「おーい、お前、こっちにこいよ」
国境警備隊たちが容赦なく射殺された。メイプルの執政官は死に、ツァウスト帝国の声が対反乱本部にも届かなくなってから1週間。
ハリストカ執政国ではそのような声掛けが多発していた。
「嫌だよ。メイプルなんてついさっきクーデターがあったとこじゃないか」
このように答えたら死ぬ。なぜならばツァウスト帝国の影響下になく、独立を宣言してサザンクロス帝国が承認したとしてもそれは国中が統制の取れたテロリスト集団の巣穴に姿を変えたということに変わりが無いからだ。
無論、ただのテロリスト集団ではない。むしろ、1つの理念があった。
かつてのテロリスト集団としての性質はどこへやら、人民解放革命軍と名前を変えてやりくりしている。
サザンクロス帝国から支援を受けているので、車両も武器も供給されている。
だがそれは車両といっても狭く、1人乗りの三輪車だ。
魔導ジェネレーターが積まれているので走り回る時間は理論上、無限だ。
ただしスピードが時速30km以下でのみ理論値をたたき出すことができないので普通の車に乗った方がいいだろう。
サザンクロス帝国が、ツァウスト帝国から安価な量産品である『農民用バイク』を購入する。
そしてそれをあらゆる所にばら撒く。こうすることで、なんと機動力が現地の歩兵部隊にプレゼントされる。
リベレーターと自らを呼ぶ彼らテロリスト集団……いや、人民解放革命軍はハリストカ執政国に押し寄せていた。
そもそもがメイプルは、多民族国家になっていたので民族ごとに纏まり、他の民族とは仲が悪い。
だがこれは多民族国家としては当然のものである。
そしてメイプルは現在になって独自通貨を発行しており、紙幣発行量が乏しいながらも著しい流通量によって価値が爆発的に増加している。
サザンクロス帝国が独立を保証して独立宣言を承認した、つまり傀儡国家に近付いているのだがこれは問題がない。
直接的に支配するのではなく経済的植民地にしておきたいだけであり、緩衝地帯にすることの方が大切なので南東諸島からサザンクロス帝国は補給線を陸上に構築し、メイプルに繋げておきたい。
メイプルはツァウスト帝国から独立を認められていないが、サザンクロス帝国から認められているという一点突破の論理で独立していると表明中だ。
ハリストカ執政国やチリストカ執政国、そしてライストカ執政国が隣接しており、この3つの執政国たちはツァウスト帝国から支援を特に重点的に受けている。
駐留軍も独立戦争期にメイプルにいた数より増えており、執政国が全体としてめちゃくちゃに増強された。
3つの執政国は戦略的要所であるリューヒル大運河に面しており、終端のメイプルと違って上流を握っている。
このリューヒルという運河は、そのまま地域の名から流用された名前だが……とてつもなく流域面積が広い。そして、豊富な泥が取れる。
ただの泥と侮ることなかれ、これがわりと使い道がある。
そしてこれは定期的に底を掘る工事の時のみとれるものなので、最も重要なのは貿易の拠点であるということ。
ツァウスト帝国→ライストカ執政国→チリストカ執政国→ハリストカ執政国→メイプル執政国→サザンクロス帝国領
このように複数の緩衝地帯となる属国が存在しており、物資の終端がサザンクロス帝国にある。
この大きな運河を共同で掘削するほど、仲が良かった頃の蜜月外交を示す最も大きな物証と言ってもいい。
自然にある川を真っ直ぐに曲げ、そして同時並行で溝を複数作っていく……並大抵の工期で完成しない。
しかも、3つの執政国を跨いでメイプルまで尾根が届くほどの山脈が、運河のすぐ側にあるが為に上流からの土砂が恐ろしい量になる。
1900M級の山が連続的に続き、3000mの高さにも達し、高く突き出したような形になっている山の頭が日当たりの邪魔をする。
運河の手前から見ると、午前中は朝日が見れないし正午から夕方しか太陽を浴びれない、そして山脈の奥から見ると朝の時間帯と正午しか太陽が見えずその後は山脈に隠れ続ける。
なので『露天掘り』が盛んだ。重金属の汚染による公害などが発生してからは飲用が全面的に禁止され、金鉱山で水銀を使う場合は廃水を専用の穴に流すようにした。
