魔導列車がゆっくりと。だがとてつもない速度で進みながら、上部の回転砲塔を旋回させ次々と弾を放つ。
通常の魔導列車の速度はおよそ時速600km〜900kmで、この状態で走行しているが今は違った。
大幅に減速し、航行するのに必要がないはずの空気抵抗というものを復活させている。
それは後続の魔導列車を待ち、複数の列車を近接させている。
ノーズの部分は繋げられるようになっているが、使う度にコストがかかる。大気細分化の魔法式を停止する必要があるが先頭車両ではなく、くっ付けるだけなら車両の間を真空にして冷間圧接すれば良い。
どうせ数十万両とスペアの車両があり、数千万の予備整備パーツも産業用の生成魔法陣を用いれば一瞬で組み立てられるという前提があって初めてできる芸当。
これを用いて、蹂躙していた。
大量の弾薬を当て砲塔を破壊したり、主砲の回転砲塔でまるごと破壊したりと……戦車がただの的になっていた。
機関銃と戦車を鹵獲したのは約3か月前。戦車の上部に搭載されていた自動機銃という物で、歩兵に対して非常に有効な物だった。
当然、技術大国であるツァウスト帝国が逃すはずもなく、メイプル宗教国の強みの1つである技術の優位性を鹵獲によって埋められてしまったのだ。
鹵獲戦車に対して、弱点部位の情報を収集するために徹底的な研究が為された。
生成魔法陣によって戦車自体の情報を学習させ、実験用戦車を生産して機関銃で撃った。
キャタピラを守るカバーの厚みから正面装甲の厚みといった徹底的な調査が行われ……上部に攻撃を加えれば戦車に有効打を与えられると解析された。
戦場に轟いている主役は、もはや恐怖に震え、履帯を撃ち抜かれ移動不可となった戦車兵の悲鳴ではない。空気を切り裂き、通過音というにはあまりにも尖ったヒューという音だ。
その音は決して小さいものではない。
超高速の物体と、ノーズの形状。それによる、空気を引き裂きながら突き進む、時速400kmの魔導列車が放つ物理的な咆哮だ。
ツァウスト帝国の魔導列車は、止まらない。
連結された5キロメートルに及ぶ長大な車体は、巨大な鋼鉄の鋸のように大地を削りながら進む。
貨物部から供給される弾薬は自動装填機構によって給弾ベルトに装着される。
機関銃から絶え間なく砲塔へ送り込まれ数秒おきに戦場という圧倒的に広い、面を制圧する弾幕を吐き出している。
メイプル宗教国から学んだ、分隊支援火器のような高密度な弾丸の嵐による遮蔽物の貫通。
パットン戦車の群れは、ただの的として処理されていた。 機銃が備えられている高い位置から正確に、かつ圧倒的な投射量で叩きつけられるのは徹甲弾。
一発一発が、戦車の装甲を貫通するために最適化された重さを持ち、戦車の天板を圧倒的な量とその貫通力により物理的に粉砕していく。
装甲を貫く音すら、次にやってくる後続車両の砲声によって即座に上書きされる。
そこには、慈悲も、戦術的な駆け引きも存在しない。
あるのは、数分おきにやってくる破壊の化身だ。
先頭車両が敵の陣地をなぎ払い、戦車は必死に反撃するも損傷した箇所を計器類が感知することにより警告を鳴らす。
車内の通信兵は車載されている通信器具でなんとか連絡がとれたものの、隣の戦車は天板に乗っていたレーダーが壊されて一切の連絡が取れなくなった鉄の棺桶。
冷間圧接で連結された後続が回転砲塔を戦車のいる方向に向けて精密に撃つ。さらにその後に続く車両が、残骸となった戦車を横目に榴弾砲で辺りの木々という遮蔽物を吹き飛ばしながら突き進む。
恐怖に負けた戦車兵が、ハッチを開けて逃げ出す隙すら与えられない。
列車の側面あるいは上部から掃射される機銃弾の雨が、地面に降り立った者たちを、規格外品を処分する検品所かのような無機質さでなぎ倒していく。
