真剣で嘘つきを騙してみろ   作:棚上げ侍

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いよいよ原作ストーリーに突入しそうです。


川神院にて

今の時刻は午後七時三十二分。猫荘の男性陣は風呂に入っていた。今日は風間ファミリーとの戦いで全員疲れており、脱力感が漂っていた。(鳥頭目は例外的にはしゃいでいた)そんな中、湯船の中で薬馬が真に話しかけていた。

 

「なあ真」

「なんだ小四郎」

「お前……なんで本気を……『眼』を使わなかったんだ?」

 

二人の間に十秒程沈黙が流れた。その間に真は顔を二回タオルで拭いた。

 

「…なんでって、アレはそうホイホイ使うもんじゃねえだろ。最後の切り札といっても過言じゃねえし」

「いやまあそれはそうなんだけどな…」

「別に使うかどうかは俺の自由だろ」

「けど……なんか気になってな」

 

気まずい……という程ではないが二人の間でなにか言い出せない空気が漂った。

 

「……川神百代だよ」

「へ?」

「お前近くで見てたろ。川神百代はバトルマニア……戦闘狂なんだよ。そんな奴が近くに居る時に『眼』を使ってみろ、毎日毎日やれ戦うぞやれ勝負しろってメンドーなことになんだろが」

「ああ、なるほどな」

 

また沈黙が、今度は数十秒と長く続いた。

 

「何かあったら言えよ、お前一人で抱え込む癖があんだからな」

「分かってるっつの。お前はいい加減ホント小姑だな」

「誰が小姑だ誰が!」

「なあなあ真~」

 

二人が話しているときに鳥頭目が割って入ってきた。それはもう字のごとく水を割るかと思えるほどの勢いで二人の間にダイブしてきた。

 

「よっ」

「どわっ!」

 

真はすぐに反応し避けた。が、その時同時に薬馬の足に自分の足を引っ掛け、薬馬はその場で転んでしまい鳥頭目のダイブに突撃されてしまった。

 

「ぐわぇっ」

 

と、妙な奇声を発した薬馬はその場で倒れこんだ。そのまま湯船に沈んでいき(一応記載しておくが、風呂だからかなり浅い)そこからブクブクと泡が出ている。

 

「真、聞きたいことがあるんだけどなー」

「どうした鳥頭目?」

「それよりお前ら医者を助けないワケ!?」

「小四郎ーーーーー!!」

 

真と鳥頭目が会話をしている間、蝶左と九十九による薬馬の救出劇が繰り広げられていた。ちなみにそれを見ていた二猫は「医者君が死んだ~~wwwwww」と大爆笑。この後、この二人が蝶左、九十九、薬馬の三人にこっぴどく怒られたことは言うまでもないだろう。さらに言えば、真の方は全く反省していなかったことも言うまでもあるまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ふう……」

 

真は自室で寝ころんでいた。

 

「…学校………か……」

 

先程、浴場で鳥頭目に聞かれたこととは学校についてだった。

『なあなあ、あいつら「がっこう」ってとこで出来た知り合いだろ?俺も「がっこう」ってとこ行ってみたいなー』と言っていた。

 

「やろうと思えばやれるんだけどなー」

 

実際に話した事は無いが、2-Sクラスに明らかに十七歳とは思えない者が少々おり、あの学長に話せば快く入学させてくれるだろう。しかしそうなるとおそらく鉄心は交換条件として『東西交流戦への参加』を提示してくるに違いない。性格上必ずしてくるであろうと真は予測していた。が、

 

「まあ仲間のためだ。一肌脱ぐとすっかな」

 

真自身、断るのに深い理由は特になかったため、参加の決意をした。

 

「明日ハゲジジイのとこに行ってみりゃいいか」

 

 

 

 

 

 

 

 

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編入

次の日の土曜日

真は川神院の前に立っていた。理由は当然鳥頭目の川神学園へのできるかどうかだ。

 

「まあ、あのハゲジジイのことだ。二つ返事で許可してくれんだろ」

 