このような事もあり、運河というのは奇跡の産物である。本当に長い年月をかけて作成され、各地の鉱山から出たスラッグを捨てるのが楽になった。 ハリストカやチリストカ、ライストカの特色である精錬業も地域連携によってさらに豊かになった。
富がとても沢山になり、様々な公共事業ができるようになったツァウスト帝国は民間戦略を重点的に出資し、さらに豊かになった。
つまり、この運河は歴史的にも戦略的にもとてつもない価値がある。
メイプルが運河を封鎖して資金を調達したらもうとてつもなく全員が困るのでサザンクロス帝国は金銭面で全面的な支援をするのであり、そもそも運河の方が大切だ。
そんな事もあってか、ハリストカの住民たちは独立をしたメイプルを見てから『自分たちの方が上流』ということもあり、自決権を求めて執政官に直接クーデターするのではなく……『商品を買うのを削減する』といういちばん防ぐのが困難でやりやすい緩やかな反乱をした。
個人個人が消費を控えるのなら社会全体のダメージは少ないが、それが集団に伝播したらどうか。
運河のおかげで定期的に資金援助されているリューヒル大運河沿いの属国たちがこの運動(ムーブメント)を広めてしまえば、資金源が断たれることは無いだろうがデフレ傾向になりうる。
つまり、消費を抑えるというのはイコールで経済の緩やかな死。そんなことが全国的に行われたら……もう大変どころの騒ぎではない。
そもそもメイプルはほとんどの産業があまり育てられないのだが、メイプルの地政学的な要所という属性と、土地に凸凹した丘が連続しているというものがある。
農業はツァウスト帝国と比べると小規模で自給中心、輸出用は少量でほとんどやっていない。食料輸出代理店はあるけれど、
上流国(運河に面する執政国らやツァウスト帝国)依存の輸送路があるので肥料はあるのに水利権の関係上、増産が難しい。
漁業に至っては海沿いなら地元消費用、輸出は限定的、そして海況や装備の制限で規模拡大は非常に困難を極める。というかそもそも排他的経済水域の内部にあるのでツァウスト帝国から独立したら漁業が出来なくなり、全てが違法漁船ということになる。
しかも自由海域がとてつもなく狭く、至近距離に南東諸島があるから睨み合いも多くあり、制海権をサザンクロス帝国が完全に奪ったなら漁業が再開できるけれどそれまでは完全停止。(公式には)
ある日突然、独立したら違法漁船が100%になった。
軽工業は紡績(衣服・日用品)がメインで、紡績工場の支店はあれど本社がない。
社会的交流がメインの場所になったり、国際的取引の玄関口でもあるリューヒル大運河がある影響を受けて工場に土地面積を割くより商業施設が多くなっている。
しかも原材料はツァウスト帝国やサザンクロス帝国から流れてきたものや、周辺の属国に依存しており、拡張は極めて困難。
運河関連作業に関しては大規模掘削や船舶関連の労働がされているものの、上流の流通が支配されている → 収益は限定的
ということになりあまり資金が流通すれど隣の国と比べたらあんまりないという状況になる。
だが鉱業は超大規模な金属の採掘ができる。
山岳地帯で規模拡張が容易、だが重金属汚染問題もあり護岸工事をツァウスト帝国がやらなくなったが故にここから先は住民が自力で専門工具や専門家になって毎年毎年、水の力で削れていったり堆積していく不純物を取り除き、コンクリートを補修する必要がある。
一方、こんなメイプルの唯一の利点はチリストカ執政国やハリストカ執政国の方が大きい。
輸出入の玄関口と原料の生産地は役割がかなり異なっていて比較するのがとても難しいのだが、まあ鉱業は完全に負けている。
こんな状態で独立されたらハリストカ・チリストカ・ライストカはもちろん大打撃を与えられ、リューヒル大運河でのあらゆる輸出コストが増大すること間違いなし。
漁業はそもそも海に面していないのだから出来ない、つまりハリストカ・チリストカ・ライストカはそもそも根本的に不可能だが軽工業と重工業、そして鉱業や精錬業は非常に盛んだ。