一本に繋がった列車が通過し終える頃には、そこには生命の気配など一切残っていない。残されているのは、歪んだ戦車のスクラップと、爆発した弾薬庫によって戦車ごと爆死した乗組員の残骸。そして、列車の掃射によって抉り取られた大地の溝だけだ。
RPG7という成形炸薬弾がメイプル宗教国への産業スパイに持ち帰られた。
これを元にして新型の弾薬が作成され、砲塔の1部に追加アタッチメントがまた追加された。時代と共にどんどんゴテゴテと武装が乗り、高さが増していく魔導列車は自走する摩天楼……あるいは動く天守閣とでも言うべきか。
しかし、空力形状的にも最適化されている。乱流にならないように、規則的な対称性をある程度妨害する複数の細かい板が付けられている。これこそ通過音の正体であり、空気力学の集大成。奇しくも戦闘機と同じ進化を辿ったそれは、しかし地上を走る列車についていた。
空気の粘性というのは温度や湿度という気象条件に大きく左右されるため、細かい板は計算魔法によってどのように傾けるか、どのように空気との入射角を変えるか常時演算されている。
計算魔法というのは大きなコンピューターより圧倒的に楽で簡便だ。なぜなら浮動小数点数のようなブレが全くないし、誰がやっても数値が同じならいつでも毎回同じ結果が出る。
情報を解析し、変えるべき関数を指定する生成魔法陣により自動的な司令の生成が可能になっている。
これを使うことにより与えられた情報から解析、その評価から指示を出すことまで 可能となっている。
もはや、それは戦闘ですらない。
天板という最も厚みのない薄い部分を一斉に掃射され、アンテナも照準器も、あらゆる予備のペリスコープも同時に粉砕されたパットン戦車の内部。四人の兵士は、それぞれの座席で「その時」を待つしかなかった。
右側座席の車長と、その近くで装填された傍から発射をする砲手。後方左側で沈黙した無線機を抱える通信兵。全力でペダルを踏み続けるも履帯が切れ、後退も前進もできず動けなくなったことを知る操縦手。
彼らの前方では、列車の独特で大きな通過音に混じって、ガガガガガ!というタングステンが戦車を猛烈な勢いで削り取る絶望的な音が響き続けていた。
帝国の放つ徹甲弾は、一発で仕留める必要を持たない。時速400kmで移動する長大なプラットフォーム、魔導列車の銃座から、さまざまな戦車へ、次から次へと物理的な質量が叩きつけられる。機銃掃射を受けた戦車はハッチが歪み、装甲板が熱を持ち、火花を散らしながら薄くなっていく。
((((いずれ、貫通される))))
その物理的な真実を、車内の全員が肌で理解していた。ツァウスト帝国は彼らの通信を傍受などしない。そもそもできない。
なぜなら陸の孤島となった戦車内部の車載された通信装置は受け取ることは出来ても発信するのは戦車上部の機関銃などと共に根こそぎ破損している。
命乞いも、悲鳴も、彼らが座席で流す悲鳴も、すべては計算魔法の外側にある不要なノイズに過ぎないからだ
彼らの運命と戦車の物理的な寿命が尽きた。
ついに装甲が耐えきれず、先が潰れている徹甲弾が車内に雪崩れ込む。
まず、最も高い位置に座っていた車長の頭が弾け、次にその付近の砲手、そして左側の通信兵の座席を、タングステンの欠片や大量の弾丸が蹂躙した。
操縦手が後ろを振り返る暇すらなかった。
なぜなら、操縦手もそれとほぼ同じタイミングで爆発した戦車の弾薬庫の力で吹き飛び、即死していたからだ。
近代兵器としてのパットンの誇りは、帝国の圧倒的な手数と急所の分析という圧倒的なメタ対策の前に、ただ撃ち抜かれるのを待つだけの薄い鉄板へと成り下がっていた。
5キロメートルにおよぶ鋼鉄の龍が通過し終えた戦場には、再び静寂が訪れることは無かった。
