真剣で嘘つきを騙してみろ   作:棚上げ侍

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書くことがないっす。


あの男

とある場所にあるとある部屋。

時刻は午前三時。ニートさえも眠る(と思われる)時間だ。こんな遅くに起きている人物が居た。

いくつものディスプレイ画面がひとつの壁に固定されており、無数の文字列が上方から高速にスクロールされていき、下方画面外にはじき出されていく。数えてみると、大きい画面が六つと小さい画面が二つ、計八枚の画面がまぶしいの一歩手前の光を発している。ひとつひとつの文字や文章を見てみると、有名な大手企業の総売り上げや利潤率、テロリストの犯行声明、為替相場の現在状況、その他さまざまな世界のニュースや報道が……情報が映し出されては消えていく。

そんな凄まじい量と内容の情報がうつされていく画面をたった四つのキーボードでいる人物が光る画面の中心にいた。手元を見てみるとブレて見えるほどの速さでキーボード操作をしている。

カタカタカタカタカタカタガキッ!カタカタカタカタ

時々妙な擬音が聞こえてくるときもあるが、超スピードでブラインドタッチしていく。

 

「…………………………んっ……………おっ……」

 

その人物はある情報を見つけると、その情報に目を付けた。そこには……

〖今日の早朝、河原付近に居ると思われる釈迦堂形部を公正または管理。それらが出来なければ川神から追い出し、それも拒否するならば駆除〗

と、書かれていた。

 

「……釈迦堂のオッサン………この街に居たんだな。にしても駆除って………やりすぎだろ九鬼財閥さんよう……」

 

その人物とはほぼすべての読者が感づいていると思うが、正体は天邪狐真だ。真はさらにその先の情報に目を通すと、真の口から苦笑が漏れた。その情報とは、

〖なお、この任務にあたる従者は従者番号零番ヒューム・ヘルシングとする。他の従者は安全上の問題の元、念の為武士道プランのクローンの近くに置く三名以外は本部で待機とする〗

と、書かれているのだ。ここの情報で最も重要なものは釈迦堂の相手をするヒュームという男だ。真は仕事上面識があり、釈迦堂と何度も会った事も、一度だけなら戦い合ったこともある。なので、釈迦堂の強さをその身で覚えている。

もし、釈迦堂が一番最後に会った約十ヶ月前から真面目に鍛錬していたのならば、かなりの接戦になるであろう。が、あの男がそんなことするはずがない。武の世界に入りたいとは思ってはいないが、釈迦堂がかなりの才能というものを持っていることは分かっている。前に酔った勢いで愚痴で「じじいもルーも鍛錬だの才能がもったいないだのうるせえんだよ……」と呟いているのを聞いたことが真はあり、真面目に鍛錬していることは限りなくないであろう。

本来真は基本的に自分に来た依頼以外では、大抵のことは無視している。理由は簡単で、得が何もないからだ。仮にこの情報が普通の一般人が知ったら(ありえないが)、怖いもの見たさに行くか物騒ごとはごめんだと寧ろ遠ざかるだろう。が、今回真はこれに動こうと思った。実際得は何もないし、真自身そもそもその場にいたとして何をすればいいのかあやふやな部分がかなり多い。しかしなぜか行きたくなった。本当に深い意味はなかった。ただ行きたくなった、それだけだ。

 

「………少し………疲れた……な…」

 

真は近くにあった布団を引き寄せ、浅い眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました~」

 

コンビニのバイト店員の少し気の抜けた声を背に浴びながら、真はコンビニを出た。右手にはパン、スナック菓子、サンドイッチやおにぎりが大量に入っているビニール袋が持たれており、左手にはペットボトルのサイダーが握られている。真は左手の親指を器用に使い、ペットボトルのふたを開けて口につけている。真は、おそらく釈迦堂は仕事をやめてしまい、無職になっていると予測したのだ。実際、それは当たってしまう。

ボチボチ歩いていると、(おそらくここが)目的地に着いた。つかんだ情報ではここらのどこかでオッサン対決が勃発するはずだ。釈迦堂とヒュームを探していると……

 