農業はそもそもツァウスト帝国が世界最大の農業国なので食料自給率が壊滅的でも食料安全保障はできる、そして重工業のノウハウも制度化された工場の労働者を執政国やらツァウスト帝国やらで循環させ、中央値を底上げしている。
軽工業は紡績工場が非常に多い。なぜなら絹織物(シルク)は取り扱いに細心の注意を払わなければならないが、山脈の地層をいくつも縦に割いたように作ったため、ハリストカ・チリストカ・ライストカは乾燥した風土になっている。
各所に3000m〜2300mのような山が山脈の周辺にあるような場所は海から運ばれる湿気……正確には潮風が雲になるのだが、山によってメイプルの方向にしか雲が来なくなる。
1年を通して温暖で乾燥気味な風土と言うのはとても素晴らしい。
山脈のおかげであらゆる産業に有利な気候帯になっているのだ。
まあメイプル側は湾岸部がサザンクロス帝国の領土とメイプルで二分されていて、すぐ側の湾岸で駐屯地と貿易港をさらに作っている上、湾岸部の小さな湖は塩分濃度が高く錆だらけになり農業が湾岸部の湖周辺では不可能という状況。
だからメイプル現状がサザンクロス帝国の外国系企業が入り込みまくり、護岸工事の専門家をサザンクロス帝国から呼んだり様々な政策で海外の企業を優遇している。
土木技術者・測量士は、長大な運河の勾配調整、洪水対策、山岳や丘陵の掘削計画などをする。
水利・堤防の専門家は、水量調整、護岸補修、堆積物や泥の管理をして管理する。
鉱業・資材管理の職人はコンクリート補強、橋梁や水門の建設をして最も大切な基礎を固める。
航行管理の管理者は、船舶の往来と安全の監視そして運河維持のための定期作業計画を提出する。
これらが自立的にできない以上、契約を結んで整備を外注するしかない。だが、それは運河の利権をサザンクロス帝国に渡すようなものだ。
だからこそ国内での反発は非常に大きかったが、メイプルはサザンクロス帝国から更なる支援を約束された。
サザンクロス帝国の目的は運河の使用料金を徴収することではなく、運河の下流区域のメイプルの資源を獲得するだからだ。
ハリストカ執政国では隣国の政情不安を理由に、ツァウスト帝国の国境警備隊がハリストカの国境警備隊に組み込まれ、現地エリートとの協力体制が築かれている。
メイプル執政国が独立したというニュースは青天の霹靂で、まさに驚天動地の情報。
ツァウスト帝国はリューヒル大運河で南東部の周辺水域にアクセスしており、この運河以外にも通行用の河川はかなり整備されているのだが……リューヒル大運河と比べたら利便性は見劣りする。
商業が河岸に自然と築かれて、昔からツァウスト帝国からサザンクロス帝国への貿易の中継地点であったが為に富が何もしなくとも手に入った。
そして運河の終端と海から然程離れていないところに位置する塩湖も、製塩が盛んにできるがために塩をふんだんに使う料理が湾岸部の地元にあったりするほどだ。
日照時間が短いと言ってもそれは運河周辺だけなので湾岸部はむしろ遮るものがなく、朝昼晩も空が見える。
だからこそだろうか、製塩施設が大量にある。それは天日干しと言われる手法で製塩をしていて、日光の力を最大限活用した水分の蒸発をしている。
いくら海に近いから湿った空気が来るとはいえ、塩湖の製塩施設に湿気はない。
塩……というか塩化ナトリウムとその他の物質は空気中に含まれる水分で不純物などが結合して品質が著しく劣化する。
それが分かっているので乾燥させる除湿剤を用いて空気中の水蒸気量を減らしている。
というか満潮や干潮などの満ち干きの際に塩湖と製塩施設はない。
簡易な製塩施設はあるけれど、潮汐の働きを利用して海水を採取しているような『原料採取』の施設なので塩湖の塩とは違う。
そもそも湾岸付近にあるとはいえ塩湖もそこまで海に近くはないのだ。
むしろ近かったら湿気で維持コストが跳ね上がる。
だけども……管理者が居なくなった施設は自然に整備が行われることなどない。
で、あるのならば。
革命を起こしてしまったメイプルは一体どうやって施設を維持するのだろう?