そこには、中身をズタズタに引き裂かれ、もはや戦車としての原型を留めないのスクラップや戦車と辛うじて判別できるだけの残骸が、無造作に転がっているだけだった。
だが背後の戦車部隊が砲弾を引き撃ちし、後退しながら攻撃している以上は魔導列車もRPG7などを打ち込む。
いくらゆっくりとはいえど400km。慣性の法則が強すぎて命中率こそ悪いものの弾頭を生産しまくれば本体は捨てることなく再利用できるので数打ちゃ当たるを実践していた。
メタルジェットで当たれば即死させられうるRPG7という武器を前にツァウスト帝国が量産型の改良版を作らないわけがない。
それに現在、列車は18キロメートルほどの直径の楕円を切り取った弧のような形のカーブにいる。
レールの上の列車に働く斜め前方へと働く遠心力やら何やらが合わさってRPG7と機関銃などの弾頭はスライドしていく。
400kmから300kmへと緩やかにスピードを落としながらの攻防。いや、防ぐことがほとんどできていないので攻防とすらも呼べぬ蹂躙。
これが何十万も存在し、射撃プラットフォームとしての役割を果たしていると言えばその脅威が分かるだろう。
そもそも歩兵連隊だけで出来る作戦なら人員輸送用の魔導列車も出し渋らないし、歩兵の計画的な縦型浸透作戦で勝利することよりも魔導列車からの集中的な射撃による、拠点防御的な作戦で勝利することを選んだ。
戦車がいくら機関銃と主砲、その悪路走破能力で民間人の多い市街地などに突っ込み破壊することができようとここから先に浸透するのは不可能。
多数の装甲車が人員を運び、局所的には市街を焼き払い住民を壊滅させることができようと。ここから先に行くことは不可能。
なぜなら、ここに魔導列車がいるからだ。
どのような手段を尽くそうとここから先に進むことはできない。歩兵連隊を壊滅させたり、住民を轢いた無敵な戦車の隊列も魔導列車に負けた。
先端に柔らかい金属を付けた徹甲弾が潰れながら戦車内部に雪崩のように大量の潮流となり流れ込む。
天板は装甲が最も薄く、レーダー類なども相まってかなり薄い。徹甲弾が何発も当たれば貫通されるほどで、狙われる理由はここが傾斜装甲のある正面や背部はともかく平らになっている最も脆弱な箇所であるからだ。
戦車兵たちは溶けた薄い装甲板が内部に流れ、肉が焼け焦げる異臭を垂れ流しながら絶叫する。
そんな時間があるのはむしろ、救いだった。
すでに分割された戦車大隊の左翼や右翼は滅び、残るは中央のみ。後退しながら砲塔に向かって撃つも、全く有効打にならない。
列車の回転砲塔は榴弾を曲射し、地形を変えていく。
弾道学は弓矢の鏃の重量計算から始まり、やがて弾丸になり……そして現在の洗練された姿になった。
畢竟、弾道学は歴史の蓄積という長い年月を持った文明が到達する……物理学に基く力学的計算というものを必須にする。
帝国成立から数えて2300年という長さの蓄積は圧倒的で、さまざまな学問がいくつも中興の祖たる魔法陣によって助けられた。
古来、人間は空気のことを重さが存在しない無の物であると考えていたが。大気圧が魔法によって証明された。
絵画や装飾に使われることの多い、真っ赤で美しい赤色の顔料の1つであった辰砂。
さまざまな健康被害が出たりしたものの、ここから水銀を大量に取り出し、学問都市はその新しい発見に幾つもの報酬を与えた。博士や修士と言う段階を飛び越え、学問的権威として 新しい理論の構築者 という称号を与えた。
そこからアマルガムを発見し……ついでにメッキも発見し、そしていつしか帝国は世界一の学問の国と呼ばれるまでに至った。
魔導列車内部で演奏されている金管楽器。この鮮やかな金色はツァウスト帝国が存在しなければ無かっただろう。
