女神「輪廻転生しろ」 ワイ「はい……」   作:まっすァき

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最も濃厚な2日

梅雨に入り帝国の南部では、ぱらぱらと弱くも雨粒が空から降っていた。

ツァウスト帝国南部は大規模な耕作地であり、州都の人口を支える基盤にして柱。

 

ツァウスト帝国の全盛期には合算して9100万tほどの食料を生産していたが、その数字のうちの1.9%はこの南部にて作られていると記録が残っている。

 

サンペール平原と呼称されるこの平原は、非常に平らでありなおかつ用水路も規則正しく並び、理路整然とした農地である。

 

背の高い小麦が立ち並び、晩夏の時期に瓜が生っていた。

遠くには大きな穀物庫が見え、農地の中には大量の農民がいる。

彼らは皆、ヒューマンやハーフエルフであり、それ以外の種族は見当たらない。

 

1年を通して、このサンペール平原は温暖である。

永久凍土は存在せず、夏にも雪が降るような厳冬の地が領土の約10%を占めるツァウスト帝国において希少な気候帯だ。

夏に乾燥気味になるものの、山脈の手前ゆえに雨も程よく振る。そして定期的に降る雨により豊作を結束されている地でもある。

 

「皆の者!交代時間だ!昼食を食べはぐったら飢え死だから絶対に着いてくるように!」

「点呼を行え!分かっているだろうが、それぞれ農民長は私の元に3回、短く光を送れ!」

「6回、長く光を送ったら全員来るまで捜すぞ!だから迷子になるようなマヌケは居ないな!?」

 

エルフの監督は荒れていた。

小麦やトウモロコシの高い茎は迷子を作りやすい。だからこそ点呼は大事なのだが、今日に入ってから19人も迷子が発生している。

 

監督も、正午で交代時間なので最後の業務時間に捜索で昼休みを潰したくないのだ。

監督は消耗しきっているが、それでも職務の責任を果たさなければならない。

『宣誓魔法』で契約を結んでいるからだ。この宣誓魔法で契約を行うと、宣誓内容を履行できなかった場合にどんな罰則も与えることができる行使主の自由度がある。

 

「よし……行方不明は居ないな」

 

ピカッピカッピカッと短い光が、昼間でもわかるほどの光量で届く。それを見た監督は右手首に巻きついたスピーカーの紐を解き、車輌のカゴの中に乗せて代わりに『銃』を手にとる。

 

ツァウスト帝国において、銃とは狼煙の延長線上に存在する技術として古来から使われていた。弾丸を放つ道具ではなく、むしろ大砲に近い用法である。

 

地面に底部を突き刺し、『集合』と書かれた麻の球体を砲身に込める。

携行できるように作られているが、反動が60kgあるのでいくらエルフといえど膝に大ダメージを負うことになる。

ちょうど太ももにフィットしそうな感じに湾曲しているが、それは固定用の底部なので膝に当ててはいけない。

 

勘違いした者が毎年発生するため、このことは広く周知されていた。

 

5秒後に大きな爆発音が鳴り、空中でその麻袋は破裂して赤色の顔料が空をキャンバスにして雷のように走った。

花火に似た光景だが、その本質は粉であり塵の集合体。

 

これは信号弾としての役割をはたす袋なのだ。

 

「帰るぞ!」

 

監督は喜んだ。1日に6時間も業務時間が割り当てられるので、抱える監視作業よりも退屈が苦痛だった。

 

「ふう……ついてきてるかな?」

 

 

監督が振り返ると、直列に並ぶのはバイクの群れ。バイクと行っても車輪は3つあり、2輪バイクではない。

 

畑のような、特殊な土地の移動手段として改良の需要が非常に強かったため、バイクがツァウスト帝国の農民の移動手段として主流になっている。

 

バイクに兵士が乗り、電撃戦でツァウスト帝国は多数の兵士を運んでいた。高速で移動できる車輌の出現により、戦術は大きく変化した。

 

一列縦隊と呼ばれる名前の移動方法であり、狭い橋の通行などで用いられる移動だったが今は畑の移動手段になっている。

 

それに現在は魔導列車で何万という単位で兵士を輸送するのでバイク兵は廃れた。

 

だが多数のバイクは廃れた時期に農民用となって改良が続いた。陳腐化した後も泥炭地の多い西部平原の移動に使われたりもしたが、最後のバイクの大々的な活躍はそれが最後になったのだ。

 

「よし、直行しよう」

 

何kmも先の食堂に向けてバイクを動かしているが、農民たちや監督の顔は明るかった。

まだ近い方であり、このサンペール平原を横断するには何百Kmという数値であるのでマシだと考えているのだ。

 

百分の一の道のりは素晴らしい!