属国の時では民間の専門家がツァウスト帝国に流れ、より洗練された高技能の専門家が派遣されていた。
ノウハウがないのだ。
一体、どうやって管理をするのだろう?
技術者が国内に居ないと言うのに。
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「メイプルの経済乖離?」
新聞の見出しやコラムの一角に、そのような文面が刻まれていた。
実体経済よりも、物資の商業取引の量が増えたらしい。
紙幣が超高速で製造されているがそれでも追いつかず、そして経済規模から乖離した規模の見合わない資金の循環が成されている……
そう書かれていた。
街の一角にある新聞の棚からひとつ引き抜き、読んだハリストカの市民は納得といった表情でコラムを見つめていた。
経済の乖離は恐ろしい事態を引き起こすだろう、とツァウスト帝国の専門家のコメントが載せられている。
ハリストカでは安定した商業が築かれているが、隣国の独立によって心理的な防壁による安定が崩れたので政情不安が広がっている。
それはどこの属国でも同様の広がりを見せ、ツァウスト帝国から派遣された官僚は自決権を求めるムーブメントを制御しているが水面下で広がりを見せている。
安定こそしていないが独立はできるという実例がすぐ真下にあり、さらに民族自決があるように見えたので別のムーブメントも過激化している。
ハリストカや何やら全てを含む属国たちの政情不安は非常に大きく、人民解放革命軍たちを支持したり、構成員になるような民衆も出てきていた。
「ふーん、まあいいけど。」
「どうせツァウスト帝国の兵士が本気で来たならメイプル程度、勝てるわけ無いし。」
この市民は言葉が薄情なようでいて、情に深い者なのだが……あまりメイプルの独立をよく思っていなかった。
「それに、固定値制度が無くなったら物価が不安定になって経済が死ぬだろう」
ツァウスト帝国が敷いた制度の1つであるのが『固定値制度』。食料品などの購入を常に一定の金額で行えるように相場を輸出入調整で固定したものだ。
何もしなければ人口というのは等差数列のように増えるので、人口が増えていくのにつれて輸出量がUPする。
これが、食料品……たとえばパンなどが安くも高くもならない理由だ。
安くなりすぎれば消費が一時的に増えるが将来的に農業が衰退し、高くなりすぎれば消費が冷え込んで長期的な経済後退が発生する。
メイプルは食料品の値段を大幅に引き下げ、農作物の量をサザンクロスからの輸入で増やしているがどうせ危機的状況に陥る。
明らかにサザンクロス帝国に頼りすぎだし、いくら独立のことを『革命的偉業』とか言って広報したってあまりに長期的視野が欠けているように見える。
製鉄を行ったとて石灰岩の産地はツァウスト帝国だし、そもそも燃料源のバイオコークスやコークスなどの原料になる石炭と植物由来の自然に形成された炭は産地がツァウスト帝国で……たとえばリューヒル大運河の泥で生物由来のリン系は自給自足できるけれど、独立したから国を数えて単純計算で3分の1になる。
いや、3割もあれば御の字というものか。
運河に面する面積は均等じゃないから現実的に%で考えたら、泥の獲得総量のうち79%ほどが消滅することになるだろう。
農業の縮小が元からあったのに農家は恐らく死ぬ。
泥を供給する国の3分の2が メイプルに回さなくなったらどうなるかなんて考えるより先に理解することができる。
牛骨を砕いたり、鹸化した脂質と油の塊を下水から回収して肥料を作れる。リンの供給源というのは人口で大きくなる下水からのものと生物由来の物がメインで、リン鉱山にツァウスト帝国は縛られていない。
これを大量に農家に配っていたのが独立したせいで無くなったのだが、メイプルはどうするのだろう?