戦闘の最中でもツァウスト帝国の兵士は音楽を欠かさない。なぜなら士気向上に大いに役立つし、何より皆で音楽を聴き、音色によってトランス状態になることにより連帯感を発揮する。
魔導列車の内部には酒を飲んでいる兵士がいるなど、通常では軍規の乱れとしか思えぬものは、余裕の現れ。
東西は大陸の果てまで繋がり、最東端は大きな森林、最西端は大きな平原と様々な風土に恵まれるツァウスト帝国では移動時間が極端に長くなる。
暇というのは恐ろしい。なぜなら風景を見るといったことは基本的にしない。
擬似的な真空中で加速を行っている最中では大気がほとんどないのでGが0.35〜0.1の間に収まるような数値になる。
なので優雅に飲み物を飲んだりすることができるわけだが、外の風景がよく言えば大自然……悪く言えば何も無い。
大気を細分化し、大気圧という空気抵抗を最も強くするものをほとんど機能不全に追い込む擬似的な真空にするような魔法を市街地で使えるわけがないというのもある。
無人の地域のみでしか安全上の都合で加速が難しいという問題を抱えているのだ。
大気中で加速もしくは減速を行っている最中では速度を変えるのに、一応考慮されているとはいえ 0.2G〜0.25G ほどの範囲の慣性がかかる。
先頭車両ほどGが強くなるため、運転手が最もGがかかるという構造上の欠点がある。
浮遊魔法によって車体が浮き、レールという物が巨大な質量を持つ魔導列車が安定して旋回するための物になっているのである。これこそ魔導列車の速度の理由で、車体にも秘密がある。
20mを超えるノーズは大気中での加速で阻害しないように限界まで曲率が計算された結果。
余裕をもって金属疲労なども考慮した結果ではあるが、内部の兵士には圧がそこまで加わっていない。
そもそもフルスペックを出すためには真空に近い大気という条件が必要になる。
レールに大気細分化という加速・減速用の魔法陣が用いられるのはこれが原因だ。レールは旋回用なのでほとんど減速に使われるが、時速900kmという速度は真空中あるいはそれに近い極端に空気の粘性が低い空間でしか出すことができない。
なのでレール側に魔法陣を刻み、発動するための暗号キーを魔導列車の本体に持たせることで魔導列車に刻む魔法陣の数を減らしている。
魔法陣同士で同じ物体に干渉することはなるべく避けたいので空力制御などは車両に任せ、環境制御はレールが行う。
大気が存在する場所ではノーズの摩耗がとてつもないことになるし、いきなり高速域の魔導列車に大気が復活してしまえば故障時に蛇腹状に潰れるように事故を想定して設計されている魔導列車はレールの上を滑りながら縮む。
減速しながらレールに突入しなければ遠心力で脱線事故が簡単に起きてしまう。だから列車の車輪幅が30mもあるのは、レールの安定感を増すためだ。
車輪と言うのはレールに接触し大幅に減速するための物で、曲がるための部品に過ぎない。
空中を水平に飛び、ダウンフォースを必要とした時点で、もう魔導列車は地を這う列車から逸脱した。
戦車がかつて歩兵を薙ぎ倒した。
その時、投入された多くの銃火器兵は現役ではなく、訓練がされている真っ最中であった。
サザンクロス帝国との代理戦争以後、急速に悪化した国際論調は一気に貿易制限へと発展した。
長年続いた冷たい戦争は火が付き、南東諸島の分割で両国とも利害を一致させていた29世の築いた安定。それが崩れ、開戦へと発展した。
サザンクロス帝国は南の帝国。偉大な南十字星の国と自称する海洋覇権を握った国家はツァウスト帝国の領海付近に私掠船を送ったりと挑発行為を繰り返した。
南東諸島に築いた中間貿易の役割は既に無く、島に大量の兵士を割き、わずか3kmもの距離で睨み合い、砲撃戦を繰り広げた。
