスで包まれたベランダを猛烈に照らし、テロリストたちは自ら壊したガラスが原因で一時的に失明寸前のような状態になった。

 

「ターゲット確認。こちらShepard9!UTC 2350-11-12-11:32より攻撃を開始する。」

 

通信機越しではない。スピーカーが搭載された航空機から漏れ聞こえる。絶望的な、『感情を欠いた露悪的な』駐留軍の通告が聞こえてくる。

「テロリスト集団め!今すぐ伏せろ!法の名のもとにおいて、私の目の前で、残虐な行為を見逃す訳には行かない!貴様らは既に犯罪者だ!」

 

テロリストたちがそんな自分たちを強制的に鎮圧しようとする『横暴な態度』を取る駐留軍への憎悪を燃料に略奪を行っているその間、帝国の遠隔地支援チーム出身の駐留軍たちは、淡々と座標を計算し、既に確認されている住民らの被害状況をログに記録し、最も効率的な排除方法を選択していた。

 

 

既に屋内に侵入していた駐留軍が4人体制で部屋のハードポイントに突入し、隅までクリアリングを済ませる。

 

すると、Shepard9の通信が余計な雑音が一切なくイヤリングから聞こえてくる。

ジャミング装置などを持たないテロリスト集団は通信網によって速やかにほとんどが無効化される。このテロリスト集団は思想的にテロリズムが根底にあるのではなく、国家への憎しみが底にある。だからこそ辛抱強く堪えることができ、住民らからしたら不幸の極みだが、標準時を設定したツァウスト帝国のせいで同時多発テロを引き起こすことができるようになってしまった。

 

逃亡したテロリストは既に小規模だ!だが警戒を怠るな!306号室に突入しろ!テロリストが2人、ベランダ側から視認している!周辺に恐らく潜んでいるぞ!

 

すると、Shepard8から通信が入る。それは、大規模な反乱者の拠点を見つけたというものだった。

 

Bravo kiloの残党がそちらの建物に居る!全員を掃討しろ!これは捕縛作戦ではない!

 

2350年10月25日、Bravo kiloにて大規模な反乱軍の鎮圧があった。これは見せしめであり、大量の反乱軍が死んだ。

 

テロリスト集団として小規模なグループに別れ、反乱軍の下部組織である邪悪な反乱者どもが隣の地域であるBravo Juliettが逃れた……そう対反乱本部は判断している。

それは、Bravo Juliettの地区代表らも同じであり、対反乱本部の出撃命令を待ってこそいたが攻撃をすぐ出来るような迅速な鎮圧・掃討の準備が常備されていた。

 

これこそが駐留軍の本当の力。

 

306号室の扉は外れ、屋内に倒れていた。相当な力がかかったことを示唆していて、未舗装路もしくは近くのあぜ道を歩いた痕の床模様がカーペットにできていることもあり、山下駄の靴を履いた者が内部に潜んでいると分かっていて、そしてショットガンが撃たれた。

散弾ではなく、1つの重い球が撃たれるものだ。銃弾としてイメージされる先の尖った形状ではない。

 

「おい、住民は無事か!? すぐに保護しろ!」

 

突入した兵士の一人が、真っ先に床に伏せている市民のもとへ駆け寄った。

彼はテロリストの死体には目もくれず、震える市民の肩に手を置く。その手袋越しに伝わる体温は、先ほどまで部屋を支配していたテロリストの冷酷な鉄の棒の温度とは正反対のものだった。

 

「もう大丈夫だ。怪我はないか? 立てるか?」

 

背負っていた医療パックから手際よく水を取り出し、市民に差し出す。

彼らにとって、この掃討作戦の成功の定義は、テロリストを倒すことでもあるが、より大切なのは作戦内の掃討に固執することではなく、一人でも多くの無辜の住民を無傷で救い出すことにある。正義感にあふれている者でもなければ軍隊に志願することなんてしないし、祖国を守りたいというモチベーションを持つ者だけが潜ることができる。

そもそもツァウスト帝国において軍隊は志願制。軍縮も行われるが、警察官になったりそのまま労働者になったりとしてそのまま国民全員の屈強さに磨きがかかる。

 

「Shepard2へ、住民1名を確保。精神的ショックが大きい。直ちに民生支援チームをこちらへ向かわせろ。……あと、死体処理を頼む」

 

 

ショットガンの威力は強い。肋骨や脂肪層、筋肉繊維や皮膚など容易く貫通してしまうほど。

駐留軍以外、銃器は無い。もしあるのならそれは暴力の独占という国家統制の基本中の基本が出来ていないということになる。

 

住民らは異常事態を察知し、集合住宅から逃げ出していたが……3階ということもあり逃げ遅れてしまった住民は多くいた。

 

テロリスト集団によって殺傷されてしまった住民らもいたが、これ以上の反乱を止めるために駐留軍がいる。

 

正午にさしかかろうとする時間帯ということもあり、既に追い詰めたテロリスト集団は活動を鈍らせていた。

先月から駐留軍が追いかけ回し、3方向に別れては中規模なグループになって潜伏するのを繰り返した反乱者たちの群れはこんなにも、か細い。

 

屋内にいた6名はその後に殺傷し、反乱者の潜む地域を偵察機を用いて反乱防止策を展開していく。

 

 

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