女神「輪廻転生しろ」 ワイ「はい……」   作:まっすァき

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2回目の現世+5

「まだいるのか!数だけは多いな!」

 

騎士たちは同時多発的に密売人がいると思しき村に火を放ち、潜伏箇所になりうる場所を破壊していく。

 

騎士たちの主はこう言った。「密売人に協力する村は破壊して良いと王室から了承を得た」と。

 

今より、この者たちはただの騎士ではなく王室の許可を得た工作部隊となった。

 

「村民よ!安心しろ。この村から逃がしはしない!」

 

「広場に集まれ!集まれと言っているんだ!」

 

大慌てで家財道具を持ち出そうとする村人や、子供と共に歩く村人。

いきなり現れた騎士風の格好をする略奪者だと思い込み、自警団の中には騎士に槍を振るう者がいた。

だが一瞬にして鎮圧され、既に脅威は無くなっていた。

 

「我々は投降する!」

「やめてくれ!穀物庫だけはどうか……」

 

農民たちにとって穀物とは税を納めるための手段であり、生活のために欠かせないもの。

 

だが騎士たちは穀物類の中に『草』が紛れていないか探していく。

藁の隙間ひとつも見逃さず、冷徹に。

 

なぜならこれは『薬』が関係しているからだ。

充分な『緊急性』と『対処のための権限』、それが揃ったために『迅速な対応』が求められていた。

 

「見つけました!アヘンです!」

 

村長は狼狽え、必死にこれは小麦粉だと弁明する。

だが、即時の攻撃開始権限を持っている騎士を相手に近寄るのは圧倒的な選択ミスだった。

 

切り伏せられ、村民はリーダーを失った。

 

 

「急げ!近隣の村にまで広がっているぞ!」

 

各部隊にいる騎士長たちは、他の村でも薬物を見つけていた。

 

それは腐敗した村であり、王国にとっての病巣である。

故に、切除して良いと許可が降りている。

むしろ寛容な方であると言えよう。

 

▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

執務室の扉が乱雑に、斧によって蝶番が壊されて倒れた。

 

 

「さて、ヘイライ子爵。この件は、王室から沙汰が下っているだろう。知らないとは言わせないぞ。」

 

「パ、パラダイム伯爵。それは越権行為で

 

伯爵は、椅子に座ったままの子爵に対して、それ以上喋らせないように、顔のすぐ真横を掠めるように槍を放った。

 

汗を流し、1拍遅れてそれを見たヘイライ子爵は命乞いをした。

 

「命乞いは要らない。さあ、取り潰しを大人しく受け入れるんだな。安心しろ、お前の親戚にまで調査は及ぶ。」

 

「ヒッ」

 

子爵は、もう声を上げなかった。

 

「麻薬組織との繋がりの確証を王室は得た。国王陛下からの処断を待つんだな。」

 

 

子爵は、連行されていった。

それは王室による『懲戒隊』たちによって行われる。

 

厳しい処罰があるだろうが仕方がない。血筋が絶えるか、それとも子孫は平民落ちし役職を握ることは無いだろう。

 

 

▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△

 

「や、やめてくだされ、どうか命だけは!」

 

懲戒隊を見て焦る貴族たち。

その全てが密輸に関わっていた者たちだった。

 

「ああ安心しろ。命だけは助けてやる。」

 

懲戒の名の通り、それは戒めを与える組織である。

それはどのような罰であるかはその時々によって様々だが……麻薬密輸に関わっていた者たちは極めて重い罰が下るだろう。

 

「お前たちにはこの杯を使ってもらう。」

「だが、この中身は毒ではない。」

 

懲戒隊の1人が、盃の中に液体を満たしていき、蓋を閉める。

それは玉虫色の液体であり、表面が蠢いている。

 

「さあ、目隠しをするんだ。入ると大変だからな。」

 

クルクルと頭の後ろで歯車が周り、どんどん頭を締め付けていく。

そしてやがて、充分に締まったと判断されたところでそれは終わった。

 

金属製の目隠しをさせられた5人の貴族は、全員が当主である。

彼らは取り潰しどころか家門まるごとが懲戒の対象であり、王室から見放された存在である。

 

この国は反逆罪が多い。なぜなら、反逆罪の適応範囲が広いからだ。

だが、今回はちゃんと正当な反逆罪であるのだ。挙兵した訳ではないが、麻薬組織との繋がりとは『宣誓に反する』ものだからだ。

貴族は、王室に対して忠誠を誓っている。だからこそ諸侯は土地の支配が認められているのであり、だからこそ忠義を果たしていないのならば土地の支配というものはできなくなる。

 

「我々は安全に配慮している!」

「配慮配慮配慮配慮!!!!!」

 

一応、部屋の中に設置されている蓄音機の前で、懲戒隊の1人が安全配慮の話をする。

 

するとその玉虫色のゲル状の液体は、特徴的な鳴き声を上げながら瞬く間に姿を変えた。

 

それは長く、大きく、細いものだ。

 

それは鞭である。

それが、百を超える量になっていて、ヒュンヒュンと先端から液体を滴らせながら蠢き、殺到していく。

 

5つの盃にぴっちり満たされていたその正体。

 

それは、『服だけ溶かすスライム』だ。

これはかつての民間人が開発したものであり、元は火傷に対する医療用の改造品だ。

 

