M60A4、通称パットン。
丘に隠れ、ハルダウンを決行している。なぜこの異世界において無敵の装甲を持っている車両が隠れなければならないのか。
それはひとえに、『魔導列車』が関係している。
魔導列車は通常の列車のように、鉄道の上を車輪で行くのではない。そもそもとして車輪がメインの走行方法ではなく、補助として着いている。
では何の補助か?
それは、改軌である。レールの幅は永久凍土の多い地域から秋の泥濘地になるような地域、そこから下がって安定した花崗岩質の土壌……さまざまな環境があるのだ。
なにせ征服した土地が東西に大きすぎて、最西端の西部平原から最東端の東部大森林までに日が沈む速度が変わってくる。
そんな地域を繋ぐ列車である『魔導列車』は速度が求められてきた。ではどのようにして速度を出すのか?
答えはひとつ、『浮遊』である。
測量用だった水平魔法は、浮遊魔法に組み込まれて大きな車体を持ち上げる。
流線型の車体は風を割くのではなく滑らせて運行する。
これこそ魔導技術の精髄であり、さまざまな工学的知見をもってして完成した列車。
車輪などの摩擦を生む存在に頼らずとも浮遊し推進することで空気抵抗のみが速度を落とす障害になる。
その空気抵抗も、風魔法で常時調節することにより自動的に43%以上も削減されており非常に効率が良い。
燃料源を積む貨物用空間は『空間拡大』で省スペース、客を積む客室も『空間拡大』で1つの客室につき600人規模の収容可能人数を実現する。
魔導工学の奇跡と魔導列車が呼ばれるのはこれが原因だ。ツァウスト帝国は、この魔導列車を1時間のダイヤで全地域に運行しており、その工業力を思わせる。
その魔導列車に複数の旋回砲塔を積み、高速で移動しながら圧倒的な口径の火力を実現するというのが列強国としての強さを表す風景である。
まともに直撃すれば破壊は免れず、だからこそ被弾を避けるためにハルダウンを徹底して車体に攻撃を加えるのだ。
「あと何発だ!?」
「弾切れの方が早いぞ!ここから前進できない!」
自動装填装置によりこの戦車は装填手が不要であり、通信兵と運転手、その他の乗組員といった構成になっている。
なぜこのように慌てているのか?
それは、硬直した戦線を打破する事を彼らの指導者が宣言したからだ。
「クソ、なんだあの砲塔!」
彼らが浴びているのは『機関銃』。ただの軽機関銃ではなく、口径を.50までに変えた立派な重機関銃と言ってもいいものだ。
戦車を鹵獲されて内部構造を完全に理解されたメイプル宗教国の兵士たちは窮地に陥った。
銃座が上部に取り付けられ、銃弾が常に戦車の上部に当たる。貫通はされていないがガンガンと音が響き乗組員たちは不安になる。そして他の戦車と連絡を取る車体の上のレーダー類が機銃掃射で壊れてしまい、通信ができないのだ。
ならばすこしでも自動機銃で魔導列車に弾痕を残そうと、機関銃士はレバーを前に倒してみるも動かない。
とある魔法、『空間縮小』を利用した給弾方法だが……これが給弾不良を引き起こした。
空間縮小や空間拡大などの魔法は維持に使う魔力が常に微量ながら定量的に上がり、とてもではないが日常的に使うことは不可能だ。
空間縮小は内部空間をそのまま圧縮しており、空間的な広がりが下がり物理的密度が上昇する。
空間拡大では内部空間を圧縮せず空間的な広がりを上昇させ物理的密度が下がる。
この違いが大切だ。容積を広げるために空間を拡大する魔法なので積める銃弾が違う。
特に、一定期間だけ展開し永続的に使用する必要がない場合は『空間に膜を形成する』という手法が用いられる。この膜は衝撃で破れやすく、今回のような反撃がありうる場面では用いられないが……
空間に安定した骨組みを作るのと膜を作るのとでは展開する時のコストがとてつもなく増大し、空間に膜を作る方を使ってしまった。
外部空間と接続し、膜に穴が空いた時に空間的な密度は均衡を取るために境界で大きく可変する。これが原因となり給弾不良を引き起こしたのだ。
そもそもとして何千発も打ち込まれたら装填できたとしてバレルが曲がってしまう。