 

 

「うーん、最近はバターがどんどん増えてきたなあ」

「ミルコーノの付け合せにバターがあるなんて素晴らしい……でも量が多くないか?なんでこんなにバターばっかりあるんだ?」

 

食堂の机の上に置かれた竹籠の中には、大量のバターがあった。人差し指の第二関節まで届こうかというサイズのバターはツァウスト帝国らしい、『大きな』バターである。

 

文化として帝国は、食品に余裕が無ければ成立しない文化がある。それが『巨大さ』だ。

より大きなモノを選び取り、結果としてどんどんと缶詰の容量が増えたりする。

 

特にそれが顕著なのがバター、乳製品だった。

 

大陸の半分を版図にするツァウスト帝国はその性質上、牧畜が非常に盛んであり、700万匹以上の豚や羊、牛などが存在するとされる。

 

「朝昼晩、全部がトウモロコシと牛乳製品ばっかりで飽きるなあ……」

 

それは非常に贅沢な悩みだ。北方の冷たい大地は耕作に適さず、もし畑を作ろうものなら土に根がつかずそのまま枯れて大不作となるであろうがここは南方。

向かい側では乾燥した冷たい風が山脈を超えて吹き降ろすが、こちら側では海風の湿気が雨として降る。

 

「脱脂乳ばっかだし、普通の水をほとんど飲んでないな」

「まあ不味くて酒の入っていない水は飲めたものではないが、紅茶でもいい……甘くない水分が欲しい」

 

ツァウスト帝国は生活習慣病というものが社会問題になっている。富裕層が労働をせず、富を蓄積するために肥満が増えたり糖尿病という概念が発見されたりしているのだ。

 

逆に、大規模農園の労働者などの労働者階級が働き続け、富を放出し経済を回しているという状況になっている。

 

富の機能不全とでも言うべきか……更に、次々と独立されるという危機的な植民地支配の根底からの変化という状況に陥ったツァウスト帝国は、国内産業の市場は非常に大きいのに輸出が進まず物価が下がりに下がった。

 

「はあ、物価が下がって生活は楽になったが給金も下がって苦しい毎日だ。なんであんなに苦労して学問院まで通ったんだろう?」

「たくさんの紡績工場を経営する大富豪が学生時代の夢だったっけ……何のために経済を学んで、6年間も経営科にいたんだか分からない」

「公務員になってもツァウスト帝国は今、たくさんの公務員をクビにしてるし……再就職先がここじゃあ貯金も難しい。まだ就学金も返し終わってないのになんでこんな不幸なんだろう?」

 

ツァウスト帝国は戦費や賠償金でとてつもないインフレーションに追い込まれていたが、今のデフレの深刻化によって打ち消された。

だが植民地や、属国の『執政国』たちが抵抗していて軍を派遣したり……緊急徴兵で大変だ。

 

斜陽も斜陽だが、監督はこの国から逃げるつもりはなかった。

 

4億人いた人口は独立運動で約2億人まで減って、難民として大量に本国からも流出している。

 

そんなこと知ったこっちゃない。

なぜなら宣誓魔法であと8ヶ月間は監督としてこの場所で働かなきゃいけないし、そもそも思い入れの深い職場を捨ててまで亡命なんて企てないのだ。

 

悪く言えば小心者、よく言えば豪胆。それが監督の性格だった。

 

 

 

「なぜお茶の文化があるのか理解した。」

「ただの水道水は不味くて、飲めたもんじゃない」

 

「……でもこれ、茶葉の香りで味がわからんな。わりと多くミネラルウォーターを入れたはずなんだが」

監督は自室で悩んでいた。

同僚からの貰い物だが、この茶葉をどうしようと考えていた矢先に思い浮かんだ。

そうだ、自分で淹れれば良いんだ。

 

専用の磁器などないのでショットグラスに買ってきたミネラルウォーターを注ぎ、茶葉を沸騰したショットグラス内部の水に付ける。

そして『攪拌魔法』で茶葉を均一に混ぜる。

 

そして出来上がったのが劇物なお茶。

 

なぜ煮沸魔法で沸騰させたのか。加熱魔法で良かったものの、そのお陰ですでに机の上には急激な熱の変化に耐えられなかったコップだと推測できるほど大きなガラスの破片が転がっている。何をやらかしたのか5歳児に推理してもらっても明白な事故現場だ。

 