「おっ、居た居た」

 

そこそこ遠くの方でオッサン二人を同時に発見し、早歩きで近づいていく。もちろん完全に気配を消してから近づいている。近づくにつれてさらにその先に女三人と男一人もいることが分かった。身体的特徴から姉弟であることもわかった。それも全員かなりの実力を持っている。さらに近づいていくと、何やら二人の間でかなり不穏な空気が流れているようだった。例えるのなら……というよりも見たまんま《一触即発》の見本だ。

 

「……では川神らしく腕ずくだ。俺が勝ったら、就職しろ」

「俺が勝ったら、俺やこいつらに干渉すんなよ」

 

釈迦堂を見た真は心の中でため息をついた。相手の強さもわからなくなってしまった釈迦堂に呆れているのだ。真はヒュームの後ろから軽く頭にチョップを入れると、

 

「朝っぱらから闘気丸出ししてんじゃねーよ」

 

といった。

瞬間

ヒュームは目にもとまらぬ速さで後方に……真に蹴りを入れた。真はしっかり回避、すぐに釈迦堂側に移動した。

 

「おひさしぶり……だな、釈迦堂」

「おっ……前、真か?」

「残念不正解。答えは天邪狐でした」

「名前か苗字かで変わんねーじゃねーか。………お前自身もな」

 

二人は再開を形だけだが再開を祝った。が、二人が見据えているのは先程からずっとヒュームだ。

 

「おい師匠。いきなりこいつ誰だよ。師匠の知り合いか?」

 

後から少し幼さが残る、ガラの悪い少女の声が聞こえる。おそらくさっき見た中で、一番背の低い長めの赤みがかった髪を持つツインテールの少女だろう。

おそらくというのは、今は後ろを見ることが出来ない状態だからだ。さすがの真も、後ろに居て見えない初対面の人の声を一致させるのは不可能だ。

後が見えない……というよりも、見ることが出来ないのは、目の前に世界最強といえるほどの実力を持つ金髪ヒゲジジイが居るからだ。今後ろを見たら、確実にさっきの数倍の威力と鋭さを持つ蹴りが真を襲うだろう。いや、襲う。確実に、100パーセント、むしろ120パーセント。

 

「……何の真似だ、天邪狐真。俺の邪魔をするつもりか」

 

何やら尋問らしきものが始まったようだ。

 

「短気は長生きできないって聞いたことあるか?もうちょっとだけそのいかつい顔どうにかしろよな……って、ああ悪い。それがニュートラルだったな」

「質問に答えろ」

「テメエらの都合で、勝手に人様に命令とかするテメエらが大っ嫌いだ。だから嫌がらせをしている」

「俺を前にそんなことを言う赤子は久しぶりだな。が、その釈迦堂形部は壁越えの実力を持つ上に犯罪に手を染める可能性が極めて高い危険人物だ。そいつをどうにかするのは我々九鬼財閥からしても、この街の治安問題にしても、善い行いであり当然の行動だと思うが?」

 

少しだけ……少しだけだが、真の顔に一瞬憤怒が浮かんだ。

 

「相変わらずクソみてえな考え方してるな(アイツ以外は)。実力行使と実力主義は別モンだぜ」

「今日は赤子がほざくな」

「そのセリフ言うとき、今度から手鏡用意する事をおススメするぜ」

 

そのまま膠着状態が続いた。誰も何も話さない時間。それは本人たちの間では、一時間にも一分間にも一秒間とも取れる時間だった。実際に立った時間は二分三十六秒だったが、二分三十七秒になった瞬間。沈黙は破られた。

 

「……以前、お前の部屋での際、お前は俺に謝って済ましていたと思うが?」

「つまりお前は、戦ってもいない相手を赤子と決めつけたってことか」

「貴様程度の小物、戦う前から結果などたかが知れている」

「まいいや。じゃ、こうしよう」

 

真はポケットから四角く、カセットテープのようなものを取り出した。手のひらサイズより一回り大きい程度の者だ。よく見ると、いくつかスイッチがある。どうやらボイスレコーダーのようだ。