本当に後先を何も考えていないとしか思えない。
サザンクロス帝国頼りで全てを解決できるとしても……肥料になる泥から水銀を分離する強酸とかも持ち運びは専門家がいるし、熱して蒸気に変える方法もあるけれどあれは危険性が高すぎる。
一体どうやって資源を回収するつもりなのか。
それに、コンクリートの原料にもなるし肥料にもなる泥や砂はとても重要だがそれひとつでやって行けるわけが無い。
産業のうちの1つに数えられるくらいには泥というのは価値があるけれど、これ単体では活用方法がない。
組み合わせないと有効活用できないし、だからこそ執政国同士、同じツァウスト帝国の経済圏に属する国は越境するのがフリーになっているのだ。
それが無くなったら価値はあるけど本来からだいぶ落ちることになるし、本当にどうなっているのだろう?
とてもじゃないが失敗する未来しか見えないな。
そのような事を思いながら、市民は越境検問所のことを心の中で憂いた。
今日は非番の日だけども、いつテロリスト集団がやって来るか分からない。
もしかしたら密航者が来ているかもしれないし、そうなったら今年から国境警備隊は大量に懲戒処分を受けることになるだろう……
激務の事務作業が半ば確定して市民は心の中で嘆いた。
そして、広げていた新聞を適当な家のポストに投函して、市民は歩き去っていった。
回し読みをする行為なので新聞はコミュニティの絆を深めることができる。無料だが、置いてある場所から自分の家に持っていくのが面倒だという人も世の中にはいる。
そんな人のために新聞配達員がいるのだが、新聞配達員に偽装して手榴弾を投げ込んだ『爆弾投函事件』からは個人契約化が進んで1:1の新聞の郵送のような形になり、それの配達員が……ということが起きている。
新聞配達の業界全体に監査が来ていて業務停止処分が下されている以上、配達業界の汚職は相当なものだ。
チップの過剰な要求が問題になってるし。
ハリストカなどの経済圏に属する国は民間企業を基本的に嫌う。なぜなら、国が把握できない信用取引のせいで物価が乱高下したことがあるからだ。
この教訓を活かして、様々な物価を固定化する方法が模索された。
食料品などがその代表例で、新聞も対象内。
何百万枚と刷るから新聞は紙を必要とし、紙を作るには木や草……パルプが居る。
ツァウスト帝国は原料となる木の樹皮や丸太などを固定値で売買することで新聞を間接的に均一な値段で作っている。
しかし、メイプルはどうか?独自紙幣を使って信用の裏付けがサザンクロス帝国の貨幣と交換できるの一点張り。
しかもレートが極めて不平等で、サザンクロス帝国の貨幣とは交換できるが……
国内製品シェアをほとんど占めているツァウスト帝国から独立したから貨幣禁止令でメイプルの紙幣はツァウスト帝国の経済圏に流通しない。
時期尚早な独立の末路だな。
1. 技術者の国内育成
2. 価格制度の代替案
3. 中間財の国内循環
4. 通貨信用の確立
5. 最後に独立
これを全部逆の順番でやるからこうなるんだろう。
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「クソだ!クソ、クソクソクソクソ!」
国境警備隊の一員は悪態をつく。
(目の前の敵をどうにか排除しないといけないが、味方は死んだ。援護を要求するための通信装置も、『散弾』のせいで壊された。)
(食らえ!)