「うーん……確か蓋をくるくる回してた作法があったような気がするけど、蓋がないしな」

「お湯を磁器の周りにぶちまけて香りを出してたけど……あれと茶葉は同じはずなんだがなぜ出来ないんだろう?」

 

「味がめちゃくちゃ渋い」

 

「子供が売るレモネードでも飲んだ方がマシな味だなこれ。普通に酒でも飲めばいいや。」

 

「この茶葉は輸入品だから今はめちゃくちゃ高いけどそのうち安くなるはず……その時にまた挑戦するか」

 

 

監督は失敗した原因を知らない。

何故ならそれは水の質や作法の欠如によるものだ。

 

ツァウスト帝国は硬水だし、お茶を輸出している先のサザンクロス帝国は軟水。 これによって大きく味が変化する。

 

お茶というのは味をそもそも度外視しており、香りを楽しむ方向性の飲み物である。

ツァウスト帝国で独自に発達したお茶とはかなり違う。

 

おとなしく家にある紅茶を飲んでいた方が良いのだ。なぜならその紅茶はツァウスト帝国の水に合わせた硬水用の紅茶であるし、砂糖か蜂蜜でも入れれば良いだろう。

 

 

「お茶に塩がそもそも相性が悪いのかな?」

「うーん……でも確かに少しだけ塩を入れた方が良くなるって聞いたんだがなあ、嘘だったのかな?」

 

「指先ほどって言ってたし4g入れたんだがなあ」

 

お茶に対するめちゃくちゃな冒涜である。

水を吸った乾燥茶葉に塩やお酢を揉み込む方法が確かに存在するが、それは冒涜的作法。

素直にお湯だけにしておけば渋みがここまで出ることはなかった。茶葉の細胞壁がズタズタである。

 

「サザンクロス帝国の茶葉は不味い」

 

「おとなしく酒でも飲んでおくかあ」

 

 

ベット横の扉を開け、取り出したのは正真正銘本物の酒。

赤色の蝋で封がされたこのお酒は、正式に言えばワイン類であり、ビールや発泡酒などではない。

 

だがツァウスト帝国の言語においてはこれを区別する言葉がないのでこれはむしろ言葉という概念上の不便が顕著に出ている1例である。

 

ワインという文化そのものが海外のものであり、酒造が前提の文化圏においてワインというものは存在しない物品であるためだ。このように、言語の差というのは認知能力……特に識別に大きな弊害が出現する。

 

 

そして監督は新しく、とても大きな器を取り出した。小さな壺か何かと見紛うようなサイズのグラスは、なんと個人用だった。

 

そしてワインの蝋の封や中に入っているコルクを気にする事なく、逆さまにする。

次の瞬間、ワインの首に湾曲した刃を当てたかと思えば特徴的な耳を刺す音と共に火花が散り、ワインの首は吹き飛んだ。

 

床にワインの首が転がるが問題ない。床なら靴を履くため踏むことはないのだ。

 

 

「うーん……まろやか!真昼間に飲むのはこれに限るね!」

 

 

乾燥機の中から大きなキノコを取り出し、『切断魔法』で切っていく。

普通にヒューマンなどの種族にとっては毒キノコ以外の何物でもないのであまり売買はされていないが、エルフなどの種族にとってはメジャーな茸だった。

 

毒性が強いキノコに当たり、舌が痺れて喉に詰まり、窒息する事故がたまにあるがそれでも美味には勝てない。

 

生のキノコの方が新鮮で美味と言われているのだが、燻した後に乾燥させた方が美味しいと監督は思っている。

 

だからこそ監督は毒に当たったことがない。そもそもエルフは免疫力が強いし、内蔵が14つもある関係上、肝臓も複数あるためちゃくちゃ酒に強い。

 

だからこそアルコール度数が高いお酒が好まれ、ワイン類を好むエルフは少ない。

 

酒豪の種族と言えるのは間違いないが、それでも毒には弱いのだ。

というか毒で死なないのは生物として逸脱しすぎているのでさすがにエルフでも有り得ない。

 

「うーん、バターを合わせてもおいしいな」

「バター単品でもわりと行けるかもな?今度試そう」

 

 

 

「ゼラチンパウダーでいくら何でも固めすぎだろ」

「なんなんだこれは、呪物?」

 

監督は休日に街を出歩いていた。

食料品の値札に44%offなどがついているのを見て、ふと視線が誘導されるがそれよりも大型冷蔵庫の中に入っているモノが問題だった。

 

 

『ゼリー錠のミルコーノ』

 