これが原因となり、どちらの場合でも機関銃士は上部の自動機銃の発射レバーを倒しても撃つことができない。
一方、魔導列車の兵士たちは優雅に酒を飲むほどの余裕を見せる。戦闘中に酒を飲むのは軍規の緩みがあるが……現在のツァウスト帝国は軍部が皇帝を超えるほど強くなっているので、実質的にクーデターが発生したようなものだ。
現在のツァウスト帝国の皇帝は退位こそしていないが実質的な統帥権は軍司令官が握り……権力の窮地なのだ。
「機関銃の弾はまだまだある。的がせっかく沢山あるんだから派手に撃とうぜ!」
若者……とギリギリ言えるほどの年齢の兵士が隣の機関銃士に話しかける。
たまに戦車の砲弾が飛び、後方の旋回砲塔が殺られることはあるが高速移動中なので前方にいるこの兵士にとって問題はない。
魔導列車は風魔法で空気をどかし、真空の中を進んでいく。
もともとは空気に重さがあるのか証明するために作られた魔法だが、風魔法の1つに分類されているこの魔法は極めて優秀で魔導列車の至る所で使い回されている。
「そっちこそ!」
重機関銃の反動は銃座に流れ、車体に流れ、浮遊魔法による自動的な反動軽減によりほとんど動かない。
水平魔法のおかげでいくら一方向にばかり弾を大量に撃とうが関係なく水平を保つために出力が調整される。
ガバナーと呼ばれる役割を果たす魔法式は古代の水力製材所が起源とされ、当時の主要なエネルギーであった川や蒸気機関などに広く用いられた。この魔法式の発見の以後と以前で魔導工学は変わるとさえ言われるほどの魔法式であり、現代魔法陣のあらゆる部分に使われている。
出力の自動調整がなければ現代の全ての魔法陣は破綻すると学術誌の隅を飾るほどだ。
「へへ、まだまだ余裕だぜ!」
「うおおおおおおおおおおお!」
兵士たちは奮い立たせ、旋回する砲塔に合わせて機関銃の向きを変える。機関銃座は浮遊魔法と水平魔法により浮かせられ、同様に反動がほとんど無い。
戦車の砲塔を狙って上の射角から一方的に打ち続けるが故に、レーダーの多い上部を破壊していた。
塗装を剥がし、レーダーを破壊し、自動機銃を破壊する。
自動機銃は1つだけ着いているが基本的に戦車の砲塔より上に着くことが殆どだ。それが災いして魔導列車という物理的に縦幅が高い構造物からでは戦車の位置が丸見えとまでは行かないがほとんどバレている。
いくら丘があるとはいえ……水平方向から撃たれているわけではないのでハルダウンも無意味なのだ。
魔導列車の機関銃は打てば撃つほど銃座自体は後退するが、同時に元に戻るように調整が働いている。そしてなぜ全体として浮遊し、設置点がないのに銃座が魔導列車と同じく動いているのか。
慣性の法則……とてつもなく古くから知られてきた物理法則。ツァウスト帝国においては物理法則とは魔法法則と同等の存在であり、世界を規定する絶対的な法則だとかなり昔から考えられてきた。
物理法則は魔法法則でのみ乗り越えることが可能であり、2つの主要な学問である 物理力学と魔法力学はこの法則の差によって生まれるものだと証明された。
熱力学の第1原則も第2原則も魔法であれば超越することが可能だ。
だからこそお湯を温める魔法が存在するし、魔法永久機関が実証されている。
物理法則に則った永久機関の探究は古くからあるがあまり成果が出ていないが……魔法を組み込むことにより半魔法永久機関となり、永久機関を実現させることが可能となる。
物理法則だけでは永久機関が実現しないのかどうかという物の答えを探す学者は多くいる。あまり成果こそ出ていないが、世界一の学問の国と自負するだけの事はあり未知の領域にも投資が成されている。
その段階でエネルギーや質量、魔法エネルギーについてもかなり研究が進んだのだ。
質量はエネルギーと入れ替わることが可能であり、それは魔法エネルギーこと魔力によって実現することが出来ると実証されていて。
魔力というのは世界に存在する『魔素』と呼ばれるものであり、この魔素の化合物に相当するものが魔力なのだ。
魔素にも種類はあるが、まあ複数の元素からアミノ酸ができ、ATPになるようなものだ。