 

「今の会話を録音した。この会話をネット上にアップしたり、マスコミに報道されたくなかったら今すぐ回れ右して帰れ」

 

ヒュームは少しだけ目を見開いた。が、それは刹那にも満たない間のみだった。

 

「今の会話を流してどうする。第三者から見ても、犯罪者予備軍の対応にあたった俺たち九鬼財閥の方に軍配が上がると思うが?」

「自分の喋った言葉は、たとえ嘘でも冗談でも責任持った方がいいぞ」

 

真はかちりと音を立てて、録音したばかりの会話を流し始めた。

 

『……俺を前にそんなことを言う赤子は久しぶりだな。が、その釈迦堂形部は壁越えの実力を持つ上に犯罪に手を染める可能性が極めて高い危険人物だ。そいつをどうにかするのは我々九鬼財閥からしても、この街の治安問題にしても、善い行いであり当然の行動だと思うが?…』

 

またかちりとスイッチを押して切り、ボイスレコーダーは黙り込んだ。

 

「……これがどうした」

「はあ!?、これでもわからんとは。九鬼家従者部隊の零番が泣いて笑ってしょんべんしながら呆れる。大事なのはここだ」

 

またかちりととスイッチを入れる。

 

『……その釈迦堂形部は壁越えの実力を持つ上に…』

 

スイッチを切る。

 

「その釈迦堂形部は。っつーけど、『その』ってなんだよ『その』って。てめえら九鬼財閥は人のことを道具扱いかよ」

「………なんだと?」

「違うのか?じゃあコマか何かかって言いたいのか。なんと、世界一の大企業はまっくろくろすけのブラック企業だった。おお怖」

 

ヒュームは厳つい顔にさらにしわを刻まれ、さらに厳つい顔になった。誰がどこからどう見ても憤怒を感じさせるかになった。または、気の弱いものであったら「化け物だ~!」と叫びながら逃げ出しそうだ。

しかし、真は全く動じない。ひるみもしない。ヒュームが一歩踏み出すと、真はボイスレコーダーを前に掲げた。

 

「別にこれ壊してもいいけどよう、もう俺んちのパソコンに転送したから意味ねーぞ」

「……………チッ……」

 

これでもかと、顔にしわが刻まれる。

 

「…貴様、九鬼と全面戦争でもするつもりか」

「やってみろよ」

 

瞬間

真から凄まじいほどの闘気がほとばしった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

川神院

 

「ん?なんだこれは。こんなに激しい闘気、感じるのは久しぶりだ。誰が出しているんだ?」

「コラモモ!稽古中じゃぞ、集中せい!」

「(しかし、なんなんだこの闘気ハ。いったい誰ノ……)」

「(ふむ、天邪狐の奴に何かあったのかのう………)」

 

 

 

 

 

 

 

武士道プランのクローン達

 

「!、い、今の闘気、量も質もとてつもなくすごいぞ!」

「ああ、確かにすごいね……まるで起きた龍みたい。(もしこの闘気の相手と戦うなら………私も義経も確実な勝利は無理だね…)」

 

 

 

 

 

 

島津寮

 

「この闘気……いったい誰の者なんでしょう………今までに感じたことがありません」

「う~~ん、むにゃむにゃ……」

 

 

 

 

 

 

????

 

「……?…天邪狐、アイツか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒュームは驚いた。というよりも、その場にいた者全員が驚いた。

この闘気で人が死ぬ。

そう思えるほどの迫力だったからだ。

 

「マープルとかいうクソババアに伝えろ。『俺には嘘も隠し事もつうじねえ』ってな」

「……いいだろう、今日のところは引いてやる。が、くれぐれも非行に走るなよ、釈迦堂形部」

「…ヘイヘイ」

 

ヒュームという名の嵐は去って行った。しかし、天邪狐真という名のハリケーンはその場にとどまっていた。ハリケーンは少しづつ風を抑えていき、そよ風になった。

 

「………ふう、大丈夫だったか?」

「まあな」

 

戦い(?)は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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