とつぶやいた真はズンズンと歩きながら川神院の門をくぐり、奥へ奥へと進んでいった。途中、稽古をしている門下生や修行僧たちににらまれながらも(当の本人はガン無視を決め込んでいるが)なんとか(?)一番大きく、奥の屋敷ともいえる建物に到着した。

 

「……実際に見るのは初めてだな。つか無駄にデケーな」

「あれ、もしかして真君?」

 

古風な巨大木造建築物を見上げていると、後ろから聞きなれ(かけ)ている声が聞こえた。振り返ってみるとそこに居たのは川神一子であった。稽古の途中だったのかいつもの制服や体操服とは違い、スパッツをはいていて、無地シャツのうえに白色の道着服といういかにも「私武道やってます。稽古の途中です」という感じだ。よく見ると若干汗もかいている。

 

「お、一子か」

「どうしたの真君。ウチに来てるなんて知らなかったわよ」

「いや別に武術を教えてくれって来たんじゃねーんだ」

「じゃあ何しに来たの?」

 

「うちの鳥頭目が入学できるかどうかをハゲジジイに聞きに来た」とは言えない。一子の口は軽い、うえに一子自身何かを隠し通すことができない。それはこれまでのことで熟知している。そんな一子にこのことを話したら間違いなく姉……川神百代の耳に届くだろう。そんなことになればいろいろと面倒なことになってしまうのは容易に予測できる。ここはなんとか誤魔化すしかない。そう真は考えた。(ここまで思考を働かせるのに一秒足らず)

 

「…習いに来たってよりも見学だな。一言に武術といっても人それぞれに合う合わないがあるしな」

「ふーん、そうなんだ。じゃあおじい様に見学できるか聞いてくるわ!今ちょうどランニングの途中だからパパッと行ってくるわよ」

 

一子が間に入ると普通に話し合いが出来なくなると感じた真はすぐに(やんわり)断るように話した。

 

「いや、気を遣わなくてもいい、自分で行く。けどそのハゲジ………学長がどこにいるかわかんねーんだ。場所だけをしえてくんねえかな」

「いいわよ。ここをこう言って…………」

「………あ~分かった分かった、サンキュー助かったわ」

「どういたしまして。じゃあ私まだ稽古があるから、じゃあね~」

 

一子はそういうと猛スピードに急加速してランニングに戻っていった。それを見計らい、真は近くの大きめの柱に顔を向けた。

 

「……おいハゲジジイ、そこに居んだろ。高校生の会話を立ち聞きかこのハゲ」

「…ふぉっふぉっふぉっふぉ。これも老後の楽しみの一つなんじゃよ」

 

その柱の影から川神鉄心が現れた。

 

「ふぉっふぉふぉっふぉ言うなよ。バル〇ン星人かっての。はさみ持って来いはさみ。両手で一つずつ」

「誰が〇ルタン星人じゃい。どちらかと言うとウルト〇マンじゃろがい。ワシビーム出せるぞい」

「ビーム出す前に茶出せ茶。おれぁお客様だぞ。四十秒で用意しな」

「そこは三分じゃろ……」

「んなこだわりどうでもいいわ」

 

二人は話しながらその場を移動し、川神院のとある部屋に落ち着いた。鉄心は茶を出して正座、真は胡坐をかいて座っている。しばらく無言で相座っていた二人だが、鉄心が胡坐に座り方を変えた。

 

「で、何か用かのう」

「うちの奴が川神学園に入りたいって言ってんだ」

「よいぞ」

 

早っ。内心真はそう突っ込んだが、いちいち突っ込んでいたら話が進まないのであえて口には出さなかった。が、実際聞いて許可を出すまでにかかったタイムは0、36秒だった。事実早すぎる。

 

「用はそんだけだ。詳しい事運んだ話す。じゃあな「ただし条件があるぞい」……チッ…」

「東西交流戦に参加してくれんかのう」

 

昨日の晩で考えた通りのことを言われた。

 