魔素>魔法エネルギー>質量>エネルギーの順番で生成することが可能だ。魔素があれば魔法エネルギー……魔力ができ、魔力があれば質量を生み出せる。質量があればエネルギーを生み出せる。エネルギーがあれば熱や運動を発生させられる。
基礎研究の偉大さがよく分かる。魔導工学というのは根本が世界を解き明かす探究心で出来た夢の塊であり、世界の謎を攻略する好奇心の産物。
だがそれは同時に恐ろしい武器へと変わってしまう。発破魔法は最初、文字通り坑道の岩盤を発破することが目的で生まれた。だがそれが『対象の物体を何であれ爆弾に変える』ことだと気づいた時、戦場から名誉は消えた。
足元に転がった発破魔法の込められた石ころは簡単に置かれ、踏んだ瞬間に爆発する。最初は地形もろとも消し飛ばす威力だったが負傷兵を生むためにどんどん弱くなり、手足を吹き飛ばすだけの火力になった。
手榴弾というものが生まれ、中身の鉄球と容器の破片が発破魔法によってばら撒かれるようになった。
それらが合体し、近くの石ころを踏んだ瞬間に前方の箱が1M飛び上がって何百もの鉄球を発射するようになった。
ある学者は言った。『戦争は美しい』。技術の進歩を齎す戦争を賛美する学者や軍人、若者たち。
ある皇帝が言った。『戦争には魅力がある』。宣言通りに侵略し、南の農耕に適した領土を手に入れ、人口をついには4億人にまで到達させた。
ある皇帝が言った。『戦争は学問を助ける』。学者たちは保護され、義務教育が行われ、技術者が大量に生まれた。
ある皇帝が言った。『戦争は富を生む』。大量の税金を属国から巻き上げ、資源を構築した。
まさしく千年王国と言って良い歴史を積んだ栄華は、はるか昔から綿のように連なって構築されていた。
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「何!脱線だと!?」
前線で発生した大事故。それを聞いたツァウスト帝国の皇帝……ツァウスト31世は驚いた。
脱線するのはありえない事だ。だが、次々と同じ事故が発生している。
「原因はまだ分からないのか……?」
文官たちに聞けども、その返ってきた反応はあまり良くなかった。
「陛下……残念ながら、どの車体にも問題点が見つかっていません。ですが、事故発生からまだ7日。原因究明はまだ進みます」
たった7日 そう思うことは皇帝には出来なかった。
自らの脈々と続いてきた血統に誇りを覚えながらも、先天生得のこの体には不具ばかり。
このような壊疽も、治すことができない。いや、治すことができないと言うべきか。
成長に伴って私が左足の骨は常に激痛が走るようになった。学問を修め、治療法を古代の書物にて探れども、家系図をみても分からなかった。
このような問題をどうにかしなければならぬ。
そう思い、前帝に聞けども分からないと答えられた。
31世は部屋にある鬹などの磁器を見つつ、目の前の部下にどうしようかと悩んでいた。
防衛政務官が実権を握り、今いるのはほとんど幽閉専用の部屋。情報が入ってきてもそれが本当なのか分からない。
政務官達の中でも、反対派の中核だった防衛政務官は……私を忌々しく思っていたんだろうか。
そうでなければ由緒ある皇帝に対してこのような仕打ちが叶うはずも無いし、全くもって酷い。
税金を海外の国との借款の返済に使ったのだ。その重要性の分からないような国民に頭が痛くなる。
防衛線の構築もちゃんと命令したのに何が悪いというのか。国の間での借金は早いうちに返さないとどう考えてもダメで、民間人がやる金の貸し借りとは階層が違う。
そんなことも分からないような愚かな国民ばかり。本当に腹立たしい。
経済圏を離脱したのは世論に合わせたもので、もう共通貨幣を向かう必要も無い。だから失ったと捉えて反対してくる民衆はおかしい。二律違反だと自分で気がつけないのだろうか?
それに累進課税を強めたのはそうだが、消費税も上げた。だから家計が圧迫されると困るという民衆の意見も分かるがそれはそれとして公共物にも投資したのだから良くないか?