身体尺で言えば拳ほどだろうか?それが、ゼリーとして固められ、無残にも脱脂粉乳とトウモロコシの粉の混合物となって中心でぶつかり、パッと見分離しているがちょっと混ざっている。

 

 

「100%offとは……?何かの実験じゃあないだろうな」

「『溶けたチーズを載せると美味』『蒸したジャガイモを混ぜた牛乳にぶち込むと味変』……?気が触れたバナー文句だな。いくら経済恐慌とはいえここまでわが祖国は狂ってしまったのか」

 

「『プアメニュー』……直訳すると貧乏人の品目か。失業ラッシュの世の中にはこういうものも必要なのか?」

 

「『竹輪をイメージした魚ゼリー』?なんだこれは、仮にも食品なら処刑風景の風刺でもないんだし内部に刺身が固められたゼリーとか食いたくない……何だこれは。本当に食品として消費させるつもりがあるのか?」

 

「くそっなんだこの街、ゼリー製品塗れだ!」

「輸出強化で食料品は高くなっているけど焼け石に水だろう……さすがに苦しすぎる政策だ」

 

「ミルコーノはわりと美味しかったがもうこれは狂気の産物だろう。失業率11%の絶望的状況がこんなことを誘うのか?」

 

「竹は確かサザンクロス帝国の植物だったな……こんなおぞましい見た目なのか?笠とか籠とかのイメージがあったんだが

ちくわとやらは魚肉を捏ねて練ったものなはずだ。淡白な味だったが……この鮭の切り身が浮遊するゼリーとは似ても似つかなそうだ。」

 

「100%offなら買うけど99%offなら買わない見た目だ」

「子供の絵より荒唐無稽な光景が目の前に広がっている」

 

監督の常識において存在しない物品がいくつも並んでいた。もはや食品としてではなく物品とカウントしたほうが良さそうなものが並んでいるのだ。

 

道には衣類が溢れ、木靴が橋の上に捨てられている。

 

ここまでセールされていることは珍しい。原因は明白だが、それにしても一体何があればここまで物価が下がってしまうというのか。

 

 

そんなことを思考している間に監督は、信じられないものを見た。

ゼリーに封印された切身を大量に袋に突っ込んでいる者がいたのだ。あんな明らかな廃棄物処理場に送られてそうな見た目の食品を持っていくやつがいたとは。

 

「おい!それまさか食うつもりか?どう考えてもヤバいぞ!?」

 

「おお?いや僕は食べないよ」

 

黒髪の少年が大量のゼリーを掴んで袋に入れて行く。その勢いはとまらず、片っ端から突っ込むも同然の動きだ。

 

まるで狩人のような目つきで周囲の商品を全て袋の中に押し込んでいくが、あまりにもその商品がゴミのように見えて監督は声をかけた。

 

「じゃあ誰が食べるんだい?」

「ゼリーは冷やさないと直ぐに腐るじゃないか」

 

 

「うちで飼ってる『井戸』がさあ、好きなんだよ。」

 

井戸。水を組むための装置だ。いったいなぜそれが『飼う』という言葉に繋がるのか。

 

そう思った監督は少年に尋ねた。

 

「井戸が好きってそんな……まさかバリバリ食べるって訳でもないだろう」

 

「『幸運』が湧くんだよ。いつからあるのか知らないけど、井戸に食べ物を投げ込むと幸せになる」

「こっちに来るかい?きっと幸せになれるよ」

 

 

なにか異質な違和感を感じこそしたものの、監督は少年について行った。

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

「これが井戸?何もないじゃないか。」

 

監督は困惑しながら子供に聞いた。金銀財宝がある〜とか、明らかに嘘だと思って、子供の言う事だとしてほとんど聞いていなかった。

 

「いいや、『幸運』があるんだ」

「それは今ここにいるんだよ」

 

そう言って監督の方を指さす少年に、監督は驚いた。

 

「はは……確かに、ハッピーになったような気がするね」

 

その返答を聞いた瞬間にニッと口角を釣り上げて、少年は姿を変えた。

 

「!確かに聞いた。お前は今、幸福になったと、確かにこの穴の前で言った!」

「ふふ、バカなやつめ!」

 

井戸の穴に向かって突き落とそうとする子供。

 

完全に無警戒だった故、監督はいきなりのボディーブローに驚きを隠せない。

だがいくら腕が伸びたとはいえ子供の質量で大人のエルフを動かすことはできない。全身が筋肉の塊であり、体重140kgで身長2.3Mの監督を揺るがすようなことは不可能である。

 