原種のスライムとはれっきとした『モンスター』であり、かなり強いのだ。

特に元のスライムは酸性がかなり強かった上に、口を持っていた。鳴き声もおぞましいものだったと聞く。

見た目の色は玉虫色なのは共通しているが、外見に関していえばほとんど家ほどあったのだとか。

 

「テケー」

 

スライムが甲高い鳴き声を上げ、鞭を正確に当てる。

それと同時に鞭の先端が欠損するが問題は無い。

モンスターは理論上無限に再生するからだ。

 

「や、やめてくれ、痛い!」

 

貴族たちは悲鳴を上げる。

 

「テケリ〜」

 

どんどんスライムの鞭は増えていく。

空気の中に存在する魔力と触れ、自己増殖しているからだ。

 

自己増殖している間は、再生能力を擬似的に獲得し、モンスターは不死身に近い存在になっている。

だからこそ空気に触れさせることは危ういのだ。

管理要項を2時間半も読まされた、スライムを扱う懲戒隊たちの中には禁忌択を選んで今回の懲罰から外された者もいた。

 

それほど慎重に扱う必要があるからなのだ。

 

貴族たちは悲鳴を上げていく。

服だけを溶かす……正確には、繊維質の物体を溶かすというものであり、みるみるうちに服が溶ける。

 

「さあ、あと15分だ。」

 

その声を聞いた貴族は顔を青ざめた。

 

人間が完全な暗闇で正気を保てるのは何時ほどか。それは彼らには分からないが、直ぐだろう。

 

▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

「パラダイム家の当主サフェルが今回の功労者か。」

 

薬物取締の役職に着いている大臣からの報告を聞いた国王は、その扱いに悩んでいた。

 

確かに違法薬物の摘発や腐敗した貴族層の報告をしたが、その間に不安要素が大きすぎる。

 

それにサフェルの子、アマスィヤは勝手に騎士を諸侯に送ったとの苦情が来ている。

 

どう沙汰を下すべきか。国王は机の上に肘を乗せ、書類に再び目を通す。

 

「今回の越権行為の件は不問、としよう。」

 

まだ成人も済ませていない子のやったことだ。と体外に説明するのは難しいが……折り合いを付けるしかない。

なにせ功績が大きすぎる。

 

パラダイム伯爵家は多才の家とは誰が言ったか。

 

誰でも簡単に武装できるような「槍の作成」という魔法を領内に公開した次男アマスィヤに、「築道魔法」を王室に献上した長男ラウロ。

 

問題行動こそ多いが、どれも便利だ。

近年、隣国は軍備を進めているようだ。こちらも武装化しなければならない。

 

「サフェルとラウロに最上勲章を与えるか……そろそろ長男の方は成人の儀の時期も近い。王城に呼び出そう。」

 

「だがアマスィヤは……謹慎の処分を下さなければならない。功績は大きいが、規律を破ったならば罰則を与えなければ。」

 

 

王はため息をつきながら思考した。

 

功績ある物にあまり罰を与えたくは無いが、これも仕方がないことだ、と。

 

 

 

▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

「兄さん、研究はどう?」

 

カウシンは、夜間でも明るい兄の部屋を訪ねた。

兄が開発しているのは全く新しいもので、まだ研究途中だ。

 

「ああ……今はモンスターをどうにかこうにか食べられないかためしてみたいんだ。」

 

兄はあっけらかんと言った。

モンスター食。それははっきり言ってかなり勝ち目の悪いギャンブルである。

 

古代では星見の儀式に使われていたりもしたがあれは毒で免疫を高めるような行為で、脳の異変を啓示として考えているだけだとTIPSは言った。

 

 

「モンスターが食べられたらいいね」

 

カウシンは共感するように言った。

ほとんど全てのモンスターは、遠い遠い国が原産だ。

その国は島国だが恐ろしいモンスターが大量にいて、国の8割がモンスターだらけの大荒野なんだとか。

 

 

だからこそ、魔素の総量がそこまで存在しないこの国でモンスターを食用に養殖するのはかなり難しい。魔力は生命体が代謝して生まれるもので副産物なのだ。

 

食物に含まれる魔素を吸収する効率が悪いヒューマンは、エルフと比べて魔力量で圧倒的に差がつく。

 

それにより当然ながら空気に含まれる魔力量も変わり、モンスターが弱る。

 

「でもさ、どうやってまずモンスターを生き残らせるの?」

 

モンスターの延命方法はただ1つ。魔素が豊富な食物を取り込ませるか、魔力の塊である魔法を食べさせるか。

 

「ああ……魔素が豊富で数が多い生き物を探しているんだが分からないんだ。」

 

アマスィヤは嘘を着いた。

本当は1番適した生物を知っているが、弟の前でそれを言うのは憚られたからだ。なぜなら魔素を多く持っていて個体で量の多い生物など、数多いる他種族の中でも1種しかいない。

 

 

「うーん、できたらいいね」

 

 

カウシンは目の前の悩む兄に対して励ましの言葉を掛け、部屋から去った。

 

それと同時にアマスィヤの中では、『最適解』を考えついていた。

 

犯罪を犯し、処分が難しい生物をモンスターに食わせれば良いのではないか?

 

アマスィヤは考えている。深く深く、考えている。

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