30世はこの状況下で兵を前線から引くように命令し、経済の飛躍を掲げた29世と打って変わって戦争を止めた。南東諸島の利権を失ったツァウスト帝国の経済は冷えこんだが財閥が食い止めた。
しかし、ツァウスト帝国皇帝という肩書きに権力が帯びていた時代。
31世が財閥を解体してしまい、1部に集中していた土地と富は拡散して全員が貧しくなった。
農業や畜産といった固定的な産業は比較的無事だったものの、瞬時にとてつもないデフレが発生し、全員に支出を控えさせた。経済の三本柱のうち、企業が折れたことによる資本家の没落。それは凄まじく、養蚕業は工場を支配している富裕層が管理税を国に支払うことができなくなった結果……次々と縮小した。
高級衣類などの値段が高くなり、農業や畜産は30世が属国の独立を止められなかったせいで輸出先を失ってデフレが止まらない。
ツァウスト帝国内部では財閥解体が経済を破壊したと、我慢の限界に到達した国民や、『正義の軍部』によって糾弾され31世は権力を失った。
軍部によって、皇帝が幽閉されているという状況が作り出された。これがいかに帝国が斜陽の中におり、没落しているかを表している。
農作物の輸出規模が世界一のツァウスト帝国の強みを失うと、デフレを見つつも減反政策をするべきではないと考えた31世は輸出規模を拡大するため、最後にサザンクロス帝国との大規模な通商条約を締結し食料品を送り付けた。
サザンクロス帝国から大量の資金が流入しデフレが食い止められはしたものの状況はまだ低迷。
農業という三年以上かけて準備し、生産するようなものにすぐストップが掛けられるわけもなく。
街は食料品で溢れ、廃棄方法を模索し100%OFFセールという無料作戦で国民全員に分け与えた。
最初のうちこそ物資不足の危惧が地方や都市部で噂として流れており、それを真に受けた人々が多かったが……この無料作戦はあまりに市場を破壊した。
経済がとことん摩耗していくこの皇帝の行いにますます国民は怒った。
皇帝軍は国民軍を止めることができず、防衛政務官と多数の兵士。そして30世がトップに担がれ重祚しようと軍部こと国民軍は考えた。
だが30世も軍の拡張を初期に進めていたのに代理戦争後は戦争を辞める方向にシフトし、戦術的損失たる利権の損失を行ったりサザンクロス帝国との戦費を償うなどの戦後のために増税を行ったりしたので国民からとてつもなく恨まれている。
31世は脆くなった帝国をさらに破壊した爆弾魔と言っても過言では無い。
経済的視点において社会に波乱を呼ぶ、スクラップ&ビルドの極みである政策を乱発したのがいけなかった。
民間雇用が財閥解体で崩れそれを受け止めるだけの産業基盤が農業や畜産、鉱山業などの物しかなく、さらに継続学習の魔法式を組み込んだ生成魔法陣によって重工業などの大きな経済的な利益を齎すものの技術者が解雇された。
公務員のカットも劇薬だ。
これのせいで高技能職の民間が消えただけでなく知的財産の収支が農業や鉱山などに行き、殆ど経済は止まった。
これがどれほど恐ろしい事態か、国民が分からないはずもなく。デモ隊が発生し、既に国民軍に負けた皇帝軍は軍部として統一され、国民軍主導の内乱……事実上の軍事クーデターが成立した。国民軍と皇帝軍はお互いを相互監視することで権力のチェック&バランスを保っていたが、強くなりすぎた国民軍によって皇帝軍は敗北し、周辺国に権威低下の印象を非常に強く与えた。
30世が兵士を引き、周辺国に自国領土を売って停戦したと国民から思われているが……これはもう言い訳のしようがないほど仕方がない。
国境線には魔導列車が大量にあったものの、継続的かつ組織的な地下からの浸透作戦により入られた。