義務教育と新技術への投資で常に資金に流動性が生まれるから富が固定化されるよりは良いだろう。
財閥解体した時も似たような不満を言われたが、あれは富の一極集中だけではない。大量の土地を個人のグループが所有するということがどれほど危険なことか。
将来的に見て明らかに危険だったから排除したに過ぎない。
国民は税を納め、国のために働くから臣民なのになぜ税から逃れて財閥が解体されないと言うのか。
皇帝の意見に反対できるような個人が国内で強い影響力を持ちながら国内に存在するというのはあまりに過ぎた傲慢だし、当然の帰結じゃないか。
皇帝はそんなことを考えながら部屋の椅子で応接していく。毎日のように情報がやってくる。1本足の列車がレールの上を走ってやってくるだのと言っているがそもそもとしてレールの上をそのやうな列車が走っていられるものか。浮遊魔法を使うのはそもそも勾配が大きすぎるからで、国内のレールは勾配差が2〜4%以内に収めてはいるがそれ以上は無理だ。
山を削って貫通させるのは落盤の危機を招くし、迂回をするのを選びたい。だが速度的にカーブをする円の直径がおかしくなるし、そうなると山脈などの場合は谷などの切れ目が列車の密集地になってしまう。
都市部はただでさえ過密が進み、列車を毎月10両作っても追いつかないと言われるほどだ。通常の12倍のダイヤで運行する、分刻みの世界では移動時間が命。
そんなことになれば実質的に費用がとてつもなくなるし、まずそこまで敷設するのに経済的な大きな混乱を招くだろう。
そしてパノプリヌンから賠償金請求が来て条約に調印すれば、インフレーションの波を引き起こし、直近でもこの影響でインフレ率を1.44%も上昇させた爪痕を残している。当時は支払いのために増税を乱発して兄は辞任した。
それ程までのなんとも酷い賠償金の額。
そして、現在進行形でメイプル宗教国とは休戦したはずなのにまた開戦し、敵の戦車が浸透を止めない。だがそろそろ大きな『壁』に当たっているはずだ。
いくら数台、横転させたとして魔導列車に勝てるはずがない。
魔導列車はまともに運用すればどんな敵でも跳ね返せる。だからこそ歴代皇帝たちが何十万両も作っているのだし、いくらでもスペアがある。レールは方向転換の時しか要らないし、基本的にレールの上を走ることを想定されていないから、鉄道が自由に曲げられる。その優位性が12世紀ごろから証明され続けている。
初期の魔導列車は接地車輪を使っていたが浮遊魔法を隣国……ああいや、海を隔てているから海外か。
海外から輸入してからは話が変わった。
超巨大な8枚羽を最適な角度で並べ、とてつもない速さで回転させることにより推進力を得る。
この時に使うのは乱流の1部の再利用や車体の形状で車両下部へ発生させているダウンフォースであり、車軸を直接回すよりも効率的に魔力を節約しながら直進できる。
まあ最も、これは充分な初速を得て、真空化する前の段階だからこの後は推力噴射に切り替わる。
浮遊魔法は現代を支える魔法で、その強さは完成系と言える。そもそもとして今の垂直昇降機というのは魔法があってこそ成り立つが、別に機械だけでも作れないことはない。
そもそもあの国の環境はおかしい。
モンスターが大量にいて陸は荒地、海は荒波で荒れ狂うというのは根本的に国家としてやっていけるだけの潤沢な資源がなければ不可能だ。
パノプリヌンが機械ではどれほど優れてようとあの国は機械に重点を起きすぎて魔法を軽視している節がある。
少数の国民しかいない国だからこそできる荒業なのだろうな。魔法永久機関の魔導工学を輸出し、CNCフライスやコンピューターという計算機械を輸入した。
機械というのは実に簡単だ。魔法による摸倣が極めて簡単で、様々な技術を交換しあったが機械はあまりに劣っている。
計算魔法を複数人でフィードバックさせてユニット化し、それを数万人規模でやれば演算能力はコンピューター1台を超えることが可能だ。
そもそもとしてコンピューターの強みは計算能力やら何やらだと思うが……計算魔法を組み合して魔導化した方が圧倒的性能を発揮可能だ。
なにせ計算魔法は彼らの言うところでの『揮発性メモリ』に結果を刻んで引き出しているようなもので、複数回引き出すのも出来るけれど魔法を閉じる度に計算し直しになる。