「(そらやっぱ来たよこの条件。まあ予想済みだしいいけど……)……分かった、その条件をのむ。」

「ほうかほうか、では参加メンバーに加えておくぞい」

「んじゃ俺はもう帰るわ」

 

真は立ち上がると障子をあけて部屋から出ようとし、一度部屋に戻り茶を飲みほしてまた再び部屋から出ていった。それを見た鉄心は「(抜け目ないのう…)」と感じた。廊下に伝って歩いていく真は不意に立ち止まり、大きなため息をついた。

 

「武神は盗み聞きをする奴のことを言うみたいだな」

「いいじゃないかちょっとくらい」

 

立ち止まった場所の真上の屋根に川神百代が居た。服装は先程会った一子とほぼ同じ道着姿だが、まったく汗をかいておらずかつ息が全く乱れていないところからすると、修行を途中で抜け出してきたようだ。

 

「で、なんか用があんのか?俺は早く帰りたいだが」

「学校にアイツらが来るんだろ?楽しみだな~」

「手前のジジイから聞け」

 

そう言って真はまた歩き出した。速度はさっき歩いていた時よりもはるかに速い、早歩きだ。真が歩き出すと百代は屋根から飛び降りて真の前に立ちはだかるように着地、帰り道をふさいだ。

 

「ちょっと待て、聞きたいことがある」

「俺はない」

「私はあるんだ」

「俺はない」

「私の話を聞かないと酷い目にあうぞ?逃がすつもりも毛頭ない」

「やってみろよ。お前から逃げることなんて簡単にできるんだよ。あと毛頭ないのはお前のジジイだろ」

「プッ!(笑)」

 

思わず吹き出してしまう百代。確かに鉄心の頭に毛はほとんどないが、こう返されるとは予想がつかず不意打ち気味でツボに少しハマったようだ。

 

「お前面白いな。が、私がお前を逃がす事は無い」

「まあ丸腰じゃ無理だな。けど、あれを使えば簡単だ」

 

真はそう言うと、顎で何かを見るように促し、目線で追うように空を見た。百代もそれにつられて空を見る。が、そこには何もなく、あるとすれば見えるはずもない空気という名の物質だけだろう。それを確認した百代はまた目線を真の居る正面に戻した。しかしそこには

 

「!?、い、居ないだと!?アイツどこに行ったんだ?」

 

そこには、誰も居なかった。先程まで真という人物がいたハズの空間にはたった今百代が見たような空気という名の物体しかない空間が出来上がっていた。自分の周りを見渡したが、人どころか自分以外の動物一匹見当たらない。

 

「クソッ!さっきアイツの気を憶えていればよかった。いや、その以前の問題か」

 

百代は驚くと同時に悔しんだ。武神と呼ばれ、実力は世界最高ランクの者を持つ自分の目の前から、少し目線を外しただけで逃げられてしまったことに対して、自分のプライドがひどく傷つくのを感じた。が、その悔しさが少しだけ引いた後、ある感情が生まれた。

 

「……まだ近くに居るはずだ。見つけてこってり絞り上げてやるぞ」

 

おちょくられたことに腹を立てた百代。しかしどこか楽しそうで、まるでおもちゃを手に入れた子供の眼をしていた。百代は真を探し出すため、どこかに歩いて行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(なーんて、逃げたってのもウソだったりしてな)」

 

真が今立っているのは、先程まで百代が立っていた場所だった。

タネあかし(のようなもの)をすると、まず視線誘導…どこか遠くを見るようにしたしぐさ…をして視界から自分を外す。この瞬間、急に気配がなくなるとバレてしまうので、少し遅めでスムーズな気の消し方をした。その後、百代の視界に入らないように常に百代の後ろにぴったりと張り付いて動いた。そうすることで百代にあたかも急に消え、どこかに逃げたと見せかけたのだ。(実際に行うにはかなりの実力と技術、度胸が必要になってきます)

 

「(なんか面倒なことになってきたが………まあいいか)」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は、二週間後の東西交流戦に遷る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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