周辺国が連合して地下に巣を張り、下水道から都市部に侵入した。
州都を取られてしまえばその州は陥落する。なぜなら魔導列車で命令が素早く届けども動けなくなるからだ。
結果、領土を蚕食されたまま停戦協定を結んだ。これにより、 周辺国より自分の国が下である とアピールするようなことだと国民に思わせた。
これほどの失敗続きで、2代揃って国民を苦しめたことにより皇帝は支持を壊滅的に失った。
30世は領土を切り捨てて、最小の領土損失だけで済むように連合国側と協定を結び国民は分断された。
30世は金属資源などの輸入を増やすための外交をし、最終的にはパノプリヌンを侵攻してぼろ負けした。
侵攻というか、準備を進めて船を出した時に破滅的な熱線が発射され港ごと、その手前の海ごと爆発して無くなった。
そうなれば流石に土下座外交をするしかなく。
漁業協定をなんとか結んで、軍港をパノプリヌンに対して一切作らないから 領海内部と自由海域 の1次産業の元となる漁港は滅ぼさないでくれと言うような 不平等な条文 を結び。さらにインフレ率を増加されるほどの規模の賠償金を支払い、国民から失望された。
31世は南東の湾岸からサザンクロス帝国が上陸してくることを予想し軍備を進め、帝国同士の対立が深刻化した。
冷戦の終わりはこの時期だと後世の人々は語る。
サザンクロス帝国の上陸作戦を防ぎながら、なんと警報装置の故障により南東側の戦艦を 1隻座礁 させてしまう。
砲弾を打ち込まれ大破した写真を撮られ、それをサザンクロス帝国が広めた。
『驚き!ツァウスト帝国の戦艦は、なんと"方向すら分からない"!』
文面は違うが、ニュアンスとしてはこのようなことを報道した。ブチ切れたツァウスト帝国は局所的勝利を収めたサザンクロス帝国の艦隊を 1844隻 完全に沈め、7852隻を破壊し航行能力を失わせた。そして全て含めると継戦不能に追い込んだ12,411隻という極めて深刻な損害を受け、サザンクロス帝国は海上の対立を辞めた。
だがサザンクロス帝国は北東の海に本命たる大量の戦艦を送り付け、まさか複数の国家の通商路を縦断してくると思わなかったツァウスト帝国は被害を被った。
本土上陸を食い止めたが北東の島々を複数失い 当時保有する島の中で重要な拠点をこの戦いで失う。
北東戦線は初期は電撃戦的に行われ、大量の戦艦が島々に押し寄せた。8000とも6000とも呼ばれるその量は未だ確かではなく、当時のツァウスト帝国の北東では驚きが蔓延していたと言う。
帝国の湾岸に築かれた固定砲台によって諸説あるが最低750隻以上を撃沈し1000隻ほどを航行不能にした。そのお陰で島々は防衛できたがそれでも最前線の1部の島たちを失ったのだ。
これに国民は心底怒り、失望した。
もはや帝国の海軍力はサザンクロス帝国に負ける程だったのか。そう思考した国民たちは、統合された軍隊に入り海軍に志願した。
サザンクロス帝国は質のいい木材に恵まれ、木造船が多くを占めていた。南東諸島に派遣された戦艦も、大多数が鋼鉄とは言えない。
だからこそ火を放ち大炎上させて航行不能にできたし、それが無かったら不可能だったとも言う。
魔導列車のような魔導ジェネレーターを積んだ推力などではなく、帆で動く。
当時のサザンクロス帝国が海洋覇権を握れたのは木造船による圧倒的な海運と、それに伴う大量の資金による兵器購入や高官の買収などもある。
自国の金銀を属国に渡し、大量の麻薬を生産する。そしてそれを他国に流して弱体化したころに征服という形で版図を広げた。こうすることで使用した金銀の流出も全て回収できる上、奴隷化して造船させる。