銃を木箱の上に載せ、手だけを出す。
遮蔽物によって一応は完全に銃弾が当たらないように遮蔽できている。ならば、1人でも減らすべき。
引き金が引かれ、強い反動と不適切な発射体勢によって手首に衝撃が走った。
だが大きな音がしたのでチラリと顔を半分出して正面を見たところ、敵は死んだ。
国境警備隊は連携が得意なのだが、個人プレーは苦手だ。というか多対一を想定した訓練は基本的にされていない。最小人数でも5~6人のスクワッドを想定していて、1人だけで開けた場所に追い込まれるのは想定外。
敵が持っている銃は安価で非常に粗悪な銃だった。
有効射程が90M前後かつ、バレルもとても短いしオープンボルトだから衝撃を加えただけで発射するような動作不良が多い。
そんな半ば不良品のようなサブマシンガンとはいえ侮ることなかれ、当たれば普通に死ぬ。防弾ベストはあるにはあるがここまで連射速度が早い銃火器は想定されていない。
サザンクロス帝国は銃弾製造の分野で近年とてつもない発展を見せており、メイプルの銃で新造の9mm弾をテストするためなのかどうかわからないがとにかく敵はサブマシンガンをもっている。至近距離の制圧射撃なら、致死率はなおさら上がるのだ。
パパパ、と3発の銃弾が発射された音がした。
「!」
兵士は勘で避けた。いや、幸運で外れた。頭の正中線上……脳天を貫く軌道で先程いた場所に当たっていた。
立派なコンクリート塀があっても、登られるのは想定内。傾斜角を変えていき、最後には登ってくる方向に倒れるようになっている。
滑らかなこの形状は整地された地面の上にあり、極めて均一な耐久性を有しているがこれはただの遮蔽物に過ぎない。
ハリストカの国境警備隊は交換人員が送られて混合されているが、突出して至る所から攻めてくる現地のゲリラ兵に対応していたのはハリストカの現地エリート兵士だった。
ツァウスト帝国からの派遣兵ゆえに地形とチョークポイントは理解していても撤退が遅れた。
戦場の最も近い場所に置き去りになったのだ。
木箱の中身は調べてないが恐らくは水。なぜなら、こんな場所に置いてあるということは万が一の時の補給物資だ。
携行している水を全て手放し、バッグを置き去りにして注意を引いた。
この戦術によって3人を仕留めたが問題は正面にいたゲリラ兵だけに留まらず、通信装置がイカれたということだ。
これでは空挺部隊が呼べない。
つまり、最も近くの前哨基地まで10km、開けた道路を車両なしで後退しなければならない。
歩兵輸送車で味方は帰れたが、自分のスクワッドの車両はECMジャマーのせいで救難信号を送ろうにも電子機器が動作していないし、自分以外がグレネードで全滅した。
敵の銃の部品の数は僅か47個、5時間で完成できる。
そしてこちらの部品数はおおよそその4倍ほどあるし、制作時間はあまり分からんが5時間よりは確実に長い。
相手はバイクに乗って来るけれどこちらに車両はない。
相手はショットガンで雑に撃ってくるし、1発で1人を無力化できるとしても数がおかしい。先に弾薬が無くなる。
全力で逃げても逃げても横からバイクが出てくるし、サブマシンガンを必ず持ってるから普通に数の差で負けうる。
兵士はそのようなことを思考しながら、一縷の望みをかけて木箱の上面を開き、覗いた。
中身は空。何も無い。
と、そんな事をしている時、大空に1つの影が現れた。
「ヘリだ!ヘリが来たぞ!」
ゲリラ兵が声を上げたのを聞き、その場所に1発撃つ。
ローターの回転音が、その兵士にとって希望の音だった。
ゲリラ兵にとっては、絶望の音だった。
「機関銃だ!機関銃で撃ってきてやがる、逃げろ!」
ヘリからは無数の銃弾が落ち……ない。
機関銃と誤解されたのはガラスのキャップである。
このキャップは先端に穴が開いた円錐型の物体であり、当たれば位置エネルギーによって砕けるという性質を活かして、品質の悪いガラスなどでも制作が可能。
これによってゲリラ兵たちは上空からの擬似的な爆撃を受けた。遮蔽物が無い開けた道路では死あるのみ。
ハリストカの前哨基地から派遣されてきたヘリコプターは、敵を一掃してくれると兵士は確信していた。
■
パリ……パリ、パリ……
至る所でこのような音が鳴っていた。タイヤがパンクし、道路沿いのスパイクを避けて突っ切らなければ隣国に行けない。
「うあああ!ああ!俺の足が!」
痛い!痛いぞ!
