「ケムリの畑を破壊しろ!まだまだあるぞ!徹底しろ!」
兵士たちは血眼になり、目の前の畑を見る。
わさわさと群生し、濃い緑に、黄色の斑点を持つ植物。
それは1種類しかない。
ケムリ。それは危ない薬だ。
強烈な鎮痛作用と、若干の陶酔作用を併せ持つその効果には依存性があり、古くから『戦士の草』として親しまれていた。
「花びら1つさえ残すな!絶対に燃やすなよ!」
ケムリとは恐ろしい効果がある。
それは自らが燃焼した時、「特別な煙」を残すのだ。
その煙を吸い込むと、多幸感と鎮痛効果が更に強くなるのだ。
だからこそ戦略物資として指定され、国の管理下で栽培される。
だからこそ高価で、密輸が絶えないのだ。
「何処からこの植物を持ってきた?」
尋ねるその姿はもはや尋常ではない。
このような事態が発覚した今、ほとんど確実に麻薬密売人が存在する。つまり地域に麻薬ネットワークが出来てしまっているということで、この草は根絶が難しいのだ。
「言え!お前は6人目だ!」
もう既に尋問を受けている相手の両手は重ねられ、槍で刺され流血している。
死ぬ間際なら、自白するはず。
だが自白しない。
「お前……!ケムリを使っていたな!」
先程からずっとこれだ。
ケムリの使用者は死を恐れ無くなる。
つまり、自白しないのだ。
「へへ、お前なんぞに誰が言うかよ!」
「ではもう一回転させようか」
槍の柄を回転させ、腕ごと捻る。
だがこれでも呻き声すら上げず、まったく真実を言わない。
これができる人間は存在しないはず。
つまりケムリの常習者で、例え死んだとしても自白することは無いだろう。
既に2回転目。だがその反乱者の瞳はギラつき、瞳孔が震えている。
これは麻薬戦争だ。絶対に突き止めて見せる。
青年の顔は、正義に満ちていた。
だが、それと同時に疑問が浮かぶ。
この領地は陸に囲まれ周りの領地も大量にある。それなのに麻薬密輸などする必要がないはずだ。
なにより、この領地は王室の直轄領が真上にあり、この領地を麻薬で攻撃するということは即ち権威への挑戦に他ならない。
だが思考している間に、既に目の前の反乱者は死んでいた。
「ケシの実にケムリ……なんてことをやってくれるんだ。これは立派な麻薬だ。オーガミツ共和国との医療品協定から近年外されたはずなのになぜこんな内地に?」
「いや、まさか…」
考えたくはないが、もっともありうる候補。
ケムリはツァウスト帝国が原産で、ケシはサザンクロス帝国の原産だ。
「精製拠点は今のところ、ないようだが必ずあるはずだ。」
「そしてその位置は……」
考えられるとしたら、王室の直轄領。
だが何のためにそんな事を?
「王都だ。王都近郊にあるはずだ!」
周りの騎士たちに激震が走る。それは王への不信を示すものだからだ。
「我が領地は王都への通過点。だから、拠点があるのは王都の外とばかり考えていたがそれは違う。」
「王都こそ麻薬組織の拠点なのだ!」
「近頃の霧による大飢饉で我が国は力が落ちた。だからこそ付けいられたのやもしれぬ。」
「王都への防波堤の役割を我が領は期待されているのだ、だからこそ密輸は止めらければならない!」
騎士たちは目の前の主の話に同調する。
いや、同調しなければならない。
なぜならば、彼らが使えているのは家門ではないからだ。
家門騎士ではなく個人騎士である故、忠誠を誓うのは個人が対象となる。
「王都に渡り、麻薬組織を必ず見つけなければならない!」
主の話を聞いた騎士たちは全員、乗馬している。
なぜならば、迅速に行動しなければならないからだ。
王都は国王と王室が管理しているもので、首都なのだ。
「私は書簡をしたためてくる。」
「60名は私に、残りの70名は近隣を偵察した後に境を越えよ!諸侯には後で話を通す。」
騎士は散開陣形を取り、合図によって散って行った。
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あなたは目の前の画面を眺めていた。それは海の色に似た、しかし澄んだ空のような色をしたスクリーンだ。
「お、そろそろ雨が降るのか」
そこに映るのは4次元時空で表された地図。
時間の進行と共に、雲の形が次々と変わっていき、豪雨となっている。
あなたは時間の連続性を知覚した。
それは、目の前が開けたような感覚だった。目に映るそれが未来でどうなるのか。それが実感を持って分かるのだ。
まるで新しい視点を得たようだ、とあなたは思った。
3次元の世界に留まらず、時間軸を加えた高次元的な視点を得たあなたは空を見上げた。
太陽が真上にある。だが、未来では傾いていて星が輝いている。
あなたは未来を見た。
すなわちそれは3次元空間と時間軸、つまり4次元時空の知覚に他ならない。だがそれは一方向的であり過去の時間を見ることは出来なかった。
紙を見た。
すると、いつの間にか机から落ちていた。
拾いあげようと思い、机の下を見ると、そこに紙はなかった。
あなたは混乱し、椅子から立ち上がった。
すると、まだ紙は落下していなかった。
あなたはそれと同時に疲労感を覚え、それ以上未来を見ることはしなかった。
現在を見ることよりも、未来を見るのは疲れる。
しかし、何度も試行すればいずれ手に取るように未来視が出来るようになるだろうとあなたは確信した。
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