麻薬中毒者だらけにして骨抜きにし、社会そのものを麻痺させるという手段を行ってツァウスト帝国からは警戒されまくり、アヘンの国内輸出を絶対に行わせないように貿易港でも麻薬対策がサザンクロス帝国は他の国と比べてもとてつもなく長く時間を取らせる。
だいたいのニュアンスで言うならばツァウスト帝国は『文明的な支配』と言う感じの対外的な大義名分を掲げていたが、サザンクロス帝国は『開拓的な支配』という感じの大義名分を掲げていた。
侵略的な麻薬戦争を経由して大量の帆船がやってきて海から支配者がやってくる……現地住民はそう記した。
サザンクロス帝国は現地の産業を空洞化させて一気に貿易を絞り、依存した経済を破壊してから支配しに来ることもある。
サザンクロス帝国は艦隊とは名ばかりのほとんどが帆船の群れだったがそれでも南東戦線での木造船の割合は78%で、裏を返せば22%も鉄の船が居た。
そして北東では、900から1100とも前後するほどの量の戦艦がいたと言う。
木造船は中に空間拡張を用いて大量の水を運ぶ。
遠洋では水切れというのはとてつもない脅威なので食料をほとんど超える量が積載される。
だがこれは木造船が主で、前線で戦う戦艦たちの補給艦としても運用されたりした。
シタデル方式、またはオール・オア・ナッシング方式とも呼ばれる装甲の貼り方。
この2つに共通するのはどちらも、『重要な部位だけ守る』というもの。
当時のサザンクロス帝国では薄い装甲板がむしろ破片となって乗組員を殺すという考えが主流であり、ならば11.4cm〜12.7cmほどの分厚さで機関部を守ろうとした。
木造とはいえ北東で派遣されたのはスクリューが着いた蒸気船。南東諸島で存在したガチの帆船は、積載量こそ小さいが数で輸送・補給をするなど使い分ける用途がある。
一時的な拠点として働かせ、洋上の小さな都市としても振る舞えるほどの船団が南東諸島に送られた時、ツァウスト帝国は全力で迎え撃てと命令したと言う。
そもそも北東の攻勢は本命ではなく同時に攻めて分散させようという試み。言うなれば両方が陽動で本命である。
なのでこの選択は究極的に正解であり、ツァウスト帝国の判断力をサザンクロス帝国に見せつけた。
南東諸島から本土に上陸するべく、大量の戦艦がやってきた。そしてその後、2万隻がやってきてそれを迎え撃った。
本来なら圧倒的な蹂躙をされてしまうようなことになるはずだが、サザンクロス帝国の裏方の約8000隻しか無傷じゃないやつが有りませんでしたという事態が発生するのは異次元的な戦果だ。本当におかしい。
南東諸島からは2700ほどの鉄甲戦艦が。サザンクロス帝国の属国国からは900〜1100もの鉄甲戦艦が。
数値にして言えば、このツァウスト帝国への侵攻のガチさが伝わるだろうか?
経済戦争という冷戦期がメイプルの独立戦争を皮切りに起こった代理戦争による急速な外交関係悪化によって終わり、本格的な正面衝突へと発展した。
おお、この冷たい戦争は烈火の戦争に変わってしまった。世界大戦の引き金はたった一つの属国が独立戦争を起こしただけだというのに。
中央大陸そのものを焼き尽くすような戦火の粉はまだ目の前に舞っている。
文章の1話辺りの量について(調整)
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10000文字ほしい←現在の基準
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3500以上ならいいよ
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5000文字くらいほしい
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6000以上ならいいよ