ガラスの破片が太ももの中で砕けてやがる!なんて残酷な武器を使うんだ!
クソクソクソクソ!ちょっと金品を貰いたいだけなのになあ!こんなに全力で抵抗してくるのかよ!?
なんで俺がこんな目に会うんだ?
ゲリラ兵たちはそのような事を思いつつ、後続の戦車部隊のために国境警備隊を全員排除せよという命令を無視することにした。あんなの勝てっこないと判断し、踵を返して逃げようとする。
「撤退!撤退!撤退!」
「おい!お前逃げるな!卑怯者が、俺たちは自由の徒だ!前進しろ!」
パンクしたタイヤでは効率よく走れない。逃げようとしたところで、後続のゲリラ兵に止められた。
仕方がなく再び前進すると、やはり空にはヘリが陣取る。
ローターの回転音が戦場を満たした。サーチライトで照らされ、逆光のせいで距離感が掴みづらくなった。
タイヤは大量に撒かれたガラスの破片によって悉くがパンクしたがまだ走れる。
三輪駆動の力を活かし、悪路となった正面の道路を走破していく。前輪はただの方向制御じゃない。
沈み込みを感じつつ、コンクリート遮蔽物だらけの道路に悪態をついた。
(棘の着いた鉄のコイルだらけの傍の道よりかは100倍マシ。でも壁が邪魔すぎる……!)
そしてヘリさえ居なければ。
(あの機動力のせいで撃っても当てられないし、まず高すぎて当たらない。弾が頭に落ちてくるからヘリに向けて撃つことは出来ねえ。
ならばと思って地上の機動力で地上の敵を蹴散らそうにも、至る所に潜んでる国境警備隊が動いてるバイクの上の俺たちも撃ってくる。)
どんな射撃の腕だよ無茶苦茶な……!
(しかもサーチライトのせいで遮蔽物が衝突直前になるまで見えないし、それで衝突したら確実に魔導ジェネレーターがイカれるし、道路にある膨らんだバンプに乗り上げたら確実にタイヤ周りのギアシャフトが壊れて止まる。本当に酷い2択を突きつけてくるなあ!)
(どっちも確実に死ぬじゃないか!)