そこで必須になるのが魔法陣。これさえ使えばリピートして複数回実行可能で、魔法式で演算結果をいくつまで保存させるとか設定したらコンピューターを真似るのは容易だった。
誰が何をやっても数字さえ同じなら毎回均一な結果になるのが魔法で、それは機械も変わらない。では機械と魔法では何が違うのか。確かに、パノプリヌンの機械は5軸やらディテクトリだのと何やら用語をこねくり回して精密性はとてつもないが、そもそもとして機械もトゥールビヨン構造とかを使い回せば精度を犠牲にして簡略化も出来そうで時計職人の作るような工芸品から量産品になる。1点限りの究極的な汎用計算機より数億人が別の箇所で入力し、結果を受け取ることのできる計算魔法の方が良い。
なにせ土地の広さが違う。
小さな島に引きこもって、このツァウスト帝国とほぼ同じ年数の歴史を積み重ねて起きながら文明が同等未満なのは機械文明の未来のなさを表しているし……
トゥールビヨン構造が生み出されたのなんてちょうど1500年前で、懐中時計ができたのも1501年前。
今では精度補正ではなくアイコンとしての役割になり、懐中時計は3本の針と魔法式、そして模様や重しとしてだけの歯車のみで出来るようになった。
古代は寝る時間が2つに別れていたが、現代ではひとつの大きな睡眠時間になった。その転換点はだいたい時計の民間化が起きた時だ。
そして、パノプリヌンは基本中の基本の水を魔法で出すことはやっているようだが、そこから先がほとんど進歩していない。形だけを真似ていて、機械文明のままだ。普通なら機械文明なんて魔導解析学の基礎中の基礎だし、通過点。文明として発展する余地さえあれば機械文明を抜け出し、魔法を工業化するはずだ。
だが、マジックユーザーの割合が大多数どころか完全に1であると言うのがあの国の強みであり逆にそれが欠点だ。
普通、国民たるマジックユーザーの中には魔法を充分に使えないデミマジックユーザーがおり、そのデミマジックユーザーの中にノットマジックユーザーが存在するはずだ。
デミマジックユーザーは血統の罪だ。魔法使いではない者が魔法使いの血筋に混ざると次の世代の魔法が急速に劣化する。
だから血統学的に劣った者は社会から排除されるか、福祉を受けるしかなくなる。魔法を使えないものに社会の立ち位置はロクに存在しないし、よくて腫れ物扱いで悪ければ不幸の証として谷に捨てられて終わり。
だがそれが全くなく、全員が魔法使いだ。
魔法を使えない者から死ぬという圧倒的な圧がかかっているというのもあるが、それでもあの国は異常だ。
識字率が100%というのは並大抵の教育で成し遂げられない。国民が数十万人しかいないというのもあるけれど、領土が狭く単一の民族しかないというのが識字率を押し上げているのだろう。帝国ですら99.9%で、小数点が着いて決して100%になることはない。
だか大量の金属資源が眠り、表面はクレーター塗れだが逆に言えばすぐ掘って宝の山、ということ。
それがあるからこそ外貨を獲得して、自国通貨を高レートで国際為替が成り立つのだ。
侵略をしようと29世がやらかしたが……その時は丸ごと地形が変わった。
あの時以降から不仲になり技術交流も途絶え、輸出入の規模も大幅縮小。金鉱山を大量に締め出され、鉱山労働者が強制帰国で大慌て。輸送船で『人数分の均等食料』だけ渡して強制送還した。結果は内部の船で殺し合いが起きて食料が余って到着した。
凄惨極まる船内に、大量のツァウスト帝国からの労働者が返還され職にあぶれた、真の意味での無産階級たち。
西部平原の開拓は貿易港のメリットがあるからやっていたのにそれが無くなればどうなるかなんて目に見えている。造船業で追いつけ追い越せの精神が無くなり、結果的にサザンクロス帝国との海軍摩擦が発生する始末。
結果、47年前に西部開拓は終了し退位して私の兄が次の皇帝になった。
まあ、その後はなんやかんやあって私が戴冠したが……いやあ本当にこの状況は詰んでいる。
どうにか兄が国交を正常化して通商停止も辞めてもらったが被害は甚大。西部平原に築かれていたはずの倉庫街は消え失せ、地形が変動した。
魔導解析院が必死になって研究を重ねても、とてつもない熱量が短期間照射されたということしかわからない。
本当に私の叔父が腹立たしい。なぜ敵に回すかな?こっちが回り回って苦労してるんだよ!