「鳩尾狙いとは中々にいい筋してるじゃないか、コロシアムに出れそうないい特技だ!」

 

コロシアムに出れそうという言葉は本来なら、めちゃくちゃな差別発言であるが、監督はテンションが上がっているので気づいていない。

まあそもそもエルフという種族柄、差別と征服がデフォルトで染み付いているので仕方がない。

 

 

右腕で少年改め正体不明の怪物を掴み、そのまま腰を捻って斜め上に振り上げてから地面に叩きつける。

そしてその衝撃で背中に衝撃を加え、バウンドしたところで横方向に振り回す。そして伸縮自在なその伸びきった腕を支点にして木に巻き付けていく。

 

「片腕だけでデタラメな腕力しやがって!手軽な生贄になると思ったのに!? 」

「ふざけんな!まさか握りつぶしてくるとは思わねえ!どんな握力してるんだよてめえ!」

 

怪物の五指の骨は全て折れ、肋骨やら頚椎やら背骨やら、折れてはダメな部位の骨が衝撃により破損した。

硬い樹皮に腕が食い込み、とてつもない摩擦力で全身がちぎられそうだ。

 

 

そして、監督は『発破魔法』で爆発させてダイナマイト級のエネルギーがぶつかったことによりその怪物は爆死した。

 

「念の為にもうちょい爆発させとくか」

 

石ころを適当に3つほど拾い、倒れた木の向こうとすぐ裏側、そして表側に投げ込む。

 

すると先程より大きく爆発したことにより木は完全に吹き飛び、勢いよく吹き飛んだ木片が頬を掠めた。

 

 

「何だったんだ今のは……」

「この井戸とやらが諸悪の根源だな!」

「こっちは日曜日だから仕事休みだったのによぉ〜!よくも怪物が偽装して社会に紛れ込んでくれとるわ!!」

 

監督は井戸の下を覗いた。

真っ暗な闇が広がっているだけだったが、それは魔法を使うと簡単に解決できる。どうするのか?

 

 

「井戸は周りが崩れて埋まったら井戸じゃない」

「地盤ごと爆発しろ!そーれ!」

 

木片数百個に触れ、脚で井戸にホールインワンさせる。

するとドゴーン、ドゴーンと轟音が地下で鳴り響き、狼の唸り声のような音がするが気にせずに井戸に蹴りこんだ。

 

 

「おいやめろ!崩れてる!おい!ちょっとまて這い上がれない!」

 

井戸の底では、怪物が蠢いている。

沢山の毒虫がお互いを食い合い、放棄された村の枯れた井戸という閉じ込められた環境が蠱毒を促進し、やがて怪物となったのだ。

 

そんなことを一切知らない監督は、どんどん爆発させていく。

 

 

好奇心から始まり模倣に繋がる。そして言語を理解し、理解しようとする。そして理解が深まれば、餌となる生命を食べるために戦うようになる。そして危険性を学習すれば、おびき寄せる方向にシフトする。

 

 

怪物は時間をかければかけるほど危うくなっていくのだ。

だからこそ早急に井戸の底から怪物の元凶であろうものを排除する。

 

怪物の恐ろしさは誰もが知っている。

 

命乞いをする1匹の豚が起源とされるが、怪物の言葉は聞いてはならないという教訓話は多くの物語や民謡で幼き頃から触れ合っている。

 

 

そして監督は怪物を退治した!

見事なまでの爆殺。生き埋めで這い上がれず確殺をキメた!

 

決してスマートなやり方とは言えないが……少なくとも効率面なら最良と言えるだろう。トドメに丸太を持ち上げて井戸に封をしたが、これでもはや這い上がるどころか生きることすら出来なくなった。

 

脳筋の極みだが、むしろこのくらい簡単に解決できたほうが良いのだ。相手のルールに従うなど無駄無駄、確殺を決めるのが最も手っ取り早い!

 

 




食べ物の元ネタ

ミルコーノ…世界恐慌の時のアメリカで食べられていた脱脂粉乳とトウモロコシの粉を混ぜたもの。本家のやつはミルコルノという名前だったり、コーンポリッジという名前だったりする。
複数の食べ物を混ぜたイメージの架空の食べ物で、名前はミルコルノを由来としているけど見た目は少し違う。

お茶……中国などの蓋碗(ガイワン)の作法
サザンクロス帝国は軟水という設定があるので登場させた。

子供が売るレモネード……元ネタはアメリカなどで子供がビジネスを学ぶ時、小規模に自家製レモネードを路上販売するもの。ほとんど元ネタ通りなのでGoogle検索したら出てくるだろう。

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