低速にならざるを得ないが、ブレーキを踏んだ瞬間に撃ち抜かれて死ぬ。
と、そんなことを逡巡している間に遠くから地響きのような音が聞こえてきた。
障害物の側から現れたのは……『装甲車』だ。
味方が次々と撃たれ倒れる。
国境警備隊の装甲は砲兵でもいないと無理だ。
「良し、逃げるか」
不可能と判断し、逃げようとしたものの……銃弾が頭を貫いてゲリラ兵は死んだ。
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
ある日の朝、とある広場にて。
「おいっちょっと待て!俺たちは同じ革命軍に入った同士だろ!だからやめてくれよ、なあ!」
必死の懇願も意味は無く、次々と撃たれてゆくのは処刑人と同じ革命軍。
その理由としては、人民解放革命軍は1括りにできず、内部構造は大まかにただのテロリスト集団としての性質を色濃く残す集団と、人民による解放を謳ったムーブメントとしての性質を持っている集団に分類されるからだ。
理想派の市民兵はツァウスト帝国の圧政(だと思い込んでいたい管理)から脱却し、より自由で選択可能な未来を夢見て参加した若者や知識層。
彼らは自分たちで国を良くするつもりだが、大半は特筆すべき能力がありません。
なぜなら理想に心酔していなければ知性で持ってして現状を理解することが可能だからで、主要な構成員は大体が若者。
ツァウスト帝国の支配を産まれてからずっと受けてきて比較対象を知らない者ばかり。
実利派の元テロリストはサザンクロス帝国から流れてきたならず者や、混乱に乗じて私腹を肥やしたい層。彼らにとって独立は略奪の免罪符でしかなく、統治など興味がありません。
また、反乱を起こした中核的な層とは相性が悪く、だんだんと姿を消していく。
中庸派の便乗者は独立すれば借金が消える、あるいは以前より良い生活ができると吹き込まれた層。彼らはパンの値段が上がった瞬間に、最も過激な不満分子に変わる。
サザンクロス帝国の武力介入によってツァウスト帝国を追い出し、地域の自治(自決権の行使)を可能にしたがために革命軍は内部の粛清の嵐が吹いている。
中庸派は次々に理想派による統治を夢見てシビリアンコントロールを進め、実利派のテロリスト集団を処刑していく。
だがそれは公的なものではなく、武力を手にした一般人によって行われるものだ。母数があまりに小さいテロリスト集団は大衆による暴力であっさりと瓦解し、消えていく。
実利を追求する側としての顔は理想派も持ち、だからこそサザンクロス帝国と協力する者としない者で分かれていたりもする。
サザンクロス帝国と積極的に協力すべきと考えている『先鋭派』と、協力するべきではないと考えている『現状維持派』に別れる。
理想派の中にもこれほどの分断があったりもするので、だからこそ強いリーダーが彼らの目には魅力的に映る。
そして中庸派も大まかに2つに分けられる。
原理主義型(Purist / Maximalist)の中庸派は、まず第一に理想は完成形として存在していると考える。
妥協=裏切り となり、手段は理想に従属するとして理想派(先鋭派)に協力しがちな層となる。
「まだ足りない」「もっとやれる」が口癖であり、革命の支持者はほとんど全てがこの層である。
実装主義型(Pragmatic Idealist)の中庸派は、まず第一に理想は到達目標だと考える。
妥協は段階的であり、手段と結果の整合性を重視している。
「人民ファースト」が口癖であり、条件付き支持者として支持層の中の1つに入っている。
処刑人と化した中庸派全体が、一致団結して『革命に不要な敵』を探した。
リーダーは外敵だけでなく、内側に潜む『敵対者』を示した。
これによって全ての支持層はリーダーの言葉を信じ、敵対者の排除によって革命が完遂されると言う点で全員が合意した。
リーダーはサザンクロス帝国との貿易条約を結び、購買力平価を上げ、紙幣の信用を流通量で跳ね上げさせ、様々な取引を行った。
反発する者もいたが、実利を追求する派閥の中のテロリストたちと同様に扱われたくないのでむしろ進んで表向きには賛成した。
こうして、テロリスト集団としての色を残す者は消えていき、姿を消した。
革命が真に『革命』と成った瞬間である。
それはすなわち、権力闘争の始まりに過ぎない。
文章の1話辺りの量について(調整)
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10000文字ほしい←現在の基準
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3500以上ならいいよ
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5000文字くらいほしい
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6000以上ならいいよ