軍の独走を抑制できなかったし、私は失敗君主として長い帝国の歴史に名を残すことになるだろう。後世の人々はきっと数百年前の愚かな皇帝を指さして笑うことになる。
軍の独走を何度も強制的にストップさせることができる皇帝軍と暴走する側として想定されていた国民軍。この2つの軍組織は指示系統が違うし、決してひとつに纏まることは無いと考えていた。今思えば、防衛政務官にあのような人物を信任したのが悪かったのかもしれない。
だが、歴史の車輪は回れども止まらない。
もうツァウスト帝国は終わりだ。緩やかに軍部が独走していき、皇帝軍よりも多くの資金と人員を持った国民軍が皇帝軍を制圧し、新しい軍隊の形として台頭した。
統帥権が皇帝と軍司令官、防衛政務官の三者に分割され、軍司令官はどちらに着くかで派閥争い。
軍部も足並みが揃わず、意見が対立して潰し合い。
これのどこが『統一された新しい自然な軍としての形』なのやら。全くもって国民のことを考えていない軍人たちばかりだ。
叔父は軍の才能があり卓越した技能でサザンクロス帝国と南東諸島の国境線を共同で引き、さまざまな利益を享受した。
兄は外交の才能があり周辺国とのバランスを取りながら国内貨幣の流通を助け、経済大臣として経済政務官を多数持っている。
私は……自負できるものではないが投資の才能があり、さまざまな産業に莫大な投資を行い、躍進した産業にさらに投資をした。その結果として国家歳入こそ増えたが、雇用もそれを上回るほど上がりに上がって給与が減りつつ雇用人数が増えるようになった。
これにより国民からは恨まれ、企業からは財閥を解体した事で恨まれ、資本家からは好かれる歪な皇帝になってしまった。
何がいけなかったのだろうか。本当にわけがわからない。
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あなたは量産した列車を見た。
幅の違うレールでも乗れるように車輪は1つになり、前から見た時にまるでサーカスのピエロかのような見た目になっている。
車輪には合成ゴムが用いられ、その車体は極度に軽量化されている。およそ5〜7tというその重さは、軽量化の極みだ。
レールの上に乗り、魔導列車を破壊する……とても簡単な事だった。
線路の上に異常な物体があると魔導列車はその重さ故に15km手前からブレーキをかける。ならば、そのスピードを活かして空走距離の長さという弱点を徹底的に突く。
運転手を搭載したGAU8で車体ごと殺し、靴の爪先のような形状の空力形状を歪ませる。なにせ20m以上も魔導列車の鼻先があるのだ。最適化され尽くした、どんな天候でもレールが物理的に無くならない限り回転可能な魔導列車。
だったら曲がる用の制御レール自体を圧倒的な弾丸の数でぶち壊せば良い。そして車体も圧倒的な弾丸の数でゴリ押して貫通する。
機関砲と魔法の力は強い。なにせ本体を作りさえすれば『冶金魔法』で金型を無限に作れるし、『成形魔法』で金属に可塑性を与えつつ金型に入れれば簡単に量産できる。
まあ魔法でゴリ押したとてつもなく汚すぎる技術だが……魔導工学の蓄積がないから仕方がない。
それにしてもGAU8の火力で車体は歪ませられたが運行自体はできるというのが恐ろしい。風魔法で横方向に空気を押し付けられるから銃弾が滑ったのもあるかもしれないが……それでもおかしい。
この車両はアルミサッシと金属シート、あとエンジンとタイヤだけで作れる。これを量産して機関砲を搭載すれば何百万とある魔導列車も沈黙するだろう。
それに……複葉機で空軍のレベルを油断させたところにB-52 のペイロードを叩き込む。
首都機能のある都市に焼夷弾と毒ガスを撒く程度は複葉機でもできるが、B52なら更に大量のペイロードを有している。
複葉機を500個くらい並べて絨毯爆撃させるより、たった一機の航空機で首都機能を持った都市に大打撃を加えられるという強烈な圧をかけに行く。
これでこの後に休戦して賠償金取ろう。
まあ少なくなってきたらもう1回、開戦すればいいだけだ。なにせ航空戦力がないのだから。
高射砲に似たような射角を発揮出来る魔導列車の回転砲塔をとにかく破壊しないとまずい。
高射砲が存在しないと思っていたが、仰角45°まで傾けられるとは思わなかった。水平方向にしか旋回しないとばかり思い込んでいたがまさか砲塔を持ち上げるとは予想外の極みだったが……
これで魔導列車は終わりだ。
空気抵抗を大幅に削減できるのはその形状ゆえ。なら、その形状が無くなった時、自動的にブレーキをした瞬間にぶっ壊れるのは道理に沿っている。
文章の1話辺りの量について(調整)
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10000文字ほしい←現在の基準
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3500以上ならいいよ
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5000文字くらいほしい
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6000以上ならいいよ